急性虫垂炎の診断


内科医として腹痛、特に急性腹症の患者を診察した場合には外科転科のことが
脳裏を過(よぎ)ります。
しかし「腹痛すなわち外科医」ではないことも当然のことです。
どこかの有名な教授の退官記念講演ではありませんが、我々内科医の急性虫垂炎
の正診率は一体どのくらいなんでしょうか?
見逃して他医に回る場合もあるわけですから正確には判らないはずです。
最近では診断技術の進歩により違うでしょうが、以前は内科から外科に送っても
「カタラーリス」「フレグモーザ」という口頭の返事をいただくだけでした。
なぜか「カタラーリス」という返事が圧倒的に多かったと記憶しています。
「ノルマーリス」という返事は、どういうわけか一度も聞きませんでした。
最近、非典型的な症例を経験したのを機会に復習してみました。


●平均虫垂穿孔は発症後34時間
●RLQに圧痛(Mc Burney)があり、他の部位になければ虫垂炎である可能性は
陽尤度比 {感度/(100−特異度)}が7.3と高い。
●超音波は未熟な検者では何の役にも立たない。
●腹部CTは感度100%近く、迷った時には決定打となる。
● 腹壁を叩くtappingは、急性虫垂炎の腹膜刺激症状を見つけるのに、
Blumberg反跳痛より感度が高い。
● heel drop sign(つま先立ちから踵を落とした時に腹痛出現)は感度95%
と高い。
● 右下腹部に圧痛がないこともある。
●頻度は少ないが念のため内蔵逆位も考慮。
この事についてはhttp://wellfrog.exblog.jp/6725043/を参照
下さい。
●AlvaradoのERパンツL(MANTRELS)
      score(点数)
Elevated temperature 1
Rebound tenderness 2
migration of pain 1
Anorexia 1
Nausea 1
Tenderness of McMurney 1
Shift of WBC count 1
Leukocytosis 2
  
                   7点以上で虫垂炎が疑わしい

Alvarado A:A practical score for the early diagnosis of acute  
appendicitis.
    Ann Emerg Med 15:557,1986

<参考資料>
medicina vol 44 no4 2007


虫垂炎診断
http://intmed.exblog.jp/5914420/

このサイトで紹介されているサイン
Rovsing sign
obturater sign(伸展性の右股部の内旋によるRLQ痛。
obturator internus muscleが伸展して炎症を起こした虫垂を圧迫すること
による徴候)
psoas sign(右股関節の過伸展によるRLQ痛。盲腸後部虫垂や骨盤内虫垂
で有用。感度は低いが特異度は高い。経験不足の外科医よりよほど信用できる。)
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Acute Appendicitis: Review and Update
http://www.aafp.org/afp/991101ap/2027.html
今まで虫垂炎がよくわからなかった内科医として、そのすべてが述べられた
サイトにやっと巡り会えました。
カラフルで奇麗な図で各サインの説明がされています。
症状の頻度、所見の尤度についての説明も科学的でクリアーカットです。


Has Misdiagnosis of Appendicitis Decreased Over Time?
A Population-Based Analysis
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/286/14/1748


c0129546_754192.jpg

ピカソ「アルルカン姿のパウロ」
http://page18.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/w11371555

<追記>
腹痛一般に関して
●内蔵痛か体性痛か区別する。
●パンツを下げないと大腿ヘルニアによる腸閉塞を見逃す。
(私も若い女性で苦い経験があります)
循環器系の話題は
「葦の髄から循環器の世界をのぞく」 http://blog.m3.com/reed/
            でとりあげています。

他に
ふくろう医者の診察室      http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
                                  があります。
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by esnoopy | 2007-09-05 00:49 | 消化器科
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