カテゴリ:消化器科( 29 )

ヘリコバクターピロリ菌感染と胃癌

最近、新聞などでヘリコバクターピロリ菌感染と胃癌に関する発表が
続きました。
このピロリ菌は細菌の中でヒト悪性腫瘍の原因となりうることが明らかに
なっている唯一の病原体です。
一方、ヘリコバクター・ピロリの除菌が広く行われだした頃から、
この治療を行った患者に食道炎や食道がんの発生が多いことが
報告されています。
本菌は胃に対して悪影響をおよぼす一方、食道に対してはむしろ
疾患を防御している可能性もいわれています。

きょうはそのピロリ菌と胃癌についての新知見を紹介をさせていただきます。


<ピロリ菌>感染持続のナゾ判明 東大チーム
50歳以上の日本人の半数が感染しているとされるピロリ菌が、胃の中で
感染を持続させる仕組みを、東京大医科学研究所などの研究チームが
解明した。
ピロリ菌は胃かいようや胃がんの原因になるとされる。
抗生物質による除菌以外の新たな治療法の開発につながる成果で、
11日発行の米科学誌に掲載される。
胃や腸の表皮細胞は絶えず自ら細胞死を引き起こし、2〜3日ごとに
新たな細胞と置き換わることで病原菌の感染から身を守る。
その中で、ピロリ菌が長期間、感染し続ける仕組みは謎だった。
笹川千尋・東京大医科学研究所教授(細菌学)らは、ピロリ菌に感染
したスナネズミでは、細胞死が通常の半分程度しか起きないことを発見。
一方、「CagA」というたんぱく質を作れないピロリ菌を作り、スナネズミに
感染させると、通常通り細胞死が起きた。
このため、ピロリ菌は胃粘膜にCagAを注入することで細胞死を抑制
していると結論した。
ピロリ菌の中には、薬に耐性を持つ菌も出始めている。
笹川教授は「細胞死を抑制する経路を断てれば、持続感染を防ぐ
新たな治療法への布石になる」と話している。
10月11日1時39分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071011-00000010-mai-soci

ピロリ菌の持続感染戦略を発見
(抗生物質とは異なる新しい治療法開発への布石)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20071011/index.html
(上記の研究者によるサイトです。詳しく説明されています。)

早期のピロリ除菌、胃がん予防に効果 和歌山医大調べ
胃がんを引き起こすとされるヘリコバクター・ピロリ菌の除菌を、胃壁が
変化する「萎縮(いしゅく)性胃炎」発症の前にすると胃がんの予防効果
が高いことが、和歌山県立医大の一瀬雅夫教授(第2内科)らの大規模
な調査でわかった。
早期の除菌が有効であることを示すデータで、横浜市で開かれている
日本癌(がん)学会で3日、発表した。
萎縮性胃炎は、胃壁が薄くなり、胃酸の分泌が減る状態。ピロリ菌
感染者の約3割に見つかり、10年以上を経てがんになることが多い。
一瀬教授らは、1994年以降に、和歌山県で胃がん検診を受けた
40歳以上の男性で、ピロリ菌に感染した人のうち、4129人を約
10年間追跡し、胃がんの発症率などを調べた。
検診時に萎縮性胃炎と診断された人のがん発症率は、約2%で
除菌してもしなくても有意差はなかった。
診断されなかった人では、除菌に成功した人の発症率は0・62%と、
除菌しなかったか除菌に失敗した人の1・07%に比べ胃がんのリスク
が約40%減少した。
   (2007年10月4日  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071004-OYT8T00066.htm

ピロリ菌感染で胃がん発症…日本人はなりやすい型
胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌に感染しても、胃がん
のなりやすさは遺伝子の型によって異なり、日本人の大半はなり
やすい型であることが、名古屋大大学院の浜島信之教授らの研究で
分かった。
同教授らは、ピロリ菌感染者が胃がんを発症する場合、胃粘膜の
萎(い)縮(しゆく)から胃がんへと段階的に進行することに着目。
感染者の日本人248人の遺伝子を調べ、委縮に移行した人
としていない人との違いを分析した。
その結果、「PTPN11」という遺伝子の一部の型が「GG」「GA」の人
は5〜6割の高率で胃粘膜委縮が起きており、「AA」の人では1割強
にしかみられなかった。
日本人の9割以上はGG型とGA型で、AA型は1割に満たず、
ピロリ菌感染から胃粘膜委縮に移行するリスクが高いことが示唆
された。
PTPN11の機能は分かっていないが、ピロリ菌に含まれる毒性の
強いタンパク質「CagA」との関連が示唆されている。
浜島教授は「遺伝子型の違いがCagAの働きに影響を与えている
のではないか。
いずれにせよ除菌はした方がいい」と話している。
http://www.zakzak.co.jp/top/2007_10/t2007100140.html


