数日前に、当院へ通院してみえたHCV/HCCの患者さんが亡くなられました。
ある病院の依頼で、SNMC療法のみを当院で行っていた方です。 部分肝切除を目的に、しかる病院に入院されたのですが、入院中に肝不全が進行し、なすすべもなく亡くなったと、奥様が報告に来院されました。 血小板数も少なくLCもあるため手術は難しいと予想された症例ですが残念です。 このように肝がんの手術の多くは肝機能低下や出血傾向を持っているため、手術が難しいだろうということは内科医の私にも理解できるところです。 さて、そんな肝がんの手術ですが、ハイテク手術が現れました。 アイズピリ 「青いバックのオレンジの花瓶の花束」 リトグラフ http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t65686480 〔米ペンシルベニア州フィラデルフィア〕ジェファーソン医科大学(フィラデルフィア)外科の移植外科医であるCataldo Doria准教授は,非観血的肝切除術と名付けた新しい手術用の器具を開発した。 同准教授によると,この器具により人体で最大の臓器である肝臓を75%まで安全に切除できるという。 また,患者の予後は改善し,回復に要する日数は半減したという。 目標は無輸血 Doria准教授は何百例もの肝臓手術を手がけてきた。 今回新しく開発した 2 つの手術器具により,出血を防ぎながらがん組織の切除が可能になったことで,限局性肝がんや他の肝疾患患者の治療成績に驚くべき成果をもたらしている。 これらの器具を用いればほとんど出血しないため,患者の回復は早まる。 同准教授は「このことから,われわれは"非観血的"と呼んでいるが,目標は輸血を不要にすることだ」と述べている。 米国では原発性肝がんの新規発症例は増加し続けており,肝がんと診断される米国人の数は過去10年間で倍増した。 米国肝臓財団によると,米国では原発性肝がん例の80%以上に肝硬変が関与するとされている。 肝障害の原因はC型肝炎ウイルス(HCV)またはB型肝炎ウイルス(HBV)と過剰飲酒が大部分を占める。 肝がんの危険因子はほかに肝硬変がないHBV持続感染と肥満がある。 限局性肝がん患者に対しては,一般に外科的切除が最良の治療選択肢となる。 しかし,肝臓は門脈と肝動脈の 2 大血管から血液供給を受け,門脈には腸管からの血液がすべて流入する。 従来法による血管網のような肝臓の切除は,どのような外科医にとってもきわめて困難である。従来法では5~10単位以上の輸血が必要になるが,この新しい非観血的切除術ではそれらをすべて変えてしまった。 メスを使わず肝細胞を吸引 Doria准教授は「肝臓は血液で充満したスポンジのような臓器なので,従来法による切除では大出血の恐れがある。しかし,新しい方法ではメスで切除するのではなく,肝細胞を吸引したうえで速やかに血管を密封してしまう」と説明している。 新しい手法では,メスの代わりに超音波外科的吸引器(CUSA)を使う。 これは超音波を利用して肝細胞を吸引するもので,血管は温存される。 第2の器具であるTissue Linkと呼ばれる探触子(プローブ)を用いて別の外科医が執刀医をフォローする。 この探触子の先から滅菌温水を放出すると,肝臓の血管が凝固・結紮される。 この 2 つの器具により,非観血的手法の手術時間は2~4時間と,従来法(4~6時間)のほぼ半分に短縮できる。 また,非観血的手法ではメスを使った場合に比べ,組織への損傷を大幅に軽減できる。 この新しい非観血的肝切除術では,術後24時間で離床し,歩行できるようになる。 入院日数は5~7日(従来法では10~14日)で,2週間で通常の活動が可能となる(従来法では4週間)。 完全回復は 1 か月後である。 この術式を適用した患者の75%以上で,肝臓を安全に切除できた。 切除後,残った肝臓は再生し,2~3週間で本来の大きさに回復する。 ハイテク手術で肝がんを安全に切除 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4110011&year=2008 Medical Tribune 2008.3.6 版権 メディカル・トリビューン社 <参考サイト> ■肝臓がんhttp://www.pref.chiba.jp/byouin/sawara/menu2/geka/kanzogan/kanzogan.html 肝機能が良くて腫瘍の大きさが3cm以上なら確実に治癒させる事のできる手術を第一選択としています。 このような場合手術は3-4時間で、ほとんど輸血は行いません。入院期間も手術後2-3週間と短くてすみます。 肝臓癌が門脈の中に入り込み腫瘍栓を形成した進行癌にも積極的に血管外科の手技を応用して手術を行っています。 ガンを完全に切除しきれた場合は3年生存率60%が得られています。 (手術前のコンピュータ上模擬手術というのがあることを初めて知りました) ■肝臓がん(肝臓癌)の治療-外科手術(肝切除術) http://www.effect-japan.com/cancer/liver.html 肝切除はがんを含めて肝臓の一部を切り取る手術で、最大の利点はがんが治る可能性がもっとも高いということです。 デメリットは合併症が起こる場合が少なからずあり、1-2%ですが手術に起因する死亡があります。 また入院期間が1-2ヶ月さらに退院してからの自宅療養が1-2ヶ月必要で長期に及ぶことがあげられます。 肝臓はひとかたまりの臓器ですが、肝臓内を走る血管の分布によっていくつかの区画に分けて考えられます。 まず大きく左葉と右葉の二つに分かれます。左葉は外側区域と内側区域、右葉は前区域と後区域に分かれます。 さらに外側区域、前区域、後区域はさらに上下2つの亜区域に分かれ、これに内側区域と尾状葉(肝臓の後ろ側の小部分)を加えて合計8つの亜区域に分かれます。 肝臓の切り取り方は、これら肝の区画の「どこ」を「どのくらい」切除するかによって表現されます。 がんが区域をまたいでいる場合には複数の区域を切除します。 肝機能が低下していて大きく切除できない場合には安全のために、亜区域切除や部分切除などより小さい取り方を選ぶのが普通です。 がんでない肝臓をできるだけ残し、しかもがんを取り残さないのがよい手術ということになります。 残念ながら肝臓がんは再発の非常に多いがんであり、肝切除術により完全にがん細胞を切除したとしても3-5年後までに再発する確立は70%にも達してしまいます
by esnoopy
| 2008-03-07 00:04
| 消化器科
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