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前立腺がん (世界の権威に聞く )

Peter T. Scardino
スローン・ケタリング記念がんセンター(MSKCC)外科部長
コーネル大学泌尿器科教授。ニューヨーク州立大学Downstate医療センター教授。
前立腺がんの早期発見,予後,治療について高い見識を持つ前立腺がん専門の外科医。MSKCCの前立腺がんプログラム長。Nature Clinical Practice Urology誌編集長。

 
食生活の欧米化など生活習慣の変化に伴い,日本では前立腺がんが増加の一途をたどっている。
2020年には前立腺がんが男性のがん罹患率の2位に浮上すると予測される
なか,その早期発見と治療対策の重要性が増している。
スローン・ケタリング記念がんセンター外科のPeter T. Scardino部長に,「前立腺がん先進国」とも言える米国における前立腺がん医療の最新事情について聞いた。


米政府はPSA検診を容認
日本では,PSA(前立腺特異抗原)検査の集団検診について,厚生労働省研究班と日本泌尿器科学会から正反対の指針が出されている状態なのですが,米国ではどのような状況ですか。
日本と同様に米国でも,政府は前立腺がんのためのPSAスクリーニングを奨励していません。
これは, PSAスクリーニングが長期予後を改善するという「明確な」裏づけとなる長期大規模ランダム化臨床試験がまだ完了していないためです。
国の指針として正式に推奨するには,長期検討試験の結果が必要だということです。
 
しかし,
PSAスクリーニングが前立腺がんの早期発見をもたらし,予後改善に役立つことは,既に多くのランダム化臨床試験で明らかにされています。
例えば,オーストリアの大規模コホート研究では,住民に対するPSAスクリーニングを実施した地域では,12年間の前立腺がん死亡リスクが,スクリーニングを行っていない地域より50%以上低いことが示されていますし,米国では, PSAスクリーニングが徹底されるようなった過去12~14年に前立腺がん死亡率が30%以上減少しました。
 
このようにPSAスクリーニングの有用性を支持する十分なエビデンスがあるため,日本と同様に米国でも,学会や医師はPSAスクリーニングを強く推奨していますし,
政府もPSAスクリーニングを容認しています。

前立腺がんには多くの治療選択肢があり,そのなかから最適な治療法を選択するのは容易でないと思われますが,米国では治療選択の際,患者にどのように説明しているのでしょうか。

確かに前立腺がんの治療選択は容易でないかもしれません。
しかし別の見方をすれば,前立腺がんには効果的な治療法がそれだけ多く存在するということです。
そこでわれわれは,主要な治療法について個々のリスクとベネフィットを説明し,患者が自分に最も適した治療法を選択する手助けをしています。

 
例えば局所前立腺がんの場合,
第 1 に進行度,悪性度,PSA値の高い局所前立腺がんに対しては,無治療のままより治療をしたほうがよいということ,
第 2 に,手術療法と放射線療法のどちらがよいかは明らかではないが,いずれも満足な成績が期待できる治療法であり,どの治療法を選択するかよりも,むしろ熟達した医師に施術してもらうことのほうが好成績を得るには重要であること,
第 3 に,合併症のある患者や高齢患者などで,手術療法も放射線療法も適用できない場合には,ホルモン療法を行うが,根治療法にはならないので,通常の局所前立腺がんに対しては勧められないこと
などを説明します。


患者の年齢や進行度に応じて,選択肢は変わってくるわけですね。
その通りです。
例えば70歳以上の高齢者では,尿失禁や性機能障害など手術合併症のリスクが高まりますから,放射線療法を勧めるのが一般的です。
一方,70歳未満の場合は,余命が長く,手術療法のほうがより良好な腫瘍抑制効果が期待できること,万が一,治療に失敗した場合も放射線療法を行えることから,手術療法を勧めることが多いのですが,放射線療法も選択肢の 1 つであることに変わりはありません。
 
また局所進行型で悪性度の高い前立腺がんでは,単独療法では十分な治癒率が期待できないため,放射線療法とホルモン療法の併用などの方法が取られます。
つまり,T1~T2の低分化の前立腺がんに対しては,患者の好みと年齢に応じて手術療法と放射線療法のどちらを選択してもよいのですが,T3の局所進行型の患者に対しては,放射線療法後にホルモン療法を併用し,その後ホルモン療法を継続していくことが多いと言えます。


ホルモン療法不応例はどう治療すればよいのでしょうか。
ホルモン療法不応例の治療は難題ですが,1 つの選択肢として化学療法が挙げられます。
現時点では,タキサン系の化学療法薬が生存延長をもたらすことが証明されていますし,化学療法薬については多くの有望薬が登場しており,これらのいずれかがホルモン療法不応例の治療に一石を投じてくれるかもしれません。
もう 1 つは,別のホルモン療法への変更です。
ホルモン療法不応例は一切のホルモン薬が奏効しないわけではなく,例えば最初の抗アンドロゲン薬に失敗した後,第 2,第 3 の異なる抗アンドロゲン薬に変更しながら腫瘍をコントロールしていくことが可能です。
いずれにせよこの領域では,現在,興味深い治療法が開発され,臨床試験が活発に進められています。


長期成績に優れた密封小線源法
日本では,まだ局所療法として放射線療法の行われる比率が低いのですが,先生は同療法についてどのような見解を持っておられますか。
米国では近年,組織内照射療法(密封小線源療法)の 1 つであるseed implant法が多く行われるようになってきました。
しかし,線源の埋め込みには熟達した技術が必要で,施術する医師の技量により成功率,副作用発現率が大きく異なります。
一方,外照射法の治療成績は装置に委ねられるところが大きいため,密封小線源療法ほど施術者の技量が影響することはありません。
特に手術療法による合併症リスクの高い高齢者にとっては,たいへん有効な治療法だと考えます。
 
1 つ問題となるのは,局所前立腺がんに対して十分な効果を得るためには,70Gy以上の高線量の照射が必要な点です。高線量を用いた場合の有効性は高く,正常組織への安全性を確保しながら目標部位のみへの高線量照射が可能な強度変調放射線療法(IMRT)を用いた最近の研究では,81Gy,86Gyという高線量照射により,90%の患者でがん細胞の完全消失が確認されました。