ピロリ菌は胃癌の最大原因
http://naisikyou.com/iii/ca2.htm
(ピロリ菌は「煙草なみの発癌物質 )
ピロリ菌の臨床研究の現状
・・・・・・困難な臨床介入試験
http://naisikyou.com/iii/tikenn.htm
ヘリコバクター・ピロリ
http://wkp.fresheye.com/wikipedia/ヘリコバクター・ピロリ?from=wikiclip
ピロリ菌
http://wellfrog.exblog.jp/7073379
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照沼 光治 舞雪
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<薬剤ニュース>
●バルトレックス錠500
水痘の適応が新たに加わりました。
「成人および体重40Kg以上の小児には1回1000mを1日3回
経口投与する。」
(帯状疱疹の場合と同じ投与量)
「成人の水痘の治療においては5〜7日間、小児の水痘の治療
においては5日間使用し、・・・」
(使用期間が成人と小児で異なります。)
●ダイドロネル錠200
重大な副作用の追加
顎骨壊死・顎骨骨髄炎(ビスフォネート系薬剤全般)
報告された症例の多くはビスホスフォネート系薬剤にて治療中
に抜歯などの歯科処置や局所感染に関連して発現しており
特に抜歯した場合にその部位付近で発生しています
ビスホスフォネート系薬剤には注射剤と経口内服剤があり 
顎骨壊死・顎骨骨髄炎は癌患者に投与される注射剤での報告
が多くを占めていますが まれに経口剤でも報告されていること
があります。
 顎骨壊死・顎骨骨髄炎のリスクとしてビスフォネート系薬剤
の投与の他にも下記の因子が考えられます
悪性腫瘍、化学療法、コルチコステロイド治療、放射線療法、
口腔の不衛生、歯科処置(特に抜歯)
<新聞広告より>
経鼻内視鏡の一面広告で内視鏡ビデオのサイトが紹介
されていました。
http://and-fujifilm.jp/stomach/index.html
当院でも導入を迷っているところです。
結構多い鼻咽頭の愁訴の患者さんに対して鼻咽頭ファイバー
的な応用が出来るのも魅力と思っています。
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by esnoopy | 2007-10-12 00:38 | 消化器科

アセトアルデヒドは発がん物質?

最近、飲酒と発がんの報告が散見されます。
タバコの害のキャンペーンがアルコールに飛び火した
感もあります。
アルコールはたしかに発がんのトリガーと考えることも
できるでしょうが本当に疫学的にもそうなのか?
愛飲家はたしかに男性に多いわけですから男性の平均
寿命を下げているのか(酒飲みは早死か)?
非常に気になるところです。
(つまりがん死亡のみならず総死亡も?)
最近の報告を少しアップしてみました。

内容をそのまま掲載するのは本意ではありませんが、
ニュース記事のためアクセスが今後出来なくなるという
ことでそのまま出させていただきます。


飲酒後すぐ赤くなる人・膵臓がんリスク1.5倍

酒を飲むと顔がすぐに赤くなる体質の遺伝子を持つ人は、
そうでない人より膵臓がんになるリスクが約1.5倍高いことが、
愛知県がんセンター研究所(名古屋市)の松尾恵太郎
主任研究員らの調査で分かった。10月3日から横浜市で
開かれる日本癌学会で発表する。
飲酒と肝臓がんや食道がんの関連性は既に知られているが、
遺伝子型に絡めて飲酒と膵臓がんとの関係が確認されたのは
初めてという。
松尾研究員らは、飲酒後に体内でアルコールが分解
されてできる有害物質アセトアルデヒドの代謝能力が、
3タイプある遺伝子型によって
(1)正常(2)低い(3)ほとんどない
—と違うことに注目。
2001—05年に膵臓がん患者138人と、がんでない690人
を対象に、遺伝子型や飲酒量を比較調査し、
年齢や生活習慣を加味して膵臓がんのリスクを計算した。
その結果、日本人の約5割を占めるとされるアセトアルデヒド
を正常に代謝できる人に比べ、約4割の人は代謝に時間
がかかるため、飲酒で顔が赤くなりやすく、このリスクが
1.52倍だった。残りの1割の人は代謝能力がほとんどないが、
酒も飲めない体質のため、リスクは1.09倍にとどまった。
また、正常に分解できない2タイプの人は日本酒換算で
1日1合アルコール摂取が増えると、リスクが3割増すという。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070927STXKD042826092007.html

"乳がん、飲酒でリスク拡大 酒の種類問わず 米民間調査"
米保険大手カイザー・パーマネンテが発表した調査結果によると、
女性が毎日飲酒した場合、乳がんになるリスクが拡大する
傾向が確認された。酒の種類を問わず、健康に良いとされる
赤ワインでも発生率が高まった。
調査は約7万人(うち2829人が乳がん発病)を対象に実施。
ワインなどを毎日3杯以上飲む女性の乳がん発生率は、
ほとんど飲まない女性より30%高かった。
同社研究員は「毎日3杯以上の飲酒が乳がん発生率拡大
につながるのは、毎日1箱以上の喫煙が肺がん発生率拡大
につながるのと似た関係にある」と警告した。
毎日1、2杯飲酒する女性の乳がん発生率も10%高かったため、
家族に乳がん患者がいる場合などは飲酒習慣に注意が必要
だと助言した。
飲酒と乳がんリスクの関連性は指摘されてきたが、血圧低下
などの効果がある赤ワインは例外との意見もあった。
しかし、今回の大規模調査で、赤ワインやビール、ウイスキー
の間に違いはなく、アルコール摂取量が発がん率を左右する
傾向が分かった。ただ、リスクを高める原因は未解明という。
http://www.asahi.com/health/news/JJT200709280008.html

