女性の脱毛症

近当院を風邪で受診された40代の女性の話です。
風邪としての診察を終わった後に、「風邪とは関係ない話なんですが・・・」といって、髪の毛をいきなり後ろから前へかきあげました。
円形脱毛症というにはあまりにも大きな脱毛でした。
「ここ数週間で急に毛が抜けるようになって」とのことでした。
とりあえずフロジン液を処方し、今後の治療方針はまた考えましょうといって帰っていただきました。
そんな中、こんな記事が目にとまりました。

女性にも脱毛症は大問題
 

〔ニューヨーク〕女性の 3 分の 1 以上は生涯のうちで病的な脱毛を経験している。
より重要なのは,脱毛による精神的影響が医師により過小評価されていることである。
ブリティッシュコロンビア大学(UBC,カナダ・バンクーバー)とニューヨーク大学(ニューヨーク)に所属するJerry Shapiro博士は New England Journal of Medicine(2007; 357: 1620-1630)に総説を発表した。


前頭部は保たれるのが特徴
脱毛は瘢痕性と非瘢痕性に大別される。 
瘢痕性脱毛は円板状ループス,毛孔性扁平苔癬,禿髪性毛包炎などで生じるが,今回の総説の焦点は女性の非瘢痕性脱毛である。

女性型脱毛は女性の脱毛原因として最も多く,ほとんどは家族性で,思春期以後のいつの時点でも発症し,70歳以上の女性では38%が発症する。
女性型脱毛は頭皮の中央部に生じ,前髪は残る。また,後頭部より中心線上に多い。
一部の女性ではさらに他の型の脱毛が加わり,側頭部の頭髪も薄くなる。
前頭部の脱毛が目立つ女性の場合,中心線はモミの木のようになる。
このパターンは前頭部強調と呼ばれる。
また,側頭部の頭髪が薄くなる女性もいる。

女性型脱毛はしばしばアンドロゲン性脱毛と呼ばれるが,Shapiro博士は「このタイプの脱毛におけるアンドロゲンの役割は不明で,患者の多くは血中アンドロゲン値が正常である」と説明している。

男性型脱毛が女性に生じることもある。
このパターンでは頭頂部と前頭・側頭部の頭髪が薄くなる。
男性型脱毛の女性は高アンドロゲン血症と想定されることが多いが,実際には異なる。中等度?重度の脱毛女性109例の研究で生化学的高アンドロゲン血症が認められたのは42例(38.5%)で,このうち11例は臨床的多毛の証拠がなく,24例は希発月経・無月経の証拠がなかった。 


他疾患,薬剤,ストレスも要因
女性における脱毛のもう 1 つの大きな原因は休止期脱毛である。
その特徴は多数の成長期毛が突然休止期毛に移行することである。成長期毛の毛幹は皮下脂肪に深く固定されており,頭皮に 3 ~7 年とどまるのに対して,休止期毛は皮膚の表面にあり深く固定されていない。
正常な頭髪には定期的に 3 か月程度の休止期がある。成長期毛と休止期毛の比率は通常 9 対 1 であるが,休止期脱毛では 7 対 3 になる。
休止期脱毛の女性では24時間以内に300本以上の頭髪が抜けることもある。

Shapiro博士は「このタイプの脱毛は一般に重大な疾患などのストレス(手術,出産,急激な体重減少,栄養不良,高熱,出血など)またはホルモン障害(甲状腺機能不全など)から約 3 か月で発症する」と述べている。
休止期脱毛は30種類以上の薬剤の投与開始後にも報告されている。例えば,ヘパリン,インターフェロンα,isotretinoin,リチウム,テルビナフィン,チモロール,バルプロ酸,ワルファリンなどである。

休止期脱毛では原因が除去されれば約 6 か月以内に回復するが,一部の患者では長引くこともある。

抗がん薬は成長期脱毛を引き起こし,成長期毛が直ちに破壊されて脱落する。

その他の非瘢痕性脱毛の原因として円形脱毛がある。
これは自己免疫性と考えられ,時として頭髪全体の脱毛(全頭脱毛)ないしは全身の脱毛(汎発性脱毛)に至ることもある。

間違った手入れによる脱毛も
髪の手入れが脱毛の原因となることもある。
例えば,髪の自然な成長方向とは逆方向へのブラッシングやコーミング,パーマ剤,脱色剤,弛緩剤の使用,編み髪などである。

強迫性の抜き毛(抜毛狂)も脱毛の重要な原因である。
抜毛狂は他の精神疾患と関連していることがある。
さらに,細菌感染や頭部白癬も重要である。
決定的ではないが鉄欠乏の関与も示唆されている。

