腸・第2の脳 その2(2/2)

昨日の続きです。

これからの時代の炎症性腸疾患診療に求められるもの

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
消化・代謝内科/消化器内科  
渡辺 守 教 授

脳と深く関係する
腸の組織としての重要性はそれに止まらない。
腸に関係した「腹が立つ」「腹が煮えくりかえる」という言葉があるが,例えば,精神的にイライラしたり,緊張すると,トイレに行きたくなる人もいる。
この事実は,腸が腸だけで働いているのではなく、脳との深い関係があることを意味している。
それどころか,最近の研究では,首から下の神経の
約50%を腸が持っているという,ヒトの体の中で最大の末梢神経組織であるといったことまでがわかってきた。

また,うつ病などの薬の標的になっているセロトニンは,現在,最も注目されている脳内物質で,このセロトニン関係物質が脳の代謝に関わっていることはよく知られているが,生体内のセロトニンの90%以上は脳ではなく腸にあることがわかっている。
もちろん,活性は脳に存在するものが大部分を占めるものの,セロトニン量としては脳には5%程度しかないのである。
したがって,セロトニン関係の物質が脳 - 腸の働きの問題と密接に関わっていると考えられる。

上記以外にも腸管自体のホルモンがかなり明らかになってきている。
例えば,グレリンという満腹ホルモンが胃から分泌されることが証明され,その他にも腸から分泌されるホルモンの多くが脳の中に存在するということがわかっ
てきた。
したがって腸にはヒトの体中で最大の内分泌系・ホルモン組織ともいえるのである。

さらに,腸にはヒトの生体内の微小な血管の約55%が存在し,最大の末梢血管系組織でもあることがわかっている。(図4)。

c0129546_132554.jpg


非常に高い再生能力を有する
腸の上皮は機能維持のためヒト生体内において最も短いサイクルで細胞を更新し続けている。
腸陰窩底部に幹細胞が存在し,絶えず長軸方向に分化・増殖して,数日単位で絨毛先端から脱落するとされ,生体内でも最もターンオーバーが早い組織である。
したがって,消化管上皮は最も再生能力の高い組織の1つであると認識されるが,重篤な放射線腸炎や難治性炎症性腸疾患でその粘膜上皮の修復が傷害きれる場合,生体にとって大きな問題となる。
難治性クローン病における再発性潰瘍はそのよい例である。
また,再生のオーバーシュートは発癌に結びつくのではないかと指摘されており,潰瘍性大腸炎における炎症を母地とした癌化にはその可能性がある(図5)。
c0129546_1325385.jpg

 
最近になって腸はその特殊性が解明され,今や単なる管,ではなく”第2の脳”と呼ばれるほど,また脳も腸を守るために発達してきたことから「腸は脳より複雑な組織であるはず」という研究者もいるほど,腸は複雑で重要な組織であることが明らかになったのである.
 

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2008-01-31 08:12 | 消化器科
<< 特定健診・保健指導制度 腸・第2の脳 その1(1/2) >>