赤ワインが前立腺がんの予防に効果=米の研究
米アラバマ大学バーミングハム校の研究で、赤ワインに
含まれているポリフェノールの一種のレスベラトロールが、
前立腺がんに効果があることが分かった。
レスベラトロールを与えたオスのネズミの実験で、
危険な前立腺がんの発生が87%も抑えられた。
また、レスベラトロールを与えられたネズミはがんになった
としても、その腫瘍は与えられなかったネズミに比べてより
小さく、進行が抑えられたという。
赤ワインに含まれるレスベラトロールには強力な化学的
予防効果があり、心臓病などに良いとされているが、
研究者はこの研究によって、もう一つの効能が付け
加わったとしている。
また、同大学の昨年のメスのネズミを使った実験で、
乳がんになる危険を減らすとの結果も出ている。
問題は、今回の実験ではオスのネズミに人間が1日に
ボトル1本を空ける量に匹敵するレスベラトロールが
与えられたこと。
研究チームは今後、人間の前立腺がんに効果をもた
らすにはどれくらいの量が必要かを調べる研究を行う
という。
研究者は、その結果が出るまでは、男性は1日に
ワインをグラス2杯、女性は1杯にとどめ、そのほかに
レスベラトロールを含むブドウ、ラズベリー、ブルーベリー、
ピーナッツなどを食べるのがいいだろうと述べている。
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_sci&k=20070910014193a

アセトアルデヒドは、ヒトリンパ球を使った変異原性試験
において染色体異常が報告されています。人の発がん性
に関しては十分な証拠がなく、国際がん研究機関(IARC)
ではこの物質を2B(人に対して発がん性があるかも
しれない)に分類しています。
 なお、日本人の飲酒と発がん性の関係を検討した疫学調査
においては、飲酒によって血中アセトアルデヒドの濃度が高い
と食道がん発生に重要な役割を果たすことが強く示唆されて
おり、食道以外の部位の発がんに対しても役割があると
報告されています。
http://www.env.go.jp/chemi/communication/factsheet/data/1-011.html

化学発がん因子(アセトアルデヒド)、物理発がん因子
http://www.pref.gunma.jp/c/02/eikanken/houkoku/tokubetu16-3.pdf
<コメント>
私の興味はただ一つ。
愛飲家の私としては、タバコと同じように、適度でもアルコールが
「発がん」を含めて、諸悪の根源だと決めつけられる日が
間近いのかということ。
不治の病にかかった時。
医者の不養生といわれることには覚悟が出来ていても、
酒が好きだったからと言われるのは・・・。
今のところ健康のために飲んでいるんですけど。

諸兄はいかがですか?


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by esnoopy | 2007-10-04 00:10 | 消化器科

ピロリ菌

いまさらピロリ菌というところですが、胃がんとの関連の話題になると
どうしても気になってしまいます。

まずは、9月27日の新聞に載っていた記事の紹介から。

ピロリ菌感染で日本人96%が胃がんリスク・名大教授ら調査
日本人はヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると胃がんになりやすい体質
であることが、名古屋大学の浜島信之教授(予防医学)らの研究でわかった。
日本人とブラジルに住む日系人約1500人の遺伝子を解析、96%が感染
によって胃がん発症リスクが高まる遺伝子タイプだった。10月3日から
横浜市で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。
塩分の取り過ぎや喫煙などでも胃がんになりやすくなるとされている。
胃がん予防に対するピロリ菌の除菌効果について医師の間でも意見が
分かれているが、浜島教授は「日本人は積極的に除菌した方がよい」
と話している。
研究チームは、名古屋市に住む成人450人の遺伝子を調べた。
細胞の信号伝達にかかわる特定の遺伝子の型が「AA」だと1〜2割弱
にしか胃の粘膜萎縮が見られなかったが、「GA」や「GG」の人には5〜6割
の高い確率で萎縮が起きていた。
「AA」型の人は全体の4%しかおらず、96%が「GA」または「GG」型だった。
食事など生活環境の違うブラジルで暮らす日系人約1000人の遺伝子を
調べたところ、同様の傾向が見られた。
人の胃の中でだけ繁殖するピロリ菌に感染すると、しばしば胃の粘膜が
萎縮を起こし、胃がんになる危険が高まるとみられている。
日本人の多くがピロリ菌に感染すると胃がんになりやすい遺伝子を持って
いると考えられるという。
日本は世界の中でも胃がんの発生率が高い。
推定では84歳までに男性の8人に1人、女性の21人の1人が胃がんになる。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070927AT1G2700I27092007.html
(日経新聞・夕刊 2007.9.27)
<コメント>
新聞記事のため、今後アクセス不能になります。したがって全文掲載させていただきました。

<コメント>
結局諸外国と比べてはどうなんでしょうか?
それにAA,GA,GGといわれてもピンと来ません。
齢を重ねたへそ曲がり医者の興味は別のところにあります。
それは学会発表前に、どのような経緯で新聞などのマスコミに伝わるか
ということです。
マスコミは専門家ではないわけだから、学会発表後でも、どの発表が
価値あるものであるかはわからないはずです。
ましてや学会発表前にどうやって知るのでしょうか?
ここから先は想像になってしまうので書くのは問題があります。
是非知りたいところです。
どなたかご存知の方は是非コメント下さい。
お待ちしております。
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胃炎を起こすピロリ菌の祖先は、深海の微生物?
http://www.asahi.com/science/update/0703/TKY200707030392.html
(大反響を呼んだみたいでネットで一杯出て来ます。
塩分摂取と胃がんとピロリの関係まで仮説を広げてしまいそうです。)
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沖縄の深海から採取、培養された微生物=海洋研究開発機構提供

