BOT(Basal supported Oral Therapy)その1 1/2

経口血糖降下薬(OHA)に基礎インスリン注射との併用を行うBOTについて勉強しました。

特別企画
座談会
2型糖尿病治療「次の一手」
〜OHAに基礎インスリンを追加する併用療法BOTの可能性〜

2型糖尿病治療においては,細小血管障害や心筋梗塞,脳梗塞など動脈硬化症の発症・進展を防ぐためHbA1cの確実なコントロールが重要である。
近年は,経口血糖降下薬(OHA)のみによるコントロールが困難である場合,基礎インスリン注射との併用を行うBOT(Basal supported Oral Therapy)が有効な治療法として海外では広く行われるに至ったが,日本においてはまだ認知度が十分ではなく,経験が少ないのが現状である。

河盛 隆造 氏(司会) 順天堂大学医学部内科学教授
吉岡 成人 氏 北海道大学大学院医学研究科内科学講座・第二内科准教授
清野 弘明 氏 せいの内科クリニック院長
(発言順)


早期のSU薬による治療介入が良好な血糖コントロールのカギ
河盛 
2 型糖尿病の治療においては,血管障害の発症・進展を抑えるため,年齢や血管障害の程度,生活内容などの背景を考慮しつつ,しかし今まで考えられた以上に,よりよい血糖コントロールを行う必要があります。

ところが,わが国の治療の現状を見ると,必ずしも目標とするHbA1cのレベルに達していないのに,漫然と同一の治療が継続されているケースが少なくないのも事実です。
現在わが国では,HbA1c9.0%以上の糖尿病患者は100万人近くいると計算されているほどです。

加えて,近年20〜30歳代で,軽度の肥満で 2 型糖尿病を発症するケースが増えています。その多くが,糖尿病の家族歴のある方ですが,その方々は余命がとても長いので,今,高血糖を放置せず,速やかに積極的な治療を行う必要があります。

吉岡 
北海道でも,10歳代後半の糖尿病患者さんは,1 型よりも2 型が多い印象を持っています。

清野 
郡山でも若年層の 2 型糖尿病患者さんが増加傾向にありますが,どちらかというと高齢者の糖尿病の方が顕著です。
高齢者でも罹病期間が25〜30年と長い場合には,血糖コントロールの目標を学会基準のHbA1c 6.5%とし,インスリンを導入するなど積極的に治療が必要だと思います。

河盛 
特に,糖尿病に興味のない先生方は,SU薬を含むOHAを多剤服用している患者に対しては,高血糖であってもこれ以上打つ手がないと考えがちで,それが高血糖のままの患者が多い原因の 1 つと考えられます。
そこで, 2 型糖尿病の治療をいかに展開すべきか,どのような方法が有効なのかお聞きします。
最初に,OHAによる治療の現状についてはいかがでしょうか。

吉岡 
OHAの中で最も多く処方しているのはSU薬です。
処方の際は,グリメピリド(商品名:アマリール)を0.5mg/日から始め,症例によっては早い段階で,ビグアナイド(BG)薬あるいはαグルコシダーゼ阻害薬(αGI)の併用を考慮します。
ただし,SU薬についてはそれぞれの患者さんの病態に合った用量を設定するように注意しています。

清野 
私はグリメピリドを朝・夕各 3 mgずつ,1 日最大量の 6 mgまで使うことがあります。
1 mg/日からスタートして徐々に増量していき,2 mg/日あるいは 4 mg/日の時点でαGIやBG薬を併用します。
それでも血糖コントロールが不十分である場合に,6 mg/日への増量を検討します。
それでもうまくいかなければ,OHAに基礎インスリンを併用するBOTを試みます。

河盛 
われわれのグループが行った比較的早期の糖尿病患者を対象とした試験においては,グリメピリドを0.5mg/日から開始し,その後も少量で良好な血糖コントロールを達成できるという結果が出ました。

しかし大学病院や専門施設に紹介されてくる 2 型糖尿病患者は,糖尿病と診断されてから長期間放置していた,また治療期間も長くなった症例が多く,インスリン分泌が低くなっているケースが多いですね。
するとSU薬にBG薬やαGIを追加していてもHbA1cの目標値を達成できない症例も多く経験します。
以上のことから,糖尿病と診断したら,食事療法・運動療法の指導を行い,HbA1cが6.5%以下にならない場合,機を逸することなく薬剤療法を考慮すべき,と思いますね。

吉岡 
SU薬はHbA1cを 1 %改善する効果を持っていると考えられます。
低血糖や体重増加に対する指導が重要ですが,少量のSU薬を上手なタイミングで用いることは,医療経済面においても望ましい方向性であると思います。


BOT導入時はSU薬を減量しないことが一般的
河盛 
SU薬を十分量用い,さらにαGIやBG薬を併用しても治療目標値を達成できない場合には,次のステップとしてインスリンの導入が必要です。

しかし,「2 型糖尿病ではインスリンは不要」と考える実地医家の先生も少なくありません。また慣れないので外来診療でのインスリンの導入に不安を感じることも多いようです。

さて,インスリン導入時にOHAを継続すべきか否かについては,迷われる点だと思いますが,近年はBOTという治療法が注目されています。

BOTはすでにOHAを服用しているところに基礎分泌インスリンを注射で補充する方法です。
インスリン投与前の血糖コントロール状況やSU薬の治療期間にも左右されますが,BOT導入時は,内因性分泌インスリンを有効利用するために,そしてOHA中止に伴う血糖コントロールの乱れを避けるために,SU薬はそのままの用量で継続するのが一般的です。

例えば,グリメピリド 6 mg/日を使っていてもHbA1c 8.0%以上が1年間続いている場合には,BOT導入時にSU薬を減量する必要はまずありません。

この方法についての先生方のお考えをお聞かせください。

吉岡 
いくつかのOHAを併用してなお血糖管理がうまくいかない場合でも,2 型糖尿病であれば,高血糖を是正し,糖毒性を解除することで,内因性インスリン分泌の回復を期待できます。

従来はSU薬とインスリンの併用は効果がないと言われてきましたが,2 型糖尿病においては,適切な時期でのインスリン導入により高血糖が解除されると,膵β細胞の機能が保持されることがいくつかのスタディで示唆されています。
血糖コントロールの悪化を防ぐためにSU薬をそのまま継続し,少量の基礎インスリンから始めて,徐々にステップアップする方法()は,糖尿病の外来診療において,患者・医師,さらに社会的にも受け入れられやすい方法であると思います。

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by esnoopy | 2008-04-01 00:08 | 糖尿病
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