カテゴリ:消化器科( 29 )

アスピリンと大腸がんのリスク低下

Gastroenterologyの文献で少し勉強しました。

アスピリンによる大腸がんのリスク低下には長期・多量の服用が必要
アスピリンによる大腸がんのリスク低下を期待するには長期にわたってかなりの量
を服用する必要がある
ことを示すデータが,米ハーバード大学のグループに
より Gastroenterology の 1 月号に発表された。

同グループは,1986年に登録された40〜75歳の男性医療従事者 4 万7,363人
を前向きに追跡。
2 年ごとにアスピリンの使用,他の危険因子,大腸がんの診断に関するデータを収集
し,2004年までの大腸がんの全報告を確認した。

18年間の追跡で975人に大腸がんが確認された。
危険因子を調整後,アスピリンを週 2 回以上定期的に服用していた群は定期的に
服用していなかった群と比べて大腸がんのリスクが低く,相対リスク(RR)は0.79
だった。
しかし,有意なリスク低下には少なくとも 6 〜10年の服用が必要で(P=0.008),
4 年以内に服用を中止した場合にはリスクの低下は認められなかった。

累積の平均服用量が多いことがリスク低下と関係していた。
アスピリン非使用群と比較した大腸がんのRRは,標準的なアスピリン錠剤の 1 週間
の服用量が0.5〜1.5錠で0.94,2 〜 5 錠で0.80,6 〜14錠で0.72,14錠より
多い場合で0.30であった(P=0.004)。

同グループは「大腸がんに対するアスピリンの利点を得るには,少なくとも 6 年間の
継続服用が必要で,週14錠より多い用量で最大のリスク低下となる。

このような用量を長期に使用することによる有害な影響の可能性を考慮する必要がある」
と指摘している。
Chan AT, et al. Gastroenterology 2008; 134: 21-28.


c0129546_81497.jpg

三塩清巳 油彩3号『ばら』
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s86015889

アスピリンで大腸がん進行抑制
http://kumanichi.com/iryou/kiji/cancer/10.html
独バイエルグループのバイエルヘルスケア社は、鎮痛剤アスピリンの有効成分である
アセチルサルチル酸を、定期的に服用した大腸がん患者の再発率と致死率が有意に
低下した、と発表した。
アスピリンは既に大腸がんや膵臓(すいぞう)がん、乳がん、肺がんなどさまざまながん
の予防効果があるという研究成果が報告されている


アスピリンの大腸がん予防、効果上回る副作用
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20050905ik03.htm
大腸がん予防の目的でアスピリンを長期間服用した場合、予防効果より、その数倍も
消化管出血の副作用の危険があることが、米国のマサチューセッツ総合病院
(マサチューセッツ州)などの研究チームの調査でわかった。
アスピリンは、炎症や腫瘍(しゅよう)の成長を助ける酵素の働きを止める作用があるが、
大量に服用(1日2錠以上)すると消化管出血などを起こす。試算では、大量服用で
1~2人の大腸がんが予防できた場合、8人に深刻な消化管出血が起きる可能性がある
という。


アスピリンによる大腸がん予防をどう思う?
http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/plwc/10_15.html

シモツケspiraea plant
http://homepage2.nifty.com/uoh/gakubu/nougakubu.htm#shimotsuke
シモツケ(spiraea plant, spira=ねじれたもの)はバラ科の落葉低木で日本全土の
山野に生えています。
シモツケの抽出物にサリチル酸が含まれています。
(別の文献には「セイヨウナツユキソウ」とも記されている)
そこでサリチル酸はスピール酸(Spirsaeure)ともいわれます。
1853年Kolbeが、サリチル酸=スピール酸であることを証明しました。
魚の目とりのスピール膏はこれに由来します。
1853年ジェラールGerhart(仏)がアセチルサリチル酸(acetylsalicylic acid)を
合成しました。
バイエル社のホフマンHoffmanは、1897年10月、アセチルサリチル酸をリウマチの
薬として再開発しました。
その際、アセチルの「A」とspiraeをつけて、Aspirinと名づけたのです。以来、アスピリン
といえばバイエルという定評ができました。
つまりアスピリンはシモツケにちなみます。


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2008-02-26 00:10 | 消化器科

腸・第2の脳 その2(2/2)

昨日の続きです。

これからの時代の炎症性腸疾患診療に求められるもの

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
消化・代謝内科/消化器内科  
渡辺 守 教 授

脳と深く関係する
腸の組織としての重要性はそれに止まらない。
腸に関係した「腹が立つ」「腹が煮えくりかえる」という言葉があるが,例えば,精神的にイライラしたり,緊張すると,トイレに行きたくなる人もいる。
この事実は,腸が腸だけで働いているのではなく、脳との深い関係があることを意味している。
それどころか,最近の研究では,首から下の神経の
約50%を腸が持っているという,ヒトの体の中で最大の末梢神経組織であるといったことまでがわかってきた。

また,うつ病などの薬の標的になっているセロトニンは,現在,最も注目されている脳内物質で,このセロトニン関係物質が脳の代謝に関わっていることはよく知られているが,生体内のセロトニンの90%以上は脳ではなく腸にあることがわかっている。
もちろん,活性は脳に存在するものが大部分を占めるものの,セロトニン量としては脳には5%程度しかないのである。
したがって,セロトニン関係の物質が脳 - 腸の働きの問題と密接に関わっていると考えられる。

上記以外にも腸管自体のホルモンがかなり明らかになってきている。
例えば,グレリンという満腹ホルモンが胃から分泌されることが証明され,その他にも腸から分泌されるホルモンの多くが脳の中に存在するということがわかっ
てきた。
したがって腸にはヒトの体中で最大の内分泌系・ホルモン組織ともいえるのである。

さらに,腸にはヒトの生体内の微小な血管の約55%が存在し,最大の末梢血管系組織でもあることがわかっている。(図4)。

c0129546_132554.jpg


非常に高い再生能力を有する
腸の上皮は機能維持のためヒト生体内において最も短いサイクルで細胞を更新し続けている。
腸陰窩底部に幹細胞が存在し,絶えず長軸方向に分化・増殖して,数日単位で絨毛先端から脱落するとされ,生体内でも最もターンオーバーが早い組織である。
したがって,消化管上皮は最も再生能力の高い組織の1つであると認識されるが,重篤な放射線腸炎や難治性炎症性腸疾患でその粘膜上皮の修復が傷害きれる場合,生体にとって大きな問題となる。
難治性クローン病における再発性潰瘍はそのよい例である。
また,再生のオーバーシュートは発癌に結びつくのではないかと指摘されており,潰瘍性大腸炎における炎症を母地とした癌化にはその可能性がある(図5)。
c0129546_1325385.jpg

 
最近になって腸はその特殊性が解明され,今や単なる管,ではなく”第2の脳”と呼ばれるほど,また脳も腸を守るために発達してきたことから「腸は脳より複雑な組織であるはず」という研究者もいるほど,腸は複雑で重要な組織であることが明らかになったのである.
 