ノーベル生理学・医学賞 ヘリコバクター・ピロリ菌
http://www.yamaguchi.net/archives/001999.html
塩分の取りすぎは H.ピロリ菌の毒性を増加させて胃ガンのリスクを高める
http://www.rda.co.jp/topics/topics2752.html
ピロリと胃がんの関係
http://www.mmjp.or.jp/kawakami-clinic/kensin/pylori2.htm
(ピロリ菌は、胃の細胞に『CagA』というたんぱく質を注入するのだそうです。
 胃の細胞に入った『CagA』は、細胞の増殖に関係する『SHP-2』という
たんぱく質と結合し、『SHP-2』を活性化させるのだそうです。
 『SHP-2』が活性化された結果、増殖促進力が強まり、胃の細胞が異常に
増殖し、遺伝子の複製を繰り返し、遺伝子変異が生じて胃がんが発症
すると考えられるとのことです。それにしてもピロリ菌は、なぜ胃の細胞に
『CagA』を注入するのでしょうか?。ーーーブログからの引用)
塩基配列
http://www.biotech-house.jp/glossary/glos_57.html
SNP
http://www.jaclap.org/LabCP/p46.html

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
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by esnoopy | 2007-09-29 00:54 | 消化器科

アスピリンによる大腸癌抑制

アスピリンの長期投与によって大腸癌抑制の発生を抑制することができるかどうか?

アスピリンを処方されている先生方は勿論、脳心血管系疾患で服用されている患者
さんには多いに興味の湧くテーマです。
大腸がんが増加しつつある日本でも看過できないテーマということで国内で試験が
始まるようです。
まずは海外の論文の紹介をしてみます。
結論としてはある程度の投与量が必要で、その量では癌抑制は出来ても副作用も
出てしまうということのようです。
意味合いは異なりますが、ある意味での「アスピリンジレンマ」ということが出来ます。


●大腸がん予防におけるアスピリンの効果を評価し、より高用量を長期間摂取すると、
大腸がんリスクは半減することを示した。一方で、消化管の大出血のリスクは2倍
になるという。
●直腸がんについては有意な効果は認められなかった。
●有意なリスク減少は、服用が10年を超えた時点で見られるようになった。
アスピリン、より高用量の長期使用で大腸がんリスクが低下する
ただし消化管出血リスクは上昇——米国の研究
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200508/394239.htmlJAMA 2005年8月24/31日
Long-term Use of Aspirin and Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs
and Risk of Colorectal Cancer
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/short/294/8/914
●300mg/日以上のアスピリンを約5年間使用すると、10〜14年後の大腸癌
リスクは、アスピリン非使用者に比べ74%も低くなる
●一般に、腺腫性のポリープが癌化するまでに10年以上かかることに注目、
20年以上にわたって追跡する無作為化試験を2件行った
アスピリン300mg/日を5年使用すると大腸癌リスク7割減
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200706/503391.html(Lancet誌2007年5月12日号)
「Long-term Use of Aspirin and Nonsteroidal Anti-inflammatory
Drugs and Risk of Colorectal Cancer」
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/short/294/8/914
http://kumanichi.com/iryou/kiji/cancer/10.html

●独バイエルグループのバイエルヘルスケア社は、鎮痛剤アスピリンの
有効成分であるアセチルサルチル酸を、定期的に服用した大腸がん患者
の再発率と致死率が有意に低下した、と発表した。
研究結果は5月の米国がん治療学会(ASCO)で発表されたが、同学会
ではアスピリンの大量投与が、放置するとがんになるタイプの大腸ポリープ
の罹患(りかん)率を下げるという報告もあった。
● アスピリンは既に大腸がんや膵臓(すいぞう)がん、乳がん、肺がんなど
さまざまながんの予防効果があるという研究成果が報告されている。

アスピリンで大腸がん進行抑制
http://kumanichi.com/iryou/kiji/cancer/10.html
(熊本日日新聞2005年7月27日付「夕刊メディカル」)


●大腸がん予防の目的でアスピリンを長期間服用した場合、予防効果より、
その数倍も消化管出血の副作用の危険がある
10年以上にわたりアスピリンを1日2錠(成分量325ミリ・グラム)以上服用
した女性は、服用しない女性に比べ、大腸がんになる確率が53%低かった。
しかし1日1〜2錠を服用した場合は22%の低下にとどまり、服用量が少ない
ほど効果は小さかった。
試算では、大量服用で1〜2人の大腸がんが予防できた場合、8人に深刻な
消化管出血が起きる可能性がある

アスピリンの大腸がん予防、効果上回る副作用
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20050905ik03.htm

●これまで、アスピリンが大腸がん発症予防に有用かどうか、海外で複数の
臨床試験が行われているが、結果はさまざま。そこで、厚生労働省第3次
対がん総合戦略研究事業の一つとして、大腸腫瘍患者を対象にアスピリン
を投与する、日本で初めての試験が行われることになった。

アスピリンによる大腸がん予防試験がまもなく開始
http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/post_176.html<コメント>
2年間の投与後、2〜3年追跡とのこと。短期間の試験のためはたして
結果はどうでるか?


