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カテゴリ:脳血管障害( 3 )

脳梗塞 (世界の権威に聞く)

Medical Tribune誌の"世界の権威に聞く"という特集号で、Thomas G. Brottメイヨー・クリニック医科大学神経科教授 へのインタビューで勉強しました。

Thomas G. Brott
メイヨー・クリニック医科大学神経科教授
シンシナティ大学を経て1998年から現職。メイヨー・クリニックジャクソンビル研究ディレクター兼任。米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)作成を主導し,NINDS rt-PA Stroke Studyではシンシナティ大学の主任研究者を務める。米国脳卒中協会(ASA)のガイドライン執筆委員などを歴任。


脳梗塞急性期に対する遺伝子組み換え組織型プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA;一般名アルテプラーゼ)静注療法は,それまで積極的な治療法のなかった脳梗塞治療を大きく変えた。
その有用性を証明したのは,米国立神経疾患脳卒中研究所(NINDS)が主導したランダム化臨床試験(N Engl J Med 1995; 333: 1581-1587)である。
NINDS試験に参加したThomas G. Brott教授に,同試験およびその後の脳卒中医療について聞いた。

脳梗塞急性期に対するrt-PA静注療法の有用性を証明
脳梗塞急性期に対するrt-PA静注療法は,現在,標準治療として確立されています。この治療法の有用性を証明したNINDS試験についてお聞かせください。
当時,脳梗塞による脳神経障害を軽減する治療はありませんでしたが,梗塞が完成する前に閉塞した脳血管を血栓溶解薬で再開通させることができれば,障害を軽減できるだろうということは多くの人が考えていました。
しかし,血栓溶解療法は出血リスクを伴うため,そのリスクとベネフィットのバランスがとても重要です。
この問題の克服を可能にしたのはCTとrt-PAです。
CTによる画像検査は脳出血の診断を可能にし,それにより脳出血例への血栓溶解療法は避けられるようになりました。
rt-PAはいわゆる第二世代の血栓溶解薬で,ウロキナーゼやストレプトキナーゼのような第一世代薬に比べて,血栓溶解作用が強く全身への影響が少ないという特徴があります。

脳梗塞急性期に対するrt-PA静注療法の安全性は, 2 つの用量設定試験で検討しました。
それらの試験では,出血リスクを最小限に抑えて最大限の効果を得るには,脳梗塞発症後 3 時間以内のごく早期に治療を開始することが重要であることが明らかになりました。
また,rt-PAの用量については,体重 1 kg当たり0.95mg未満のアルテプラーゼ静注が比較的安全で,かなりの患者で早期の神経学的改善が得られることがわかりました。


その結果を踏まえてNINDS試験を実施されたわけですね。
そうです。
NINDS試験では,発症後 3 時間以内の脳梗塞急性期患者624例に,アルテプラーゼ0.9mg/kgまたはプラセボを投与して比較しました。
対象は,発症時刻が特定でき,NIHSSの評価が可能で,CTで頭蓋内出血の所見が認められない患者としました。
その結果,発症 3 か月後の転帰良好例(modified Rankin Scale 0 ~1 )は,アルテプラーゼ群39%,プラセボ群26%で,アルテプラーゼ群で有意に多く認められました。
一方,懸念された安全性については,36時間以内の症候性頭蓋内出血がアルテプラーゼ群6.4%,プラセボ群0.6%で,アルテプラーゼ群のほうが有意に多かったのですが,全体としてはベネフィットがリスクを上回りました。

この結果を踏まえて,翌1996年に米食品医薬品局(FDA)は脳梗塞急性期に対するrt-PA静注療法を承認しました。


rt-PA静注療法導入で脳卒中医療は劇的に変化
脳梗塞急性期に対するrt-PA静注療法が導入されて,米国の脳卒中医療はどう変わりましたか。
もちろん,rt-PA静注療法ですべての脳梗塞急性期患者を救えるわけではないのですが,少なくとも一部の患者は確実に救うことができるようになりました。
それまでは全身管理に終始していましたから,そのインパクトは非常に大きく,脳卒中医療は劇的に変化しました。
 
rt-PA静注療法は時間の制約を受ける治療です。
ですから,脳卒中が疑われる患者には一刻も早く,この治療が可能な施設に来てもらわなければなりません。
そこで,米国心臓協会(AHA)を中心にブレインアタック連合が結成され,「脳卒中を起こしたら一刻も早く救急車を呼ぼう」と,ブレインアタックキャンペーンが展開されました。
2000年には一次脳卒中センター(PSC)のガイドラインも発表されました。
 
