横紋筋融解症・診断基準

スタチン投与中のCK上昇はしばしば経験するところです。
β遮断剤の中でもISAのあるタイプではCK上昇も有名な副作用でした。
CK上昇イコール横紋筋融解症ではもちろんありませんが、この横紋筋融解症も意外と定義ははっきりしていないようです。
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CK基準値上限の10倍以上とミオグロビン尿を診断基準として提案

近年,薬剤の重大な副作用として横紋筋融解症が注目されているが,報告例間で検査値などに大きなばらつきが見られている。
笠岡第一病院(岡山県)内科の原田和博氏は,

①クレアチンキナーゼ(CK)基準値上限の10倍以上
②ミオグロビン尿を認める

との診断基準を提案した。

半数がCK値10倍未満で診断
原田氏は「横紋筋融解症は場合によっては薬剤の生命にもかかわりうる重大な名称であり,どのレベルでこの有害事象名を付けるかが問題になる」と指摘。
厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」では,横紋筋融解症の項に具体的な診断基準や検査値についての記載はない。
一方,米国心臓病学会/米国心臓協会/米国立心肺血液研究所の「スタチンによる筋障害の定義」によると,横紋筋融解症はCK標準値上限の10倍以上ならびにクレアチニン上昇を伴う筋肉の症状で,通常,褐色尿と尿ミオグロビンを伴うとされている。

同氏は,製薬会社に報告された筋肉関連有害事象65例について検討。
うち33例(51%)が横紋筋融解症だったが,血清CK値が基準値上限の10倍以上を示したのは17例(52%)で,5~10倍未満6例(18%),5倍未満と記載なしが各5例(15%)。ミオグロビン尿または尿潜血陽性を示したのは33例中13例(39%)にとどまった。
その一方で,「血清CK値上昇」との有害事象名で報告された11例中4例(35%)は同値が基準値上限の110倍以上であった。
同氏は「『横紋筋融解症』と「血中CK上昇」における血清CK値は実際には違いはほとんどなく,横紋筋融解症と報告された症例には重篤度で大きなばらつきがあった」と述べた。

続いて,臨床試験の担当医(医師)23人と製薬会社222社の安全管理担当者を対象としたアンケートの結果を紹介。
横紋筋融解症の診断に際して血清CK値は基準値上限の10倍以上は医師で37%,製薬会社で56%,同21倍以上がそれぞれ21%,11%,値は基準に入れていないが37%,22%,ミオグロビン尿を診断基準に入れているのは医師で68%,製薬会社で22%,ミオグロビン尿の確認がなくても褐色尿または尿潜血陽性で代用しうるのはそれぞれ16%,56%,筋肉症状(脱力,筋肉痛など)を診断基準に入れているのは65%,78%,腎機能障害を診断基準に入れているのは37%,44%であった。

以上の調査結果や文献などの検討を踏まえて,同氏は横紋筋融解症の診断基準を

①CK基準値上昇の10倍以上
②ミオグロビン尿を認める。
検査していない場合,尿潜血陽性や褐色尿があったり血清クレアチニン値の上昇があれば同義とみなす

とし,筋肉症状や腎障害は参考基準にとどめることを提案。
また同氏は,横紋筋融解症に至らないレベルの有害事象は,具体的な筋肉症状や検査値異常をそのまま記すのが現実的との考えを示したうえで,『これを機会に横紋筋融解症の具体的診断基準が設定される動きになればと思う」と締めくくった。