●2007年5月に、アスピリンによる大腸癌の抑制に関する論文が、NEJMと
ランセットにそれぞれ載った。
Aspirin and the Risk of Colorectal Cancer in Relation to the
Expression of COX-2. N Engl J Med 2007;356:2131-2142
アスピリンの常用により,COX-2 を過剰発現する大腸癌のリスクは低下するが,
COX-2 発現の弱いまたは認められない大腸癌のリスクは低下しないとの
結論が得られたとのこと。

Effect of aspirin on long-term risk of colorectal cancer:
consistent evidence from randomised and observational studies.
Lancet 2007; 369:1603-1613

45歳以上の健康な女性を対象にしたWomen's Health Study WHSでは、
否定的な結果が出ている。
Low-dose aspirin did not prevent cancer in healthy women.
ACP Journal Club. 2006 Jan-Feb;144:8.
Cook NR, Lee IM, Gaziano JM, et al. Low-dose aspirin in the primary
prevention of cancer: the Women's Health Study: a randomized
controlled trial. JAMA. 2005;294:47-55. [PubMed ID: 15998890]

NEJM, Lancet拾い読み
http://square.umin.ac.jp/massie-tmd/clnjc.htmlという過激なサイトを見つけました。とても小気味よい切り口です。
論理の展開が難しくて私には理解出来ないところが多々ありますが。
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マルクシャガール 「Romeo and Juliet」
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他にもブログがあります。
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by esnoopy | 2007-09-27 00:35 | 消化器科

胃がん術前化学療法

胃がんなどの固形がんには化学療法は効かないという認識を消化器科門外漢
としては考えていました。
最近TS—1といった副作用の少ない経口剤も開発され
たこともあり術前後化学療法が見直されているようです。
きょうは胃がんでの術前化学療法について少し勉強してみました。

まず胃がんの現在の標準的治療法というものをみてみました。

1)手術
2)化学療法
3)放射線療法
4)化学放射線療法
(術後はアジュバント療法、
 術前はネオアジュバント療法)

その他として最近では生物学的療法(バイオセラピー、免疫療法)が
行われています。

Chemotherapy Before Surgery May Increase Survival in Stomach Cancer
http://www.cancer.gov/clinicaltrials/results/preop-chemo-gastric0707
Stomach Cancer Trial Results
http://www.cancer.gov/clinicaltrials/results/stomach
手術の前に行う化学療法(術前化学療法)

手術で切除できると思われるがんでも、まず抗がん剤で小さくしておいて
から手術するほうが、より確実に切除できるという考え方があります。
一方、切除不能ながんも、抗がん剤で小さくすれば切除可能になるかも
知れません。
これをめざして行うのが術前化学療法というわけです。
ところが術前化学療法がまったく効果がなかった場合、単に手術が
遅れるだけでなく副作用で手術の条件が悪くなることも考えられます。
したがって術前化学療法を行うかどうかは、科学的根拠にもとづいて
慎重に決定する必要があります。
現在、さまざまな抗がん剤の組み合わせが試されています。
米国では、さらに放射線照射を組み合わせる治療も試みられています。
術前療法は有望ではありますが、まだまだ実験的な段階である
ともいえます。

胃がん
国立がんセンター がん対策情報センター
がん情報サービス
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/stomach/treatment_07.html
日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)
http://www.jcog.jp/STUDY_GROUP/grop_gcssg.htm
胃がん(欧米と日本の相違点)http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/med_info/cancer/stomach01.html
(内容:米国ではD0/D1郭清という、いわば不十分な局所制御のあとに
化学放射線療法を加えることの有用性がRCTで示されました。
術前化学放射線療法など、照射を中心とした補助療法の臨床試験が
展開されています。
欧州では3剤併用化学療法による術前化学療法のRCTが行われ、
これが生存に寄与するという結果が得られました。)

がんの進行度による治療選択(表)
http://health.nikkei.co.jp/hranking6/index.cfm?i=20050117pl003pl
新薬と併用、高い効果
http://health.nikkei.co.jp/hranking6/index.cfm?i=20050117pl001pl(5—FUを改良した新薬「TS—1(ティーエス・ワン)」について紹介)
c0129546_17501189.jpg

セザンヌ  リトグラフ  青い山
http://page8.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/h52567223


症例「年100例以上」でも格差——経験生かす体制カギ<胃がん治療成績編>
http://health.nikkei.co.jp/hranking6/index.cfm?i=20050109
(術者が胃がんの手術に特化し、なおかつ1名から数人までの少ない術者の
場合に成績がいいようです。リンパ廓清は有効なんですね。)

<私はこう読む>治療方針の違い影響か
http://health.nikkei.co.jp/hranking6/index.cfm?i=2005010902788pl(治療成績の病院格差が結構あるのには驚きました。)


循環器系の話題は
「葦の髄から循環器の世界をのぞく」 http://blog.m3.com/reed/
一般の方または患者さん向き
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
でとりあげています。
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by esnoopy | 2007-09-14 00:16 | 消化器科