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2008-01-31 08:12 | 消化器科

腸・第2の脳 その1(1/2)

ちょっと前、それも5年近く前の医学雑誌を捲(めく)っていたら興味深い総説が載っていました。
消化器専門の先生方にとっては当たり前の内容かもしれません。
しかし循環器が専門だった一開業医にとっては新鮮な内容だったので2回にわたって紹介させていただきます。
(各図はクリックしていただくと大きくなります)

これからの時代の炎症性腸疾患診療に求められるもの
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
消化・代謝内科/消化器内科  
渡辺 守 教 授

炎症性腸疾患の病態解明の進歩,それに基づくまったく新しい考え方,治療への展開には,腸の特殊性を理解する必要がある.
腸疾患がにわかに注目されてきたのも,1990年代に入り腸の特殊性が解明されつつあることが大きい。
本稿では,腸管の他の組織とは異なる性質について,最近解明されてきた事実を中心に概説する.

腸は単なる管ではない
腸は発生学的に,最も古い組織であると考えられている。
かなり下等な動物にも消化・吸収を行う腸管(原腸)は存在する。
すなわち,脳のない下等動物でも栄養分を吸収する
腸は必要であり,脳も消化管を保つために発達してきたとも考えられる。
脳神経系のみならず,血管系,免疫系,内分泌系も,実は,消化・吸収を行う腸の機能を保つために発達
してきた可能性が高い。
したがって,腸管は単なる”上皮細胞からできた管”ではないのである(図1)。
他の組織の移植に比し,小腸移植の成功例がきわめて少ないことも,腸の組織としての複雑さを物語っているといえよう。
c0129546_7594724.jpg


最大の面積で外界と接する
腸は,単に古い}臓器であるばかりではなく,体の外側に一番多く面している組織である。
普通,皮膚が一番多く外に面していると考えがちであるが,腸は皮膚の何と200倍,テニスコート1.5面分,300㎡ もの表面積で外界に接しているのである。
したがって,ウイルス,細菌などの微生物,食餌に含まれる抗原,異物の最大の侵入口であり,常にいろいろな物質に曝されている。

特に,腸には腸内細菌が常在し,その種類はこれまでわかっているだけでも400種類といわれており,それでも今なお,半数以上の菌が未同定であると推定されている。
ヒト1人の体内には100~200種類,10~100兆個の腸内細菌がいると考えられているが,その中には生体に必要な細菌も,毒素を産生する有害な細菌もいる。
健康なヒトの体内でも,腸と細菌は互いに毎日のようにダイナミックな戦い(生体側では細菌の殺傷・排出,細菌側では増殖・死滅を繰り返している。
そしてヒトの便の1/3はそれら細菌および腸粘膜細胞の死骸なのである(図2)。
c0129546_804966.jpg


複雑な生体防御機能を持つ
ここで大きな疑問がある。
腸はもともと栄養分を消化・吸収するところであり,すなわち,良いものはどんどん取り入れたいと思っている.
しかしながら,有害なもの,不要なもの,細菌などの異物が一番侵入しやすい環境として生体防御の最前線である腸は,これら悪いものを排除したいとも思っている.
腸は良いもの,悪いものをどうやって見分け,どうやって処理しているのであろうか?

実は,その識別をする装置,監視をする装置として「免疫」が発達したと考えられている。
体外からの細菌,ウイルス,食餌抗原をはじめ,さまざまな異物に対する免疫は,腸から発達してきたと考えられているのである.

最近の研究により,通常は末梢血液中,リンパ節,骨髄等に多いと考えられているリンパ球の約60%が腸に存在し,gut-associated lymphoid tissue (GALT)と呼ばれる特殊な腸管粘膜免疫機構が存在していることがわかり,腸はヒトの生体内で最大のリンパ組織であることが証明されている。
抗菌ペプチド,Toll - like受容体 (TLR),樹状細胞(DC),γδT細胞など自然免疫に働く機構,免疫グロブリン,サイトカインなどといった獲得免疫に働く機構の両方が腸には備わっており,生体内で最も複雑な免疫統御を行っているのである(図3
c0129546_815068.jpg


日本医事新報  2003年5月3日
版権 日本医事新報社


腸管における免疫機構
http://www.healthist.jp/special/150_03/03_03.html
慶應義塾大学医学部 消化器内科学教室 下部消化管(腸管免疫グループ)
http://web.sc.itc.keio.ac.jp/medicine/ibd/study.html

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2008-01-30 00:23 | 消化器科

胃がんの腹腔鏡下手術

王監督も受けた高度な手術。
患者の負担が軽く回復も早い。


減る傾向にあるといわれながら、年間1万人が新たに患者になっている胃がん。
発見が早ければ口から入れた内視鏡で切除できるが、それが無理なら手術が
検討される。
手術といえばお腹を20センチも開ける開腹手術が一般的だったが、ソフトバンク・
王貞治監督の手術で注目された腹腔鏡下手術も徐々に普及している。

もともと診断用具であった腹腔鏡が手術に初めて用いられたのは1990年。
胆石による胆嚢摘出に際してだが、翌年には慶應大学外科の故大上正裕医師が
世界に先駆けて胃切除に導入。
以来、20年近い歴史があり、先端を行く医師たちは高度な技術を駆使して優れた
手術を行っている。

「腹腔鏡下手術は、腹部に4~5カ所開けた切開口(穴)から手術用具を挿入し、
これを駆使して行う手術です。
一つの穴から入れた内視鏡を通して内部をモニターに映し出し、別の切開口から
挿入した特殊なメスで、がんのできている胃壁の部分または胃全体を切除し、
転移が想定されるリンパ節もはがしとります」
と手法を説くのは、王監督の手術を執刀した藤田保健衛生大学病院消化器外科の
宇山一朗教授。
食道と胃の上部消化管を専門とし、胃がんの腹腔鏡下手術だけで既に600例ほどを
実施。
上部消化管に対する鏡視下手術の国際的権威だ。