ただ,rt-PA静注療法の実施率を高めるのは容易ではありません。
2004年にはヘルスケア評価機構であるJoint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations(JCAHO)がPSCの認定を開始しました。
もちろん,認定の条件にはrt-PA静注療法が実施可能であることも含まれます。一方,2005年には米国脳卒中協会(ASA)が施設の質を向上させるためのプログラムを開始しました。


米国では,脳卒中が疑われた患者をPSCに搬送することを救急隊員に義務付ける法律がつくられている州もあるようですね。

フロリダ州は,脳卒中が疑われる患者を,JCAHO認定のPSCへ搬送するように求めた最初の州です。
地域の脳卒中救急医療体制を整備するため,AHAやフロリダ病院協会などが共同でFlorida Stroke Act(FSA)を制定し,これが2004年に法制化され,翌年施行されました。

FSAは脳梗塞患者でのrt-PA静注療法実施率を増加させるのに有効でした。
2 つのPSCで,FSA施行前後の各 6 か月間における実施率を調査したところ,FSA施行前8.4%,施行後10.5%と,有意に増加しました。


やはり最も重要なことはより早期の治療開始
rt-PA静注療法以外の新しい治療法についてはいかがですか。
米国でrt-PA静注療法が認可されてから約12年が経過しましたが,その間に脳卒中への適応が認可された薬剤はありません。
唯一,認可されたのは血栓除去用デバイスMerci clot retrieverで,2004年のことです。
このデバイスの先端はコルクの栓抜きのようにらせん状になっており,その部分で血栓を捕捉して機械的に除去します。
このデバイスについて,FDAは患者の転帰を改善するエビデンスがあるとは明言していませんが,脳梗塞急性期患者の血栓除去に有用であるとしました。


rt-PA静注療法のtherapeutic window(治療時間枠)を広げられる可能性はありますか。
その可能性がある治療法として,脳組織における酸素・糖代謝率を抑える低体温療法,脳保護薬の投与などが候補に上がっています。
例えば,脳保護薬については,脳梗塞発症 6 ~24時間後からミノサイクリンを 5 日間経口投与すると,90日後の転帰が改善することが確認されています。 
とはいえ,脳卒中治療で最も重要なことはやはり,発症後できるだけ早期に治療を開始することです。
その重要性はより強く認識されるようになっています。
これはrt-PA静注療法に限らず,どのような治療法にも言えることです。
治療開始までの時間が短いほど,より安全に治療できますし,より高い有効性が期待できます。
PSCの認定にせよFSAの制定にせよ,rt-PA静注療法の導入後に私たちが取り組んできたことはすべて,より早期の治療開始につながっていると言っても過言ではありません。

世界の権威に聞く 脳梗塞
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?


<参考サイト>
ミノサイクリンが急性脳梗塞患者の予後を改善
http://wellfrog.exblog.jp/7216931/

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-04-21 00:14 | 脳血管障害

脳梗塞病型と抗血小板療法 その1(1/2)

日本人の脳梗塞病型と抗血小板療法の実際

出席者
順天堂大学医学部附属 順天堂医院脳神経内科先任准教授
 卜部 貴夫 氏
国立循環器病センター内科 脳血管部門医長
 豊田 一則 氏

脳梗塞の発症にはさまざまな背景があり,その分類や治療戦略も多岐に渡ります。
本対談は,脳梗塞病型や危険因子, ならびに抗血小板療法に関する知見と薬剤選択の実際についてです。


施設における脳梗塞病型
卜部 
本日は脳梗塞の疫学的現況を交えて治療の実際を豊田先生と話し合ってまいります。
まず急性期脳梗塞症例の病型分類についてですが,当院では2007年 4 月から脳卒中患者のレジストリーを本格的に始めておりTOAST分類を用いて病型分類を実施しています。
10月までの集計によると脳梗塞が80%を占め,その内訳は心原性脳塞栓症,ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞の順です(図 1 )。
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豊田 
「その他の脳梗塞」の内訳についてはいかがですか。