臨床では,脱毛の持続期間とパターンを記録しておく必要がある。
髪が抜け落ちるのは円形脱毛か休止期脱毛を示唆し,一方,髪が薄くなるのは女性型脱毛を示唆している。
髪が付け根から抜け落ちるか(休止期脱毛,女性型脱毛,円形脱毛を示唆),毛幹に沿って切れているか(髪の手入れによる脱毛,抜毛狂,頭部白癬の特徴)の識別も重要である。

髪の手入れについてと,まつげや眉毛,その他の体毛の脱落についても問診すべきである。
Shapiro博士は「脱毛の始まる 1 ~ 3 か月前に他疾患の既往,出産,手術,心理社会的ストレス,新しく服用し始めた薬剤があれば休止期脱毛が示唆される。
ニキビ,月経不順,多毛はアンドロゲン過剰による女性型脱毛が示唆される。
甲状腺機能亢進症や低下症の症状も評価すべきで,過去と現在の服薬は入念に見直すべきである。
厳格な菜食主義や月経過多の患者は鉄欠乏性貧血が関与している可能性がある」と述べている。

まず頭皮と頭髪を詳細に観察
臨床診察は 4 段階を踏むべきである。
まず,頭皮の炎症,鱗屑,紅斑を調べる。
次に,脱毛に伴う瘢痕を評価する。
非瘢痕性脱毛は毛包が開いている(小孔)のに対して,瘢痕性脱毛には小孔がない。
 
3 番目に,脱毛の分布と頭髪の密度を調べる。
4 番目に,毛幹の質すなわち,径,脆弱性,長さ,形状を調べる。髪の先端が鈍いなら,断毛が疑われる。
次第に細くなる先端は正常である。脱毛の活動性と重症度を評価するには引毛試験を行う。
60本くらいの髪をつかみ,根元から先端に向かって引いてみる。
6 本以上の髪が抜けると陽性で,脱毛は活動中である。

血液検査ではフェリチンと甲状腺刺激ホルモンを調べる。
アンドロゲン過剰であれば遊離テストステロンを評価すべきである。梅毒の危険因子があれば,この疾患を除外すべきである。

白癬が疑われるなら脱毛部の鱗屑を水酸化カリウム塗抹標本で菌糸を調べ,培養検査すべきである。
毛幹も採取して培養検査すべきである。
特定の皮膚糸状菌( Microsporum canis )があれば,ウッド灯で観察すると緑色の蛍光を発する。
Shapiro博士は「診断に疑問が残れば,頭皮からの 4 mmパンチ生検も有益である。
この検査は瘢痕性脱毛が疑われる患者では特に有益である」と述べている。


minoxidilの局所投与が効果的
治療の前に,一般に頭皮の中心線部分の写真を撮影し,その後の比較に用いるべきである。治療効果が現れるには 6 ~12か月を要する。

治療にはminoxidilの 2 %と 5 %の局所投与液が用いられる。
5 %液の優位性を示す客観的なデータはないが,Shapiro博士は臨床経験と患者の満足度に基づいてminoxidil 5 %液を好んで用いる。
1 年以内に有効性が明らかになれば,治療を無期限に続けることが多いという。

Minoxidilは妊婦や授乳中の母親には禁忌である。
同薬局所投与液の副作用は接触皮膚炎と対称性顔面多毛(女性の 7 %で頬と額に細毛が生える)で,5 %液で多く認められる。

最近,minoxidil 5 %フォームも発売されており,局所投与液よりも接触皮膚炎がはるかに少ない。

抗アンドロゲン薬と経口避妊薬も時として女性型脱毛の治療に用いられるが,それを支持する堅固なエビデンスはほとんどない。
同博士は「抗アンドロゲン薬は催奇性が知られているので,妊娠可能年齢の女性には経口避妊薬も同時に処方すべきである」と説明している。


頭髪移植も選択肢
脱毛治療の外科手術を求める女性は増加しつつある。
現在,頭髪移植は毛包単位で行われており,経験ある外科医が施行する自然な結果が得られる。
Shapiro博士は,この方法は費用がかかり,そのうえ頭皮のドナー部位に十分な頭髪密度が必要で,長期的アウトカムのデータはほとんどないと指摘している。
移植片脱落率はきわめて低いがゼロではない。
合併症は少ないが,感染,永続的な頭皮異常感覚,動静脈奇形がある。

移植後のminoxidil療法は多くの外科医により推奨されているが,この方法についての厳密な研究は行われていない。

患者のための脱毛情報は,北米頭髪研究学会(North American Hair Research Society)のウェブサイト(www.nahrs.org)で入手可能。

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Medical Tribune 2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社


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by esnoopy | 2008-03-24 00:17 | その他
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