皆さんもすでにご存知のことと思いますが、昨日の朝刊にかなり
衝撃的な医療関連記事が載っていました。 <前立腺がん>PSA集団検診、勧められない…厚労省研究班 血液を調べる前立腺がん検診の「PSA(前立腺特異抗原)検査」 について、厚生労働省の研究班(主任研究者、浜島ちさと・国立 がんセンター室長)は、市町村や職場での集団検診での実施を 「勧められない」とする指針案をまとめ、東京都内で10日開いた フォーラムで公表した。 「(検診を受けたことによる)死亡率減少効果の有無を判断する 証拠が不十分」だとしている。 厚労省によると、市町村の4割がPSA検査による集団検診を 実施しており、その実施に影響が出そうだ。 市町村や職場の集団検診は、無症状の健常者を対象に実施 される。 その有効性は、集団全体の死亡率が下がるかどうかで判定される が、PSA検査では、有効性に関する明確な根拠がなかった。 研究班は、PSA検査と、肛門から指を挿入して前立腺がんの有無 を調べる直腸診の有効性について、85〜06年に発表された国内外 の研究論文約1200本を評価。内容の確かな69本を採用し、 有効性や受診者に生じる不利益などを検討した。 その結果、両検査法はいずれも、死亡率減少効果の有無を判断 する根拠が不十分だと結論付けた。 希望する個人に実施する場合も、効果が不明なことや不利益について の説明が必要だとした。 これに対し、日本泌尿器科学会は、「PSA検査が普及した米国では 前立腺がんの死亡率が低下傾向にある」などとして厚労省研究班の 指針案に反発。学会独自の検診指針の作成を検討中だ。 <前立腺がん>PSA集団検診、勧められない…厚労省研究班 (毎日新聞9月10日22時2分配信 ) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070910-00000111-mai-soci (ニュース記事は今後アクセスできなくなるため全文を掲載させて いただきました。) 前立腺がん検診、泌尿器科学会が推奨する独自指針作成へ これに対し日本泌尿器科学会側は討論会終了後に記者会見を開き、 50歳以上の男性を対象に、検診でがんを見つける利益と不利益を十分に 説明したうえで希望者に検診を勧める独自の指針を作ることを明らかにした。 現時点で死亡率の減少を証明する信頼性の高い研究がないことを認める 一方で、検診を勧める根拠として、 <1>PSA検診の普及率が75%に上る米国で死亡率が3割低下した <2>検診受診者に進行がんが減ったことを示す報告が欧州にある ——などを挙げた。 同学会の内藤誠二・九州大教授(泌尿器科学)は「欧米で信頼性の高い 大規模研究が数年後にまとまる予定なのに、推奨しない指針を現時点 で示すことは、検診を実施する市町村の混乱を招く」と話している。 研究班は「がん検診の有効性を死亡率減少の研究論文で判断するのは、 国際的な標準」としており、PSA集団検診を「推奨しない」とする結論は 成案でも変更しない方針だ。 どちらも10月をめどに成案とする予定で、完成すれば、研究班と学会 による正反対の指針が並立する事態になる。 (読売新聞 2007年9月10日) http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070910i315.htm?from=navr (ニュース記事は今後アクセスできなくなるため掲載させていただきました。 一部省略) <コメント> 先日、厚労省と日医の関係については書きました。 ttp://wellfrog.exblog.jp/d2007-09-06 今回は厚労省と学会との関係が浮き彫りにされた感じです。 日本泌尿器科学会が完全にコケにされたのです。 日本ではプロがrespectされないとも書きました。 まさしく今回も好例です。 日本には古来根回しという美徳(?)がありました。 今の国のやることはすべて唐突です。 国会の強行採決出は一応議論がありますが、それさえもないのです。 そして方針が間違っていても誰も責任をとりません。役人はもちろん 「研究班」や「諮問委員会」の面々も。 医療の生態系を破壊した「卒後研修制度」 医療行為には医師免許証が必要です。 医療に大きな影響を及ぼす医療行政を取り仕切るには免許は要りません。 しかも医療のプロならびにその集団としての学会には何のコンサルトも ありません。 かくして医師の医療行政に対する不信感が増幅されm3ブログが栄える(?) ということになります。 浜島ちさと・国立がんセンター室長はいかなる人物で研究班の構成は どうなっているのか。 よしんば方針が正しいとしても厚労省のやり口は大いに問題があると 思います。 間違っていれば論外ですが。 颯田 靖 水彩画「南を想う」 http://page4.