米国では密封小線源療法の普及などにより待機療法を選択する比率が減少していると聞きます。
確かに70歳未満の患者では待機療法が減り,手術療法または放射線療法の比率が増えてきています。
しかし,75歳以上の高齢者にとっては重要な治療法であり,これらの患者の半数以上には待機療法が勧められると考えます。
 
私自身は,待機療法はたいへん重要な治療戦略の 1 つだと考えています。
待機療法は決して「転移するまで放っておく」ということではありませんから,待機療法より最近よく使われる「Active Surveillance」という言葉のほうが適切かもしれません。
6 か月ごとに患者を診察して,PSAのモニタリング,生検によりがんの増殖・進展の有無を確認し,必要に応じて治療を行うのです。
 
米国ではPSAスクリーニングが徹底されたことで,生命リスクの低い小さな前立腺がんが多く発見されるようになりました。
10~15%を占めるこれらの患者は,治療の必要性が低い患者と言えます。
待機療法は,不必要な治療を回避するためのたいへん重要な治療法です。


Comment
日本人独特の精神的感覚も
国立がんセンター名誉総長 垣添 忠生
まずPSA検査については,わが国では厚労省研究班と日本泌尿器科学会の指針が対立しているような形にはなっていますが,両者の指針の本質は同じだと思います。
すなわち,PSA検査を行えば,前立腺がんが多く発見されることは間違いありません。
しかし,そのなかに臨床的に必ずしも重要でないがんが含まれるため,PSA検査により前立腺がんの死亡率が下がるかどうかが明らかではないということです。
 
現在,欧米で進められている大規模臨床試験の結果でPSA検査の意義はあるという結論が得られれば,わが国でも対策型の検診としてPSA検査を取り入れる可能性はおおいにあるでしょう。
現状ではその判断ができないということで,基本的に日米の考えは同じだと思います。
 
また,最適な治療法の選択についても,基本的に日米の考え方は同じです。
ただし,日本人には,"みそぎ"という独特の感覚があるのか,体のなかにがんがあるのを知っていながら,それに手を付けないことをとても嫌がるところがある気がしています。
そのため,いったん待機療法を選択しても,途中で不安になられる患者さんも多い。
そういう精神的な問題が日米では少し違うかもしれません。
そういった問題を抜きにすれば,80歳以上の高齢者(75歳だと迷う症例もありますが)については,間違いなくかなりの症例において待機療法でいけるでしょう。
 
前立腺がんは,非常に多様性に富んだがんであり,さまざまな治療法から何を選択するかは,医師にとっても患者さんにとっても,非常に難しい作業です。患者さんが決心が付かない場合は,医師側から「私だったら(あるいは自分の家族だったら),この治療法を選択します」といった患者の肩を少し押してあげるようなことも必要ではないかと思います。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41141131&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.4.3
版権 メディカル・トリビューン社


<自由時間>
週末に学術講演会に行って来ました。
気になったのはあちらこちらから大きな音で鳴る携帯の呼び出しの音です。
同じ先生に数回かかってくる場合もありました。
とても社会的地位(今はそんなものはなくなって同情さえされている?)医者
の集まりとも思えない光景でした。
(衣食足りて礼節を知る)
呼び出し音はもともとご法度ですが、一度大きな音でなったらマナーモードに
切り替える、後ろの席に座るが最低のマナー。
こんな先生は来なくてよろし。

そして「DASH食とは具体的にどんなもので何の略ですか」という質問者。
何の略かも答えられない演者。
自分で調べればいいのに「DASH食」も知らない自分を皆の前にさらけ出し
ている。

どこの研究会、講演会にもいるKY。

少し後味の悪い講演会でした。

<参考サイト>
PSA集団検診
http://wellfrog.exblog.jp/6944888
http://ja.wikipedia.org/wiki/ノブレス・オブリージュ
dash食
http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt6/salt6-04-01.html
高血圧を防ぐDASH食って?
http://allabout.co.jp/health/healthfood/closeup/CU20070122A/index3.htm


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by esnoopy | 2008-04-28 00:10

小脳障害におけるめまい疾患の鑑別


浅の川総合病院脳神経センター 廣瀬源次郎先生

はじめに
小脳は視覚系、固有感覚系とともに前庭・小脳系として四肢体幹の筋肉を有効に活性化して四肢・体幹動作の協調制御に関与し、平衡感覚を保持する機能を持つ。
そのため、小脳障害では何らかの平衡運動障害がみられると同時に、急性障害では小脳から密な連絡を受ける前庭神経核機能にも左右アンバランスが突然生ずるため、眼球運動異常を伴い、しばしば回転感を伴い、自己あるいは周囲が回転する錯覚を経験する回転性めまいを訴える。
一方、徐々に起こる小脳疾患である腫瘍や変性疾患では、左右アンバランスが小脳の持つ特徴的代償機能により補正されることから、回転感の錯覚は起こらず、急性回転性めまいとはならず、緩徐進行する小脳失調だけの訴えが多い。

回転性めまいを来たす小脳疾患

回転性めまいを来たす小脳疾患の代表は、急性の血管障害で、小脳梗塞、椎骨脳底動脈不全症と小脳出血であるが、小脳を含む脳幹脳炎(傍腫瘍性を含む)でも異常眼球運動であるオプソクローヌス、ミオクローヌスを伴い、重篤な急性めまいを来たすことが多い。
上眼瞼向きや下眼瞼向きの垂直性自発眼振がみられる疾患、たとえば小脳結合腕や虫部脱髄巣を有する多発性硬化症、脊髄小脳変性症、Chiari奇形1型、フェニトイン中毒などでは、血管障害でなくとも回転性めまいがみられる。表に急性めまい・ふらつき症状を来たす小脳疾患をほぼその頻度順にあげる。

小脳血管障害の鑑別
突然に起こる急性回転性めまいと平衡感覚障害は本症の特徴であり、意識清明にもかかわらず、はげしい頭痛と嘔吐に加え小脳失調による著明な立位・歩行障害があれば小脳出血が疑われる。
通常、小脳歯状核周辺に出血することが多い。
めまいと平衡障害だけで意識清明、頭痛がなければ、小脳梗塞をまず念頭に置くべきである。
小脳血管支配は、上小脳動脈(SCA)、前下小脳動脈(AICA)および後下小脳動脈(PICA)による。