Medical Tribune 2008.1.24
版権 (株)メディカル・トリビューン


[2005年2月3日 (VOL.38 NO.5) p.53]
横紋筋融解症
スタチン単剤ではリスクは低い

〔ニューヨーク〕 米食品医薬品局(FDA)のDavid J. Graham博士らは「アトルバスタチン,プラバスタチン,シンバスタチンなどのスタチン系抗高脂血症薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が横紋筋融解症を引き起こすリスクは比較的低いが,スタチン・フィブラート系薬併用療法中の高齢糖尿病患者ではそのリスクが上昇し,cerivastatin・フィブラート系薬の併用では年間10例につき約 1 例という過度の高リスクが生じる」とJAMA(2004; 292: 2585-2590)に発表した。
主要 3 剤のリスクは低い
今回の調査では,全米11の健康保険制度に登録された患者のうち,スタチン単剤療法とスタチン・フィブラート系薬併用療法を受けた25万2,460例のデータが解析された。著者の一部にFDA職員もいたが,調査実施に当たり「FDAからの指示や干渉はなかった」と記している。
Graham博士らは「スタチン療法を受ける患者が今後数年間で大幅に増加する可能性を考えて今回の調査を行ったが,処方頻度の高いスタチン系薬 3 剤による横紋筋融解症のリスクは比較的低いことが再確認された」と結論している。
しかし調査では,医師は一部の患者に対して横紋筋融解症のリスクに関する特別な指示を与えるべきであることも明らかにされている。コレステロール値とトリグリセライド値が上昇した糖尿病患者らにスタチン・フィブラート系薬併用療法を行う場合,リスクが上昇するため,横紋筋融解症と思われる症状が出現したら服薬を中止して検査を受けるよう患者に指示しておく必要がある。
併用でリスク5.5倍に
1998年初頭から2001年半ばまでにスタチン療法を受けた25万2,460例中24例が横紋筋融解症のため入院した。全例とも添付文書に示された推奨用量の範囲内でスタチンを投与されていた。アトルバスタチン,プラバスタチン,シンバスタチンによる横紋筋融解症の発症率は同等であった。スタチン単剤療法を受けた患者では,同症の発症率は年間 2 万2,727例に 1 例であったが,スタチン・フィブラート系薬併用療法を受けた65歳以上の高齢糖尿病患者では,484例に 1 例となっていた。スタチン単剤療法による同症発症率は 1 万患者年当たり平均0.44例,フィブラート系薬単剤療法では2.82例であった。
横紋筋融解症のため入院した24例(平均年齢64.6歳)のうち,13例はスタチン単剤療法,3 例はgemfibrozil併用療法,8 例はスタチン・フィブラート系薬併用療法を受けていた。23例には入院前に筋痛または筋力低下の症状が出現し,入院前の症状持続期間は平均6.9日(うち 1 例は30日)であった。18例は重度の横紋筋融解症を発症した。
スタチン単剤療法を受けた患者では,発症までのアトルバスタチンまたはシンバスタチンの平均投与期間が348日(21~1,050日の範囲)で, gemfibrozil併用療法では77日(21~179日),スタチン・フィブラート系薬併用療法では32日(18~78日)であった。スタチン・フィブラート系薬併用療法のリスクは,スタチン単剤療法の5.5倍,フィブラート系薬単剤療法の 2 倍となっていた。
FDAに提出された症例報告としては,これまでに 2 件の独立した解析が行われており,横紋筋融解症の報告数はアトルバスタチンまたはプラバスタチンよりもシンバスタチンとcerivastatinで多いとされていた。これはテキサス大学(テキサス州オースティン)のM. A. Omar博士らによる所見(Annals of Pharmacotherapy 2002; 36: 288-295)で,今回の所見とは異なっている。
Graham博士らは,ランダム化比較試験におけるミオパシーの発生率を0.1~0.5%と推定している。血清クレアチンキナーゼ濃度が正常上限値の10 倍を上回る場合,ミオパシーと定義する。スタチン系薬剤は,横紋筋融解症のほかにも無症候性のクレアチンキナーゼ上昇などの筋障害を引き起こすことがある。安全上の問題のため,cerivastatinは米国市場から回収された。
実際のリスクはさらに高い
一方,ユトレヒト大学(オランダ・ユトレヒト)のRonald H. B. Meyboom博士と世界保健機関(WHO)国際医薬品モニタリングセンター(スウェーデン・ウプサラ)のRalph Edwards博士は「WHO国際医薬品モニタリングプログラムでは,現在までに各種スタチン(他剤併用も含む)の使用中に致命的な横紋筋融解症,ミオパシー,またはその両方を生じた症例を338例把握している」と Lancet(2004; 364: 1997-1999)に発表している。このデータベースには,市場から回収されたスタチンに関連する所見が含まれていることに当然注意すべきであろう。
同博士らは,この統計データに関して「スタチン系薬剤は,使用者が多いことや,心筋梗塞・脳卒中の予防による救命率の高さと比較すると,この数字は小さなものと言える。しかし,このデータはスタチン使用にはある程度のリスクが伴うことを示しており,医薬品の副作用が疑われても報告されないケースも非常に多いため,さらにリスクは高いと考えられる」と述べている。

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横紋筋融解症をどのように診断するか
中谷 鈴木先生はミオパシーと横紋筋融解症の診断をどのように区別されていますか。
鈴木 まず筋肉痛とCK(CPK)を診ることになりますが,激しい運動をした場合には,当然,筋肉痛は出ますし,CPKが2,000~ 3,000 IU/Lまで上昇することも珍しくありません。ですから,横紋筋融解症の目安としては,このような筋肉痛が持続して徐々に増悪するかどうか,さらに必ず尿の色にも注意しています。また,他の薬剤を服用していないかどうかも重要です。
 実際に私が経験した横紋筋融解症は,3例とも尿の色で気付きました。筋肉痛を訴える患者さんの尿を調べるとオレンジ色を呈しており,ミオグロビン尿の可能性が高いと考え,採血を行ったところ,すでにCPKが4,000~5,000IU/Lまで上昇していたことから,すぐに入院させ,血漿交換や大量補液などの治療を行いました。
中谷 確かにミオパシーでも筋肉痛とCPKの上昇は起こりますので,横紋筋融解症と診断するには構造蛋白であるミオグロビンの上昇が重要で,尿の色は一つのポイントでしょう。
木下 症状がどう伴うかは非常に重要な問題ですが,ミオパシーなのか横紋筋融解症なのかは判断が難しい場合があります。横紋筋融解症だった場合は,薬をやめるタイミングを逃してしまうと,重篤な症状に陥る可能性もあるので,怪しいと思ったらスタチンを一度中止するという選択も必要かと思います。
 逆に申しますと,高脂血症治療薬をしばらく休薬したことで,著しいデメリットを引き起こすような事態にはなりにくいという判断を,一般の先生方には持っていただきたいと思います。
石神 私の経験でも,筋肉痛とCPKは必ずしも相関が認められません。ですから,筋肉痛などがあって日常生活に悪影響を及ぼす時は,CPK が正常であっても,やはり一旦スタチンを中止します。ただ,せっかくコレステロールを良好にコントロールしている時に,多少 CPKが上昇したからと,すぐにスタチン投与を止めてしまうことも問題です。私自身はCPKが2倍以上に上昇した場合に中止を考慮するようにしています。
中谷 最近,厚生労働省では,スタチンを投与している人に筋肉痛がある場合には,すぐに主治医に相談するように注意を喚起していますが,患者さんの判断で,筋肉痛があるからといってすぐに服用を止めてしまう場合もあるので,その点は注意が必要ですね。
石神 やはり患者さんにコレステロールを下げる意味を十分説明することと,最低1カ月に1回は受診していただくようにすることが,いちばん大切だと思います。

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by esnoopy | 2008-01-29 00:05 | 循環器科
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