卜部 
「その他の脳梗塞」のうち,原因が確定できたものは胸部大血管術後や心カテーテル術後の発症例が最も多く,動脈解離・分岐粥腫病変(BAD)・大動脈弓部複合粥腫が含まれます。
原因未確定には,2 つ以上の原因によるものが含まれ,多くは頸動脈狭窄とそれ以外の病因,例えば心房細動や卵円孔開存・大動脈弓部複合粥腫の合併で,こうした症例が最近増えています。

豊田 
当センターの2006年 1 年間に入院した急性期脳梗塞症例の病型分類では,一過性脳虚血発作(TIA)を除外すると,心原性脳塞栓症が約 3 分の 1 を占め,次いでアテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞の順です。
循環器病センターという施設特性のために心原性の割合が高いと考えられます。
また,原因が確定した「その他の脳梗塞」には動脈解離やBADなどが含まれます。
複数病因を有する場合ですが,その際には治療の優先順位をかんがみた病型分類も考慮します。
例えば卵円孔開存と心房細動を合併する症例であれば,卵円孔開存による奇異性脳塞栓の可能性が低い場合には心房細動を優先して,心原性に分類しています。


病型分布の変化には糖・脂質代謝異常の増加が関与


卜部 
アテローム血栓性脳梗塞が増えてきた背景には,日本人の脳卒中危険因子が変化してきたことが挙げられます。
当院ではどの病型で見ても高血圧の頻度が最も高く,次いで脂質代謝異常・糖尿病となっています。
また,糖尿病と診断されていない脳梗塞症例でも,入院時に経口糖負荷試験を行うと62.8%の高頻度で何らかの糖代謝異常が見つかります。
こうした耐糖能異常(IGT)と糖尿病を合わせると,当院では脂質代謝異常を抜いて 2 番目に多い危険因子となります。

豊田 
九州医療センターで2001~04年にかけて,発症24時間以内に入院した脳梗塞症例における危険因子を調査した結果,やはり高血圧が圧倒的に多くアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞患者の 4 分の 3 以上に認められました。
また,糖尿病や脂質代謝異常の患者も30~40%でした。

卜部 
個々の危険因子のみならずそれらが重積したメタボリックシンドロームが脳梗塞の危険因子になるというデータが,久山町研究で最近発表されていましたね。

豊田 
脳卒中データバンクに登録された脳梗塞患者を急性期再発例と非再発例に分けて,その背景因子を調査・報告したのですが,再発例・非再発例ともに高血圧があった患者が60%強・脂質異常症は23%・糖尿病は25%という結果でした(表 1)。
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また糖尿病に関してはIGTを含めて考えるとさらに割合が増すと予想されます。
となると,脳梗塞の大多数の患者が何らかの危険因子を併せ持つと考えてよいかと思います。


再発予防としての抗血小板療法
卜部 
2006年に発売されたクロピドグレルは,約 2 万例を対象としたCAPRIE(Clopidogrel versus Aspirin in Patients at Risk of Ischaemic Events)で,単独投与により血管イベント,脳梗塞・心筋梗塞・血管死などの累積イベント発症率,虚血または出血による再入院率が有意に低下するなど,数々のベネフィットが示されました。

同試験のサブ解析では,糖尿病患者や脂質異常症治療薬を服用している症例で,よりイベントが予防されることがわかりました。
こうしたエビデンスに基づき,既に欧米の各種ガイドラインで再発予防に有効な薬剤としてクロピドグレルが推奨されています。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109221&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社

<過去ブログ>
脳梗塞と抗血小板療法 その(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080224
脳梗塞と抗血小板療法 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080225/1