SCA症候群では、小脳半球上面・側面だけでなく、中脳、外側橋上部の虚血を来たすことから、病側の運動失調、企図振戦、回転性めまい、悪心・嘔吐、健常側への水平性眼振、著明な運動失調とめまいがみられ、眼球は健常側に偏位し、対側への衝動性眼球運動はovershoot、病側への運動はundershootする。
さらに、橋症状として対側体幹・上下肢の温痛覚低下、深部感覚低下がみられる。

AICAは、内耳動脈を介して内耳末梢迷路を灌流するほかに、中枢では吻側前庭神経核、中小脳脚、片葉、および近在の種々の小脳小葉を支配しており、本動脈域の虚血は小脳半球中部の虚血とともに橋下部外側虚血を来たし、PICAによる小脳障害と同様の病側運動失調、推尺障害とともに、前庭神経炎様の方向一定性眼振がまれにみられるが、ほかに橋症状が加わることが多い。
AICA症候群の特徴は、その分枝である内耳動脈も虚血を来たし末梢蝸牛症状である難聴が小脳・橋症状とともにみられることである。

PICAは尾側前庭神経核、延髄背外側、小脳垂、および小脳結節を支配する。
本動脈は内側枝と外側半球枝に分かれ、前者内側枝は小脳虫部の下部前庭小脳(片葉・小節)を灌流しており、この枝単独の虚血では急性めまいを来たし、その所見として回旋性方向一定性眼振のみがみられることから、急性の末梢性前庭臆害に似た症状を来たす(偽性迷路徴候)ため、前庭神経炎との鑑別が重要である。
後者の虚血では下部小脳半球の広範囲の梗塞を来たし、病側への偏い、推尺障害などの著明な小脳症状がみられる。
またPICAは延髄外側をも灌流するため、この領域での虚血は、延髄外側症候群=Wallenberg症候群として特徴的症候を呈すことでよく知られている。

出典  Medical View Point 2007.1.10

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by esnoopy | 2008-03-10 00:05

メタボ健診 その1

メタボ健診 その1
メタボ健診の影響によるがん検診の停滞が心配
国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部長 斎藤 博 氏

特定健診・特定保健指導(メタボ健診)の実施を目前にして、各保険者、中でも、市町村国保は、後期高齢者医療制度への拠出金増額というペナルティーに脅え、万全の準備を進めている。
国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部長の斎藤博氏は「がん対策基本法に基づいて、自治体は2007年4月から、がん検診の質向上の体制作りに着手している。この取り組みに遅れが出なければいいのだが」と心配する。

2007年4月に「がん対策基本法」が施行され、それを受けて「がん対策推進基本計画」がまとまりました。
死亡原因第1位のがん対策として、数値目標や達成時期が盛り込まれるなど、これまでの「健康日本21」や「対がん10か年総合計画」より、意味の重い計画です。

がん検診推進で死亡率3.9%減少が目標 
計画では「75歳未満のがんによる年齢調整死亡率を今後10年間で20%減らす」との全体目標が示され、話題になりました。
この20%のうち10%は現状のままで減少すると見込まれ、残りの10%を対策により減少させる目標が立てられています。
その達成のために、がん医療の均てん化、がん検診の推進、たばこ対策の3つの課題が掲げられました。
それぞれ、一定の根拠に基づいて死亡率の減少率が計算されています。

その一つ、がん検診では、検診受診率を10年以内に50%にすることで、3.9%の全がん死亡率減少を目指しています。
この目標達成に向けて、市町村は、がん検診の事業評価を行うチェックリストなどを取り入れるよう指導されています。
そして今後は、受診率、精検率、がん発見率などのデータを把握するだけでなく、その分析結果を含め、データをフィードバックすることで、それらを生かした精度向上の取り組みを市町村が行うことになるかと思います。

ところが、そこへ「特定健診・特定保健指導(メタボ健診)」という新しい事業が加わり、地域の保健分野の現場では、人的資源がメタボ健診に割かれ、がん検診への取り組みがおそろかになっているところがあるようです。
新聞でも報道され、私自身も、複数の関係者から話を聞きました。

全国の現場をすべて調べたわけではなく、明確な根拠はありませんが、メタボ健診が、がん検診の質向上に、何らかの影を落とすのではないかと心配しています。

有効な検診を正しく行う体制作りが出発点 
私の専門は、癌を早期に発見し、早期の治療へつなげる「検診」です。これは、健康状態を評価し、隠れた疾患や危険因子の有無を調べる「健診」と少し異なりますが、健康な人を対象としている点、受診者に死亡率減少をはじめとする利益=健康結果(health outcome)の改善がもたらされるかについて、科学的な証拠を示す必要がある点など、基盤は共通です。ただ、この証拠、つまりエビデンスの有無に関しては、両者に違いがあります。

検診は、死亡率減少を実現することが目的で、そのためには「有効な検診」を「正しく」行う体制作りが極めて重要です。
科学的に有効性の確立した検診を実施する、その有効性を最大化し、不利益を最小化するために、精度管理(事業評価)を行う、そして受診率を上げる対策を講ずることで、初めて目的達成が可能になります。

がん検診で、科学的に効果が確立され、不利益とのバランスの上からも推奨されている「有効な検診」は、大腸がん検診、乳がん検診、胃がん検診、など5つです。

そして、今、求められているのは、これらのがん検診を「正しく行う」行う体制作りであり、そのためには、少なくとも従来レベルの人的資源は必要です。

個人の健康・医療情報管理の一元化の基盤になるか 
これまでのわが国のがん検診で、有効な検診を正しく行ってきたかと聞かれれば、不十分だったと言わざるを得ません。

「有効な」については、エビデンスのない検診も行われてきました。
また、「正しく」については、例えば、2005年の大腸がん検診では、要精検者のうち、25%が未受診、20%が未把握のままでした。