「当院の胃がん手術件数は年間約180例で、うち開腹手術は20例前後、残りが
腹腔鏡下手術です。
ガイドラインでは、その対象を早期がんと一部の進行がんと規定していますが、
腹腔鏡下手術で取りきれないものは開腹しても取れない。
そういう場合こそ軽負担に意味があるでしょう。
術前に化学療法を行って効果を確認した後で腹腔鏡下手術にかかるなど、個別に
判断して治療方針を立てています」

近県からの患者が中心だが、進行胃がんにも対処することを知った患者が遠方からも
やってくるという。

患者にとってのこの手術の利点は、身体負担が軽く、早期回復が望めること。
手術所要時間は通常3~6時間かかるが(開腹手術の1.5倍ほど)、翌日には自力歩行
が可能だ。

「医師にとっては内視鏡を用いるので肉眼では見えない鮮明な拡大視が得られることが
利点。
確実性の高い切除には欠かせない特徴です。
他分野の医師の声として、遠隔操作ゆえに執刀医の触感が鈍るという懸念もありますが、
経験を積むことで触感も磨かれます」

また、腹腔鏡下手術に適さないのは、がんが大きすぎる場合や重い心臓病などがある人。
この手法では、手術を容易にするため腹腔内にガスを注入して膨らませるので、心臓に
負担がかかるからだ。

使い捨て器具類が多く、病院側の出費がかさむのも欠点だろう。
消耗機器類代の十分な上乗せも医師の技術料もない一方、診療点数は胃がん手術
として一律に設定されているのだ。

なお、胃全摘をした後は、10キロ前後体重が落ちてなかなか戻らず、このことが患者
を再発の不安に陥らせたりするという。

「ものは考えようで、術後は肥満や生活習慣病が遠のきます。
特に男性は肥満と無縁の体形の人でも、内臓脂肪を溜め込んでいますが、これも
軽減します」

この手術の執刀医選びだが、身近な施設で受けたいという考えは時に、医者余りと
それゆえの熟練不足をもたらす。
未熟な手術を避ける意味からも、症例数の多い執刀医に患者を集中させるエ夫が
必要だろう。

週刊文春 2008.1.17
版権 文芸春秋社

c0129546_15353355.jpg

西村計雄 南フランス 油彩画3号
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t60928971

腹腔鏡下胃がん・大腸がん手術ってどんな手術?
http://www.toyota-kai.or.jp/information/front/08.html

腹腔鏡下手術について
http://www.city.tsugaru.aomori.jp/seijinbyou/abdominal_cavity.html
腹腔鏡による胃がん・大腸がん手術について
従来行われてきた開腹による胃がんや大腸がん手術は、現在も広く一般的に
行われております。
しかしながらこれらの方法では、おなかに約25から30cm にわたる皮膚切開が
必要で、手術は成功しても腸閉塞症などの術後後遺症で苦しむ人も少なくありません。
そこで最近では、胆石症の手術などに使われる腹腔鏡を用いた手術が胃がんや
大腸がん手術にも応用され、より小さい傷口で手術が可能になりました。
この様な新しい治療により次のような利点がもたらされると期待されています。
(1)術後の腸の動きの回復が早く、早期に食事が摂れる。
(2)痛みが少ないため翌日から歩行可能である。そのため肺炎などの合併症が少ない。
(3)手術中の出血量が少ない。
(4)傷口が小さいため術後の腸閉塞(イレウス)などの発生頻度が少ない。
(5)体への負担が少なく、手術後の回復が早く、入院期間が短くて済む。

早期胃癌だが手術が必要と言われた方へ
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/surgery2/laparo_m/1_top.html

腹腔鏡胃がん手術
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/surg2/www/cancer/i/souki/index.html

早期胃癌に対する腹腔鏡下手術(1)
http://www.nagahama.jrc.or.jp/sinryouka/geka/laparo4.htm

胃がん 回復早い腹腔鏡手術
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/jitsuryoku/20060807ik09.htm

治療:腹腔鏡下胃切除術
http://www.onaka-kenko.com/earlydetection/digestive-organ/stomach-cancer/sc_043.html

胃癌に対する腹腔鏡補助下手術
http://www.academic-surgery.jp/clinic_02_01_06.html

胃がんに対する鏡視下手術の成績と実績
http://www.city-hosp.naka.hiroshima.jp/k-net/k08/8-01-1.pdf

腹腔鏡下胃癌・大腸癌手術に対するマルチスライスCTによる手術支援
http://www.jsrtkinki.jp/bukai/item/df214aeb0f/78.pdf

腹腔鏡下胃切除
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/stomach/treatment_05.html
2004年版の胃がん治療ガイドラインでは、胃がんの腹腔鏡手術はステージIの胃がんへの臨床研究として行うべき治療として位置づけられています。

当科で行っている腹腔鏡下胃手術と臨床試験
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/surgery2/laparo_m/5_bunsho.html

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2008-01-28 00:05 | 消化器科

肝硬変とエルトロンボパグ

肝硬変患者では血小板数が減少します。
そのような患者にインターフェロン/リバピリン併用療法は行いにくいのが
現状です。
エルトロンボパグ(Eltrombopag)は、国内で未承認の薬剤ですが、この
薬剤を使用することによってインターフェロン/リバピリン併用療法の適用
患者を増やすことが出来るという報告です。

血小板減少症合併の肝硬変 新薬候補併用で治療が容易に
血小板減少症が合併している場合、C型肝炎ウイルス(HCV)感染による
肝硬変患者へのインターフェロン/リバピリン併用療法は慎重に行う必要
がある。
米国デューク大学のグループは、トロンボポエチン受容体作動薬エルトロン
ボパグ(日本未承認)を用いると血小板数が上昇し、抗ウイルス治療が容易
になることを示した。
New England Journal of Medicine(NEJM)誌2007年11月29日号
で報告した。

欧米22カ所の医療機関で、18歳以上のHCV関連肝硬変患者74人(年齢
の中央値は51歳、男性が3分の2以上)を、エルトロンボパグ30mg/日投与
群(14人)、50mg/日投与群(19人)、75mg/日投与群(23人)、プラセボ
投与群(18人)に割り付けた。
主要エン ドポイントは、4週時の血小板数が10万個/mm3以上の患者の
割合とした。
4週時に血小板数が10万個/mm3以上となった患者の割合は、エルトロン
ボパグの用量が多いほど高く、プラセボ群では17人中0人、30mg群では
12人中9人(75%)、50mg群では19人中15人(79%)、75mg群では
21人中20人(95%)(p<0.001)だった。

血小板数が5万個未満になった患者にはペグインターフェロンの用量低減
が勧告されることになっていたが、この試験のどの時点でも、エルトロン
ボパグ投与群の血小板数は5万個のレベルを超えていた。
(John G McHutchison et al. NEJM 2OO7; 357: 2227-36.)

