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インスリン放出調節に新たな機序

2型糖尿病に広く用いられているスルフォニル尿素(SU)薬の多くが,当初有効であったにもかかわらず,長期間の連用によって減弱または消失する、いわゆる二次無効をしばしば経験します。
処方する側としては、患者さんの不摂生に原因を求めがちです。
最近といっても数年経ちますが、速効型インスリン分泌促進剤と称する経口糖尿病剤が使用されています。はたして二次無効はないのでしょうか。
分泌刺激による膵そのものの疲弊の懸念を考えると悩みながらの処方となります。
発売当初のパンフでも1年後のデータはあまりなかったように記憶しています。

以下の発表がピカ新の経口糖尿病薬の開発につながることを期待するばかりです。

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〔スウェーデン・ストックホルム〕 カロリンスカ研究所(ストックホルム)糖尿病・内分泌研究Rolf LuftセンターのPer-Olof Berggren教授らは,膵β細胞からのインスリン放出を調節する新たな機序をScience(2007; 318: 1299-1302)に発表した。
この知見は糖尿病とその合併症治療にとって重要な意義を有する可能性がある。

新薬開発にも希望
糖尿病は最も一般的な慢性疾患で,患者に著しい苦痛を与えるだけでなく,社会的コストもきわめて高い。
Berggren教授らは,膵β細胞がインスリンを血中に放出する際の新たな調節機序を見出した。

今回新たに発見された機序には,InsP7と呼ばれる分子が関与している。
InsP7は,細胞の機能に重要な役割を果たす化学物質リン酸化イノシトールファミリーに属する。
同教授らは,InsP7がインスリンの放出を調節する重要なシグナル伝達物質であることを見出した。
「この発見により,新たな糖尿病治療薬を開発する希望が持てるようになった」と期待している。

同教授らは,膵β細胞でInsP7の合成を調節する遺伝子が,2 型糖尿病の先天性疾患素因がある日本人家族で変異している可能性に注目してきた。
この遺伝子を欠損しているマウスでは,ヒトの糖尿病と関連する障害が多く認められる。

同教授は「膵β細胞で同定したシグナル伝達経路は,糖尿病を理解し治療しようとするわれわれの試みにとって戦略上きわめて重要である」と述べている。

TOPICS FROM EUROPE
インスリン放出調節に新たな機序
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4104072&year=2008
Medical Tribune 2008.1.24
版権 メディカル・トリビューン社


<参考>
InsP7とインシュリンの放出(InsP7 and Insulin Release)
イノシトール1,4,5-三リン酸は、細胞のシグナル伝達における良く知られた二次メッセンジャーである。
この分子の更に高度にリン酸化された形態であるイノシトール・ピロリン酸もまた、細胞調節に機能している。
Illiesたちはこのたび、マウスの膵臓細胞からのインシュリンの完全な開口分泌放出にとって、InsP7(二リン酸イノシトール 五リン酸;diphosphoinositol pentakisphosphate) が必要であるということを示している。
InsP7を産生するキナーゼが欠乏すると開口分泌が抑制され、一方このキナーゼが過剰発現するとインシュリンの開口分泌が刺激される。
膵臓細胞は代謝の要求に応答してのインシュリン放出を確実なものにするために、多くのInsP7を維持している可能性がある。
Requirement of Inositol Pyrophosphates for Full Exocytotic Capacity in Pancreatic β Cells
http://www.ricoh.co.jp/abs_club/Science/Science-2007-1123.html


New mechanism of insulin release discovered
http://ki.se/ki/jsp/polopoly.jsp?l=en&d=2637&a=44439&newsdep=2637
(今回の研究に関連した論文です)
by esnoopy | 2008-02-06 01:35 | 糖尿病
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