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消化器内視鏡の最新情報

消化器内視鏡の進歩はめざましいものがあります。
胃カメラひとつをとりあげても経口式では患者さんが嫌がる時代です。
最近、解像度に関しては経鼻式は経口式に少し劣り、2割の早期がんを見落とすという話を聞きました。
相変わらず経口式でやっている私としてはグッドニュースです。
開業医では経鼻式が普及しつつあるようですが、病院ではどうなんでしょうか。
以下のカプセル式の解像度も気になります。

特別企画
第74回日本消化器内視鏡学会総会ランチョンセミナー
消化器内視鏡の最新情報


座長
杏林大学医学部第三内科教授
高橋 信一 氏
演者
大阪医科大学第二内科教授
樋口 和秀 氏

 
近年,臨床の場にさまざまな機能をもった内視鏡が登場し,食道や小腸など,従来は使用できなかった部位に特化した内視鏡も開発されている。また,コンピュータの画像解析による診断の効率化や操作性の向上もみられ,診断・治療の上で大きく期待されている。ここでは,当研究室で開発中の,日本初の自走式カプセル内視鏡を中心に,消化管内視鏡の最新情報を紹介したい。

小腸内視鏡

最近,患者に嚥下させることにより消化管内を撮影するカプセル内視鏡が登場し,これまで不可能であった小腸粘膜表層の病変を捉えることが可能となった。
一方,オーバーチューブと内視鏡の先にそれぞれバルーンが付いたダブルバルーンおよび,オーバーチューブのみにバルーンが付いたシングルバルーン小腸内視鏡も新たに登場し,小腸粘膜からの出血も,内視鏡下で治療を行うことができるようになった。
また,1人でも操作できるなど,操作性も向上している。
 
大阪市立大学医学部附属病院において,原因不明の消化管出血患者32例を対象に,カプセル内視鏡とダブルバルーンの病変認識率・診断率を比較したところ,病変の検出率はいずれも約70%であったが,陽性所見認識率はカプセル内視鏡が優れていた。
カプセル内視鏡はスクリーニング的要素が,ダブルバルーン内視鏡は治療的要素が強いと考えられる。
診断面では,カプセル内視鏡はびらんや血管異形成などの小病変を検出しやすいのに対し,ダブルバルーン内視鏡では憩室や腫瘍を検出しやすいなど,相補的な部分も多い。
現時点では,小腸出血で緊急治療を要する場合はダブルバルーン,時間的余裕のある場合はまずカプセル内視鏡を行うことが勧められる。
ただしカプセル内視鏡では,特に消化管閉塞・狭窄・瘻孔が疑われる症例では,その停滞・滞留に十分な注意が必要である。
 
カプセル内視鏡は2枚/1秒,計5万枚の撮影が可能で,付属のソフトにより連続する類似画像を1枚の画面に結合することで効率的にチェックできるオートマチックモードや,色調とパターンの変化に基づき,より特徴的な画像を抽出するクイックビュー,赤みを帯びた画像を抽出する赤色領域推定表示などの機能がある。また前処置薬服用により,病変の検出率が向上することも明らかとなった。
今後は,標準的な前処置法の検討が必要と考えられた。


NSAIDs小腸潰瘍 
従来,NSAIDs潰瘍は胃・十二指腸のみが注目されていたが,原因不明の小腸出血の約10%がNSAIDs小腸潰瘍であることが知られてきた。
カプセル内視鏡を用いると,NSAIDsを3か月以上毎日服用している変形性関節炎,関節リウマチまたは非特異的関節炎患者(nonspecific arthritis)では,小腸潰瘍がコントロール群に比べ,約60%も高い確率で認められるとのデータもある。
 
このような小腸潰瘍に対する予防法としては,例えばプロスタグランジン(PG)製剤や防御因子増強剤などが考えられ,胃潰瘍とは異なり,酸分泌抑制薬は無効である。
 
しかし,NSAIDsによる胃への影響を考えると酸分泌抑制剤の使用機会は多く,小腸の炎症を悪化させない,抗炎症作用を有するラニチジン(商品名:ザンタックR)のようなH2ブロッカーも選択肢の1-つとなると考えられる。


H2ブロッカーと潰瘍治療の質
胃潰瘍において,治癒の状態を平坦型と非平坦型とに分けて再発率を見ると,平坦型は再発しにくく,また潰瘍瘢痕局所の炎症が抑制されていることが明らかにされている。
平坦型の治癒を促すためには,PG産生作用や抗炎症作用のある薬剤が適していると考えられる。
 
H2ブロッカーのなかで,ラニチジンは,好中球浸潤抑制,好中球の活性酸素産生能抑制および好中球エラスターゼ放出抑制作用が認められることが,動物実験により証明されている。そこで実際にヒトの潰瘍について多施設で検討したところ(図1)12週目の胃潰瘍の治癒率はほぼ95%以上であったが,ラニチジンでは平坦型瘢痕治癒率が63%であり,潰瘍治癒の質(QOUH)が優れていることが示された。
例えばHelicobacter pylori(H.pylori)除菌後の治療においても,ラニチジンは,抗炎症作用による除菌後の再発抑制効果が期待されること,偽陽性などの問題も少ないため,除菌終了1か月後のH.pylori除菌判定がラニチジン内服中でも可能,PPI(Proton Pump Inhibitor)に比べマイルドで日本人に合った酸分泌抑制作用,さらにPPIよりも安価,というメリットがあると考えられた。


食道用,大腸用のカプセル内視鏡と今後の課題 
食道用のカプセル内視鏡は,仰臥位で飲み込んだ後,徐々に頭を上げていくことで,食道内をゆっくりと写真をとるもので,海外では逆流性食道炎やバレット,食道静脈瘤などのフォローアップに用いられている。
ただし,今後これまでの内視鏡所見との比較検討が必要と考えられる。
 
大腸用のカプセル内視鏡は,前後にレンズが付いているためヒダの後方も撮影でき,憩室や腫瘍,ポリープなどが明瞭に描出できるのが特徴である。
 
すべての部位に共通するカプセル内視鏡の今後の課題としては,自立して動くカプセル,病変を認識しリアルタイムで観測できるシステム,体外からの電力供給,消化管内への治療薬・試薬の散布,腸液や腸内ガスの採取,および病変の自動認識システムなどが挙げられよう。


日本初の自走式カプセル内視鏡
われわれは現在,日本初の"自走式カプセル内視鏡"を龍谷大学理工学部・大塚尚武教授のグループと共同開発している。
構造が簡単であること,動力を非接触で供給できること,また遠隔制御が可能であることをコンセプトとし,磁場を利用した駆動制御を採用した(図2)。
磁石に交流磁場を与え磁石を振動させてカプセルの"ヒレ"に伝えることにより,ヒレが振動を推進力に変え自力で移動するもので,交流磁場の波形を変化させることにより速度や進行方向を制御でき(図3),バックや回転も可能である。現在,胃の模型に,ポリープに見立てたビーズを入れてカプセルを実際に動かし,撮像させる実験を行っている。
焦点距離や明るさなどの課題はあるものの,撮像可能な段階まできている。

以上,ここに紹介したのはほんの一部であり,最近注目されているNOTESと呼ばれる胃や子宮からの内視鏡下腹腔内手術をはじめ,内視鏡分野は今後さらなる進歩が期待される。

出典 Medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社



画像メモリの都合で本日をもって

井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp

に引っ越します。

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by esnoopy | 2008-05-21 00:10 | 消化器科

各国の肝癌の診断と治療 その2(2/2)

スクリーニング間隔をめぐる問題

神代 
スクリーニングの間隔についてはいかがですか。
工藤先生が紹介されたように日本では,超高リスク群は3~4か月毎に経過観察するとしていますが。

Bruix 
間隔はリスクのレベルではなく,腫瘍の成長速度に基づくべきだと考えています。
なかには腫瘍の発症リスクが非常に高い患者もいますが,一般に腫瘍はそれほど早くは成長しません。
欧米のガイドラインでは6か月毎としていますが,これは6か月毎の超音波検査で経過観察を実施した研究を踏まえています。
中国で実施された研究であり,唯一の研究です。
肝硬変患者は6か月毎に1.5%を超える頻度で肝細胞癌を発症することが示されました。
正常肝や慢性肝炎の人ではこれよりも低い頻度で発症します。
現在,フランスでも6か月毎と3か月毎の経過観察を比較する無作為化比較試験が進められています。