Nikkei Medical 2008.1
版権(翻訳) 日経BP社

エルトロンボパグで抗ウイルス治療対象患者が増加:日経メディカル オンライン
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/nejm/200712/505006.html

Eltrombopag for Thrombocytopenia in Patients with Cirrhosis Associated with Hepatitis C
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/357/22/2227

慢性特発性血小板減少性紫斑病治療のためのエルトロンボパグ
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/357/357nov/xf357-22-2237.htm
GlaxoSmithKline社 特発性血小板減少性紫斑病患者を対象にしたPROMACTAの第3相試験で良好な結果が得られた
http://www.biotoday.com/view.cfm?n=20251

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)

<2008.4.1追加>
EltrombopagでC型肝炎患者の血小板数が増加
〔ニューヨーク〕ニューヨーク長老派教会病院肝疾患・移植センターの肝臓専門医でコーネル大学Weill医療センター(ともにニューヨーク)消化器病学と肝臓学部門のSamuel Sigal助教授は,新薬のeltrombopagがC型肝炎患者の血小板数を顕著に増加させ,効果的な治療法への道を開いたとNew England Journal of Medicine(NEJM,2007; 357: 2227-2236)に発表した。

30mg投与で患者の74%で血小板数が増加
C型肝炎患者では,しばしば疾患の進展に伴って血小板数が減少する。
この問題は,標準的な抗ウイルス療法が血小板数を危険なレベルにまで減少させることがあるため,結果として患者が必要な治療を受けられなくなることから複雑化している。

Sigal助教授は「今回の研究では,eltrombopagが血小板数を用量依存的に増加させ,重要な治療目標である最初の12週間の抗ウイルス療法を終了できた患者が増加した」と述べている。
同センターは22施設ある研究拠点の 1 つである。

第II相プラセボ対照試験では,C型肝炎ウイルス(HCV)感染により血小板数が少なく,肝硬変を呈する74例を追跡調査した。
対象をeltrombo-pagの投与量別の3群とプラセボ群にランダム化割り付けしたところ,同薬30mg/日投与の最低用量群では患者の74%で血小板数が有意に増加し,50mgまたは75mg/日投与群はそれぞれ79%,95%で増加した。
12週間に及ぶ抗ウイルス療法は3群でそれぞれ36%,53%,65%の患者が完遂した。プラセボ群でこの治療法を完遂できたのは 4 分の 1 未満であった。

副作用としては頭痛,ドライマウス,腹痛,悪心が確認されたが,いずれも治療を中断させるほど重度なものではなかった。

免疫性血小板減少性紫斑病にも有効
また,同センターのJames Bussel博士は,eltrombopagは血中の血小板数が著しく減少する自己免疫疾患である免疫性血小板減少性紫斑病(Immune Thrombocytopenic Pur-pura;ITP)患者で血小板数を増加させ,出血を減少させることに成功したと同誌(2007; 357: 2237-2247)に発表した。
今回の研究はeltrombopagを開発しているGlaxoSmithKline社から助成を受けている。同薬は血小板を産生する細胞の増殖と分化を誘導する研究段階の経口非ペプチド血小板増殖因子で,米国ではPromacta®,欧州ではRevolade®として販売されている。正常な血小板機能を回復させる他の薬剤は注入剤または注射剤であるが,同薬は 1 日1回投与の錠剤である。

米国では400万人,世界中では 1 億7,000万人がHCVのキャリアであると推定されている。
HCVはおもに輸血と血液製剤により感染する。感染患者の大多数は,輸血用血液のHCVスクリーニングが開始された1990年以前に輸血を受けるか静注の麻薬を使用していた。
また,かなりまれではあるが,性交渉時と周産期に感染することがある。

HCVは肝臓に炎症と瘢痕化を起こし,患者の約半数が治癒可能であるが,それ以外の患者では重度の肝損傷,肝がんが生じ,死亡することもある。HCV感染は肝硬変,肝移植の最も一般的な原因である。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109131&year=2008
Medical Tibune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社
[PR]
by esnoopy | 2008-01-23 00:04 | 消化器科

小腸用カプセル内視鏡

m3のネタで恐縮です。
Nikkei Medical2008.1の「”見えてきた”小腸疾患」の記事も含めて勉強してみました。


小腸用カプセル内視鏡 暗黒の臓器「小腸」が見える
カプセル内視鏡承認のインパクト 小腸疾患への関心高まる
出血源不明消化管出血の診断を可能とする小腸用カプセル内視鏡が(昨年)10月から保険適用となった。
これにより、これまで暗黒の臓器といわれていた小腸の全域を容易に見ることができるようになる。
適応患者は、大きめのビタミン剤サイズのカプセルを飲み込むだけという低侵襲性も大きな特長で、小腸疾患の診断治療への貢献が期待されている。

保険償還価格は7万7200円
薬事承認された小腸用カプセル内視鏡「ギブン画像診断システム」(以下、カプセル内視鏡)は、イスラエルで開発され、2000年にネイチャー誌で紹介された。
翌2001年には米国で販売され、2003年には日本でも独協医科大のグループを中心に治験が開始されていた。
それが07年4月になって、ようやく薬事承認を受け、5月から販売開始されている。

保険収載はこの10月で、カプセル(PillCam SB)の保険償還価格は7万7200円、技術料は1700点となった。

カプセル内視鏡の特長は、
①従来の内視鏡では観察することが困難だった小腸の全域について直接視覚化できる
②麻酔などの前処置やバリウムなどの造影剤なしに26×11mm大のカプセル型カメラを飲み込むだけで検査が可能で、患者への負担が極めて少ない
③約8時間の検査期間中、患者は通常の生活を送ることができ、肉体的負担が少ない
④高い病変検出率(出血継続症例では92.3%)
などが挙げられる。

