胃がんの腹腔鏡下手術

王監督も受けた高度な手術。
患者の負担が軽く回復も早い。


減る傾向にあるといわれながら、年間1万人が新たに患者になっている胃がん。
発見が早ければ口から入れた内視鏡で切除できるが、それが無理なら手術が
検討される。
手術といえばお腹を20センチも開ける開腹手術が一般的だったが、ソフトバンク・
王貞治監督の手術で注目された腹腔鏡下手術も徐々に普及している。

もともと診断用具であった腹腔鏡が手術に初めて用いられたのは1990年。
胆石による胆嚢摘出に際してだが、翌年には慶應大学外科の故大上正裕医師が
世界に先駆けて胃切除に導入。
以来、20年近い歴史があり、先端を行く医師たちは高度な技術を駆使して優れた
手術を行っている。

「腹腔鏡下手術は、腹部に4~5カ所開けた切開口(穴)から手術用具を挿入し、
これを駆使して行う手術です。
一つの穴から入れた内視鏡を通して内部をモニターに映し出し、別の切開口から
挿入した特殊なメスで、がんのできている胃壁の部分または胃全体を切除し、
転移が想定されるリンパ節もはがしとります」
と手法を説くのは、王監督の手術を執刀した藤田保健衛生大学病院消化器外科の
宇山一朗教授。
食道と胃の上部消化管を専門とし、胃がんの腹腔鏡下手術だけで既に600例ほどを
実施。
上部消化管に対する鏡視下手術の国際的権威だ。

「当院の胃がん手術件数は年間約180例で、うち開腹手術は20例前後、残りが
腹腔鏡下手術です。
ガイドラインでは、その対象を早期がんと一部の進行がんと規定していますが、
腹腔鏡下手術で取りきれないものは開腹しても取れない。
そういう場合こそ軽負担に意味があるでしょう。
術前に化学療法を行って効果を確認した後で腹腔鏡下手術にかかるなど、個別に
判断して治療方針を立てています」

近県からの患者が中心だが、進行胃がんにも対処することを知った患者が遠方からも
やってくるという。

患者にとってのこの手術の利点は、身体負担が軽く、早期回復が望めること。
手術所要時間は通常3~6時間かかるが(開腹手術の1.5倍ほど)、翌日には自力歩行
が可能だ。

「医師にとっては内視鏡を用いるので肉眼では見えない鮮明な拡大視が得られることが
利点。
確実性の高い切除には欠かせない特徴です。
他分野の医師の声として、遠隔操作ゆえに執刀医の触感が鈍るという懸念もありますが、
経験を積むことで触感も磨かれます」

また、腹腔鏡下手術に適さないのは、がんが大きすぎる場合や重い心臓病などがある人。
この手法では、手術を容易にするため腹腔内にガスを注入して膨らませるので、心臓に
負担がかかるからだ。

使い捨て器具類が多く、病院側の出費がかさむのも欠点だろう。
消耗機器類代の十分な上乗せも医師の技術料もない一方、診療点数は胃がん手術
として一律に設定されているのだ。

なお、胃全摘をした後は、10キロ前後体重が落ちてなかなか戻らず、このことが患者
を再発の不安に陥らせたりするという。

「ものは考えようで、術後は肥満や生活習慣病が遠のきます。
特に男性は肥満と無縁の体形の人でも、内臓脂肪を溜め込んでいますが、これも
軽減します」

この手術の執刀医選びだが、身近な施設で受けたいという考えは時に、医者余りと
それゆえの熟練不足をもたらす。
未熟な手術を避ける意味からも、症例数の多い執刀医に患者を集中させるエ夫が
必要だろう。

週刊文春 2008.1.17
版権 文芸春秋社

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http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t60928971

腹腔鏡下胃がん・大腸がん手術ってどんな手術?
http://www.toyota-kai.or.jp/information/front/08.html

腹腔鏡下手術について
http://www.city.tsugaru.aomori.jp/seijinbyou/abdominal_cavity.html
腹腔鏡による胃がん・大腸がん手術について
従来行われてきた開腹による胃がんや大腸がん手術は、現在も広く一般的に
行われております。
しかしながらこれらの方法では、おなかに約25から30cm にわたる皮膚切開が
必要で、手術は成功しても腸閉塞症などの術後後遺症で苦しむ人も少なくありません。
そこで最近では、胆石症の手術などに使われる腹腔鏡を用いた手術が胃がんや
大腸がん手術にも応用され、より小さい傷口で手術が可能になりました。
この様な新しい治療により次のような利点がもたらされると期待されています。
(1)術後の腸の動きの回復が早く、早期に食事が摂れる。
(2)痛みが少ないため翌日から歩行可能である。そのため肺炎などの合併症が少ない。
(3)手術中の出血量が少ない。
(4)傷口が小さいため術後の腸閉塞(イレウス)などの発生頻度が少ない。
(5)体への負担が少なく、手術後の回復が早く、入院期間が短くて済む。

早期胃癌だが手術が必要と言われた方へ
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/surgery2/laparo_m/1_top.html

腹腔鏡胃がん手術
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/surg2/www/cancer/i/souki/index.html

早期胃癌に対する腹腔鏡下手術(1)
http://www.nagahama.jrc.or.jp/sinryouka/geka/laparo4.htm

胃がん 回復早い腹腔鏡手術
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/jitsuryoku/20060807ik09.htm

治療:腹腔鏡下胃切除術
http://www.onaka-kenko.com/earlydetection/digestive-organ/stomach-cancer/sc_043.html

胃癌に対する腹腔鏡補助下手術
http://www.academic-surgery.jp/clinic_02_01_06.html

胃がんに対する鏡視下手術の成績と実績
http://www.city-hosp.naka.hiroshima.jp/k-net/k08/8-01-1.pdf

腹腔鏡下胃癌・大腸癌手術に対するマルチスライスCTによる手術支援
http://www.jsrtkinki.jp/bukai/item/df214aeb0f/78.pdf

腹腔鏡下胃切除
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/stomach/treatment_05.html
2004年版の胃がん治療ガイドラインでは、胃がんの腹腔鏡手術はステージIの胃がんへの臨床研究として行うべき治療として位置づけられています。

当科で行っている腹腔鏡下胃手術と臨床試験
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/surgery2/laparo_m/5_bunsho.html

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-01-28 00:05 | 消化器科
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