工藤 
しかし,C型肝硬変からの肝発癌の頻度は日本と欧米では違います。日本では毎年7~8%と高率です。

Bruix 
確かに高いと思いますが,それはコホートのリスクに依存します。

工藤 
高リスク群では間隔を短くすべきだと思います。

Bruix 
現在,欧州の肝細胞癌のほとんどはアルコール性肝炎によるもので,多少の差はあるものの男性が多く,50歳より高齢です。
他の新たなパラメータを見出すことは困難ですし,検査間隔の短縮はさほど重大な事項とは考えていません。

Han 
腫瘍の倍化時間に基づいて経過観察の間隔を決定するというBruix先生の考えに同意しますが,診断の感度や特異度を上げるという意味で日本の先生方の意見にも同意します。
やはり超音波検査だけでは一部の腫瘍を見逃すことがあります。
特に大結節性肝細胞癌に類似した多結節性患者を見るのは困難ですので,こうした症例では診断ミスを避けるため頻回のスクリーニングが推奨されます。

Bruix 確かにそうです。

Han 
私たちは肝細胞癌の進行を予測するためのソフトを作成しています。
高リスク群,中リスク群,低リスク群の3群に分けていますが,おそらく高リスク群は日本での超高リスク群に含まれます。
ただ,いくつかの問題点があります。
例えば,代償性肝硬変の一部はキャリアーまたは単なる肝炎として過小評価されており,日常臨床で医師が患者に代償性肝硬変かどうか尋ねることはなく,データ集積が難しいのです。
 
最近,FibroScanRを用いて患者が高スコアか低スコアかをスクリーニングしています。
しかし,B型肝硬変はC型肝硬変と違い,評価がやや難しいのが難点です。
欧州の各国では低リスク群をスクリーニングから除外していますが,肝炎はゆっくり進行します。
それらの一部は肝硬変患者のリスク群に移行しますので早期からの注意深い観察が必要です。
現在私たちは高リスク群で3か月間隔と6か月間隔,低リスク群で1年間隔と6か月間隔の経過観察による予後の差を比較する無作為化比較試験を計画しています。

神代 病理の立場からは,B型肝硬変患者により注意を払うようにといつもアドバイスしています。
B型肝硬変とC型肝硬変では再性結節の大きさが有意に異なります。
ご存じのようにB型肝硬変は大結節性ですが,C型肝硬変は2~3mmの小結節性です。
そのため,C型肝硬変では,より小さな肝癌が診断され,B型肝硬変では進行した段階で診断される傾向があり,外科切除例で見るとC型肝硬変では腫瘍径がB型肝硬変に比べ有意に小さい結果が出ています。
こうした傾向は韓国でも見られますか。

Han 
はい。
B型肝硬変を6か月毎に経過観察していて,肝臓に腫瘍を見つけたとき,すでに肺に転移していた患者を最近経験しました。
B型肝炎ウイルスが関係する腫瘍は予測しにくいことがありますので特に注意すべきです。

Bruix 
米国のガイドラインでも,最低限注意すべきこととして,B型肝炎ウイルスと家族歴を挙げています。


肝細胞癌の治療
欧州では外科切除,韓国,日本ではアブレーション治療が第一選択

神代 
次に肝細胞癌の治療に話題を移します。
2cm未満の小さい腫瘍に対してどのような治療を選択されますか。

Han 
韓国では,一般にまず外科切除が勧められていますが,私たちはアブレーション治療のような内科的治療を勧めています。
治療の適応は患者の年齢や肝機能に応じて決めますが,アブレーション治療で十分な有効性が認められない場合には外科切除を勧めます。

神代 
アブレーション治療として何を選択されますか。

Han 
ほとんどは経皮的ラジオ波熱凝固療法(RFA)です。

Bruix 
欧州では,ほとんどの施設の第一選択は外科切除です。
最近は2cm未満の腫瘍も切除できるようになっています。
外科切除では,腫瘍の血管浸潤をチェックできます。
これは再発や播種のリスクを予測する最もよい方法です。
再発が予測される患者には肝移植を勧めます。
再発リスク予測因子が認められない患者は通常のスクリーニングで経過観察し,必要に応じてアブレーション治療で対応します。
 
ただ,最近,腫瘍が2cm以上で,移植の候補にならない患者には,最初にアブレーション治療を行うことが増えつつあります。
私たちは90%以上の患者で腫瘍の完全壊死を達成しています。
アブレーションでは血管浸潤に関する情報が得られませんが,その生命予後は外科切除とほぼ同等です。
イタリアではこうしたアプローチが多く行われており,全国規模の研究も進められています。
アブレーション治療としてはRFAがよく用いられます。
RFAが十分でない場合にはエタノール注入が行われることが多いようです。

工藤 
日本のガイドラインでは,肝機能のステージ,数,大きさを考慮した治療が推奨されています。
肝障害度(Child)A?Bの患者に対しては,単発であれば,まず外科切除,次にアブレーションを行います。
しかし,結節が2cm未満のchildB患者であれば,まずアブレーションを行います。
ただ,実際には,2cm程度の結節の患者にはほとんどの肝臓専門医がRFAを行っていると思います。
 
RFA後の壊死率はほとんどの文献が80~90%壊死としていますが,日本ではどの施設も壊死面積が100%になるまでRFAを繰り返しています。
CTによる評価で腫瘍周囲のマージンの完全な壊死が認められて初めてRFAを終了します。

Bruix 
CTはいつ行うのですか。

工藤 
翌日です。
2cm程度であれば,通常,1セッションで十分です。

神代 
日本でも,手術よりもアブレーションを希望する患者が増える傾向にありますね。

治療成績比較の問題
外科切除とアブレーションのステージングに違い


神代 
ただ,外科切除とアブレーションの選択をめぐっては議論もありますね。

工藤 
日本肝癌研究会の報告で,門脈浸潤を伴わない2cm径の腫瘍ではエタノール注入よりも手術のほうが生存率がよいことを示しましたが,最近のデータでは同追跡調査報告で,手術よりもRFAのほうが5年生存率がよいという成績も報告しています。

Han 
外科医と非外科医の間にはステージングに乖離があるように思います。
つまり,腫瘍径が同じであっても,病理学的には別のステージに分類されることがあります。
ですから,ステージングを同じにして比較すべきだと思います。

Bruix 
ステージの乖離は病理学の後ろ向き評価ではしばしば起こりますが,RFA後24時間以内にCTを実施してその所見をチェックする必要があります。
私たちはhypervascular spotがRFAによる炎症性変化を反映しやすいことを見出しました。
治療による炎症性変化を反映したものであればこのspotは3~4 週間で消失します。
ですから,アブレーションの種類にかかわらず,1週間後に造影剤検査あるいは超音波検査を行い,それで問題がなければCTあるいはMRIにより腫瘍の壊死を経過観察します。
治療の成否はこの経過観察で判明します。
それから,RFAの施行回数については,私たちは2回までとしています。
それで残った病変に対しては通常エタノール注入を行います。

神代 
韓国ではいつCTで治療効果をチェックしますか。

Han 
治療担当医の経験によります。完全と感じたら1か月後にCTスキャンを行いますが,不完全と感じたら2~3日後を勧めます。

Bruix 
効果判定の時期はアブレーションを試みた腫瘍の種類に依存するように思います。
小さい腫瘍であれば壊死していない病変はまず残っていないでしょうからCTを頻繁に行う必要はありませんが,より大きい腫瘍であれば,すべての腫瘍を除去できないことがわかっているわけですから,次の治療で標的とする病変の情報を得るためにCTでチェックする必要があります。