カプセル内視鏡は嚥下後、毎秒2枚の画像を撮り、約8時間で約5万5000画像を撮像できる。同システムを扱うギブン・イメージングによれば、現在までに60カ国以上の60万人以上に使用されている。

カプセル内視鏡の適応は、原因不明の消化管出血で、欧米では上部・下部消化管内視鏡で出血原因が不明の場合に実施される。
しかし、日本では上部・下部消化管検査で出血原因が不明な場合、つまり胃透視検査や注腸検査で原因が特定できない場合に、カプセル内視鏡検査を実施できる(日本ではクローン病は適応外)。

承認治験を行った独協医科大消化器内視鏡センター長の中村哲也教授は、「従来、消化管内視鏡学の分野では胃がんや大腸がん、食道がんなどが主な研究対象だったが。
しかし、ダブルバルーン小腸内視鏡やカプセル内視鏡の登場で、小腸疾患への関心が一気に高まり、学会報告が顕著に増えている」と話す。

5月に都内で開かれた日本内視鏡学会では、前月に薬事承認を受けたばかりのカプセル内視鏡のセッションに、多くの参加者が詰めかけた。

中村教授はさらに「原因不明の貧血や下血がある患者にとって、早い段階で疾患が発見され、治療が受けられるようになった」と強調する。

小腸の視覚的検査は、カプセル内視鏡に先行したダブルバルーン小腸内視鏡でも実施されている。
しかし、これらの検査法がなかった03年秋頃までは、出血シンチグラフィー検査で小腸出血を確認した後に試験開腹を行い、術中内視鏡により病変を探していた。
それでも、病変を発見できずに閉腹することもあったという。

軽い消化管出血の患者に対しては鉄剤が投与されるが、長期投与により肝臓に鉄が沈着しヘモジデローシスを起こし、肝硬変になることもある。
そのような患者の早期発見にもつながる。

原因不明消化管出血のうち、小腸の出血は「恐らく5%前後だろう」と中村教授は言う。
中村教授らの研究では、カプセル内視鏡で確定診断になった症例(70例)のうち、潰瘍・びらんが34.3%と最も多く、血管性病変25.7%、腫瘍性病変17.1%、クローン病10.0%、小腸外病変8.6%、ベーチェット病2.9%、その他2.9%という結果だった。

プライマリケアでは
①明らかな消化管出血・下血
②貧血の持続
③便潜血が陽性でやや貧血
といった患者について、胃カメラや大腸内視鏡を最初に行い、異常がなかった場合にはカプセル内視鏡検査を勧めるべきだろうと中村教授は話す。

カプセル内視鏡とダブルバルーンで小腸疾患の解明進む
ただし、カプセル内視鏡の画像読影だけでは、確定診断になるものとならないものがある。
形態だけで診断できる良性ポリープなどは確定診断ができるが、組織所見が必要な腫瘍などは推定の範囲にとどまる。

潰瘍については、NSAIDsが原因の医原性潰瘍の場合は、NSAIDs休薬後に再検査が必要だ。
血管性病変についても形態的な診断は可能だが、出血の原因かどうかを判断するには、「ダブルバルーン小腸内視鏡による治療で出血が止まるか」あるいは「ダブルバルーン小腸内視鏡で採取した組織を確認する」必要がある。

ダブルバルーン小腸内視鏡は、検査と同時に治療を行えることが最大の強みだが、まれに穿孔や感染性炎症などの合併症が生じることがある。

症例にもよるが、読影に要する時間はカプセル内視鏡では、出血や病変が1カ所の場合、症例当たり20~30分でできる。
診断支援ソフトによって約8時間の画像を約45秒~約3分に短縮して見てることで大まかな見当を付けられるためだ。

一方のダブルバルーン小腸内視鏡は多くの場合、医師2名、看護師2名、放射線技師1名で行われ、検査およびその前後を合わせて約2時間かかる。

カプセル内視鏡は、鎮静剤や送気が不要であることもメリットだ。
ダブルバルーン小腸内視鏡の場合、送気の圧力によって、一時的に出血が止まり出血源を見逃すこともあるからだ。

スクリーニング効果の高いカプセル内視鏡と治療まで可能なダブルバルーン小腸内視鏡によって、小腸疾患の検査・診断技術は格段に向上した。
出血病変の検出には両者の併用が有用だとする報告もある。
「今後の課題は治療薬開発だ」(中村教授)。


小腸用カプセル内視鏡
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200712/special2.html
c0129546_2337891.jpg

秋保正三 風景(フィレンツェ) 油彩 SM
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v39959174


<参考>   Nikkei Medical 2008.1 より。
*小腸は内視鏡の挿入が困難なため”暗黒大陸”とまで呼ばれていた。
*ダブルバルーン内視鏡; 2003年にフジノン東芝ESシステムが発売
*シングルバルーン内視鏡; 2007年6月にオリンパスが発売
*消化管出血の30~50%が上部および下部内視鏡で出血源を判定できない。
  消化管出血全体の5%程度が小腸からの出血。(Gastroenterology 200;118:201-
221)
このデータは小腸内視鏡が開発される前のもの。小腸出血は実際にはもっと多い。
*出血源が不明だった135例中70例でカプセル内視鏡などで小腸病変を確認したというデ
ータもある。
*クローン病は狭窄を引き起こしやすく、滞留の可能性があるカプセル内視鏡は禁忌になって
いる。
*小腸の腫瘍性病変は良性が大半。
*稀に、原発性小腸癌、消化管間葉系腫瘍(GIST)や悪性リンパ腫などが報告されている。
*小腸は壁が薄く、出血や穿孔など、内視鏡挿入による合併症のリスクは高いと予測される。
*小腸のNSAIDS潰瘍についての治療薬については議論がある。


<コメント1>
随分昔のことです。
研修医時代にメッケル憩室の症例を、部長先生に言われるまま学会発表しました。
小腸二重造影の写真を提示しましたが、発表している自分自身もよく納得できなかったことを思い出します。
<コメント2>
便潜血反応陽性例で胃と大腸のチェックをして異常のない症例によく遭遇します。
仕方がないので便潜血の再検と、血液検査で貧血の出現や進行がみられないかを定期チェックすることになります。
案外歯肉出血や痔が原因だったりするのかも知れませんが。
<コメント3>
数多くの画像をチェックするのは大変なことと思われます。
<コメント4>
免疫学的測定法は「上部消化管(胃、十二指腸など)に出血がある場合、胃酸や消化液のどの影響によりヘモグロビンが変性し、陽性と出にくい」ということになっていますが、空回腸の出血の場合、化学的測定法とどちらが感度、特異度が高いのでしょうか。
一般的に上部消化管は、食道・胃・十二指腸、下部消化管は大腸ということで、今まで小腸は恣意的に、診断からはずされていた感は否めません。

