NASHの鑑別・確定診断

日本医事新報4339 2007.6.23よりNASHの紹介です。

NASHの鑑別・確定診断     
鹿大 坪内博仁 先生

1. 肝生検をせずに診断は可能か。
脂肪肝の存在は、腹部超音波検査やCT検査により推定できるが、
NASHの確定診断には肝生検が必須である。
したがって、肝生検をせずにNASHと診断することはできない。
その理由は、NASHは組織学的に肝脂肪化に加えて、肝細胞のバルーニングや線維化を伴っていることが必要であるからである。
血液生化学検査に異常のある脂肪肝では、肝生検を施行することが望ましい。

2. 線維化マーカーを用いることにより、NASHと通常の脂肪肝を鑑別できるか。

線維化マーカーであるⅣ型コラーゲン7Sとヒアルロン酸はNASHでは通常の脂肪肝と比較し、有意に高値を呈する。
また、Ⅳ型コラーゲン7Sが5.0ng/ml以上、ヒアルロン酸が43ng/ml以上では、NASHの可能性が高いことも報告されている。
さらに、これらのマーカーはNASHにおける肝線維化の程度と相関する。
したがって、線維化マーカーを用いることにより、NASHの可能性を推定できるが、やはり正確には鑑別できない。
特に線維化が軽度のNASHでは、鑑別はより困難となる。

3. NASHとインスリン抵抗性との関連は。

インスリン抵抗性は肥満が原因で起こることが多く、肝への中性脂肪蓄積を促進する。
インスリン抵抗性はNASHの最も重要な病態である。
インスリン抵抗性を簡便に判断するHOMA-IR
〔空腹時血糖(mg/dl)×空腹時インスリン値( U/ml)/405)〕は、正常者と比較しNASHでは高値を示す。
明確なカットオフ値はないが、HOMA1IRが3.0以上の場合はインスリン抵抗性の存在が疑われる。
また、単純な脂肪肝からNASHへの進展にインスリン抵抗性は促進的に作用すると考えられている。
しかし、単純な脂肪肝とNASHとの比較で、インスリン抵抗性に差があるかは報告者により意見が分かれる。

4. 例従来、アルコール性肝障害と診断されてきた病理所見を持つ症例で、アルコール摂取のないものをNASHと考えてよいか。

NASHの組織所見はアルコール性肝障害と類似し、両者の鑑別は病理組織所見のみからは困難であるといわれている。
アルコール性肝障害と診断されてきた病理所見を持つ症例で、アルコール摂取歴がなく、ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎など他の病因が否定されればNASHと考えてよい。

5. 肥満をベースとした脂肪肝の症例は多数存在するが、その中か
らNASH症例をいかにしてみつければよいか。


肥満はBMIで判定され、〔体重(kg)/身長(m)2〕で計算し、これが25以上は肥満と定義される。
肥満には内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満があり、前者で脂肪肝患者が多いといわれている。
そのような脂肪肝患者からNASH症例をみつけるには、厳密には肝生検が必須であることは先に述べた通りであるが、血液生化学検査である程度NASHが予想できる。
まず、画像的に脂肪肝を認め、アルコール摂取量が20g/日以下、ALTのほうがASTよりも高値の肝障害が6カ月以上継続、肝炎ウイルスマーカーや自己抗体が陰性、先天性代謝性肝疾患が否定的であれば、NASHを疑う。
特に、血小板数が低下し、肝線維化マーカーが異常高値であれば、NASHが強く疑われる。
また、生活習慣病(高血圧、高脂血症、耐糖能異常)やインスリン抵抗性の存在は、NASHの発症や進展に促進的に作用するため、脂肪肝の患者でこのような合併症があれば、NASHの可能性が高い。

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内田正泰 古里の海 木版画
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by esnoopy | 2007-11-06 00:05 | 消化器科
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