神代 
本日の議論からも,肝細胞癌の診断と治療をめぐる欧州,アジア,日本の一致点や相違点を垣間見ることができたと思います。
診断面では腫瘍マーカーの位置付けや経過観察の頻度に違いがあることがわかりました。
治療面では,進行病変については議論できませんでしたが,各国ともアブレーションを行うことが増える傾向にあるということでした。
今後もこうした情報交換の場をもち,肝細胞癌の診療の向上につなげることができれば幸いです。

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by esnoopy | 2008-05-19 00:05 | 消化器科

各国の肝癌の診断と治療 その1(1/2)

肝癌の診断と治療法も国によって違うようです。

特別企画
座談会
日本・アジア・欧州における肝癌の診断と治療


現在,肝細胞癌による死亡者は世界中で年間60万人から70万人に及ぶとされ,東南アジア,アフリカだけでなく欧米でも増加傾向にある。
10~20年前には関心の低かった欧米でも近年,肝細胞癌が注目されるようになった。
しかし,長年経験を重ねてきた日本やアジアとの間には,診断や治療に対する考え方やアプローチにまだかなり異なる点がある。
その背景には
肝細胞癌のほとんどがウイルス性肝炎から発症する日本と違い,欧米ではアルコール性肝障害や原因不明の非ウイルス性の肝細胞癌が大部分であり,こうした疫学の違いが少なからず関係しているようだ。
本座談会では「日本・アジア・欧州における肝癌の診断と治療」と題して,日本,韓国,スペインの肝細胞癌の専門家4氏が,診断や治療をめぐる各国の状況について討議した。

司会
神代 正道 氏
久留米大学名誉教授,柳川病院特別顧問
出席者(発言順)
Jordi Bruix 氏
バルセロナ大学内科教授,Barcelona Clinic Liver Cancer Group主任
Kwang-Hyub Han 氏
延世大學校医科大學消化器内科教授
工藤 正俊 氏
近畿大学医学部消化器内科学教授


肝細胞癌の診断
欧米:腫瘍マーカーによらず画像検査で
神代 
まず肝細胞癌の診断をめぐる状況についてお伺いします。
Bruix先生は欧州肝臓学会(EASL)および米国肝臓学会(AASLD)の肝細胞癌に関するガイドライン作成の中心的な役割を担っておられますが,まず欧米の状況についてお聞かせください。

Bruix 
欧州と米国ではガイドライン内容の統一を図ろうとしています。
欧米では肝細胞癌に関する疫学や治療等の決定因子の多くは共通していますが,欧州では肝細胞癌の診断・治療に関する研究に長年取り組んでいること,スクリーニングプログラムの実施等で米国をかなりリードしていると言えます。
一方,米国では従来の知見が軽視され,画像診断技術に関心が向きがちでしたが,最近ではこうした問題も改善されつつあるようです。
 
ガイドラインについてですが,肝細胞癌の診断は腫瘍径の大きな病変/進行性の病変と早期の病変の2つに大別できます。
欧州および米国のガイドラインでは,径が2cm以上の病変において,画像検査で動脈性のhypervascularityの後に静脈相でwashoutが認められれば,それが肝硬変でも肝細胞癌と確定診断できるとしています。

早期の病変については,一致したデータが得られていないため議論が続いていますが,私たちは前向き研究で欧州の基準の有用性を確認しました。
1~2cmの病変があり,動脈濃染と静脈のwashoutが認められれば,肝細胞癌と診断されます。
ただ,この診断方法だけでは偽陽性の可能性もあり,例えば,画像上の確認が難しい10mm未満の腫瘍の場合には,診断や経過観察を完全に行う方法はなく,課題が残ります。
 
次に治療レベルですが,欧州では肝移植だけでなく効果的な内科治療を受けられる施設がごく一部しかありません。
市中病院の技術は最適とはいえず,進行性の肝細胞癌に対しても頻繁に生検やCT,MRIを行うことはありません。

神代 
スペイン,イタリア,フランスは他の国よりもレベルが高いとされていますが,同じ欧州でも国により診断レベルに大きな違いがあるようですね。

韓国:腫瘍マーカーの有用性にも期待
神代 
韓国の状況はいかがですか。日本と似ていると思いますが。

Han 
欧州のガイドラインに基本的に同意しますが,一部,異なる点があります。
1 つは生検です。
これまで論文を投稿しても生検をしていないという理由で却下されることが多かったのですが,私たちは必ずしも生検は必要ないと考えています。
この点については,2001年のバルセロナのコンセンサス会議で生検によらない診断が支持されましたので評価しています。
 
もう1つは腫瘍マーカーです。
AFPやPIVKA-IIが有用だと考えています。
私たちは長期にわたる経過観察中に新たに認められた腫瘍について調査していますが,一部の腫瘍ではPIVKA-IIと腫瘍径の拡大の間に強い関係が認められます。
そうした腫瘍は2cm未満のこともあり,生検は必要ありません。
腫瘍マーカーは,すべての症例でというわけではありませんが,肝細胞癌の早期診断の感度や特異度を高める可能性があります。
韓国では腫瘍マーカーは非常に安価ですので,スクリーニング実施の観点からも有用性にも期待しています。
それに対して,超音波検査は非常に高価なため,スクリーニングのネックになっています。
 
画像診断については,私たちは通常,CTスキャンを行い,それで結論が得られなければMRIを使用します。
しかし,
バルセロナのコンセンサスでは,診断ツールとしての血管撮影使用が否定されました。
ですから,血管造影の有用性を検討する前向き無作為化試験を実施する必要があると考えています。
血管造影は欧州では非常に高価な方法ですが,韓国ではそれほどではなく,MRIとほぼ同じぐらいです。
また,最近,私たちの施設ではPETスキャンを導入しました。
診断ではなく,治療経過をモニタリングするためです。
他の方法ではわからない腫瘍の変化も捉えられるものと期待しています。


日本:高リスク群は6か月毎の超音波と腫瘍マーカーで


神代 
工藤先生,日本における肝細胞癌の診断について紹介していただけますか。

工藤 
日本では20年前に全国的なスクリーニングプログラムが確立されました。
最近発表されたわが国のガイドラインでは,超高リスク群としてB型肝硬変およびC型肝硬変が示されています。
これらの患者に対しては
3~4か月毎の超音波,3~4か月毎の腫瘍マーカー,12か月毎のダイナミックCTあるいはダイナミックMRIが推奨されています。
腫瘍マーカーはAFP,AFPL-3およびPIVKA-IIの3種類です。
また,<
span style="color:rgb(255,0,0);">高リスク群としてはC型肝炎,B型肝炎,および非ウイルス性肝硬変
が示され,6か月毎の超音波検査,6か月毎の腫瘍マーカー測定が推奨されています。
こうしたスクリーニングが日本では全国のほとんどの病院で行われています。
欧米のガイドラインと日本のガイドラインでは,腫瘍マーカーとスクリーニング
の間隔が異なります。
 
日本では画像診断には偽陽性や偽陰性の問題があるため,画像診断だけで検討することはほとんどありません

APシャントや不規則なhyper-enhancing areaを有する症例ではAFP,AFPL-3,およびPIVKA-IIが肝細胞癌の診断に役立ちます。
2001年のEASLガイドラインはAFPを含めましたが,2006年の改訂版(EASL2006)では,肝細胞癌の診断・治療において推奨される腫瘍マーカーのうち,陽性率や特異度が低いことを理由として,AFPが除外されました。
おそらく日本の肝臓専門医の多くは,なぜAFPを除外したのか理解できないと思います。
この点は欧米と日本のきわめて大きな違いです。
 
さらにEASL2006と日本のガイドラインのもう1つの違いはダイナミックスタディーです。
EASL2006では,1~2cmの結節に対して2つのダイナミック画像による診断を同時に行う必要があるとされています。 しかし,
肝癌結節ではhypervascularityと静脈相のwashoutが典型的ですので,1つのダイナミックスタディーの画像診断で十分と考えられます。

腫瘍マーカーの位置付け神代 
欧米とアジアの違いとして,腫瘍マーカーの位置付けやスクリーニングの間隔などが指摘されました。
Bruix先生,欧米のガイドラインではなぜ腫瘍マーカーが除外されたのですか。
日本では25~30年前までは肝癌の多くは進行した状態で診断され,平均生存期間は3~6か月でした。
しかし,高リスク集団が確立され,AFPを含めスクリーニングプログラムの全国実施により診断能が劇的に改善しました。
この点についてどうお考えですか。

