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カテゴリ:糖尿病( 27 )

糖尿病治療の相違

「日本内科学会総会2008. 4. 17」の記事で勉強しました。

専門性や経験年数で糖尿病治療はこんなに違う
2型糖尿病の治療では、患者特性とは独立して、医師によって処方内容に違いがあるといわれている。薬物治療を受けている2型糖尿病患者と医師を対象に行った調査の結果、糖尿病の非専門医で経験年数が長いほど、1患者当たりのスルホニル尿素薬(SU薬)の投与量が多く、インスリン治療の導入割合が低いことが分かった。川崎市立川崎病院糖尿病内分泌内科の津村和大氏が、第105回日本内科学会総会で発表した。

調査対象は、同院で2007年4月~7月の間に経口血糖降下薬またはインスリン製剤を処方された全糖尿病患者2597人(年齢64.2±13.1歳、BMIは24.7±4.6、調査時のHbA1c値平均6.8±1.2)と、糖尿病患者を管理している医師32人(糖尿病外来を担当する専門医3人、非専門医29人)。

対象患者のうち、SU薬を処方されている患者の割合は54.3%。α-GI薬は43.5%、メトホルミンは29.9%、インスリンは27.7%、チアゾリジン薬は12.4%、グリニド薬は6.4%だった。

各種経口血糖降下薬とインスリンの投与状況(投与の有無、投与量)に関して、患者の特性(年齢、性別、BMI、合併症、HbA1c値、栄養指導受講歴の有無、腎機能障害の程度など)と、処方する医師の特性(経験年数、専門分野など)の両面から解析し、分析した。

ステップワイズ線形重回帰分析(有意確率5%)により、有意な関係があったものについて考察した。

その結果、患者特性とは独立して、医師の専門が糖尿病以外で、経験年数が長い方が、患者1人当たりのSU薬の投与量が多く、インスリン治療を導入している割合が低かった。

また、メトホルミンの処方状況(投与割合と投与量)について、比較的使用が促進されると思われるBMI25以上を対象に検討したところ、特に用量において、医師が糖尿病の専門性を持つことと経験年数が浅いことが関連していた。「肥満患者に高用量のメトホルミンを積極的に処方するのは、若い医師か糖尿病の専門性を有する医師だった」(津村氏)。

チアゾリジン薬については、糖尿病の専門性を持つ医師で使用頻度が高かったものの、用量には有意な差が見られなかった。

津村氏は、「現在、DPCデータによる診療プロセスのベンチマーキングが行われているが、一見同一疾患でも個々の患者特性を勘案するため、単純な治療内容の比較検討が難しいという問題点がある」と指摘する。そういった観点から「今回の調査では、糖尿病患者の特性とは独立して、医師個人の専門領域や経験年数によって投薬傾向が見られた。あくまで治療プロセスを検討したもので、治療内容の良し悪しなどのアウトカムの評価はこれからの課題だが、今後、糖尿病治療の均てん化のために有用なデータだと考える」(津村氏)と語っている。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200804/506160.html
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東山魁夷 「行く春」
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t70648408


<番外編>
名ばかり管理職と是正勧告 滋賀県立病院に労基署 「医師不足が要因」
出典 共同通信社2008.4.23

滋賀県守山市の県立成人病センター(河野幸裕(こうの・ゆきひろ)病院長)で、管理職の医師が、権限がないのに残業代が支払われない「名ばかり管理職」の状態に置かれているとして、大津労働基準監督署が労働基準法に基づく是正勧告をしていたことが23日、分かった。

名ばかり管理職をめぐっては、未払い残業代の支払いを求める訴訟や労働審判が相次いでいる。公立病院にも同様の問題があることが明らかになったが、センターを運営する県病院事業庁関係者は「医師不足が要因となっている」と説明している。

大津労基署は内部告発を受け、今月11日、センターに立ち入り調査。同事業庁から事情を聴き、勤務日誌など関係書類を調べた。

この結果、部長以上の管理職の医師で、勤務終了後5?6時間の残業が常態化。月数回の夜間当直では、夜間診療や急患対応に追われ、当直が明けても深夜まで連続勤務する場合も多かったが残業代は支払われていなかった。

