体重と全死因死亡率

まずは肥満と過体重の違いを理解することから始まります。
「ちょいデブ」はやはり悪くはなかったようです


やや過体重のほうが好結果 全死因死亡率の有意な低下に関連

〔ニューヨーク〕最も理想的な体重とはどのくらいなのか。
米国立保健統計センター(NCHS)のKatherine M. Flegal博士らは国民保健栄養調査の大規模データを用いた研究から,過体重は糖尿病と腎疾患の組み合わせによる死亡率の有意な増加に関連するとはいえ,がんまたは心血管疾患(CVD)による死亡率とは関連しなかったとJAMA(2007; 298: 2028-2037)に発表した。

適正体重が最良ではない
 Flegal博士らは,肥満ではない過体重の人について「最終結果として,過体重は全体的に全死因の死亡率の有意な低下に関連した。低体重と肥満はいずれも死亡率に負の影響を及ぼすことが判明した」と結論している。
 肥満ではない過体重の人は,アルツハイマー病,パーキンソン病,感染症,肺疾患などを含めた一連の疾患による死亡の可能性が低かった。
 この発見に対して専門家は,理想体重をどのようにして決めればよいかと問うだろう。
カリフォルニア大学サンディエゴ校(カリフォルニア州ラホヤ)家庭・予防医学のElizabeth Barrett-Connor教授は New York Times の記事で,「私はこのデータを信頼する。過体重範囲のbody mass index(BMI)25〜30がおそらく最適だろう」と述べている。
 また,フロリダ州立大学(フロリダ州タラハシー)統計学のDaniel McGee教授は同紙で「死亡率という基準を用いるのであれば,過体重(over-weight)という表現は誤りと言える」と指摘している。
一方,ハーバード大学Brigham and Women's病院(ボストン)予防医学のJoAnn Manson教授は同紙で「健康は単に死亡率だけの問題ではない」としている。
 研究責任者で米国立がん研究所(NCI)のMitchell H. Gail博士は,医師と研究者としての個人的な意見であると断ったうえで,「きわめて健康かつ元気で,かなりの運動をしているうえ,検査値などが適正とされるような人は,減量しなくてはならない緊急性があるとは思えない」と同紙の読者に助言を呈している。

若干の過体重では生存率増加
 Flegal博士らが分析したデータは,NCHSが行った米国の大規模な代表的全国調査である第 1 次〜第 3 次国民保健栄養調査(NHANES)によるものである。
実際に参加者の身長と体重を測定したため,数値は正確である。
各参加者を死亡まで追跡したが,死因は死亡証明書を参照して決定された。
2000年までのフォローアップ期間の死亡率は57万1,042人/年であった。
また,米国の25歳以上の成人230万人について内在的な死因の情報も調査した。
 同博士らは「一部のエビデンスは,多くの状況において若干体重が多いほうが生存率が上昇することを示唆しており,過体重に関するわれわれの発見を部分的に説明する可能性がある。過体重はがんやCVDリスク増加と強く関連せず,感染症や医療処置などによる有害状態からの回復や生存率向上,一部の疾患の予後改善に関連する可能性がある」と述べている。
 今回の知見は,他の最近の研究結果と類似する。
同博士らは「測定した身長と体重や,われわれの研究で使用したBMI分類基準と同じ正常体重範囲を用いたいくつかの最近の研究で,CVD死亡率はハザード比0.9〜1.1で過体重とほとんど関連しないことが判明している」とし,さらに「がん死亡率に関するわれわれの知見は,いくつかの最近の報告と一致する」と付け加えている。
 興味深い知見として,肥満の人は大腸がん,乳がん,食道がん,子宮がん,卵巣がん,腎臓がん,膵がんによる死亡リスクが高いが,肺がんなどの数種のがんによる死亡リスクは低い。
ただし,糖尿病関連死はCVDに起因するとされることが多いため,正しく記録されていない可能性がある。
 論文はBMIと死亡率の関係は死因により異なると結論し,「これらの結果は,BMIと全死因の死亡率との関係を明確化するうえで有益である」としている。
 今回の結果は,同博士らによる以前の研究(Flegal KM, et al. JAMA 2005; 293: 1861-1867)に基づいている。