<参考サイト>

わが国におけるStroke unitの有効性に関する多施設共同前向き研究
http://stroke-unit.jp/faq.html
病型を確定することは治療方針を決めるうえでも重要ですが,COPE TrialではTOAST分類によって病型の診断を行うことが定められています。
TOAST分類では、脳血管障害を脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、TIAに分類した上で、脳梗塞をアテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症,ラクナ梗塞,その他の原因または分類が不能の脳梗塞に分類しています。
ただし,日常臨床においてこの分類を運用する際にはいくつかの問題があります。
1 つの問題は,アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞との鑑別です。
TOAST分類では,アテローム血栓性脳梗塞は1.5cmより大きい梗塞巣があり,責任血管に50%以上の狭窄が認められ,塞栓源となる心疾患が否定されていることと規定されています。梗塞巣が1.5cm未満の場合はラクナ梗塞と診断されるのですが,実際には,主幹脳動脈に明らかな狭窄が認められないが,梗塞サイズが1.5cm程度と比較的大きい症例が少なくありません。
このような症例の場合,主幹動脈から穿通枝に至る入口付近にプラークが付着していることがあります。
症状としては麻痺が進行し,通常のラクナ梗塞より後遺症が残る確率が高いようです。
つまり,アテローム血栓性脳梗塞にかなり近い病態と言えますが,TOAST分類上はラクナ梗塞と診断します。

アテローム血栓性イベントリスクの高いすべての患者に対して2剤併用抗血小板療法を行うべきか?
http://www.natureasia.com/japan/ncp/ncpcardio/pp/0608/1.
アテローム血栓性イベントリスクのある患者における、clopidogrelとアスピリンの併用療法は支持されない。症候性患者では効果が得られる可能性があるが、2剤併用抗血小板療法は、無症候性患者にとって有害である可能性がある。



高度頸動脈狭窄に対する薬物療法とその指標について教えて下さい
http://www.kessen-junkan.com/2005061302/38.
チクロピジン,クロピドグレルはADP 受容体のP 2 Y12 を特異的に阻害することが最近のクローニングで明らかとなっている.
チクロピジンの作用機序はADP によるアデニレートシクラーゼの抑制を阻害し,サイクリックAMP を増加させる.
その結果,血小板膜糖蛋白(GP2b/3a)複合体へのフィブリノゲンの結合を抑制し,ADP 依存性の血小板凝集抑制作用を示すと考えられている.
Ticlopidine Aspirin Stroke Study(TASS)ではTIA,軽症脳梗塞,網膜梗塞を対象とし,チクロピジン500 mg とアスピリン1,300 mg の比較検討が行われ,3 年目の判定でチクロピジンはアスピリンに比べて脳卒中の発症を21 %低下させたとしている.
しかしチクロピジンでは下痢,皮疹,好中球減少などの副作用の出現率がアスピリンよりも高率であった.
わが国でのチクロピジンの標準的な投与量は100 ~ 200 mg/日である.
先に示したATT のメタ分析ではチクロピジン単独投与は心筋梗塞,脳卒中または血管死などの血管性事故の発生率を32 %減少させており,アスピリンの23 %に比べ有意ではないが高い有効率を示している.
クロピドグレルはチクロピジンと同様のチエノピリジン骨格を持ち,血小板血栓の形成を抑制し,チクロピジンに比べ副作用が少ない薬剤である.
本剤の効果についてはすでに1996 年,アスピリンを対象としたCAPRIE 試験でその有効性が確かめられている.
抗血小板薬の種類に関するATT のメタ分析ではチクロピジン,クロピドグレルの血管イベント低減効果はアスピリンに比べてそれぞれ12 %,10 %勝っているが有意差は認めていないが,両者を一括して解析するとアスピリンとの差は有意になり,アスピリンよりも優れた結果になる.
本邦では最近,チクロピジンを対象とした臨床試験が開始され,その安全性が確かめられ,近い将来,本邦においても認可されることを期待したい.
欧米では軽症脳梗塞とTIA を対象としてクロピドグレル75mg 単独と,クロピドグレル75 mg とアスピリン75 mgの併用療法で血管イベントを減らすことができるかを比較するMATCH
(Managemant of Atherothrombosis with Clopidogrerl in High risk patients)が行われ,併用療法は単独療法に勝る効果はなく,むしろ出血による合併症が多くみられた.