GIST

1970年以前は平滑筋腫瘍と考えられていて、その後研究が進んだ結果1990年代後半
から診断出来るようになった胃や腸に発生する疾患について勉強しました。
胃がんとされて、手術する患者の2〜3%がGISTともいわれています。

●GIST(消化管間葉系腫瘍)とは    Gastrointestinal Stromal Tumor
消化管の粘膜の下層から発生する粘膜下腫瘍の一種であり、粘膜から発生する癌とは
異なるものです。
粘膜下の腫瘍のため内視鏡では正常の粘膜が持ち上がった状態で観察されます。
現在の定義では、GISTとは主に消化管の粘膜下にある筋層に発生する腫瘍のうち細胞
の分化や増殖に関与するKIT蛋白の異常発現を認めるものとされています。
最近では、その起源は消化管運動のペースメーカー的働きをしているCajal(カハール)
の介在細胞由来であることがわかってきました。
筋層にあるCajalの介在細胞が何らかの原因でKIT蛋白の産生を亢進させ異常増殖してGISTとなるわけです。
発生頻度は、人口100万人あたり20人/年と推定され、50〜60歳代が最も頻度が高く、
その発生部位は、胃が60〜70%、小腸が20〜30%で他に食道(5%)や大腸(5%)に
認めることがあります。
特徴的な症状はなく、腫瘍が大きくなるまではほとんどが無症状です。
ある程度の大きさに成長してようやく出血、腹痛、腫瘤触知の症状を認めます。
疲労感、食欲不振、吐き気、全身倦怠感、体重減少が現れることもあります。

大きな腫瘤となることが多く、10cm以上の腫瘤で発見されることも稀ではありません。
大きさが5cmを超えると肝臓への転移や、腹膜播種の確率が上昇します。

●診断方法
消化管造影検査や内視鏡検査、さらにはCT、MRI検査を行った後、最終的な診断は
組織採取を行いKIT蛋白の発現を免疫組織染色を行って確認することで確定します。

●治療方針
治療の第一選択は完全切除手術。
GISTの診断は、腫瘍組織のKIT蛋白の有無によってなされるため、粘膜下腫瘍として
発見されたときにうまく生検ができず、確定診断が得られない場合が多くみられます。
この場合GISTが腫瘍の大きさによって悪性度が変化する性質を考慮して腫瘍径により
治療方針が決定されています。
腫瘍径が2cm以下の場合は経過観察、2〜5cmの場合は、症状に応じて手術を適応し、
腫瘍径が5cm以上の場合は手術を行います。また術前に内視鏡的生検などでGISTと
診断されれば大きさにかかわらず手術がすすめられます。
切除不能な場合、不完全切除、残存腫瘍や転移病変がある場合は薬物療法(イマチニブ、商品名「グリベック」)が使用されます。
この薬剤は、毎日使うと1年半程度で約半数の患者に耐性が生じます。次に使用する薬剤
として「スニチニブ」が承認申請中です。

●手術方法
腫瘍径が大きい場合(5cm以上)は開腹手術を行い、比較的小さい場合(5cm未満)は
腹腔鏡下手術を行います。GISTは胃癌と異なりリンパ節転移をほぼ認めないため、腫瘍
から0.5〜1cm離した局所切除を主に行っています。

日本癌治療学会では「GIST診療ガイドライン」を作成中とのことです。


GIST研究会
http://www.gist.jp/(GISTのすべてが出ているすごいサイトです。)
GIST(Gastrointestinal Stromal Tumor:消化管間質腫瘍)について
http://www2.hama-med.ac.jp/w1b/surg2/GIST.html
GIST
http://www.jikeisurgery.jp/diseasegroup/upper-dig/gastdoud/GIST/(慈恵医大上部消化管外科のサイトです。よくまとまっているので今回主として引用
させていただきました。また一部加筆せていただきましたことをお断りいたします。)
代表的な疾患 GIST
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~gisurg/disease/06/index.html
(京大消化器外科のサイトです。)
ノバルティスファーマ
http://www.glivec.jp/medical/index.html(グリベックに関する医療関係者向けサイトです。)
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ブラジリエ CHANTAL AUX GRAJEULS
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医学トピックス
<ウエートトレーニングで眼圧が上昇>
ウエートトレーニング中に呼吸を止めることは、眼圧の一時的な上昇を引き起こすこと
がある。
口と鼻を閉じて呼気を行うように加圧して、空気を耳管にに通すバルサルバ中にも、
閉じられた気管で空気が胸部を強く圧迫し、眼圧が上昇することが報告されている。
このことは、咳や嘔吐、管楽器演奏時のほか、ウエートトレーニングの際にも起こる。
眼圧が頻繁に変わるような生活をしている場合、正常眼圧緑内障など特定の緑内障
の発症率が高く、継続的なウエートトレーニングは、緑内障の危険因子となりうる。
出典
Archives of Ophthalmology124;1251:2006
(Medical Tribune2006.11.9で紹介)

<コメント>
あまりキバルのは目によくないってことですね。

循環器系の話題は
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by esnoopy | 2007-09-10 00:58 | 消化器科