肥満と活動障害に新研究
 ペンシルベニア大学(ペンシルベニア州フィラデルフィア)のDawn E. Alley博士とVirginia W. Chang助教授は,代表的な全米調査であるNHANESの1988〜94年(第 3 次)と1999〜2004年のデータを分析し,「長い間には肥満に関連する死亡率の低下は,肥満になる年齢の低下と相まって,高齢の肥満人口における活動障害の増加につながる可能性がある」との結論をJAMA(2007; 298: 2020-2027)に発表した。
 この知見は,系統的な身体活動と減量プログラムは一般的に認識されているより多くの便益をもたらす可能性を示唆している。
 肥満の成人における心血管の状態は最近改善しているが,Alley博士らは「最近の心血管の改善は高齢の肥満人口における障害低下を伴っていない。
むしろ1999〜2004年に調査された肥満の参加者では,1988〜94年に調査された肥満の参加者より多くの機能障害を有する傾向があり,肥満ではない高齢者で認められた日常生活動作(ADL)障害の低下は肥満の高齢者では認められなかった」と述べている。
  2 つのアウトカムの測定が今回の研究の焦点であった。
1 つは400m歩行,階段を10段上がる,前屈,4.5kgの重量挙げ,部屋間の歩行,肘かけのないいすから立ち上がるといった機能制限であった。
もう 1 つのアウトカム測定は摂食,着衣,起床と就寝といったADLにおける制限であった。
 ADL障害の有病率は 2 つの調査で差がなかったが,機能障害の有病率は36.8%から42.2%に5.4%増加した(P=0.03)。
 1988〜94年の調査では,肥満の参加者に関する機能障害オッズ比は標準体重の参加者の1.78倍〔95%信頼区間(CI)1.47〜2.16〕,1999〜2004年の調査では同2.75倍(95%CI 2.39〜3.17)であった。

過体重は障害に影響せず 
重要な点として,肥満ではない高齢者に関してADL障害のオッズ比は1990年代に有意に低下した。
しかし,肥満の高齢者については有意な変化は見られなかった。
 Alley博士らは「極度の障害を有する少数の人々に対して医療費の偏重を是正するため,ADL障害に関するデータは重要である」と指摘。さらに「この研究と他の研究で認められた肥満と障害との関連性の強さは,慢性症状と障害との関連性と同様である」と述べている。
 対照的に,能力障害に対する過体重の影響は認められず,これは高齢者の健康に対する過体重の影響が小さいことを示唆する他の研究結果と一致する。
BMIが40以上の人は,30〜35の人より能力障害になる可能性がはるかに高かった。
 米疾病管理センター(CDC)のEdward W. Gregg博士と米国立衛生研究所(NIH)のJack M. Guralnik博士は,JAMAの付随論評(2007; 298: 2066-2067)で 2 型糖尿病の関連性を含めてこの問題の諸相を検討し,「ライフスタイルへの介入は高リスクの過体重の人で 2 型糖尿病の発症率を低下させるが,そのようなプログラムの効果的な実施は遅々として進んでいない」と述べている。
 論評では「系統的な身体活動と減量は 2 型糖尿病の予防に役立ち,関節炎の症状を低減し,身体機能を改善すると思われる。
つまり,長期間にわたり持続している肥満の各アウトカムを低減できるため,最も可能性のある統合的な介入かもしれない。
したがって,これらの発見は,効果的なライフスタイルと運動プログラムを保健システムと地域共同体に統合するうえでの障壁を克服するだけの説得力のあるエビデンスとなる」としている。

Medical Tribune 2008.2.14
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
BMIの正常値が決まった経緯はよく知りません。
このBMIの正常値を少し緩(ゆる)くすればこの論文の意味もなくなってしまうという考えは乱暴でしょうか。
いずれにしろ興味深くこの論文を読ませていただきました。

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by esnoopy | 2008-02-15 00:05 | その他
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