人気ブログランキング | 話題のタグを見る

J-DOIT3の継続決まる

糖尿病患者の血糖は下げすぎてはいけない。
こんな衝撃的なニュースが走りました。

ACCORD試験の血糖管理強化療法中止で広がる不安,10日で“断” 
2型糖尿病患者に対する多因子強力介入の有効性を検証する厚生労働省主導の臨床試験J-DOIT3(研究リーダー=東京大学大学院糖尿病・代謝内科教授・門脇孝氏)の継続が,2月15日に決まった。
同試験は,2月6日に米国で発表されたACCORD試験における血糖管理強化療法の中止を受け,8日から新規患者の登録などを一時停止していた。
ACOORD試験に関する突然の中間解析結果の発表は日本の糖尿病関係者の間でも大きな話題となり,厳格な血糖コントロールへの不安が広がる気配もあったが, 10日で“断”が下されたことになる。

HbA1c5.8%をめざすJ-DOIT3
J-DOIT3は,厚生労働省の糖尿病戦略研究J-DOITの1つで,高血圧または脂質異常症を合併する日本人2型糖尿病患者を対象に,血糖,血圧,脂質の3因子に対する強力な介入を行うことで,心血管イベントや死亡の発生を低減できるかどうかを検証する試験。
従来療法群,強化療法群1,500例ずつの登録を予定している。

同試験の治療目標値は,従来療法群では現行ガイドラインの推奨値を採用しているのに対し,強化療法群ではより厳格な値を設定している。
例えば,血糖については従来療法群6.5%未満,強化療法群5.8%未満である。強化療法群では目標値を達成するため,生活習慣や血糖・血圧などのきめ細かな自己管理と指導に加え,ステップアップ方式の薬物療法が行われる。

2月16日,高松市で行われた第42回糖尿病学の進歩におけるシンポジウム「糖尿病対策の現状」でJ-DOIT3について発表した研究リーダーの門脇氏によると,症例登録は2006年6月から始まり,現段階で約1,700例に達している。
20か月後の平均HbA1c値は従来療法群6.5%,強化療法群6.0%と治療目標値に近似したレベルにあり,入院を要する重篤な低血糖は強化療法群で1例発生したのみだという。

ACCORD試験の中間解析結果に考慮すべき問題点
このようななか,もたらされたのがACCORD試験の発表だった。
ACCORD試験もJ-DOIT3と同様,ハイリスク2型糖尿病に対する3因子強力介入の意義を問うもので,両者の試験デザインには類似点が多い。
それだけに,血糖管理強化療法の中止は「衝撃的だった」(門脇氏)という。

ACCORD試験の強化療法が中止されたのは,強化療法群の死亡例が257例(14件/1,000人・年)と従来療法群の203例(11件/1,000人・年)を上回ったための緊急処置だった(血圧・脂質に対する介入は継続される)。
なお,平均HbA1cは登録時の8.2%に対し,従来療法群7.5%,強化療法群6.4%のコントロールレベルにあった。
強化療法群で死亡が増加した理由については明らかにされていないが,ACCORD試験の研究グループは「ハイリスク2型糖尿病患者の血糖コントロールはHbA1c7%程度が推奨される」とコメントしている。

これに対し門脇氏は,
(1)ACCORD試験における死亡率は,同様の危険因子を有する米国の2型糖尿病患者における死亡率(50件/1,000人・年)よりかなり低い,
(2)研究グループは否定しているが,重症低血糖の増加が強化療法群における死亡増加に影響した可能性も払拭できない
ことを考慮すべき問題点として提起した。
米国糖尿病学会(ADA)も,ACCORD試験の中間解析結果をもとに,ガイドラインの血糖コントロール目標値(HbA1c7%未満)を変更することはないとして明言しており,逆に治療の変更を強く懸念するとの見解を発表しているという。

死亡の逐次モニターなどを条件に試験継続を承認 
ACCORD試験の中間解析結果発表後のJ-DOIT3研究の対応について,門脇氏は次のように説明した。

ACCORD試験の中間解析結果の解釈には上記のような疑問が残るものの,患者の安全性に万全を期すため,2月8日,新規患者の登録と血糖コントロールに関する新たなステップアップを一時停止することを決定。
参加医療機関などに連絡した。

一方,研究グループとは独立の試験評価委員会において,J-DOIT3の中間解析結果の評価を行い,
(1)現時点で強化療法群と従来療法群で一次エンドポイントの発生に有意差が認められない,(2)イベント発生時のHbA1cとイベントとの間に有意な関連が認められない,
(3)強化療法群においても重篤な低血糖はほとんど発生していない
ことを確認。
今後,一次エンドポイントのうち,死亡については年1回の中間解析だけでなく,可能な限り逐次モニターすることなどを条件に,患者の新規登録を含めた試験の継続が承認されたという。

J-DOIT3の継続決まる
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0802/080210.html

Medical Tribune
版権 メディカル・トリビューン社
J-DOIT3の継続決まる_c0129546_740210.jpg

リャド  「スタット公園の庭」 シルクスクリーン
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p83775337


ACCORD試験~血糖値は下げすぎなほうが良い?
http://medicineblog.blog32.fc2.com/blog-entry-12.html
http://medicineblog.asablo.jp/blog/2008/02/10/2615727
(これらのブログでは開発中の薬剤や大規模臨床試験についてするどく斬り込んでいます。なぜか内容は同一です。)
治験論文が刊行され判断材料が揃うまでは軽率に判断しないほうが良い、また、この試験の組入れ条件を満たすのは二型糖尿病患者の一部に過ぎず二型糖尿病全般にあてはまるわけではない、というの賢者の知恵のようです。
ADA米国糖尿病学会はHbA1cを7%未満に下げることを目標とするよう推奨しています。AACE米国臨床内分泌学学会は6.5%以下が目標です。ACCORD試験の結果を額面通り受け止めるならば、AACEのガイドラインを遵守するのはリスクが高く、ADAのガイドラインも守らないほうが良いということになります。心血管リスクが低い患者には当てはまらないかもしれませんが、当てはまらないというしっかりとしたエビデンスもありません。
プライマリーケア医はリスク回避的なので学会のガイドラインを遵守していない人が多いでしょう。慌てる必要はないことになります。しかし、アグレッシブな治療を行う専門医は、今すぐにでも治療方針の正当性を再検討しなければならないでしょう。

<コメント>
糖降下強化療法と死亡リスク上昇の関連が示唆されたこのACCORD試験とは異なり、ACCORD試験と同様のデザインで実施されているADVANCE試験の途中解析では血糖レベルを現在の推奨レベル未満まで下げることを目標とした血糖降下強化治療と死亡リスク上昇に関連は認められないということです。


<参考>
For Safety, NHLBI Changes Intensive Blood Sugar Treatment Strategy in Clinical Trial of Diabetes and Cardiovascular Disease
http://public.nhlbi.nih.gov/newsroom/home/GetPressRelease.aspx?id=2551
J-DOIT
糖尿病診療のわが国発のエビデンス構築へ
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?id=M3929701&year=2006&type=article
2型糖尿病の発症を50%抑制へ         J-DOIT1
2型糖尿病患者の治療中断率を50%改善へ J-DOIT2
2型糖尿病の血管合併症を30%抑制へ  J-DOIT3

第40回糖尿病学の進歩
最近15年で血糖コントロール改善
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?id=M3910191&year=2006&type=article

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
by esnoopy | 2008-02-20 00:05 | 糖尿病
<< 肥満は変形性膝関節症の大きな進... CKDの早期発見・早期介入 そ... >>