さらに一般の医師も同様の勤務状態にあったが、1日8時間の法定労働時間を超える残業をさせる場合、労使協定を結んで労基署に届け出なければならないとの労働基準法の規定も守られていなかった。

同事業庁の谷口日出夫(たにぐち・ひでお)庁長は「勧告を受けたのは誠に遺憾。今後、専門家を交えて協議し早急に対応したい」と話している。

http://www.m3.com/news/news.jsp?pageFrom=m3.com&sourceType=GENERAL&articleId=71765&articleLang=ja
<コメント>
この新聞記事の内容が一事が万事。
医師に時間外手当をきちんとつけさせれば多くの病院は潰れます。
今の医療は医師の、なかばボランティア(時間外無給労働)によって成り立っているのです。
そこんとこ厚労省の方お役人、わかっていますか?

包括医療ならぬ包括給与?
こんなこと労働基準局が認めるわけがありません。
内部告発で告発された病院は一発退場。
すべての病院が日本からなくなります。
まともに医師に給料が払える診療報酬額ではないからです。

日本の医療はこんなきわどい状態なのです。
医療崩壊の音が聞こえます。
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by esnoopy | 2008-04-24 00:05 | 糖尿病

糖尿病 (世界の権威に聞く)

Medical Tribune 2008.4.3号には「世界の権威に聞く」という特集記事があります。
きょうは糖尿病研究に関する最新の動向を勉強しました。

C. Ronald Kahn
ハーバード大学教授,ジョスリン糖尿病センター前所長
2000年から2007年までジョスリン糖尿病センター所長。
インスリン受容体チロシンキナーゼを発見。
2型糖尿病や肥満におけるインスリン抵抗性状態のネットワークの変化やこれらシグナルの遺伝的・環境的要因の解明に努める。


日本だけでなく世界的に糖尿病患者数は増加傾向にあり,それに伴う合併症の増加も予想される。
そのため,糖尿病治療の成功は臨床的転帰の改善にとどまらず,社会的・医療経済的にも希求されているのが現状である。
ここでは,糖尿病研究を約40年リードしてきたジョスリン糖尿病センター前所長で,ハーバード大学のC. Ronald Kahn教授に,これからの糖尿病克服の鍵について聞いた。


増加を続ける糖尿病患者
―― 米国における糖尿病患者の現状はいかがでしょうか。
今,私たちは糖尿病,特に 2 型糖尿病の世界的流行に直面しており,これは肥満やメタボリックシンドロームと関連付けられています。

米国では現在,18歳以上の糖尿病患者が2,100万人を数えており,毎年約100万人のペースで増加し続けています。
これは公衆衛生上,非常に憂慮すべき統計学的な数値です。また,小児や若年者においても 2 型糖尿病患者は急速に増加していることも懸念されるところです。

米国の糖尿病患者の増加は多くの要因が複雑に絡み合ってもたらされています。
要因の 1 つは明らかに生活習慣の変化であり,幼児の間でさえ肥満が増大しており,由々しき事態です。

また,米国におけるこのような増加の背景には,他の要因も関与している可能性があります。
例えば,米国のさまざまな民族集団,ヒスパニック系,アフリカ系米国人,アジア系米国人,米国先住民ではいずれも糖尿病リスクが増加しています。


求められるインスリン抵抗性関与のメカニズム解明
―― 肥満,メタボリックシンドローム増加による影響,またアディポサイトカインやインスリン抵抗性といった病理学的原因についてはどのようにお考えですか。
2 型糖尿病発症率の増加は肥満とインスリン抵抗性が複雑に関与しています。

メタボリックシンドロームには 2 型糖尿病,すなわち耐糖能異常だけでなく,脂肪肝,脂質異常症,高トリグリセライド血症,低HDLコレステロールおよびVLDLコレステロール血症などの脂質異常症やアテローム動脈硬化症,高血圧のリスク増大も含まれます。
胆石や女性の生殖障害との関係,さらにはアルツハイマー病といった神経変性疾患との関係など多くの問題が含まれています。
未解決の最重要な課題の 1 つは,こうした症候群の根本原因の解明です。

確かにメタボリックシンドロームの基盤にはインスリン抵抗性がありますが,いまだこの原因は明らかにされていません。
脂肪細胞は多くのアディポカインを分泌し,腫瘍壊死因子(TNF)αなどのインスリン抵抗性を高めるものもあります。