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d77756447 集団検診について http://www.takeda.co.jp/pharm/jap/seikatu/zg/b3/b3.html (米国では「年1回PSA検査を受けましょう」といった趣旨の記念切手も 発行され、国をあげて前立腺がんの早期発見に取り組んでいます。) PSAについて http://www.takeda.co.jp/pharm/jap/seikatu/zg/b3/b3.html 前立腺がん 多様な選択肢 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/jitsuryoku/0709/list02.htm 前立腺がんの早期発見に優れた検査法 50歳を過ぎたら年に一度はPSA検査を! http://www.zenritsusen.jp/psa_elearning/index.asp# (アストラゼネカのサイトです。イラスト音声入でPSA検査の重要性を啓蒙 しています。) 前立腺がんの解説 http://www.mc.pref.osaka.jp/kabetsu-shoukai/hinyouki/setsumei/zenritsusengansetsumei.htm 前立腺がんの基礎知識 http://www.pref.aichi.jp/cancer-center/200/210/several-cancers/iroiro-na-gan-13.html 「前立腺」怖がらないで http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/karadaessay/20070628-OYT8T00365.htm 米のPSA検診 役割終える http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/karadaessay/20060804ik0a.htm?from=goo 腫瘍マーカー「PSA」の錯覚 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/karadaessay/20060721ik06.htm?from=gooPSA検診 有効性に賛否 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/karadaessay/20070628-OYT8T00368.htm?from=goo (以上の4つは同じ先生が書かれています。) Most Asian Men Have Better Prostate Cancer Survival Rates http://www.healthday.com/Article.asp?AID=607251 (アジア人男性は前立腺癌(がん)の予後が良好。アジア系男性は白人に比べ 生存率が高いという。 しかし、南アジア系の男性は黒人や白人よりかえって生存率が低い。 さらに、アジア人男性は診断時の年齢が比較的高く、危険因子の面からみる とむしろ不利なはずなのに、生存率は高いことがわかった。) <コメント> 今回の方針は、「PSA」そのものが否定されたわけではなく、あくまでも 「PSA検診」の意義が否定されたということです。 冷静に対処すべきことかも知れません。 <番外コメント> 9月19日朝刊の記事には、また笑ってしまいました。 大学の学部教育の見直しを進めている中央教育審議会(文部科学省 の諮問機関)の小委員会は、学生の能力低下を防ぐため、卒業要件の 厳格化を柱とする報告書案をまとめた。 まさしく茶番。机上の空論。紙上兵を談ず。 畳の上の水練。砂上の楼閣。朝令暮改。 天井から目薬。焼け石に水。杯水車薪。泥棒を捕らえてから縄を綯う(なう)。 渇に臨みて井を穿つ。難に臨んで兵を鋳る。兎を見て犬を顧みる。 亡羊補牢。 諺の勉強が出来ました。 天下国家百年の計はいずこへ。 The Prostate-Specific Antigen (PSA) Test: Questions and Answers http://www.cancer.gov/cancertopics/factsheet/Detection/PSA (H19.9.25に追加しました。) 循環器専門医には 「葦の髄から循環器の世界をのぞく」 http://blog.m3.com/reed/ 一般の方または患者さんには ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy があります
by esnoopy
| 2007-09-12 00:05
| その他
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