前者は、がん検診ガイドラインで有効性がきちんと整理される道筋がようやくついてきたところですが、後者は、その体制が極めて不十分なのが、わが国の現状です。
こうした現状を打破するきっかけが、がん対策基本法の施行であり、昨年4月から、ようやく精度管理を行う体制作りが検討され始めました。

しかし、市町村の中には、メタボ健診の目標値(受診率65%、保健指導実施率45%、メタボ減少率10%)の未達による、後期高齢者医療制度への拠出金増額という罰則に脅え、保健師らの業務の重心が、メタボ健診にシフトしているところがあると聞いています。
そういう自治体が、全国で何%なのか把握していないので、軽々には言えませんが、少なくとも保健師は使命感の一方で、多忙を極め、十分な活動ができていないというのが、私の認識です。

がん検診は、これまで“弱者”でした。
死亡原因第1位の疾患であるにもかかわらず、その対策の推進速度が、時の情勢にによって、何度も減速しています。
今回もメタボ健診の影響で、がん対策としてのがん検診がおろそかにならないことを願っています。

 メタボ健診が、有効性の確立された手法を用いるのか、その事業評価をどう行うのかの詳細を私は知りませんので、これが事業としてどう発展していくのかについては、コメントできません。
ただ、メタボ健診がうまく軌道に乗れば、各種の検診・健診結果や診療記録などが、個人にひも付けされるとの期待はあります。
社会保障カードの導入が2011年に迫っていることもあり、メタボ健診が、個人の健康・医療情報の一元管理の基盤になるかも知れません。メタボ健診に期待するとすれば、この点です。

Nikkei Medical ONLINE
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/200802/505579.html版権 日経BP社

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<自遊時間>
たまたま、ある医学雑誌の記事を読んでいたら「角膜はなぜ透明か?」という内容の投稿に目がとまりました。
今まで謎だったという眼科医のお話で、血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)と絡めた研究でNatureに掲載されたということでした。
元来無血管である網膜中心窩に新生血管が出来るのが加齢黄斑変性であるということだそうです。

「無」ということを深く考える。
何だか般若心経の教えのようです。

マナティが角膜に血管を保持している理由
http://okwave.jp/qa3087413.html?ans_count_asc=2

留学記
http://immuno.bioreg.kyushu-u.ac.jp/5352696d751f3088308a/75595b668a18-6b6675307be44fe1/

ボスはいろいろな論文を検索してくるのが上手く、いつも論文を検索している姿には非常に感心させられます。
ラボに面接に来た時のこと、「角膜になぜ血管がないのか分かる? これから投稿するのだけど、様々な血管新生抑制因子のノックアウトマウスでも角膜は正常だけど、うちで着目したある血管新生抑制因子を角膜でノックダウンすると角膜に血管が侵入してくるんだよ。どうだ、面白いだろう。」と言われ、確かに面白いと思いました。そして、ポスドクとして採用された後ラボに行きますと、鯨、インド象、イルカ、さらにジュゴンの眼の切片をポスドクが免疫染色しています!?

一瞬私は眼獣医学のラボにでも来てしまったのかと思い、かなり焦りましたが、どうやらボスはフロリダ・マナティの角膜には血管が侵入しているのに対しマナティ類縁哺乳類の角膜には血管が侵入していないという文献を見つけ、そこに着目していたのでした。
その後、この話はNatureに掲載され、Science誌の“a signaling breakthrough of the year 2006”でも紹介されました。
また、ボスが興味を持てば様々な所からノックアウトマウスを手に入れて来ます。アメリカの凄いところの一つは簡単に種々のノックアウトマウスが手に入ることです。
マウスの専門の飼育施設があり、管理もテクニシャンがしてくれますのでただひたすら実験するだけです。
ここに来てかなりの種類のノックアウトマウスを使って実験しました。
現在は自然免疫とAMD、AMDの活動性を評価する指標(マーカー)の発見、といったプロジェクトを進めているところです。


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-03-03 00:15

血糖自己測定(SMBG)と血糖コントロール

きょうは「血糖自己測定(SMBG)」について勉強してみました。
最近の文献からの紹介とその解説です。
結論は、インスリン治療中でない糖尿病患者の管理における有用性はみられないというものです。
以前、他のブログで
測るだけダイエット法
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2007/10/20
というのを紹介したことがありました。

要するに、毎日体重を測るだけでやせられるというものです。
SMBGも意識を持って測ればいいのでしょうが、ただ惰性で測るだけではダメということなのでしょう。
どんなことをするにしても問題意識を持つ大切さを教訓として与えてくれる文献なのかも知れません。

いずれにしろ経口糖尿病剤服用中の方で、低血糖が疑われる場合にはSMBGが確認に役立つことは間違いないところです。

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自己測定による血糖コントロールの改善効果は疑問
血糖自己測定がインスリン治療中でない糖尿病患者の管理に及ぼす影響:無作為化オープンパラレル群間比較試験

非インスリン治療下の2型糖尿病で血糖自己測定は無効か
Impact of self monitoring of blood glucose in the management of patients with non-innsulin treated
diabetes: open parallel group randomised trial
BMJ Farmer A. et al.2007;335:132-135
University of Oxford,UK
<目的>
インスリンを使わない治療を受けている2型糖尿病患者において、血糖自己測定(モニタリング)の単独あるいは測定結果を自己管理に生かす方法を指導した場合、通常治療に比べ、血糖コントロールの改善効果が優れているかどうか明らかにする。
<結論>
非インスリン治療で血糖が比較的良好なコントロール状態にある2型糖尿病患者において、血糖自己測定は、測定結果を
自己管理へ活用するための指導の有無に関係なく、通常治療に比べ、血糖
コントロールの改善効果が優れているとしる確実な証拠を見いだせなかった。


<解説>
慈医大内科 田崎嶼尚子教授
わが国で血糖自己測定(SMGB)が糖尿病患者の血糖コントロールの手段として日常臨床に導入されるようになったのは1970年半ばのことである。
従前から血糖管理の手段とされてきた在宅検尿に限界があることは明白であったが、簡便な機器がないことや患者自身による血糖測定に対する批判など、SMBGのスタートは障害も多かった。
30年あまりを経てSMBGは1型糖尿病、糖尿病妊婦、そしてインスリン治療中の糖尿病患者にとって欠くことのできない治療の一手段となっている。
一方、2型糖尿病におけるSMBGの有用性はまだ定まっていない。