急性虫垂炎の診断


内科医として腹痛、特に急性腹症の患者を診察した場合には外科転科のことが
脳裏を過(よぎ)ります。
しかし「腹痛すなわち外科医」ではないことも当然のことです。
どこかの有名な教授の退官記念講演ではありませんが、我々内科医の急性虫垂炎
の正診率は一体どのくらいなんでしょうか?
見逃して他医に回る場合もあるわけですから正確には判らないはずです。
最近では診断技術の進歩により違うでしょうが、以前は内科から外科に送っても
「カタラーリス」「フレグモーザ」という口頭の返事をいただくだけでした。
なぜか「カタラーリス」という返事が圧倒的に多かったと記憶しています。
「ノルマーリス」という返事は、どういうわけか一度も聞きませんでした。
最近、非典型的な症例を経験したのを機会に復習してみました。


●平均虫垂穿孔は発症後34時間
●RLQに圧痛(Mc Burney)があり、他の部位になければ虫垂炎である可能性は
陽尤度比 {感度/(100−特異度)}が7.3と高い。
●超音波は未熟な検者では何の役にも立たない。
●腹部CTは感度100%近く、迷った時には決定打となる。
● 腹壁を叩くtappingは、急性虫垂炎の腹膜刺激症状を見つけるのに、
Blumberg反跳痛より感度が高い。
● heel drop sign(つま先立ちから踵を落とした時に腹痛出現)は感度95%
と高い。
● 右下腹部に圧痛がないこともある。
●頻度は少ないが念のため内蔵逆位も考慮。
この事についてはhttp://wellfrog.exblog.jp/6725043/を参照
下さい。
●AlvaradoのERパンツL(MANTRELS)
      score(点数)
Elevated temperature 1
Rebound tenderness 2
migration of pain 1
Anorexia 1
Nausea 1
Tenderness of McMurney 1
Shift of WBC count 1
Leukocytosis 2
  
                   7点以上で虫垂炎が疑わしい

Alvarado A:A practical score for the early diagnosis of acute  
appendicitis.
    Ann Emerg Med 15:557,1986

<参考資料>
medicina vol 44 no4 2007


虫垂炎診断
http://intmed.exblog.jp/5914420/

このサイトで紹介されているサイン
Rovsing sign
obturater sign(伸展性の右股部の内旋によるRLQ痛。
obturator internus muscleが伸展して炎症を起こした虫垂を圧迫すること
による徴候)
psoas sign(右股関節の過伸展によるRLQ痛。盲腸後部虫垂や骨盤内虫垂
で有用。感度は低いが特異度は高い。経験不足の外科医よりよほど信用できる。)
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Acute Appendicitis: Review and Update
http://www.aafp.org/afp/991101ap/2027.html
今まで虫垂炎がよくわからなかった内科医として、そのすべてが述べられた
サイトにやっと巡り会えました。
カラフルで奇麗な図で各サインの説明がされています。
症状の頻度、所見の尤度についての説明も科学的でクリアーカットです。


Has Misdiagnosis of Appendicitis Decreased Over Time?
A Population-Based Analysis
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/286/14/1748


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ピカソ「アルルカン姿のパウロ」
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<追記>
腹痛一般に関して
●内蔵痛か体性痛か区別する。
●パンツを下げないと大腿ヘルニアによる腸閉塞を見逃す。
(私も若い女性で苦い経験があります)
循環器系の話題は
「葦の髄から循環器の世界をのぞく」 http://blog.m3.com/reed/
            でとりあげています。

他に
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by esnoopy | 2007-09-05 00:49 | 消化器科

大腸憇室症

最近、70代の女性で比較的鮮血に近い下血を起こした症例を経験しました。
腹痛はほとんどなく、実は2回目の下血でした。
(ある疾患で入院中の下血のため、検査を行い診断はすでについています。)
前回は高度の貧血が出たため退院後、当院外来で鉄剤の注射を行いました。
肛門病変がないため、念のため当院でも注腸検査を行いました。
ここで診断はもう思い浮かばれたことと思います。

バリウム検査の結果は全大腸、特に下行結腸、S状結腸に多い多発性大腸憇室
でした。
予想以上の数で、これでは出血も起こるだろうと想像されました。

実は同じような症例を病院に紹介したことがありました。
診察された医師が即座に診断を下し、患者さんには
「大腸憇室による出血です。確認をご希望なら念のため大腸ファイバーをやりましょう」
ということでした。
結果はやはり大腸憇室。
勤務医の診断力に敬意を表した記憶があります。

診断には、下血がある場合は別として内視鏡よりバリウム検査が有効の場合があります。
当院では、盲腸(虫垂炎)と憇室の鑑別が必要な方などには、後日検診の際に胃透視検査
があれば、その数日後に当院を受診するように勧めています。
その際の腹部単純写真で憇室によるバリウムのたまりが写っている場合が結構あるからです。
まことに持って簡単で「二番出し」的な効率のよい診断法です。

虚血性大腸炎などの鑑別もいると思いますが、これについてはまた機会を改めて書かせて
いただきます。
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以下、少しお勉強したことです。