便潜血検査について
http://www.toshiba.co.jp/hospital/culture/014.htm


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2008-01-18 00:05 | 消化器科

PNALT

PNALTはPersistently Normal ALTの略です。
この概念は
HCVの無症候性キャリアは「肝臓正常」とは言えない
という事実から云われるようになりました。
臨床上、大切な点はALTが30IU/Lを越える場合は、C型肝炎に準じて診療を行う
必要があるということです。
1.「ALT正常例(基準値以下)」HCVキャリアの方からも発癌があります。
c0129546_2331576.jpg

2.ALT持続正常(基準値以下)C型肝炎症例への取り組み
c0129546_2341624.jpg

3.C型肝炎(HCV RNA陽性)の経過観察において推奨される検査

c0129546_2345768.jpg

(図をクリックすると拡大されます。)

以下、「特別企画座談会」からPNALT関連箇所のみ転載させていただきました。
[PDF] 特別企画座談会
http://www.ims.gr.jp/shinmatsudo/patient/patient03/zadankai.pdf
文中のについてはこのPDFでご確認下さい。

藤瀬
■次に、従来無症候性キャリアと呼ばれてきたALT持続正常症例(PNALT:Persistently Normal ALT)に対するIFN治療について、ご意見をうかがいます。
北村
■PNALTに対してIFN治療を行うか否かは、古くて新しいテーマだと思います。
B型肝炎ウィルスキャリアにおける無症候性キャリアと同様の状態がC型肝炎ウィルス感染者においても存在するかという議論は、C型肝炎ウィルスが発見された当初よりなされてきましたが、無症候性キャリアという概念は肝炎がウィルス自体による肝細胞傷害ではなく宿主の免疫応答によるものであるという根拠のひとつにもなっているわけですし、慢性肝炎の病態や定義にもかかわる大きな問題といえると思います。
このPNALTに対する治療が、再び議論されてきた背景には、おそらくPEG-IFNα-2b/RBV併用療法によってウィルス排除の可能性が飛躍的に高まったためと思われます。そこで、PNALTに対して治療を行うべきか否かを議論する前に、いくつかの問題点を整理しておきたいと思います。
1つはPNALTの定義です。
ALTが基準値内で持続しているかを確認するのはなかなか困難ですが、そもそもALTの基準値自体が施設によってばらつきがあります。
おそらく本邦における多くの施設は、HCVが発見される以前の基準値を用いていると思われます。
したがって、ALTが基準値内にあると判断している患者さんの中には、肝の線維化が進展している例も多いと思われます。
実際、PNALTでも約30%の症例で肝の線維化が進展しているという報告もあります。
2つ目の問題点は、従来、PNALTにはIFN治療が効きにくいといわれた点です。
また、PNALTはIFN治療で肝炎が悪化するという懸念も従来から議論されていました。実際、1997年のNIHにおけるConsensus Development Conferenceの声明文では「PNALT症例には、臨床試験以外でIFNを使用すべきでない」という勧告がなされています。
しかし、その5年後の2002年におけるConsensus Development Conferenceでは「PNALTにおけるIFN単独療法の有効性は、ALT値異常症例とほぼ同等であり、さらにジェノタイプ1のPNALTに対するIFNα/RBV併用療法はALT値異常症例と比較して遜色ない効果が期待できる」と指摘しています。
また、治療による肝炎の増悪はみられないという結果が報告されています。
そして最後の問題点は、すべてのPNALTにPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行った方がよいのか、という点です。
ジェノタイプ2に関しては高ウィルス量症例であっても半年の治療で90%の治癒率が得られますので、私は積極的に治療すべきだと考えています。
問題はジェノタイプ1かつ高ウィルス量のPNALTです。
この点については、欧米ではあまり議論されていませんが、本邦では「肝炎が肝炎で終われば病気でない」という考え方が浸透しています。
この考え方は基本的に正しいと思いますが、果たして肝炎が肝炎で終わることがかるのか、という疑問もあり、この点については今後大規模な検討は必要と考えています。
藤瀬
■北村先生に問題点を整理していただきましたので、次にPNALTに対する実際の治療についてご意見をうかがいますが、まず、米国肝臓学会(AASLD)のガイドラインについて説明してください。
(図6 )
横須賀
■AASLDは、「血清トランスアミラーゼ値に関係なく、合併症の有無、著効が得られる可能性、重篤な副作用発現の可能性、肝生検による肝疾患進行の程度をもとにインターフェロンとリバビリンの治療を始めるかどうかの決定がされるべきである」と勧告しています(図6)。
ALT値が正常範囲でも肝生検を行うと、実際には8割強の症例に軽度の肝炎が認められるといわれていますので、肝障害の進展の程度で治療を行うか否かを決めることが現実的だと思います。
藤瀬
■PNALTに対する治療については、この3月に厚生労働省の治療標準化研究班から「血清ALT正常C型肝炎症例に対する抗ウィルス治療ガイドライン」が示されています。
それをみると、ALT値が30IU/L以下の症例でも血小板数が15万未満の場合は、線維化進展例がかなり存在するため、可能なら肝生検を施行し、F2A2以上の症例には抗ウィルス療法を考慮する、と記されています。一方、ALT値が31〜40IU/Lの症例は血小板数が15万以上の場合は65歳以下は抗ウィルス療法の適応、15万未満の場合は慢性肝炎治療に準ずる、と勧告しています(図7)
そこで、PNALTに対してPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行うメリットについてコメントしてください。
横須賀
■PNALTに対する治療を考えた場合、従来のIFN単独療法でも、ある程度のSVR率は得られていますが、同時に治療後にALT値が急激に上昇する症例を経験した方も多いと思います。
しかし欧米の報告をみますと、48週間のRBV併用療法で、通常の慢性肝炎症例と同等あるいはそれ以上の有効性が期待でき、仮に治癒しなくてもALT値が急激に上昇する症例は非常に少ないことが明らかになっています(図8)
一方、本邦におけるPNALTにはジェノタイプ2の症例が多いため、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法によって、かなり良好な成績が得られるかと思われます。したがって、PNALTの長期予後を考慮すると、今後は積極的に治療すべきだと思います。
藤瀬
■実際、PNALTにたいしてPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を導入された先生はいらっしゃいますか。
北村
■当院においてPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を導入したPNALT症例を改めて検討したところ、その数が意外に少ないことに気付きました。
その理由は、導入以前にすでに肝庇護剤が投与されている場合が多く、正確な評価ができないためです。
そこで、これらを除外し、なおかつ投与開始24週まで観察可能であったジェノタイプ1の4症例をみると、2例がEVRで、残り2例も24週までにウィルス陰性化がみられています。
また、投与開始4週まで観察可能であったジェノタイプ2の2例では、2例とも4週でウィルス陰性化がみられており、PNALTであるからウィルスの消失が明らかに遅いということは、少なくともなさそうな印象です。
島田
■当院の成績をみると、ジェノタイプ2の6例は、治療開始4週時に全例でウィルス陰性化がみられています。
一方、ジェノタイプ1の8例では、治療開始12週時にウィルス陰性化がみられたのは4例です。
古くはPNALTにIFN治療を行うと「寝た子を起こす」と言われましたが、そのような印象は全くなく、ALT値が上昇した症例は経験していません。
三上
■先ほどお示しした66例のうち、8例がPNALTですが、決してそれらの症例の成績は悪くなく、むしろ他の症例より早めにウィルス陰性化がみられました。
一般に、線維化が進展している症例や高齢者ではSVR率が低くなりますので、PNALTの方が治療効果は得やすいのではないでしょうか。