今回のDiGEM研究では、インスリンを使用していない2型糖尿病患者453人(男性57%)を通常治療群(3カ月ごとに受診、SMBGなし)、中等度介入群(SMBG1日3回以上、週に2日間測定・記録し、3カ月ごとに指導)および強化介入群(SMBG+結果の説明と食事・運動へのフィードバックに関する指導)に分けて12カ月追跡した。
12カ月後における各群のHbA1c値低下を、試験開始時のHbA1c値で補正して比較した結果、介入群は通常治療群に対してそれぞれ-0.14%および-0.17%と有意な変化ではなかった。
一般的にHbA1c値で-0.5%以上の差異をもって血糖コントロール改善と判断されるところから、著者らは非インスリン治療下の2型糖尿病患者におけるSMBGの有用性に疑問を投げかけている。

SMBGはたとえ1型糖尿病であろうと、ただ測定すればよいというものではない。
得られた情報をインスリン量の微調整や食事・運動にフィードバックすることではじめて血糖改善の効果が現れる。
特に非インスリン治療2型糖尿病においては、患者と医療スタッフが記録された血糖値をもとに、日常生活のどこを改善すればよいか話し合い、それを通じて患者の自己管理に関するモチベーションを向上させ、その結果として患者の行動に変化を促し継続させる、という過程が最も重要である。
したがって、これらの過程を経ない場合、SMBGの有用性にはおのずから限界がある。
Schwedesらは非インスリン治療下の2型糖尿病を対象に同様の検討をし、SMBG群で-0.46%の有意なHbA1c低下があったと報告している。
著者らは、SMBG群にのみ生活習慣改善指導を行ったためだと論じているが、基本的にSMBGの生活指導への反映を切り雛すことはできない。

一方、インスリン治療2型糖尿病におけるSMBGの有用性を示す論文は散見され、メタアリシスを用いた研究においてSMBG群では非SMBG群に比べ有意な低下が報告されている。

また、非インスリン治療中の患者も含め、SMBG群では非SMBG群に比べ全死亡率および糖尿病関連イベント発生率の低下が示されている。

非インスリン治療下の2型糖尿病におけるSMBGの有用性について結論を下すためには、さらなるエビデンスの蓄積が必要と思われる。

出典 MMJ 2007Vol.3 No12
版権 毎日新聞社


SMBGに関するお薦めサイト
http://www.sugawara.or.jp/link/smbg.htm

血糖自己測定(SMBG)について
http://www.toshiba.co.jp/hospital/culture/023.htm

SMBG Basics
http://www.club-arkraysp.net/basics/index.htmlSMBGの保険適用は、現時点ではインスリン自己注射症例に限定されています。

糖尿病NET―血糖自己測定(SMBG)
http://dmnet785.rsjp.net/smbg30/

血糖自己測定
http://www.uemura-clinic.com/dmlecture/smbg.htm
■ 血糖自己測定のメリット
糖尿病治療の動機付け
治療法へのフィードバック
   食事量、食事内容の見直し
   インスリン投与量の変更
低血糖への不安感の解除
日々の糖尿病治療への励み
シックデイへの対処、重症高血糖の回避
血糖値予測訓練
■ 血糖自己測定のデメリット
コストがかかる
採血に伴う疼痛
数字恐怖症


<自遊時間>
1月25日朝刊の朝日新聞朝刊のトップ記事。
「司法試験合格3000人」見直しへ
法務省 質低下懸念受け

心配したとおりになりました。
またまた行き当たりばったりの国策の失敗が見え隠れします。

ある時期から医師も概略4000人から8000人と倍増されました。
そしてこれからも暫定措置として増えます。
はたして医師の質の検証はされているのでしょうか。

質を保つにはそれなりの環境整備が必要です。
診療報酬を含めた改善をしないと質の低下は必定です。

教育界も同様じことがいえます。
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by esnoopy | 2008-01-25 00:07

小児の咳とハチミツ

明けましておめでとうございます
皆様どのように新年を迎えられましたか。

さて、きょうは初めて小児科領域を取り上げてみました。
新年早々ということで”甘い”お話です。
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片岡球子『ゆたかなる富士』リトグラフ
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小児の上気道感染症による咳の改善にハチミツが有効
小児の上気道感染症による夜間の咳の改善にハチミツが有効であることを示すデータが、米ペンシルベニア州立大学のグループによりArchives of Pediatrics & Adolescent Medicineの12月号に発表された。

同グループは、小児の上気道感染症に関連する夜間の咳と睡眠困難に対するハチミツまたは鎮咳薬(デキストロメトルファン)の1回投与の効果を無治療と比較した。
対象は上気道感染症による夜間症状があり、罹病期間が7日以内の2~18歳の小児105例。

就寝30分前にソバのハチミツを投与する群、ハチミツ風味のデキストロメトルファンを投与する群、無治療群にランダムに割り付けた。
最初の来院時とその翌日の来院時に、投与前の夜間と投与した夜間の症状について親に記入させ、咳の回数や程度、患児と親の睡眠の質などについて評価した。

評価スコアはハチミツ群が一貫して最高で無治療群が最低であった。
群間比較でハチミツ群は無治療群より咳の回数と合計スコアが有意に優れていたが、デキストロメトルファン群はいずれの項目においても無治療群を明らかに上回ることはなかった。
ハチミツ群とデキストロメトルファン群の比較では有意差は認められなかった。

同グループは「ハチミツは小児の上気道感染症に関連する夜間の咳と睡眠困難のよい治療法かもしれない」としている。

Paul IM,et al.Arch Pediatr Adolesc Med 2007;161:1140-1146.

