小腸用カプセル内視鏡

m3のネタで恐縮です。
Nikkei Medical2008.1の「”見えてきた”小腸疾患」の記事も含めて勉強してみました。


小腸用カプセル内視鏡 暗黒の臓器「小腸」が見える
カプセル内視鏡承認のインパクト 小腸疾患への関心高まる
出血源不明消化管出血の診断を可能とする小腸用カプセル内視鏡が(昨年)10月から保険適用となった。
これにより、これまで暗黒の臓器といわれていた小腸の全域を容易に見ることができるようになる。
適応患者は、大きめのビタミン剤サイズのカプセルを飲み込むだけという低侵襲性も大きな特長で、小腸疾患の診断治療への貢献が期待されている。

保険償還価格は7万7200円
薬事承認された小腸用カプセル内視鏡「ギブン画像診断システム」(以下、カプセル内視鏡)は、イスラエルで開発され、2000年にネイチャー誌で紹介された。
翌2001年には米国で販売され、2003年には日本でも独協医科大のグループを中心に治験が開始されていた。
それが07年4月になって、ようやく薬事承認を受け、5月から販売開始されている。

保険収載はこの10月で、カプセル(PillCam SB)の保険償還価格は7万7200円、技術料は1700点となった。

カプセル内視鏡の特長は、
①従来の内視鏡では観察することが困難だった小腸の全域について直接視覚化できる
②麻酔などの前処置やバリウムなどの造影剤なしに26×11mm大のカプセル型カメラを飲み込むだけで検査が可能で、患者への負担が極めて少ない
③約8時間の検査期間中、患者は通常の生活を送ることができ、肉体的負担が少ない
④高い病変検出率(出血継続症例では92.3%)
などが挙げられる。

カプセル内視鏡は嚥下後、毎秒2枚の画像を撮り、約8時間で約5万5000画像を撮像できる。同システムを扱うギブン・イメージングによれば、現在までに60カ国以上の60万人以上に使用されている。

カプセル内視鏡の適応は、原因不明の消化管出血で、欧米では上部・下部消化管内視鏡で出血原因が不明の場合に実施される。
しかし、日本では上部・下部消化管検査で出血原因が不明な場合、つまり胃透視検査や注腸検査で原因が特定できない場合に、カプセル内視鏡検査を実施できる(日本ではクローン病は適応外)。

承認治験を行った独協医科大消化器内視鏡センター長の中村哲也教授は、「従来、消化管内視鏡学の分野では胃がんや大腸がん、食道がんなどが主な研究対象だったが。
しかし、ダブルバルーン小腸内視鏡やカプセル内視鏡の登場で、小腸疾患への関心が一気に高まり、学会報告が顕著に増えている」と話す。

5月に都内で開かれた日本内視鏡学会では、前月に薬事承認を受けたばかりのカプセル内視鏡のセッションに、多くの参加者が詰めかけた。

中村教授はさらに「原因不明の貧血や下血がある患者にとって、早い段階で疾患が発見され、治療が受けられるようになった」と強調する。

小腸の視覚的検査は、カプセル内視鏡に先行したダブルバルーン小腸内視鏡でも実施されている。
しかし、これらの検査法がなかった03年秋頃までは、出血シンチグラフィー検査で小腸出血を確認した後に試験開腹を行い、術中内視鏡により病変を探していた。
それでも、病変を発見できずに閉腹することもあったという。

軽い消化管出血の患者に対しては鉄剤が投与されるが、長期投与により肝臓に鉄が沈着しヘモジデローシスを起こし、肝硬変になることもある。
そのような患者の早期発見にもつながる。

原因不明消化管出血のうち、小腸の出血は「恐らく5%前後だろう」と中村教授は言う。
中村教授らの研究では、カプセル内視鏡で確定診断になった症例(70例)のうち、潰瘍・びらんが34.3%と最も多く、血管性病変25.7%、腫瘍性病変17.1%、クローン病10.0%、小腸外病変8.6%、ベーチェット病2.9%、その他2.9%という結果だった。

プライマリケアでは
①明らかな消化管出血・下血
②貧血の持続
③便潜血が陽性でやや貧血
といった患者について、胃カメラや大腸内視鏡を最初に行い、異常がなかった場合にはカプセル内視鏡検査を勧めるべきだろうと中村教授は話す。