ここで,日本の門脇教授らはアディポネクチン受容体を発見したことでもよく知られていますが,そのアディポネクチンなどインスリン感受性を高めるものとインスリン抵抗性を高めるものの関係を理解する必要があるのです。
しかし,これらが直接的な原因なのか,あるいは病態のマーカーであるのかは未解決のまま残されています。
また,非常に興味ある分野の 1 つに炎症と脂肪組織内の炎症細胞が挙げられます。
インスリン抵抗性と肥満を発現する場合,リンパ球と単球が脂肪組織に侵入してリンホカインを放出し,脂肪細胞がアディポカインを放出し,これらが一緒になるとインスリン抵抗性を高める可能性があります。


―― 糖尿病治療において,インスリン抵抗性改善薬と,米国で最近普及してきたGLP-1,DPP-4阻害薬はどう位置付けたらよいのでしょうか。
疾患の多くはインスリン抵抗性を基盤とするため,インスリン感受性を改善する薬剤は治療上基本となります。
メトホルミン,チアゾリジンジオン誘導体(ロシグリタゾン,ピオグリタゾン)などが挙げられますが,これらはすべての患者で,また糖尿病の全期間にわたって効果的というわけではありません。

そのため,新しいインスリン感受性改善薬を探求し続ける必要性があります。
例えば,サーチュインと呼ばれる蛋白質ファミリーを活性化する可能性を有する新薬の開発が注目を集めています。
これらの蛋白質は多くの代謝経路を制御しており,その活性が増強するときにインスリン感受性を改善する可能性があり,現在,製薬会社の数社がこの分野の研究・開発に取り組んでいます。

当然ながら,糖尿病の究極の原因となるのはなんらかのβ細胞不全であるためスルホニル尿素薬が用いられてきましたが,現在ではGLP-1やexenatide,DPP-4阻害薬と呼ばれるGLP-1プロテアーゼ阻害薬による新たな治療薬が開発されており,これらはインスリン分泌を改善するうえで非常に効果的だと思います。

問題はGLP-1とexenatideの剤形が依然として注射剤であることです。
経口剤であるDPP-4阻害薬は注射剤と同程度の体重減少はもたらしません。
今後,こうした分野でのよりいっそうの研究が続けられることを期待しています。


治療よりも予防を目指して
―― 糖尿病研究をリードしてきた立場から,今後の糖尿病治療・研究の方向性をお示しください。
過体重は,将来的には日本でも問題となると予測されます。
将来のために私たちが行うべきことの 1 つは,環境が自分の身体に及ぼす影響を制御する方法を見出すことです。
糖尿病や肥満をもたらす環境的な刺激は,われわれが考える以上に複雑化します。
米ワシントン大学のJeffrey Gordon博士の研究所から発表された興味深い新しい研究分野があり,彼は肥満の人の腸内細菌がやせた人とは異なることを見出しました。
やせたマウスから腸内細菌を抽出して肥満マウスに注入すると,肥満マウスはやせ,またその逆の現象も起こることを発見したのです。
そのため,例えば,私たちが食べる量以外にも相違をもたらす多くの要素が存在する可能性があることを示しています。
未知の環境的要素があるかもしれません。
ですから,私たちは,インスリン作用や分泌の基本的なメカニズムだけでなく,糖尿病に関与している他の環境的因子の存在やそれらを変化させられるかという研究に取り組む必要があります。

また,自己免疫型であり,2 型糖尿病よりも発症頻度がまれな 1 型糖尿病の問題もあります。免疫系は 1 型および 2 型糖尿病双方に影響を及ぼすと考えられますし,これら 2 つのタイプの糖尿病に影響する将来的な共通の研究分野です。

最後に,私にとって糖尿病の最も重要な面は治療ではなく予防です。
糖尿病専門医の数が非常に不足しており,さらに栄養学や運動のスペシャリストも不足しているのが現状です。
今後,集学的な糖尿病予防研究に力を注ぎ,予防策を見出さなければならないでしょう。