出典 Medical Tribune 2008.1.3
版権 (株)メディカル トリビューン社

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<参考>
デキストロメトルファン(DM:多くの市販風邪薬に含有される咳止め成分)
<コメント>
ハチミツ関連業界の出資で設立された米農務省傘下の「米国蜂蜜(はちみつ)協会」から資金提供を受けての研究と、あるサイトで紹介されていました。
「おばあちゃんの教えは正しかった」ということでしょうが、いささかバイアスがかかっているかも知れません。
さて、この報告で気道感染症ということが気になります。
普通の咳は中下気道感染症ですから、上気道を刺激する咳ということなんでしょうか。
そして成人ではどうなんでしょうか。
18歳の小児というのも何だか変ですが、18歳で効くんなら当然成人にも効くということになるんですが。


#小児用の咳(せき)止めシロップは、効果が認められないという理由で多くが市場から排除されたが、民間療法(folk remedy)で古くから使われているはちみつに、シロップと同等かそれ以上の効果があることが、米国の研究で明らかになった。
#同大小児医学臨床研究ディレクターのIan Paul博士は、はちみつは古くから風邪など上気道感染症の症状の治療に用いられてきたが、抗酸化作用や抗菌作用があり、喉(のど)の奥の症状を和らげる効果があると述べている。
しかし同時に、乳児ボツリヌス中毒の危険性がわずかながらあることから、1歳未満の乳児には与えないよう忠告。
また、ラベルに「はちみつ」含有と記載する咳止めも、人工的に添加したものだとして注意を促している。
http://health.yahoo.co.jp/news/detail/?idx0=w16071203

そばはちみつと小児咳
http://www.yamaka-seifun.co.jp/topics/t0003.htm
(普通のはちみつよりも濃色の「そばはちみつ」には、抗酸化物質がより多く含まれるため、「そばはちみつ」がより効果が望まれるとのこと)
はちみつに優れた抗酸化作用
http://health.yahoo.co.jp/news/detail/index.html?idx0=w03070301

<コメント>
1歳未満の乳児にははちみつは食べさせてはいけないということは比較的有名な話です。
1歳を過ぎれば大丈夫かというとそんな保証もないようです。
乳児ボツリヌス症とハチミツ
http://www.kodomo-iin.com/QA/QAbox2002/QA200210-006.html
乳児ボツリヌス症
http://www.harenet.ne.jp/senohpc/disease/botulinus.html
乳児ボツリヌス症
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g3/k01_46/k01_46.html
乳児ボツリヌス中毒
http://www.imic.or.jp/mmwr/backnum/5202.html
ボツリヌス症
http://www.yoshida-pharm.com/information/dispatch/dispatch17.html


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-01-04 00:05

超多剤耐性結核菌の拡大抑制マスク着用の徹底などがカギ

多剤耐性結核菌(MDR)は、特にHIV感染率が高い国々の公衆衛生対策に深刻な影響
を与えている。
しかもここ数年、第2選択薬にも反応しない超多剤耐性結核菌(XDR)が分離される
ケースが増加しており、急速に不安が高まっている。

米国エール大学の研究グループは、XDR症例を効率よく減らす方法を明らかにする
ために、南アフリカ共和国の1つの村をモデルとしてシミュレーションを実施。
その結果、病院で適切な対策を講じれば感染を半減できることが示唆された。
詳細がLancet誌10月27日号に掲載された。

新たな介入をしなければ、この地域のXDRの年間症例数は2007年に194人、
12年に234人に増加すると推計された。
12年末には累積症例数は1302人になる。
XDR患者の72~96%はHIV感染者との予測だ。

しかし、実施可能な施策の有効性を検討した結果、

①マスクの着用(スタッフと患者の遵守強化も実施)
②入院期間短縮と外来での治療の継続
③自然換気の改善
④迅速な耐性検査の適用
⑤入院患者のHIVのカウンセリング/検査/抗ウイルス薬投与
⑥5人規模の隔離(現状は40人を1部屋で隔離している)

などを実施すれば、何も介入しなかった場合の推定感染者を、2012年の段階で
48%減らせることが明らかになった。
(Sanjay Basu et al. Lancet  2007;370:1500-07)

出典; NIKKEI MEDICAL 2007.12
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超多剤耐性結核菌とは
主要な治療薬のほとんどが効かない結核菌。世界保健機関は、第1選択薬とされる
効き目が強いイソニアジドとリファンピシンが効かない菌を「多剤耐性」に分類。
それに加えて第2選択薬のフルオロキノロン系薬剤と、カナマイシンやアミカシンなど
注射薬も効かなくなった菌が「超多剤耐性」と定義される。
今年3月に存在を指摘した米疾病対策センターは、世界の患者の2%程度、東欧や
アジアの一部では15%以上が超多剤耐性菌に感染していると推計している。

Multidrug-Resistant (MDR-TB)
Extremely Drug-Resistant Tuberculosis (XDR-TB)

セカンドライン薬剤に対する広範囲耐性を示すMycobacterium tuberculosis
の出現-世界的状況、2000~2004年
http://www.imic.or.jp/mmwr/backnum/5511.html
超薬剤耐性結核
-米国、1993~2006年
http://www.imic.or.jp/mmwr/backnum/5611.html
日本リザルツ/Results Japan:健康と開発
http://www.results.jp/japanese/proposal/develop.html
超薬剤耐性結核(XDR-TB) (国境なき医師団 日本) 
http://www.msf.or.jp/2007/01/09/5708/xdrtb.php
超薬剤耐性結核菌(XDR-TB):新たな戦略と検査法が必要、従来の方法では
命取りに
http://www.msf.or.jp/2006/11/14/4979/xdrtb_msf.php
広範囲薬剤耐性結核菌(XDR-TB)について
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/epid/2006/tbkj2711.html
新結核用語事典・超多剤耐性結核
http://www.jata.or.jp/terminology/z_15.html
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by esnoopy | 2007-12-11 00:05

インフルエンザの流行阻止

いよいよインフルエンザワクチン接種の時期になって来ました。
毎年のことですが、厚労省や専門家の勧奨もあって私達開業医
は患者さんにワクチン接種を勧めます。
毎年、ワクチン製造株は少なくとも7月には公表されワクチン
メーカーのパンフも早々と配布されます。
そして年明けの1月より流行が始まります。
そして「先生のところでワクチンを打ったんですけど
インフルエンザにかかっちゃいました。」
「うーん、そりゃ悪かったねえ。予防効果も100%というわけにゃ
いかないし、きっと軽く済むよ。」って会話が診療現場で繰り返される
わけです。
毎年不思議でしょうがないのは、 あれだけ大々的に製造株が
公表されながら、そのオフシーズンに実際の流行株がなんだったか
、つまりあたったのかはずれたのかが我々には知らされない
ないことです。
厚労省のホームページ(非常にわかりづらい)や国立感染症研究所の
を見ても出ていません。