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by esnoopy | 2008-04-07 00:21 | 脳血管障害

動脈硬化と脳機能に密接な関係

高齢者の学習能力と記憶能力に影響
〔米テキサス州ダラス〕 メリーランド大学(メリーランド州ボルティモア)心理学科のShari R. Waldstein教授らは,加齢研究の参加者1,749例について動脈硬化度と脳機能の関係を検討し,動脈硬化は高齢者の学習能力や記憶能力の低下をもたらすとの結果を Hypertension(2008; 51: 99-104)に発表した。

脈波の伝播速度で検討 
加齢に伴い,動脈は硬化し,これが進むと収縮期血圧(SBP)が上昇する。
SBPの上昇は心血管疾患(CVD)リスクの上昇を意味する。

動脈硬化の指標には,脈圧(PP)とより直接的な脈波伝播速度(PWV)がある。共同研究者で米国立加齢研究所(NIA)の心血管科学研究所臨床心血管研究部長であるSamer Najjar博士は「心臓が拍動するたびに血液が拍出され,これが波のように大動脈を流れ器官に到達するが,その際に大動脈が膨張する。
このようなPWVは測定可能で,動脈壁が硬いほど脈波は速く移動する」と説明している。
PWVはPPよりも鋭敏な指標とされているが,PPとPWVの上昇はいずれも脳卒中などのCVDの独立した予測因子であることがこれまでの研究で明らかにされている。


記憶力に大きな差 
今回の研究では,NIAが1958年に開始し,現在も継続しているボルティモア加齢縦断研究(Baltimore Longitudinal Study of Aging)の参加者1,749例(平均年齢57歳)から得られたデータを検討した。
被験者は初回スクリーニング時に認知症と脳卒中がなかった。

14年間の追跡期間中,スクリーニングを繰り返して脈圧上昇を検討し,言語記憶と非言語記憶(言葉と絵の想起),作動記憶(情報を保持し処理する能力),注意力など広範囲に及ぶ脳機能の検査を定期的に行った。

今回の研究では,11年間追跡した582例(男性258例,女性324例)で測定したPWVのデータも解析した。
なお,PWVは試験開始時の測定値のみ含めた。

その結果,PPおよびPWV上昇が記憶に影響を及ぼすことが明らかになった。

Waldstein教授は「動脈硬化が進行している症例では学習,記憶と作動記憶に経時的な低下が見られた。
研究では認知症または脳卒中と診断された症例は解析対象外としていることから,今回の解析結果は,動脈硬化度が認知症や脳卒中既往のない症例における認知機能の低下と関連していることを示している」と述べている。

一方,注意力,手と眼の協調,ものの名称を正しく挙げる能力や発話の流ちょう性には動脈硬化の影響は見られなかったことについて,同教授は「特定の脳領域が動脈硬化の影響を受けやすいことを示している」と説明している。

研究では,現在得られる最大の,PPと認知機能の繰り返し行われた同時検査の値を使用し,広範囲の神経心理学的検査を実施したが,被験者は教育レベルが高く,白人の割合が高かったことから,他集団でもこの知見が当てはまるとは限らない。


脳機能保護を目標とした動脈硬化対策を 
Najjar博士は「動脈硬化に関連する危険因子を治療すれば,最終的には高齢者の脳機能の保持に役立つ可能性がある」と期待を寄せ,将来的には動脈硬化が精神機能の維持を目的とした薬剤療法の標的となる可能性も示唆している。
また脳機能の維持を目的として,動脈硬化を直接の標的とする新しいクラスの薬剤が開発される可能性がある
今後は各種クラスの降圧薬を検討し,PPとPWVと認知機能との関連に及ぼす影響を調べる必要があるとしている。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4108011&year=2008Medical Tribune  2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
文中に「動脈硬化を直接の標的とする新しいクラスの薬剤」とありますが、現時点ではそれを謳った薬剤がないことを不思議に思ってきました。
抗動脈硬化作用を目的にスタチンやARBが、脂質異常や高血圧のない方に使用されている例も現時点であるかも知れません。
EPA製剤が現時点での抗動脈硬化剤といったところでしょうか。
昔エーザイがエラスチームという薬剤を出していました。
もちろん今でもあるのでしょうが、とんと話題にならなくなりましたが。
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平松礼二 「路・花の月」 日本画4号
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v47790688?u=;ginza_kaigakan

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-03-17 00:35 | 脳血管障害