Comment
基礎・臨床両面からの解明に鍵
日本独自のエビデンス集積に期待

東京大学大学院糖尿病・代謝内科教授 門脇 孝
日本の糖尿病の現状は,2002年の糖尿病実態調査から患者数740万人,予備軍880万人と報告されており,最近の統計では40歳以上の実に 3 人に1 人が糖尿病または予備軍であるという驚くべき結果が示されています。
日本人は欧米人に比べてインスリン分泌量が 2 分の 1 であるにもかかわらず,高脂肪食,運動不足といった欧米型の生活習慣が浸透したことがこの背景に挙げられます。
米国ではbody mass index(BMI)30以上が成人人口の約 3 分の 1 以上を占めるのに対し,日本ではわずか 4 %前後です。しかし,インスリン分泌低下の体質のため,わが国ではBMI 25程度であっても米国のBMI 30以上と同程度の糖尿病リスクを有する点に注意を払う必要があります。
こうした糖尿病・肥満患者の激増や,2005年 4 月の内科学会を中心とした 8 学会によるメタボリックシンドロームの診断基準の策定を契機に,わが国でも肥満や内臓脂肪蓄積を背景とした糖尿病・心血管イベントリスクを増加させる疾患への認識が高まり,基礎研究からの解明が強く求められています。
なかでも,膵β細胞からのインスリン分泌およびインスリン抵抗性に対するβ細胞の代償性過形成メカニズムの解明や,アディポカインに関する研究は世界でも注目を集める成果を得ています。
今後,内臓脂肪特異的なアディポカインやインスリン抵抗性だけでなくインスリン分泌不全を惹起するアディポカインの同定などが,メタボリックシンドロームや糖尿病の発症機序を考えるうえで重要となる可能性があります。

臨床的な面からは次の 3 点に注目しています。
まず,今年 4 月には,メタボリックシンドロームに焦点を当てた特定健診・保健指導制度が開始されます。
生活習慣病の予防対策として世界に誇れる取り組みとなることに期待しています。
次は,GLP-1やDPP4阻害薬などの臨床導入です。
これらの薬剤は糖尿病治療改善に大きく貢献すると思われます。
最後に,HbA1c,血圧,LDLコレステロール値などの治療目標達成の改善です。
厚生労働省が2005年度に開始したJ-DOIT3研究は糖尿病合併症の進展を30%抑制する介入方法を研究しており,わが国の糖尿病治療のエビデンスが示せることにおおいに期待しています。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41140991&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.4.3
版権 メディカル・トリビューン社


<参考サイト>
J-DOIT3
Japan Diabetes Optimal Integrated Treatment Study for 3 Major Risk Factors of Cardiovascular Diseases
2型糖尿病において,血糖,血圧,脂質代謝治療のうち糖尿病合併症予防の点で優れた治療法は何であるかを検討。
http://www.ebm-library.jp/circ/doc_japan/J0054.html

<コメント>
文中の「これらが直接的な原因なのか,あるいは病態のマーカーであるのか・・・」。
まさしく本質的な提言と思います。
たとえば動脈硬化と種々の脂質が相関するからといって直接な因果関係、つまり高脂血症が真の動脈硬化の原因ではない(サロゲートマーカー)のではないかと、ふと思ってしまうことが私の心の奥底にはあります。
先生方はいかがでしょうか。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-04-15 00:14 | 糖尿病

BOT(Basal supported Oral Therapy)その2 2/2

1日1回の注射で24時間にわたり血糖を管理できるグラルギンはBOTに最適
河盛 
一般にOHAによる 2 次無効とは,高血糖や脂質異常症が膵β細胞内の酸化ストレスを高め,アポトーシスや線維化を惹起して血糖コントロールが悪化することです。
そのため良好な血糖コントロールが得られてさえいれば,内因性インスリンの効果も高くなります。
膵臓から出たインスリンは,肝臓に直接作用するので,食後の高血糖を下げるのに有効です。1日あたり 1 mgという少量のグリメピリドでも,長期にわたり血糖コントロールが維持できることもよくあります。

インスリン療法が必要と考えられる患者では朝食前も食後も血糖値が高い。
24時間インスリンを補充して,血糖値を"だるまおとし"のように下げる手段が登場しました。
インスリングラルギン(商品名:ランタス)です。
1 日 1 回の皮下注射で血中インスリンレベルを24時間にわたって安定して上昇させます。
グラルギンを巧みにSU薬などと組み合わせると,コントロールがよくなる可能性が出てきたのです。
グラルギンの登場は外来でのインスリン導入に大きく貢献しています。