その件については見落としているかも知れないのでご存知の方
はコメントをお待ちしています。

「先生、今年のワクチン効かないですね。はずれだったんですか?」
「さあ、私達はただ打って、かかっちゃった人には誰かの代わりに頭を
下げて謝るだけですから。」っていうことになります。
なんだか不条理です。

つい最近には、効くかどうか分かんないワクチンなんか打たなくても
かかったらタミフルをすぐにでも飲めばその方がいいんじゃないか
とも考えたこともありました。
しかし昨今のタミフル禍。
患者さんは勿論インフルエンザ難民ですが、われわれ医療側も
難民なんです。

厚生労働省:健康:結核・感染症に関する情報
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/index.html
国立感染症研究所 感染症情報センター<インフルエンザ>
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/index.html

NEJMの最新号に、インフルエンザの流行をいかにして阻止するか
という論説が掲載されています。
Volume 357:1439-1441 
October 4, 2007 Number 14 4, 2007
Influenza — The Goal of Control
http://content.nejm.org/cgi/content/full/357/14/1439
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<医療ニュース2題>
75歳以上に「主治医」制度 診療報酬骨子まとまる   2007年10月05日
来年4月に発足予定の75歳以上の後期高齢者向け医療保険について、
社会保障審議会の特別部会は4日、独自の診療報酬体系の骨子
をまとめた。
治療が長期化したり、複数の病気にかかったりしていることが多い
75歳以上の特性を踏まえ、患者の心身を総合的に診る「主治医」制の
導入や、退院後の生活を見越した入院治療計画作り、在宅医療での
介護・福祉との連携などを盛り込んだ。
今後、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)
で診療報酬の具体的な内容や単価の検討に入る。
06年の医療改革で、75歳以上は国民健康保険など、従来の医療保険
とは別の新たな公的保険に加入し、診療報酬体系も別建てにすることが
決まっている。
最大の目玉は、外来医療における「主治医」制の導入。
(1)患者の病歴や他の医療機関での受診状況を把握する
(2)患者の状態を年に1回程度総合的に評価する
(3)専門治療が必要な時には医療機関を紹介する
、などの条件を満たした場合、その医師に対する診療報酬を手厚くする。
患者一人ひとりが信頼できる医師を持つことで、複数の医療機関を渡り
歩いて検査や投薬が重複することを防いだり、外来医療から入院、
在宅療養へ移ることをスムーズにしたりする狙いだ。
ただし、すべての高齢者に主治医を持つことを義務づけるわけではなく、
どの医師を選ぶかも患者の意思に委ねられる。
主治医としての診療報酬は、患者が何回受診しても同額となる「定額制」
を導入する見通しだ。
http://www.asahi.com/health/news/TKY200710040329.html
<コメント>
後期高齢者医療の在り方に関する特別部会名簿
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1005-4a.pdf
いつも思うのですが、こういった部会の構成メンバーはどうやって
決まるんでしょうか。
そして彼らは医療現場をどれだけ把握しているのでしょうか?
もしこのメンバーで「後期高齢者医療」が決まるとすれば、これじゃあ
国の施策というよりも「丸投げ」ではないんでしょうか?
そして誰もその結果には責任を取らないという巧妙な図式が出来
上がるというわけですか。
今後の医療現場では「主治医」の売り込み、抱え込みといった
地獄絵が待ち受けているかも知れません。

肺がん発見率9割 血液検査で精度3倍 
東大医科研   2007年10月04日
血液検査で肺がんを高精度で見つける新たな腫瘍(しゅよう)マーカー
の組みあわせを、東大医科学研究所ヒトゲノム解析センターの
醍醐弥太郎・准教授らが開発した。
発見率は約9割で、いま診療で主に使われている3種類に比べて
1.5〜3倍高いという。
また、手術後の経過を予測する組織検査の組み合わせも考案しており、
肺がんの早期発見や術後の治療法選択に役立ちそうだ。
横浜市で開かれている日本癌学会総会で5日、発表する。
肺がんで死亡する人は年に5万人を超え、がんによる死亡で最も多い。
早期発見が難しく、発見時にはすでに悪化していて手術不可能な例
の多いことが一因という。
醍醐准教授らのグループは、肺がん細胞で特異的に作られる
たんぱく質で、血中に分泌されているものを複数見つけた。
このうち二つと、肺がんの指標として従前からあるCEAというマーカー
を加えた三つの組み合わせで、肺がん患者と健康な人の血清を
対象に検出精度を確かめた。
その結果、肺がんの8割余りを占める非小細胞肺がんの場合、
89.1%の感度で検出できることが分かった。
小細胞肺がんの場合も、別の三つのマーカーの組み合わせによる
血液検査で87.5%の検出率だった。
さらにグループは、肺がんは同じ早期で手術をしても、経過に差
があることに着目。
術後5年以上追跡している約400人の患者の肺がん組織を分析し、
特定のたんぱく質三つがいくつ検出されるかで、「5年後の生存率
が8割程度」と経過の良い場合から、「生存率2割程度」と悪い場合
まで4段階で判別できる方法を開発した。
経過が予測できれば、抗がん剤などの治療方法や開始時期の
選択に役立つ。
http://www.asahi.com/health/news/TKY200710040170.html
<コメント>
以前、喀痰細胞診で肺がんと診断がついて専門病院へ紹介
しましたが、部位診断に1年近くかかった症例を経験しました。
腫瘍マーカー陽性(?)で肺がんではない(見つからない)症例も
ありうるわけですね。
腫瘍マーカーを診断に用いる場合には、感度や特異度を十分
理解して利用することは勿論ですが。

以上ニュース記事のため全文掲載させていただきました。

循環器系の話題は
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一般の方または患者さん向きは
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があります。
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by esnoopy | 2007-10-06 00:49

体外衝撃波結石破砕術で糖尿病・高血圧が発生?