Main Article:
Hot Topics In Hepatitis C 
http://www.idcronline.org/archives/jun04/article.html

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2007-11-30 00:10 | 消化器科

NASHの鑑別・確定診断

日本医事新報4339 2007.6.23よりNASHの紹介です。

NASHの鑑別・確定診断     
鹿大 坪内博仁 先生

1. 肝生検をせずに診断は可能か。
脂肪肝の存在は、腹部超音波検査やCT検査により推定できるが、
NASHの確定診断には肝生検が必須である。
したがって、肝生検をせずにNASHと診断することはできない。
その理由は、NASHは組織学的に肝脂肪化に加えて、肝細胞のバルーニングや線維化を伴っていることが必要であるからである。
血液生化学検査に異常のある脂肪肝では、肝生検を施行することが望ましい。

2. 線維化マーカーを用いることにより、NASHと通常の脂肪肝を鑑別できるか。

線維化マーカーであるⅣ型コラーゲン7Sとヒアルロン酸はNASHでは通常の脂肪肝と比較し、有意に高値を呈する。
また、Ⅳ型コラーゲン7Sが5.0ng/ml以上、ヒアルロン酸が43ng/ml以上では、NASHの可能性が高いことも報告されている。
さらに、これらのマーカーはNASHにおける肝線維化の程度と相関する。
したがって、線維化マーカーを用いることにより、NASHの可能性を推定できるが、やはり正確には鑑別できない。
特に線維化が軽度のNASHでは、鑑別はより困難となる。

3. NASHとインスリン抵抗性との関連は。

インスリン抵抗性は肥満が原因で起こることが多く、肝への中性脂肪蓄積を促進する。
インスリン抵抗性はNASHの最も重要な病態である。
インスリン抵抗性を簡便に判断するHOMA-IR
〔空腹時血糖(mg/dl)×空腹時インスリン値( U/ml)/405)〕は、正常者と比較しNASHでは高値を示す。
明確なカットオフ値はないが、HOMA1IRが3.0以上の場合はインスリン抵抗性の存在が疑われる。
また、単純な脂肪肝からNASHへの進展にインスリン抵抗性は促進的に作用すると考えられている。
しかし、単純な脂肪肝とNASHとの比較で、インスリン抵抗性に差があるかは報告者により意見が分かれる。

4. 例従来、アルコール性肝障害と診断されてきた病理所見を持つ症例で、アルコール摂取のないものをNASHと考えてよいか。

NASHの組織所見はアルコール性肝障害と類似し、両者の鑑別は病理組織所見のみからは困難であるといわれている。
アルコール性肝障害と診断されてきた病理所見を持つ症例で、アルコール摂取歴がなく、ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎など他の病因が否定されればNASHと考えてよい。

5. 肥満をベースとした脂肪肝の症例は多数存在するが、その中か
らNASH症例をいかにしてみつければよいか。


肥満はBMIで判定され、〔体重(kg)/身長(m)2〕で計算し、これが25以上は肥満と定義される。
肥満には内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満があり、前者で脂肪肝患者が多いといわれている。
そのような脂肪肝患者からNASH症例をみつけるには、厳密には肝生検が必須であることは先に述べた通りであるが、血液生化学検査である程度NASHが予想できる。
まず、画像的に脂肪肝を認め、アルコール摂取量が20g/日以下、ALTのほうがASTよりも高値の肝障害が6カ月以上継続、肝炎ウイルスマーカーや自己抗体が陰性、先天性代謝性肝疾患が否定的であれば、NASHを疑う。
特に、血小板数が低下し、肝線維化マーカーが異常高値であれば、NASHが強く疑われる。
また、生活習慣病(高血圧、高脂血症、耐糖能異常)やインスリン抵抗性の存在は、NASHの発症や進展に促進的に作用するため、脂肪肝の患者でこのような合併症があれば、NASHの可能性が高い。

c0129546_744198.jpg

内田正泰 古里の海 木版画
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v32482306



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2007-11-06 00:05 | 消化器科

アルコールとGERD

きょうはみなさんがよくご存知の内容になってしまいました。
日医雑誌に掲載された内容なのでご覧になられた先生方も多いことと思います。
GERDに対してはPPIテストが有名ですが、GERDを悪化させてしまう薬剤を
想定することも臨床現場では重要と考えて、あえて紹介させていただきました。
c0129546_7501760.jpg

アイズピリ   茶色の背景の黄のひなげし リト
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t50546871?u=;artfolio11


高齢になると食道裂孔ヘルニアとなる例が増加する.
ヘルニアになると胃酸が逆流しやすくなるため、食後あるいは就寝後に胸やけや
口の苦みを感じ、食事の楽しみや安眠が妨げられ、QOLが低下する。
さらに食生活、体格が欧米人に近づくにつれ,かつて低酸が多かった日本人の
胃酸分泌も高酸傾向にシフトしている。