Bruix 
欧米にも腫瘍マーカーが有用なツールであると考えている人たちもいます。
私も腫瘍マーカーの有用性を否定するわけではありませんが,ガイドラインで診断ツールの1つとして取り上げるためには,その有用性を証明するデータが必要です。
とりわけ米国ではそれが強く求められます。
 
20年ほど前,私が肝癌の研究を始めた頃,欧米では肝癌は存在しないと思われていました。
私は最初の論文を米国の雑誌に投稿しましたが,その論文も受理されませんでした。
ところが,1990年に日本に来たとき,ここでは肝臓病が先進的な病理学者によって適切に分類され,超音波で肝癌が見つけられていました。
もちろんコホートやリスクファクターは違うのですが,基本的なところは欧州と同じでした。
 
当時,画像診断の感度や特異度は十分ではなく,腫瘍マーカーが非常に有用でした。
しかし,画像診断技術が格段に進歩した現在,腫瘍マーカーの使い方は難しくなっています。
hypervascularityが確認された場合,腫瘍マーカーの異常の有無にかかわらず肝細胞癌と診断できます。
一方,hypervascularityが確認されない腫瘍に対しては,腫瘍マーカーの有用性を検討した研究が非常に少ないため,現時点では肝生検を実施せざるを得ないと考えています。
ですから,腫瘍マーカーがガイドラインで取り上げられるためには,実際の臨床における腫瘍マーカーの役割を明らかにするため大規模コホート研究などを実施し,そこで有用性を証明する必要があります。ただ,近い将来,画像診断を補完する新たな腫瘍マーカーが出てくる可能性はあります。

工藤 
一般臨床でAFPを測定しないのですか。

Bruix 
測定しません。
最近,肝硬変患者をAFPやPIVKA-IIなどの生化学検査と超音波検査で1年毎に経過観察する研究を終了したところですが,AFPもPIVKA-IIも有効性は認められませんでした。
米国立衛生研究所(NIH)もアラスカで同様の研究を実施しましたが,有効性は認められませんでした。

神代 
AFP-L3についてはどうですか

Bruix 
腫瘍マーカーに可能性があるとすれば,それは再発や急速な進展のリスクの予測だろうと思います。
例えば,肝移植の優先度を決定するパラメータの1つになる可能性があります。もしAFPが100を超える腫瘍であれば,それはAFPを産生しない腫瘍に比べてリスクが高いとみなされます。AFP-L3およびPIVKA-IIについても,そういう状況での可能性はあると思います。

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by esnoopy | 2008-05-16 00:13 | 消化器科

上部消化管疾患 (世界の権威に聞く)

Medical Tribune誌の特集号で、ピロリ菌の発見者であるMarshall先生へのインタビューで勉強しました。

Barry Marshall先生の紹介
西オーストラリア大学微生物学教授,同大学Marshall感染症研究・研修センター所長
1951年,オーストラリア生まれ。
Helicobacter pyloriの発見により,元王立パース病院の病理学者Robin Warren博士とともに2005年度のノーベル生理学・医学賞を受賞。
自ら菌を飲んで,H. pyloriと胃潰瘍の因果関係を実証したエピソードが話題となった。大の親日家で,日本との共同研究にも力を入れている。


H. pyloriの発見とH. pylori 除菌治療の導入は消化器疾患の臨床に大きな改革をもたらした。
潰瘍予防・治療への貢献から胃がん予防の可能性までその期待は大きい。
2005年のノーベル生理学・医学賞受賞後,「世界中の人たちに医学研究の魅力を伝えていけるという受賞者の特権を楽しんでいる」と語る西オーストラリア大学のBarry Marshall教授に,除菌の現状と研究の今後について聞いた。


H.pylori発見により上部消化管疾患の概念や診療方針は大きく変貌しました。
H.pylori除菌治療に対する医師の認識の変化についてどう思われますか。
H.pylori除菌治療の受け入れは徐々に進んできました。
特にH.pylori感染率の高い国では受け入れに慎重な姿勢が取られてきたのですが,それはよいことだったと思います。
例えば,H.pylori陽性者の比率が高い国で全員に除菌治療を行うことになれば,医師の負担や医療費の増大などさまざまな問題が生じると想定されたからです。
少しずつH.pylori除菌療法が受け入れられて,世界的に浸透してきたのはたいへんよいことだと思います。


H.pylori陽性なら除菌すべき
すべての感染者を除菌すべきなのでしょうか。 H.pylori感染者の 9 割には潰瘍が見られず,日本では保険診療外となっていますが,このような感染者の除菌についてどう考えられますか。
私はH.pylori陽性であれば除菌すべきだと考えます。
オーストラリアでもつい最近まで症状のない患者への除菌治療は保険診療外とされていましたが,医師は除菌の重要性を認識していましたから,患者にも行政にも重要性を働きかけてきました。
その結果,今もH.pylori除菌が義務付けられているわけではありませんが,多くの患者が除菌治療を受けるようになっています。
10代以降であればH.pylori検査をして対処するのがよいと思います。


クラリスロマイシンへの耐性菌の出現などで,H.pyloriの除菌成功率は70%程度にまで低下しています。
除菌の効率を上げるにはどうしたらよいのでしょうか。

確かに,H.pylori除菌法として広く用いられてきたプロトンポンプ阻害薬(PPI)+アモキシシリン+クラリスロマイシンの 3 剤併用療法では,以前ほどの除菌効果が得られなくなっており,新しい除菌法の模索が続けられています。
しかし,
この 3 剤併用療法でもPPIや抗菌薬を増量したり,通常は 7 日間の除菌治療期間を10日間に延長するといったわずかな調整で,除菌率を80?90%まで回復させることが可能です。このように,最初の除菌法が失敗しても,わずかに異なる治療選択肢が 3 〜4 種類は存在します。
除菌治療後には呼気検査などで除菌効果を正しく把握し,失敗であれば次の除菌法を行うようにするのが肝心です。


除菌にはデメリットを超えるメリットあり
日本人はH.pylori感染率が高く,胃がんも多いのですが,胃がん予防のために除菌をしたほうがよいのでしょうか。
除菌はすべきだと思います。
H.pylori除菌の胃がん予防効果を証明するために臨床試験を行うことはできませんが,日本には大勢のH.pylori陽性者がいますから,例えば80歳以上の高齢者のみで除菌治療を徹底するところから始めて,半年〜1 年ごとに対象年齢を 5 歳ずつ下げていく方法でH.pylori除菌を普及させていけば,5 年後には日本の胃がん発症率は下がり始めるはずです。

結果が出るまでにある程度の時間は必要ですが,除菌療法の成果は必ず現れると思います。
胃がんが減少すれば内視鏡検査の施行数も減少するでしょうし,除菌療法の費用を考えても,結果的には医療費の削減につながるのではないでしょうか。


除菌によるメリットとデメリットについてはどのように考えられていますか。
除菌のデメリットがやや強調されすぎているように感じます。
確かに薬剤耐性の問題はあり,H.pyloriだけでなく他の細菌にもクラリスロマイシン耐性菌が増える危険性が指摘されていますし,抗菌薬による副作用も除菌のデメリットと言えます。
ただし,長年の除菌治療経験から,いったん除菌に成功した患者は,その後H.pylori陽性に転じることなく大きな健康メリットを受けられることは明らかです。
除菌にはデメリットを超えるメリットがあると考えます。

無毒化H.pyloriを利用した経口ワクチン
先生が取り組んでおられるH.pyloriを利用したワクチン開発の現状と実用化のめどについてお話しいただけますか。
私が進めているのは,H.pylori感染予防のためのワクチン開発ではなく,H.pyloriを種々のワクチンのドラッグデリバリーシステム(DDS)として利用するという新しい概念のワクチン研究です。
無毒化したH.pyloriに,例えばインフルエンザウイルスの遺伝子を導入して胃内に運ばせ,H.pyloriが胃内で数週間生息している間に,インフルエンザに対する免疫を獲得させるというものです。
この研究が完成すれば,いわゆるプロバイオティクスのような働きのH.pyloriができ,インフルエンザだけでなく種々のワクチンを経口的に接種できるようになります。