カプセル内視鏡とダブルバルーンで小腸疾患の解明進む
ただし、カプセル内視鏡の画像読影だけでは、確定診断になるものとならないものがある。
形態だけで診断できる良性ポリープなどは確定診断ができるが、組織所見が必要な腫瘍などは推定の範囲にとどまる。

潰瘍については、NSAIDsが原因の医原性潰瘍の場合は、NSAIDs休薬後に再検査が必要だ。
血管性病変についても形態的な診断は可能だが、出血の原因かどうかを判断するには、「ダブルバルーン小腸内視鏡による治療で出血が止まるか」あるいは「ダブルバルーン小腸内視鏡で採取した組織を確認する」必要がある。

ダブルバルーン小腸内視鏡は、検査と同時に治療を行えることが最大の強みだが、まれに穿孔や感染性炎症などの合併症が生じることがある。

症例にもよるが、読影に要する時間はカプセル内視鏡では、出血や病変が1カ所の場合、症例当たり20~30分でできる。
診断支援ソフトによって約8時間の画像を約45秒~約3分に短縮して見てることで大まかな見当を付けられるためだ。

一方のダブルバルーン小腸内視鏡は多くの場合、医師2名、看護師2名、放射線技師1名で行われ、検査およびその前後を合わせて約2時間かかる。

カプセル内視鏡は、鎮静剤や送気が不要であることもメリットだ。
ダブルバルーン小腸内視鏡の場合、送気の圧力によって、一時的に出血が止まり出血源を見逃すこともあるからだ。

スクリーニング効果の高いカプセル内視鏡と治療まで可能なダブルバルーン小腸内視鏡によって、小腸疾患の検査・診断技術は格段に向上した。
出血病変の検出には両者の併用が有用だとする報告もある。
「今後の課題は治療薬開発だ」(中村教授)。


小腸用カプセル内視鏡
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200712/special2.html
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<参考>   Nikkei Medical 2008.1 より。
*小腸は内視鏡の挿入が困難なため”暗黒大陸”とまで呼ばれていた。
*ダブルバルーン内視鏡; 2003年にフジノン東芝ESシステムが発売
*シングルバルーン内視鏡; 2007年6月にオリンパスが発売
*消化管出血の30~50%が上部および下部内視鏡で出血源を判定できない。
  消化管出血全体の5%程度が小腸からの出血。(Gastroenterology 200;118:201-
221)
このデータは小腸内視鏡が開発される前のもの。小腸出血は実際にはもっと多い。
*出血源が不明だった135例中70例でカプセル内視鏡などで小腸病変を確認したというデ
ータもある。
*クローン病は狭窄を引き起こしやすく、滞留の可能性があるカプセル内視鏡は禁忌になって
いる。
*小腸の腫瘍性病変は良性が大半。
*稀に、原発性小腸癌、消化管間葉系腫瘍(GIST)や悪性リンパ腫などが報告されている。
*小腸は壁が薄く、出血や穿孔など、内視鏡挿入による合併症のリスクは高いと予測される。
*小腸のNSAIDS潰瘍についての治療薬については議論がある。


<コメント1>
随分昔のことです。
研修医時代にメッケル憩室の症例を、部長先生に言われるまま学会発表しました。
小腸二重造影の写真を提示しましたが、発表している自分自身もよく納得できなかったことを思い出します。
<コメント2>
便潜血反応陽性例で胃と大腸のチェックをして異常のない症例によく遭遇します。
仕方がないので便潜血の再検と、血液検査で貧血の出現や進行がみられないかを定期チェックすることになります。
案外歯肉出血や痔が原因だったりするのかも知れませんが。
<コメント3>
数多くの画像をチェックするのは大変なことと思われます。
<コメント4>
免疫学的測定法は「上部消化管(胃、十二指腸など)に出血がある場合、胃酸や消化液のどの影響によりヘモグロビンが変性し、陽性と出にくい」ということになっていますが、空回腸の出血の場合、化学的測定法とどちらが感度、特異度が高いのでしょうか。
一般的に上部消化管は、食道・胃・十二指腸、下部消化管は大腸ということで、今まで小腸は恣意的に、診断からはずされていた感は否めません。

便潜血検査について
http://www.toshiba.co.jp/hospital/culture/014.htm


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-01-18 00:05 | 消化器科
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