アルコールは食道粘膜に対する直接刺激によって食道炎を引き起こすのみならず、
食道の運動を低下させ、下部食道括約筋(lower esophageal spincter;LES)
圧を低下させるので、常習飲酒家では胃酸が食道内に逆流しやすくなり、GERDを
合併する頻度が高くなる。

以上のような背景から、GERDは高齢者の生活習慣病として、今後大きな比重を
占め、計画的な対策が必要になると考えられる。
GERDの主症状は胸やけであるが、胸痛を訴えて狭心症との鑑別を要する例や,
胃酸の逆流が慢性咳嗽、気管支喘息の原因となることがある。

さらに、狭心症を疑ってCa拮抗薬や亜硝酸薬を投与したり、気管支喘息と診断して
テオフィリンを投与すると、これらの薬剤はLES圧を低下させるので、GERDによる
胸痛・咳嗽症状がかえって悪化することになるので注意を要する。

また、制酸目的で抗コリン薬あるいは不定愁訴の緩和目的でジアゼパムを投与するとLES圧が低下するので、期待に反して胸やけが増悪することもある

GERDに対する薬物治療としてはプロトンポンプ阻害薬
(proton pump inhibitor;PPI)が有効であり,患者のQOLも改善する。
PPI投与はGERDの治療的診断、狭心症や気管支喘息との鑑別診断にも
有効である。

慶大 永田博司先生
日医雑誌 135;2 2006.5


<コメント>
アルコールはLESを弛緩させます。
特にビールやシャンパンは胃の中で炭酸ガスが発生して胃を膨らませるためよくないようです。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2007-10-31 00:40 | 消化器科

工藤分類

私は消化器が専門ではありません。
したがって恥ずかしながら工藤先生の名も初めて聞きました。
消化器専門、特に大腸専門の先生には知らない人がいない
という有名な先生だそうです。
WHOでの分類にKudo's Classificationという名前を冠した
分類もあるそうです。
最近、たまたま新聞にその工藤先生が紹介されており、
臨床医としての執念に感動を覚えました。
最初、評価されなかった点ではピロリ菌発見物語にも通じる
ものがあります。

まずは大腸がんについての勉強をしてみました。

06/1/17 上毛新聞
http://takisan.fc2web.com/gan5.htmlの記事からです。

増え続ける大腸がん 10年後 がんのトップに?
定期検査で臓器発見を!
大腸がんになる人が増えている。欧米型の病気とされ、国内
の年間罹患者数は1990年に約6万人だったが、99年には
9万人を超えるなど増加が際立っている。2015年には
胃がんを抜いて、ガンのトップになるとの予測もある。
治療には定期的な検査による早期発見が重要だ。
 
遺伝が原因も
大腸がんが増えているのは高脂肪、高カロリーの食事が増えた
からと言うのが定説だ。
脂肪が肝臓で分解されると、胆汁酸などさまざまな酸が出る。
その酸が腸内細菌と絡んで発がんに至ると考えられてきた。

「しかし動物実験からは、それが原因だと言い切れず、環境的
因子は本当のところ、よく分かっていない」と大腸がんの研究
で世界的に知られる昭和大横浜市北部病院消化器センター長、
工藤進英教授は指摘する。

遺伝が原因だとはっきりしている大腸がんもある。
そうした「家族性」の大腸がんは全体の5〜10%を占めると
みられ、確実に遺伝する。
工藤教授によると、大量のポリープができ、何度も手術を繰り
返さねばならない場合もあるという。

「陥凹型」発見
工藤教授は秋田赤十字病院に勤務していた1985年、
早期の大腸がんの中に隆起型のポリープではなく、隆起はなく
進行とともにえくぼのように潜っていく「陥凹型」があることを
見つけた。
陥凹型は1センチ以下の大きさでも、その45%が大腸の粘膜
下層に浸潤しているという極めて悪性度の高いがんだ。

小さいとエックス線撮影やPET(陽電子断層撮影装置)では
分からず、内視鏡でもうっすら赤く見えるだけで。インジゴ
カルミンという色素をかけると、内視鏡でも見えるようになる。

工藤教授は陥凹型を詳しく調べるため、工学機器メーカー
のオリンパスと倍率百倍の拡大内視鏡を共同開発。
粘膜の凹凸や模様から、ガンかどうかや、ガンの進行を正確
に判定する。「ピットパターン分類」を確立した。

現在は倍率が千倍まで上がる高性能の拡大内視鏡を開発中。
実現すれば、ガンになると細胞の核が大きくなる現象を利用
して、より精密な診断が可能になる。

無駄のない治療
小さなポリープは誰でもあり、中にはがんでないものもある。
「しかしポリープは“がんの目”だと思っているから、内視鏡
の検査のときに、すべて取った後で、病理で検査する。
意味のないことを世界中でやったわけです」と工藤教授。

ポリープを一個取るのにかかる医療費は5、6万円。
拡大内視鏡とピットパターン分類の登場によって無駄が
なくなった。

現在、国内の約半数の施設でこの治療が実施されている。
早期発見のため工藤教授は拡大内視鏡による検査を勧める。
検査にかかる時間は慣れた医師なら20分から30分。
工藤教授は5分で済ませる。


「無症状でも50歳以上になったら1年から3年に1回、
定期的に内視鏡検査を受けた方がいい」。
手軽な便潜血検査では進行がんしか見つからないと言う。


c0129546_8213477.jpg

朝比奈隆「風景」油彩
http://page19.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/x26430091


拡大内視鏡によるsm癌の特徴的所見
http://masumitsu.or.jp/research/3.html

大腸内視鏡治療の新しいパラダイム 大腸内視鏡治療
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2001dir/
n2432dir/n2432_05.htm


大腸内視鏡治療
http://www.igaku-shoin.co.jp/prd/review/
0000305.html


大腸腫瘍に対する拡大内視鏡観察─
V 型 pit pattern 診断の問題点
http://ej.islib.jp/ejournal/1403100457.html

大腸腫瘍性病変における腺口構造の診断学的意義の
解明に関する研究
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant
/2005/keikaku/14-11.pdf


V 型 pit pattern 診断の現状と問題点─V 型亜分類に焦点
を当てた多施設アンケート結果から
http://ej.islib.jp/ejournal/1403100460.html


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
by esnoopy | 2007-10-30 00:05 | 消化器科