既にH.pyloriの無毒化とワクチン遺伝子の導入は可能であり,現在は動物実験で種々の遺伝子の検討を進めているところです。
今後はできるだけ早い時期にボランティアによるヒトへの検討に入りたいと考えています。
実用化までには10年以上かかるかもしれませんが,このワクチンが実現すれば,スーパーマーケットでインフルエンザの予防ワクチンを購入できる日がやってくるかもしれません。
また,黄熱病やマラリアなどさまざまなタイプのワクチンに応用できますから,使い捨て針や消毒,冷蔵の必要がなくなり,アフリカなどの貧しい国々でも広くワクチン接種が可能になるでしょう。素晴らしいブレークスルーになるはずです。


最近のH.pylori研究で注目されているものがありましたら教えてください。
第 1 に免疫学的研究です。
私自身のワクチン研究もそうですが,H.pyloriに対するワクチンの研究に興味を持っています。
また,日本で進められているH.pylori毒素についての研究も非常に重要なものです。


今後,H.pylori研究はどのような方向に進んでいくのでしょうか。
まず,数年以内に胃がんの発症機序が解明されるだろうと思います。
また,10年程度の時間が必要かもしれませんが,H.pyloriの研究を介して腸内免疫機構が解明されていくことでしょう。
それによりH.pyloriを利用した免疫疾患や食物アレルギーのコントロール,さらにはさまざまな疾患に対するワクチン接種が可能になると思っています。


Comment
除菌の普及で胃がんはマイナー疾患に

北海道大学大学院消化器内科学教授 浅香 正博
ノーベル賞受賞以来,精力的に講演やマスコミ出演をこなしているMarshallは目立っていますが, Warrenはほとんどマスコミにも出演せず地味な生活を保っているようです。
H.pyloriの発見はまさに動と静の全く性格の異なる 2 人が出会ったことによりなされた世紀の偉業です。
当時,世界中で最も胃炎の標本を見ていたであろう大勢の日本人病理学者はだれもH.pyloriに気が付かず,ノーベル賞を取る機会を逃したと言えます。

1990年に世界消化器病会議で胃炎の原因としてH.pyloriが認定され,94年には米国立衛生研究所(NIH)が胃・十二指腸潰瘍でH.pylori陽性なら除菌するよう勧告を出しましたが,日本の厚生省は反応が鈍かったですね。
われわれが日本ヘリコバクター学会を設立し,H.pylori診断・治療のガイドラインを作成したりして行政に働きかけ,2000年にようやくわが国でも胃・十二指腸潰瘍に対して除菌が保険適用になりました。

除菌によって 9 割以上の患者は維持療法なしでも潰瘍を再発しなくなります。
クラリスロマイシン耐性菌のため除菌治療に失敗することもありますが,そうした患者でも昨年新たに保険適用が認められたメトロニダゾールを使用した二次除菌を行え ば 8 〜9 割で成功します。
原因療法である除菌治療が進むにつれて,わが国の胃潰瘍や十二指腸潰瘍は確かに減ってきていると思います。

日本消化器病学会と日本ヘリコバクター学会は合同で,「ヘリコバクター感染症」に対して保険で除菌治療が受けられるよう,厚生労働省と交渉を始めています。
除菌治療自体は安価ですし,陽性者のうち希望者全員に除菌を行ってもトータルで考えれば医療費の削減につながると思います。
例えば,20歳の成人を迎えたときに全員がH.pylori検査を受け陽性だったら除菌するシステムを導入すれば,数十年後には日本では胃がんがほとんどなくなるでしょう。

われわれが最大のテーマとして取り組んできた胃がん抑制の研究がまとまり,今夏前に発表されますが,かなりのインパクトを与えると思います。除菌治療が普及した暁にはわが国でも胃がんはマイナーな疾患となっているでしょう。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41141141&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.4.3(創刊40周年記念特集号)
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
「医学英検」を創設・日本医学英語教育学会
日本医学英語教育学会は、医療現場での英語の運用能力を評価する「医学英語検定」を創設した。
13日に初の試験を実施する。
英語を使った診療や、国際的に医療技術を伝えられる医師・通訳者などの育成が狙い。
初回は3、4級の試験を東京や兵庫などの会場で実施し、医学部生や通訳者ら約660人が受験する予定だ。
3級は筆記とリスニング試験、4級は筆記試験で判定する。
日経新聞•夕刊 2008.4.4
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080404AT1G0302D04042008.html

<コメント>
「日本医学英語教育学会」・・・そんな学会があったんですね。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-04-17 00:09 | 消化器科

胃食道逆流症と腹腔鏡下噴門形成術

肥満の有無は予後に影響を及ぼさず 
東京慈恵会医科大学外科学講座の坪井一人氏らは,胃食道逆流症(GERD)に対する
腹腔鏡下噴門形成術は,「body mass index(BMI)30以上の肥満患者では
手術時間の延長と術中出血量の増加傾向は認められるものの,重篤な合併症もなく,
再発率も非肥満症例と同等であることから,安全に施行可能と考えられる」と報告した。


肥満では手術時間のみが延長

現在,腹腔鏡下噴門形成術はGERDの標準術式として確立しているが,肥満はGERD
の増悪因子の 1 つと考えられており,肥満GERD患者の手術では腹腔内脂肪の増加
が視野不良を来し,手術難度が増すと一般的に捉えられている。

このため坪井氏らはBMI 30以上の肥満を有するGERD患者で,手術関連因子や術後
経過などを非肥満GERD患者と比較した。

対象症例は1996年 6 月~2007年 5 月に腹腔鏡下噴門形成術を施行したGERD症例
170例(男性104例,女性66例,平均年齢53.2±15.7歳)。

このうちBMI 30以上の肥満GERD患者は11例で,残りの非肥満GERD患者159例との
間で病態,術式などの患者背景に有意差は認められなかった。

手術時間は肥満GERD患者185.7±36.1(140~280)分,非肥満群155.7±47.3
(70~303)分と,肥満症例で有意な手術時間の延長が確認された。

一方,術中出血量は肥満GERD患者65.5±140.8mL,非肥満GERD患者53.7±327.3mLであり,肥満GERD患者で増加傾向を示したが,統計学的に有意差
はなかった。

術中合併症は肥満GERD患者では食道損傷 1 例のみであり,非肥満GERD患者では
横隔膜脚損傷 4 例,胃壁損傷 2 例,気胸,食道損傷がともに 1 例ずつ発生したが,
両群とも開腹術へ移行した症例はなく,術後の食道炎再発率に関しては,肥満GERD
患者で9.1%に対し非肥満GERD患者で8.8%と,統計学的に有意差は認められ
なかった。

同氏は「検討前は肥満の有無で手術成績に差が認められると予想していたが,実際
には手術時間以外に明確な差は認められず,腹腔鏡下噴門形成術の安全性の高さ
が示された」と述べた。


<番外編>■ 
<長寿医療制度> 新保険証未着、全国で6万件超 大阪で最多1万6000件
今月スタートした長寿(後期高齢者)医療制度の保険証が届かないケースが多発している問題で、対象者に届かずに自治体に返送された件数が全国で約6万件(推定含む)に上ることが9日、毎日新聞の調べで分かった。
担当窓口には苦情が殺到し、保険料の誤徴収などのミスも相次いで発覚している。新制度は開始当初から混乱が続いている。

新制度の対象は、75歳以上と、65~74歳の障害認定を受けた計約1300万人。
多くの自治体が保険証を郵送する際、本人の手に確実に届くよう「転送不要」とした。
このため住民票の届け出と異なる場所に住む対象者らに保険証が届かず、自治体に返送されるケースが多いとみられる。


都道府県ごとに制度を運用する後期高齢者医療広域連合などに取材した結果、未着分は計6万3469件に上る。
都道府県別では、大阪府が1万6000件で最多。神奈川県1万3700件、愛知県9450件、東京都7600件――が続く。
未着を把握しているが、集計できていない県も多数あった。