大腸憇室症

単発憇室 diverticulum
多発憇室 diverticulosis

憇室症(diverticular disease)     憇室炎などにより症状のある場合

分類  真性憇室   (粘膜、筋層、漿膜という全層を有する)
     仮性憇室   (筋層を欠き、粘膜が固有筋層を通過して嚢状に突出)
●大腸に発生する憇室のほとんどは仮性憇室
●腸管内圧の上昇により、(腸管壁の抵抗源弱部である)血管が腸壁を貫く部位から粘膜
が漿膜側へ脱出
●欧米では大腸憇室は20〜40%に認められ、加齢とともに増加し、60歳以上では約半数
に認められる。
●我が国でも近年増加傾向にあり、20%を超えて認められるようになった。
加齢とともに増加し、60歳以上では40%を超えて認められるようになってきている。
●憇室の原因は
        1)大腸内圧の上昇
        2)腸管壁の脆弱性


<参考文献>
日本医事新報4349 2007.9.1 P92-93
ハリソン内科学 第16版


大腸けいしつとは・・・
http://daichou.com/div.htm
大腸憩室
http://www.gpro.com/knowledge/d2/d2_05.htm
大腸憩室症
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10G31600.html
夫が大腸憩室炎 激痛何度も
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/soudan/20061119ik05.htm
(医療相談)
高齢者に多い大腸憇室炎、それを防ぐのは食物繊維
http://www.yokunaru.co.jp/kaihou/no2-1.pdf#search='
Diverticulosis - Topic Overview
http://www.webmd.com/digestive-disorders/tc/Diverticulosis-Topic-Overview高度直腸狭窄をきたした直腸憩室症の1例
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001351305/en/
Diverticulosis & Diverticulitis
http://gicare.com/pated/ecdgs02.htm

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2007-09-04 00:43 | 消化器科

逆流性食道炎(GERD)

いまさらのことですが逆流性食道炎(GERD)のお勉強とおさらいをしてみました。

今はGERD よりNERDが旬かも知れません。今回はTLESRという概念を覚えました。

実地医療では、PPIや消化管運動機能改善薬を用いても十分コントロール出来ないGERDによく遭遇して頭をかかえることもしばしばです。




GERDの発症機序と治療

http://dsp.m3.com/ck9a4398150d8075e7d104b23e406f8bc20b1ace8b6c1b6055eae0a7206695efd91e2f07d2c8882081f1c1308e520f67a7dd451da38af7ab8fdf38dae453c88029888/contents/english_channel/04/index.html

GERDとは
 胃散、ペプシン、胆汁酸などが食道へ逆流することによって、起こる症候群

●食道への酸の逆流は生理現象のひとつ。
●過剰になると、胸焼けやゲップ、胸痛などの辛い症状が発生し、食道粘膜の炎症が
 起きる。
●内視鏡的な食道炎の有無にかかわらず、胸焼けが週2回以上出現していれば
 GERDと定義される。



TLESR(transient lower esophageal sphincter relaxation)とは
    ( transient LES relaxationと覚えると理解しやすい)

食道裂孔ヘルニアなどでLES 圧が低下したり、胃排出の遅延で胃内物残留による胃壁の進展刺激が生じると、このTLESRを起こす。  
胃内の胃壁などが伸展刺激を受けた時に、迷走神経を介して反射的に下部食道括約筋
(LES)が一過性に弛緩する反応
     (ゲップが出る時のメカニズムと同じ)

     
GERDの成因として、このTLESRというメカニズムが考えられる。
   
TLESRは次の場合に起こり易い               
     食道裂孔ヘルニア
     胃排出の遅延で胃内物残留による胃壁の伸展刺激が生じた場合
     暴飲暴食などで一過性にLES圧の機能低下が起きた場合

さらに食道の蠕動などの運動機能が障害されていると、酸クリアランスが低下し、食道が障害を受ける。
胃十二指腸逆流、外科手術による逆流防止機構の破壊などもGERDの発生要因になる。
その他
唾液分泌の低下、ヘリコバクターピロリの除菌、肥満や過食、睡眠時務呼吸、カルシウム拮抗薬やα遮断薬の服用、飲酒や喫煙などが原因になることがある。


治療は、食生活の指導と薬物療法
1)食生活
  ●1回の食事量を少なくする
  ●就寝前2時間の摂食をやめる
  ●LES圧を低下させる脂肪食、アルコール、チョコレートの摂取を控える
  ●胃散分泌を促進させるコーヒーや紅茶などカフェインを含むものを控える
   
2)薬物療法
   ●プロトンポンプ阻害薬で酸分泌を抑制
   ●消化管運動機能改善薬でLES圧の上昇、食道蠕動運動の改善、胃酸排出
    の改善を図る

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睡眠深度と一過性下部食道括約部弛緩の関連について
-健常者と閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者との比較検討-
http://neuro-g.umin.jp/publication/4-kai_PDF/0801-13kuribayashi.pdf

睡眠時無呼吸症候群と胃食道逆流症(GERD)
http://medical.radionikkei.jp/igakushoten/final/pdf/060313.pdf

Gastroesophageal Reflux Disease
http://www.medscape.com/viewarticle/457730_3

逆流性食道炎について
http://www12.plala.or.jp/yuzawa-clinic/sub5.htm
(講演会の原稿。 逆食のすべてが1頁にまとめられている)


消化器科/逆流性食道炎
Q1 
逆流性食道炎の患者の生活指導に、横になる際に上半身を高くする以外に左側臥位にするとよいという話を聞いたが本当か?
<参考>
右と左
http://wellfrog.exblog.jp/6725043/

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by esnoopy | 2007-08-23 01:00 | 消化器科