腎結石の体外衝撃波治療で糖尿病などリスク増大

腎結石の治療では、結石を体外から衝撃波で破砕する「体外衝撃波結石破砕術」がよく用いられるが、この治療法を受けた患者は、他の治療を受けた患者に比べ、その後数十年間での糖尿病発症率が約4倍、高血圧リスクが約50%高いという報告が、医学誌「Journal of Urology」4月号に掲載された。しかし医師らは慎重な姿勢を示している。

この続きは以下をクリックして下さい。
http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20060421hj000hj
<コメント>
昨年4月の記事ですからトピックスではありません。
文中では反論もあり、決定的事実ではないみたいです。
日本の施設では安全な治療法として、このことに触れた説明は少なくともサイトでは見当たりません。
もし事実ということでしたら術前に説明する必要があります。
泌尿器の専門医ならこの論文は読んでいるはずですから。
薬害エイズ訴訟の時ように、ESWLを施行したその時点で医学常識だったかどうか、が係争されなければよいのですが、先々ちょっぴり心配です。
個人的には数ミリの尿管結石のために糖尿病や高血圧になって命を縮めるのはまっぴらです。
さて、内科医としてこのESWLのために泌尿器科に紹介する際、わざわざ患者さんにこの可能性について説明するかどうか? 悩むところです。
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衝撃波治療は循環器領域にも応用されています。

狭心症の衝撃波治療
心臓病に「衝撃波治療」、東北大が臨床試験へ
(これも2005年11月のいささか古い記事で申し訳ありません。結石治療の10分の1程度の弱い出力の衝撃波ということです。まさか「心臓震盪」は起こらないとは思いますが。)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20051105ik01.htm?from=goo


循環器系の話題は
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「ふくろう医者の診察室」 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopyでとりあげています。
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by esnoopy | 2007-09-15 00:05

CKD診療ガイド2

またまたしつこくCKDです。


CKD診療ガイドhttp://www.jsn.or.jp/jsn_new/news/CKD-web.pdfを、また少し読んでみました。

細かいことで恐縮ですが、まず略語の紹介が気になりました。

文中に

CKD:chronic kidney disease     
慢性腎臓病
ESRD:end stage renal disease   
末期腎不全

       と説明されていました。

専門用語ですので門外漢がつべこべいうこともありませんし、学会で既定の言い回しと思います。ちょっと私見を言わせていただきます。

kidney diseaseが腎臓病であることはわかるにしても、renal diseaseが腎不全という和訳になるのはどうしてでしょうか。


話はそれますが、そもそも、diseaseがつく疾患名は諸外国ではどのようにして決定されるのでしょうか?
英語ではdiseaseの前につく言葉が名詞だったり形容詞だったりします。
例をあげれば、
heart diseaseとはいいますが、cardiac diseaseとはあまりいいません。(cardiovascular diseaseといいますが、この場合には形容詞です)。
またrenal failureとはいいますが、kidneyfailureとは余り言いません。(多分)
逆にkidney diseaseは舌を噛みそうで、renal diseaseの方が言いやすい気がします。(余計なお世話せすいません)

勝手に
Chronic Renal Disease(CRF)。

呼吸器分野でChronic Respiratory Failure(同じくCRF)という表現があるかも知れません。

でも、やっぱり「CKD」は本場、米国の米国腎臓財団(national kidney foundation:NKF)が提唱した概念と表現のため、これ以上何も言えません。
http://www.med.or.jp/nichinews/n180720o.html

  以下  More  をクリックして下さい。

More
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by esnoopy | 2007-08-15 08:21

CKD診療ガイド

ある日のこと。
日本腎臓病学会の「CKD診療ガイド」のエッセンスが書かれた冊子をMRが持って来ました。

ひと言で言えば、早期発見により病診連携をとりながら、早期から治療にとりかかる。
そして透析への移行を出来るだけ先送りにする、という趣旨と受け取りました。

定義、診療定型システムモデル、、日本人のGFR推算式(改訂MDRD簡易式)などの羅列はごもっともとして、問題は治療についてです。

私のような気の短い元循環器専門医(この科を選んだのも、治療効果が結果にすぐに直結するという考えからです)にしてみれば、治療法が一番気になるのです。

以下、エッセンスの中から、治療に関する事項を抜き出してみました。

●まず第一に生活習慣の改善(禁煙、減塩、肥満の改善など)
●血圧の管理目標は130/80mmHg未満であり、緩徐に降圧することを原則にする。
●降圧にはACE阻害薬やARBを第一選択とし、必要に応じて他の降圧薬を併用する。
●糖尿病性腎症では血糖をHbA1c6.5%未満に管理する。
●LDLコレステロールを120mg/dL未満に管理する。
●腎性貧血を疑う場合は、腎臓専門医に相談する。
●エリスロポエチンや経口吸着薬の投与にあたっては、腎臓専門医と相談する。
●腎排泄性の薬剤は腎機能に応じて減量する。
●非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS),造影剤、脱水などは、腎機能低下のリスクである。


そこで、空っぽの頭なりに少しだけ考えてみました。

タバコを吸わず、塩分摂取もそこそこで、標準体重で、血圧正常で、糖尿病もなく、LDLも正常で、貧血もなく、薬剤の服用や造影剤も使わず、勿論脱水もないCKDの患者さんを想定してみました。
さて、腎臓病専門医でない私は、このガイドラインから治療に関して何が得られるのでしょうか。

ステージと診療計画についての、診療計画の内容も頭の悪い私には、何だかよくわかりません。

ごく最近、糖尿病性腎症を合併した途端に、今までの糖尿病の栄養指導はすべて忘れて下さい、と紹介先の病院で言われた糖尿病の患者さんがいました。

金科玉条の蛋白制限も、いろいろ問題がありそうです。

<参考>
慢性腎不全に低たんぱく食は疑問
http://www.npojip.org/newspaper/hodanren/029.htm

ご意見お待ちしております。

というより門外漢の、CKDの治療について迷える開業医に知恵をお授け下さい。
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by esnoopy | 2007-08-14 22:06