秋田県の広域連合によると、対象者から「中身を確認せずに捨てた」との申告があった。福島市でも「ダイレクトメールと勘違いし捨てた」というケースがあり、制度周知が徹底していなかったことがうかがえる。

制度自体への苦情も多い。
75歳以上の高齢者の負担増になるケースもあるため、「年寄りに死ねというのか」(福岡)、「『消えた年金』問題が解決していないのに、年金から徴収するとは何事か」(長崎)などの抗議が寄せられている。

各広域連合は電話増設などをして対応しているが、追いつかないのが現状だ。
長野では3月中旬、電話回線を4回線から7回線に増設した。
千葉は1日以降、電話が一日中鳴りっぱなしといい「職員3人で対応しているが間に合わない」と悲鳴を上げている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/news/20080410ddm041010168/
出典 毎日新聞 2008.04.10
版権 毎日新聞社

<コメント>
予想どおりのドタバタです。
得体のしれない「広域連合」という組織も不気味です。
どんな人がやっていてどこからお金がでているのでしょうか。
調べるのも面倒くさいことですが。

広域連合 http://www.soumu.go.jp/kouiki/kouiki1.html

■ 新たな保険証がないまま受診すると、いったん医療機関の窓口でかかった医療費の全額支払いを求められる。
新制度の窓口自己負担率はこれまでと同様、原則1割だが、新しい保険証がないため突然高額な医療費を請求され、支払いに困るケースもあった。

こうしたトラブルが各地で相次いだことを受け、厚労省は、国民健康保険証など、高齢者が3月まで利用してきた保険証を当分の間「代用」として使えるようにすることを決め、こうした古い保険証で受診しても、原則1割負担とするよう医療機関に要請した。
古い保険証も持っていない人には、運転免許証など住所や生年月日を確認できる書類があれば従来通りに受診できるようにする。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080410-00000971-san-soci


<コメント>
「医療機関に要請」?
私は要請された覚えはありません。
一方的な通達のはずですが、「古い保険証でも1割負担」というのは、従来からの保険証提示確認によって保険診療が始まるという不可侵の大原則を自ら破っていませんか?
正式な通知が今日にでも医師会からわれわれ日本医師会会員に届くんでしょうか?
それがなければ「要請」ではありません。
9割分の回収不能が生じたとき泥をかぶるのは医療機関ですか?
なぜ医療機関が尻拭いをさせられるのですか?
4月中に患者が新保険証を持って来院しない場合、4月分の保険請求はどうなるんですか?
昨夜の報道ステーションの古館も、医療側の困惑は一切伝えませんでした。


<参考ブログ>
旧保険証も有効?
http://blog.m3.com/BH/20080411/2
お気楽な厚労省官僚たち
http://blog.m3.com/BackToTheStreet/20080410/1

同じ考えの先生がいて意を強くしました。

まったくもって厚労省ってのは・・・
医師会もなにやってんだか・・・

他にもブログがあります。
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by esnoopy | 2008-04-11 00:08 | 消化器科

経鼻内視鏡のメリットとデメリット

最近、患者さんが「先生のところは鼻からの胃カメラは使ってないんですか」
という質問をしばしばします。
そんな質問をされると「予算がないもんで」とただただうなだれるだけです。
一頃新聞やテレビでしきりに経鼻内視鏡の宣伝をしていました。
ジェネリック薬品もそうですが、患者さんに向かっての宣伝は非常に効果的です。
そんな中、こんな記事が目に留まりました。

ここ数年来,経鼻内視鏡が急速に普及してきた。
その最大のメリットは被験者の負担が軽減した点。
実際,経口内視鏡に拒否反応を示していた被験者も楽に受けられるようになったが,デメリットはないのだろうか。
東京慈恵会医科大学内視鏡科の貝瀬満・准教授に聞いた。


最大のメリットは被験者の負担軽減
経鼻内視鏡と通常の経口内視鏡のメリットとデメリットについて,比較検討を進めている貝瀬准教授は,まず経鼻内視鏡のメリットについて次のように話す。
「経鼻内視鏡に用いる極細径内視鏡の直径は約5mm。これに対し,一般的な経口内視鏡は9~10mmである(写真1)。直径が倍近くなると,面積で4倍ほどの差が出る。つまり経鼻内視鏡は,経口内視鏡の4分の1程度の面積なので,被験者の負担が大幅に軽減できる」
c0129546_23531248.jpg


いくら直径が細くても,口から挿入すると嘔吐反射を起こしうるが,鼻から挿入すると患者にとってつらい嘔吐反射を回避できる。
「加えて,経鼻では経口と違い,被験者も話しながら検査を受けられるので,安心できるという精神的なメリットも見逃せない」

このため,これまで経口内視鏡に抵抗のあった人も,食道や胃の内視鏡検査を苦痛なく受けられるようになった福音は大きい。

ただし,こうしたメリットが,逆にデメリットにつながっているともいう。
「直径が細くなった分,経口内視鏡に比べて診断に必要な画質や操作性が犠牲になっていると言える」


デメリットは画質と操作性
もちろん,経口内視鏡も種類によって画質の差は生じるが,貝瀬准教授らは極細径内視鏡と高精細経口内視鏡を用いて診断能を比較検討している。

対象は同科を受診した症例。
文書で同意を得たうえで,同一症例に極細径内視鏡と高精細内視鏡検査を施行した。
挿入経路が異なると正確な比較ができないため,極細径内視鏡も経口で用い,臨床情報を全くブラインドにした異なる医師が極細径と高精細を別々に検査した。

その結果,高精細内視鏡で診断できた早期胃がんや潰瘍瘢痕が,極細径内視鏡では発見できなかったケースが少なくなかった。
「現在,集計中なので詳細は明言できないが,私の印象では2割ほど見落とし例が増える危険性がある。特に,極細径の遠景観察は光量不足から画質が低下して,微細な病変を見逃す可能性を否めない」


メリット・デメリットを理解して使い分けを
こうした結果から,貝瀬准教授は経鼻内視鏡のデメリットとして次の2点を挙げている。

経鼻内視鏡は,高精細経口内視鏡に比べて画素数が約9分の1と少ない。
さらに経鼻内視鏡の光量は高精細の約5分の1であり,経鼻内視鏡は微細な病変の診断に必要十分な画質を得にくい。

内視鏡検査は,吸引,送気,鉗子による生検といった一連の操作が必要だが,経鼻内視鏡ではルートが細いので検査に時間を要する。
「確かに経鼻内視鏡のもたらしたメリットは大きいが,こうしたデメリットを理解して用いないと,思いがけない問題が生じるだろう」と注意を促している。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41140761&year=2008[

出典 Medical Tribune 2008.4.3
版権 メディカル・トリビューン社


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ヒロ・ヤマガタ 「ジャズフェスティバル」
http://page10.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/m55357867

<コメント>
経鼻内視鏡は精度や操作性にかけるという話は初めて知りました。
販売業者を呼んで話を聞いたことがありますが、そんな話は一切ありませんでした。
これからは患者さんには「検査がラクでもガンの見逃しがあっては困るでしょ」といって経口内視鏡でやらせていただくつもりです。
最近は腹腔鏡手術で代表されるようにユーザー(?)フレンドリーな手技が全盛になってきています。
医療技術のスキルアップは益々要求されてきています。

大変です。

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by esnoopy | 2008-04-09 00:38 | 消化器科

下部消化管出血と大腸憩室

原因疾患はまず大腸憩室の想定を
防衛医科大学校内科第 2 講座の高本俊介氏らは,下部消化管出血に対する
緊急内視鏡例での検討から,出血の原因疾患としては患者年齢にかかわらず
大腸憩室が最も疑われるべき疾患であるとの認識を示した。
また「高齢者では合併症や抗血小板薬服用の有無を考慮して,内視鏡検査を
行う時期は慎重に検討する必要がある」との見解を表明した。


急性出血性直腸潰瘍では内視鏡的止血が有効 
高本氏らは,2001年 1 月?07年12月に,同大学校で消化管出血に対し緊急
下部消化管内視鏡を施行した146例,延べ施行回数176回(ポリペクトミー後
出血を除く)を対象に,65歳以上の高齢者群74例と65歳未満の非高齢者群
72例に分けて原因疾患,患者背景,転帰などを検討した。

原因疾患は高齢者群で大腸憩室25.6%,急性出血性直腸潰瘍(AHRU)21.6%,
虚血性腸炎12.1%の順で,非高齢者では大腸憩室26.3%,炎症性腸疾患(IBD)
18.0%,AHRU 6.9%,虚血性腸炎5.5%と,高齢者でAHRU,非高齢者でIBD
の割合が高かった。

患者背景として,抗血小板薬服用,心疾患合併,維持透析実施は高齢者群と非高齢
者群で有意差はなく,内視鏡前ヘモグロビン値は非高齢者で高い傾向が見られた。

転帰では,内視鏡的止血成功,開腹術施行は非高齢者群で割合が高く,緊急血管
造影施行,動脈塞栓術施行,死亡は両群間で差はなかった。なお,内視鏡的止血
成功例は高齢者群13例,非高齢者群18例だが,両群ともAHRUで内視鏡的止血
を行った例では全例が止血成功例となっていた。

以上のように下部消化管出血では高齢者,非高齢者にかかわらず,原因疾患としては
大腸憩室が最も多いことが確認され,出血時にまず念頭に置くべき原因疾患であった。

同時に,同氏は「憩室出血は出血点を特定できない場合やクリップで止血できない
ことが多く,インターベンションや手術を要することもあるが,クリッピング後も頻回に
出血を繰り返す例では,シアノアクリレートを併用した止血も試みている」との実績を
紹介した。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4108071&year=2008

Medical Tribune 2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社


シアノアクリレート
シアノアクリレート系接着剤(α-Cyanoacrylate adhesives)は、2-シアノアクリル酸エステルモノマーを主成分とする接着剤。反応系。
基材や空気中の水分によって急速に硬い皮膜状に硬化・接着する。作業性に優れた一液・常温硬化型でもあるため瞬間接着剤として使用される。末端のアルキル基を選択することにより特性を設計できる。粘度が低いため塗布が容易であり、また多様な被着材に適応する応用性の高さから、ゴム・金属やプラスチック類・医療用などから始まった使用範囲は広がり続け、最近では樹木接木などにも用いられる一方、皮質に馴染み易く白化する特徴から指紋判別用材料としても利用されている。剥離強度には優れるが、耐衝撃性や耐熱性に劣り、オープンタイムは短い。近年これらを改良したタイプも開発されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A5%E7%9D%80%E5%89%A4

抗血栓薬の大腸憩室出血に及ぼす影響http://jges.net/jges-z/gnt/gn490201.html
2002年7月~2005年11月までに下部消化管出血にて大腸内視鏡検査を実施した332例のうち,大腸憩室出血と診断されたのは32例(9.6%)であった.
大腸憩室出血は65歳以上の高齢者が90.6% と大部分を占めた.出血部位は左側結腸78.1%,右側結腸21.9%,出血形態は凝血塊付着81.3%,湧出性出血15.6%,噴出性出血3.1% であった。
憩室は多発93.8%,単発6.2% であった.
輸血を必要としない軽症は81.3%,内視鏡治療の必要がなかったものが81.3% と大部分を占めた。
抗血栓薬の内服率は50%(16/32)と他の下部消化管出血をきたした疾患に比べて高値であった。
大腸憩室出血例の半数は抗血栓薬を内服しており,高齢者が大部分を占めることから,大腸憩室を有する高齢者への抗血栓薬投与は出血の主な誘因の一つと考えられた。

<コメント>
当院にも70代の女性で大腸憩室に伴う下血を時々起こし、ひどい貧血になる方がみえます。
TIAがあるためやむを得ずアスピリンを投与しています。
この論文にまさしく合致する症例です。

大腸憇室症
http://wellfrog.exblog.jp/6874996

スハルト元大統領、大腸憩室で入院27 April 2004
http://www.tempointeraktif.com/hg/nasional/2004/04/27/brk,20040427-02,jp.html
ジャカルタ発:26日午後、スハルト元大統領がジャカルタ市内のプルタミナ病院に入院したことについて、担当医のアジズ医師は27日、年齢的な症状であることを明らかにした。X線検査の結果、大腸憩室が発見された。同氏のヘモグロビン濃度が6.3%に低下し容態も良くないため、医師団側は手術を避け薬物治療を行うことになった。

<コメント>
そうだったんですか。

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by esnoopy | 2008-04-04 00:30 | 消化器科

抗血小板薬と消化管出血

第42回日本成人病(生活習慣病)学会の発表で勉強しました。

~ 抗血小板薬服用時の上部消化管出血 ~
酸分泌抑制薬の併用が発生リスク低減に高い効果 
昭和大学藤が丘病院消化器内科の安田宏講師と同院循環器内科の嶽山陽一
教授らは,虚血性心疾患治療における薬剤溶出性ステント(DES)挿入症例で
抗血小板薬を服用した場合の上部消化管出血発生について,日本人でも欧米
での報告とほぼ同等の頻度で認められることを報告するとともに,「酸分泌抑制
薬を併用すると,そのリスクを回避できる可能性がある」と述べた。


リスクは欧米と日本で差ない
虚血性心疾患での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)では,血管の再狭窄
防止効果が高いDES使用とそれにより発生が危惧される血栓によるステント閉塞
という重篤な合併症を未然に防ぐため,出血傾向のない患者にはDES留置後 1
年間は複数の抗血小板薬服用
が一般的となっている。
 
一方,高齢者の消化管出血発生は抗血小板薬の有無による影響が大きく,欧米
では抗血小板薬のアスピリンとチエノピリジン誘導体の併用投与患者で年間
4 ~5 %の消化管出血が報告されている。

ただ,日本人では欧米人と比べて胃酸分泌量が少なく,胃潰瘍の原因菌
Helicobacter pylori の感染率が高いことがわかっており,PCI後の抗血小板薬
服用で欧米と同程度の消化管出血頻度が見られるかどうかは必ずしも明らかでは
ない。

このため安田講師らは,同院でDES留置後,複数の抗血小板薬を服用し,経過
観察が可能だった198例(血液透析患者,ワルファリン併用者を除く)で,上部
消化管出血の発生頻度と酸分泌抑制薬併用の有無によるリスク軽減効果を調査
した。

198例で判明した抗血小板薬服用状況は,アスピリンとチクロピジンあるいはクロ
ピドグレル併用191例,アスピリンとシロスタゾール併用 7 例。
また,121例は酸分泌抑制薬を服用しておらず,49例がプロトンポンプ阻害薬,
28例がH2受容体拮抗薬を服用していた。

経過観察期間中の酸分泌抑制薬非併用群全体での上部消化管出血発生は
6 例で,累積発生率は 1 年4.5%, 2 年7.5%と欧米とほぼ同様の結果が得
られた。

一方,いずれかの酸分泌抑制薬併用例では,上部消化管出血は 1 例も報告
されず,同薬が消化管出血防止に大きな効果があることが示唆された


http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4108071&year=2008
Medical Tribune 2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
要するにPPIとH2RAを併用すると抗血小板薬服用時の上部消化管出血を完璧に予防することが出来るという報告です。
はたしてこの併用療法、基金は通るのでしょうか。

他にもブログがあります。
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by esnoopy | 2008-03-28 00:17 | 消化器科

高齢虚血性大腸炎の重症化因子

第42回日本成人病(生活習慣病)学会での発表で勉強しました。

虚血性大腸炎

心血管系合併症や便秘は高齢患者の重症化因子に 
虚血性大腸炎は,動脈硬化に伴う血管攣縮や血栓・塞栓といった血管側因子,便秘による腸管運動異常に伴う腸管内腔圧上昇といった腸管側因子が相互に作用して
大腸粘膜血流障害を引き起こし,発病すると考えられている。
東京都で開かれた第42回日本成人病(生活習慣病)学会(会長=昭和大学豊洲
病院外科・熊谷一秀教授)では北里大学東病院消化器内科の春木聡美氏らが,
虚血性大腸炎症例の解析から「心血管系の全身合併症や便秘習慣を有する高齢者
は重症化する危険性が高く,発病や病状の進展に血管側因子と腸管側因子が関与
していると考えられる
」との見解を示した。

症状再発率に合併症などの有無は影響少ない 
春木氏らが解析対象としたのは,虚血性大腸炎441例(平均発病年齢51.5±
11.8歳)。
病型別内訳は一過性型425例,狭窄型16例で,平均発病年齢はそれぞれ
50.9±15.5歳と68.1±14.9歳であり,重症度がより高い狭窄型で平均発病年齢
が高い傾向が見られた。

これら解析症例のうち,心血管系全身疾患を合併していたのは130例。
合併症内訳(重複あり)は高血圧症87例,脂質異常症21例,糖尿病19例,虚血性
心疾患18例,不整脈13例,その他 4 例。

合併群では平均発病年齢63.2±12.4歳,狭窄型割合8.5%(11例)に対し,非合併
群では平均発病年齢46.6±14.5歳,狭窄型割合1.6%( 5 例)と非合併群でともに
低かった。

また,排便習慣では,便秘傾向があるものが221例存在し,このなかでの狭窄型割合
は5.9%(13例)と排便傾向がない182例での1.6%( 3 例)より高率となっていた。
これらから心血管系合併症や便秘を有する症例では重症化,高齢化することが確認
された。

一方,解析対象の4.8%(21例)で一過性型の再発が認められたが,再発率は心血管
系合併症を有する症例群5.4%,合併症のない症例群4.5%,便秘傾向の有無では
便秘傾向を有する症例群5.0%,便秘傾向のない症例群3.8%と,いずれのケースでも
有意差はなく,心血管系合併症や便秘の有無と再発との間に相関関係は認められな
かった。

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他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-03-21 00:14 | 消化器科

ハイテク手術で肝がんを安全に切除

数日前に、当院へ通院してみえたHCV/HCCの患者さんが亡くなられました。
ある病院の依頼で、SNMC療法のみを当院で行っていた方です。
部分肝切除を目的に、しかる病院に入院されたのですが、入院中に肝不全が進行し、なすすべもなく亡くなったと、奥様が報告に来院されました。
血小板数も少なくLCもあるため手術は難しいと予想された症例ですが残念です。

このように肝がんの手術の多くは肝機能低下や出血傾向を持っているため、手術が難しいだろうということは内科医の私にも理解できるところです。

さて、そんな肝がんの手術ですが、ハイテク手術が現れました。

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〔米ペンシルベニア州フィラデルフィア〕ジェファーソン医科大学(フィラデルフィア)外科の移植外科医であるCataldo Doria准教授は,非観血的肝切除術と名付けた新しい手術用の器具を開発した。
同准教授によると,この器具により人体で最大の臓器である肝臓を75%まで安全に切除できるという。
また,患者の予後は改善し,回復に要する日数は半減したという。

目標は無輸血
Doria准教授は何百例もの肝臓手術を手がけてきた。
今回新しく開発した 2 つの手術器具により,出血を防ぎながらがん組織の切除が可能になったことで,限局性肝がんや他の肝疾患患者の治療成績に驚くべき成果をもたらしている。
これらの器具を用いればほとんど出血しないため,患者の回復は早まる。
同准教授は「このことから,われわれは"非観血的"と呼んでいるが,目標は輸血を不要にすることだ」と述べている。

米国では原発性肝がんの新規発症例は増加し続けており,肝がんと診断される米国人の数は過去10年間で倍増した。
米国肝臓財団によると,米国では原発性肝がん例の80%以上に肝硬変が関与するとされている。
肝障害の原因はC型肝炎ウイルス(HCV)またはB型肝炎ウイルス(HBV)と過剰飲酒が大部分を占める。
肝がんの危険因子はほかに肝硬変がないHBV持続感染と肥満がある。

限局性肝がん患者に対しては,一般に外科的切除が最良の治療選択肢となる。
しかし,肝臓は門脈と肝動脈の 2 大血管から血液供給を受け,門脈には腸管からの血液がすべて流入する。
従来法による血管網のような肝臓の切除は,どのような外科医にとってもきわめて困難である。従来法では5~10単位以上の輸血が必要になるが,この新しい非観血的切除術ではそれらをすべて変えてしまった


メスを使わず肝細胞を吸引 
Doria准教授は「肝臓は血液で充満したスポンジのような臓器なので,従来法による切除では大出血の恐れがある。しかし,新しい方法ではメスで切除するのではなく,肝細胞を吸引したうえで速やかに血管を密封してしまう」と説明している。

新しい手法では,メスの代わりに超音波外科的吸引器(CUSA)を使う。
これは超音波を利用して肝細胞を吸引するもので,血管は温存される。
第2の器具であるTissue Linkと呼ばれる探触子(プローブ)を用いて別の外科医が執刀医をフォローする。
この探触子の先から滅菌温水を放出すると,肝臓の血管が凝固・結紮される。
この 2 つの器具により,非観血的手法の手術時間は2~4時間と,従来法(4~6時間)のほぼ半分に短縮できる。
また,非観血的手法ではメスを使った場合に比べ,組織への損傷を大幅に軽減できる。
この新しい非観血的肝切除術では,術後24時間で離床し,歩行できるようになる。
入院日数は5~7日(従来法では10~14日)で,2週間で通常の活動が可能となる(従来法では4週間)。
完全回復は 1 か月後である。
この術式を適用した患者の75%以上で,肝臓を安全に切除できた。
切除後,残った肝臓は再生し,2~3週間で本来の大きさに回復する。

ハイテク手術で肝がんを安全に切除
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4110011&year=2008
Medical Tribune 2008.3.6
版権 メディカル・トリビューン社


<参考サイト>

■肝臓がん
http://www.pref.chiba.jp/byouin/sawara/menu2/geka/kanzogan/kanzogan.html

肝機能が良くて腫瘍の大きさが3cm以上なら確実に治癒させる事のできる手術を第一選択としています。
このような場合手術は3-4時間で、ほとんど輸血は行いません。入院期間も手術後2-3週間と短くてすみます。
肝臓癌が門脈の中に入り込み腫瘍栓を形成した進行癌にも積極的に血管外科の手技を応用して手術を行っています。
ガンを完全に切除しきれた場合は3年生存率60%が得られています。
(手術前のコンピュータ上模擬手術というのがあることを初めて知りました)

肝臓がん(肝臓癌)の治療-外科手術(肝切除術) 
http://www.effect-japan.com/cancer/liver.html
肝切除はがんを含めて肝臓の一部を切り取る手術で、最大の利点はがんが治る可能性がもっとも高いということです。
デメリットは合併症が起こる場合が少なからずあり、1-2%ですが手術に起因する死亡があります。
また入院期間が1-2ヶ月さらに退院してからの自宅療養が1-2ヶ月必要で長期に及ぶことがあげられます。
肝臓はひとかたまりの臓器ですが、肝臓内を走る血管の分布によっていくつかの区画に分けて考えられます。
まず大きく左葉と右葉の二つに分かれます。左葉は外側区域と内側区域、右葉は前区域と後区域に分かれます。
さらに外側区域、前区域、後区域はさらに上下2つの亜区域に分かれ、これに内側区域と尾状葉(肝臓の後ろ側の小部分)を加えて合計8つの亜区域に分かれます。
肝臓の切り取り方は、これら肝の区画の「どこ」を「どのくらい」切除するかによって表現されます。
がんが区域をまたいでいる場合には複数の区域を切除します。
肝機能が低下していて大きく切除できない場合には安全のために、亜区域切除や部分切除などより小さい取り方を選ぶのが普通です。
がんでない肝臓をできるだけ残し、しかもがんを取り残さないのがよい手術ということになります。
残念ながら肝臓がんは再発の非常に多いがんであり、肝切除術により完全にがん細胞を切除したとしても3-5年後までに再発する確立は70%にも達してしまいます

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by esnoopy | 2008-03-07 00:04 | 消化器科