清野 
従来の中間型(NPH)インスリン製剤は,投与 4 時間前後にピークがあり,ピークによる低血糖を気にすると,十分な増量を躊躇してしまうことがありました。
その点,持効型溶解インスリンアナログであるグラルギンは,効果にピークがなく,1 日にわたって安定した効果が持続します。
このような特徴を有することから就寝時に 1 日 1 回投与し,空腹時血糖を見ながら増量すれば,低血糖を来しにくくなります。
BOTに用いる基礎インスリンとして,グラルギンは最適であると思います。


患者の不安を軽減するためにもインスリン導入は少量から
河盛 
例えばグリメピリドを6mg/日服用し,αGIとBG薬を併用している患者に,BOTを試みる場合,グラルギンはどのくらいの用量からスタートしますか。

吉岡 
患者さんの体重にもよりますが,通常は 4 単位もしくは 6 単位から始めています。
個々の患者さんのインスリン抵抗性の差によって,必要量は異なりますが,ごく少量のインスリンで血糖コントロールが可能であるケースもあります。
そのため,BOTにおけるインスリンの初期投与量もあらかじめ決めずに,少量から開始して増量しながら決定していくことが重要だと思います。

まずは患者さんに,インスリン注射は「簡単」「痛くない」「確実に血糖値が下がる」ことを実感してもらうことが重要です。
実際,導入3〜4日後には多くの方がそれらを実感されています。

私の場合はHbA1cの値が低下するにつれ,SU薬をなるべく減量し,基礎インスリンを増量するという方法を取っています。

清野 
インスリン治療に対する心理的障壁を調査したDAWN(Diabetes Attitudes Wishes and Needs)studyでも,人前でインスリン注射をすることへの抵抗感が明らかになっています。
1 日 1 回投与のグラルギンは,自宅で打つことができるので,患者さんの心理的負担も軽減されます。
また,インスリン治療を始めると,血糖自己測定(SMBG)が保険適用となり費用負担が軽くなるばかりでなく,血糖値が確実に改善し,それを患者さん自身が実感できるというメリットがあります()。
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グラルギン投与は0.1単位/kgから開始しますが,その量であればまず低血糖を生じる心配はありません。


食後の高血糖に対する効果が不十分なら,追加インスリンも検討
清野 
BOTによりHbA1cが治療目標値に達するか否かは,罹病期間やインスリン分泌状況,インスリン抵抗性などにもよります。
空腹時血糖値を見ながらインスリン量を調整し,空腹時血糖値が是正されてもHbA1cが高い場合には,追加のインスリン投与を考慮します。
その場合,OHAはそのままの量を残して,SMBGで高値を示す食後の高血糖を抑えるために,食直前に超速効型インスリンを加えます。

SU薬を減量してインスリン投与量を増やすという考え方もありますが,一方でSU薬を最大量使いながらグラルギンを併用することで,インスリン投与量を低く抑えたまま安定した血糖コントロールの改善が望める例もあります。

河盛 
肥満があると「インスリン分泌が十分で,インスリン抵抗性のため高血糖」と捉えがちですが,日本人ではインスリンを測定するととても低い例が多いですね。
2 型糖尿病においては,わずかな内因性インスリン分泌を有効活用することが重要です。
SU薬によりわずかであれ内因性インスリン分泌が刺激されると,インスリンが肝に流入し食後血糖応答改善に有用です。
インスリン投与量が節約できることも認められていますね。

ところで,インスリン導入後のフォローアップはどうされていますか。

吉岡 
われわれの施設ではクリティカルパスを導入し,インスリン導入 3 日後に糖尿病療養指導士(CDE)が電話やメールで連絡を取り,さらに 1 週間後,2 週間後,1か月後に医師がフォローアップを行っています。

清野 
当院でも基本的には 2 週間に 1 度ご来院いただき,SMBGの結果によっては,インスリン投与量の調整を行います。

河盛 
診療所では,むしろ頻回の,きめ細かい外来診療が可能なのではないでしょうか。
そのメリットを活かして, BOTなどで積極的に「次の一手」を打っていただきたいと思います。HbA1c 9.0%を7.0%まで改善できれば,網膜症や腎症,神経障害,さらに脳卒中,心筋梗塞も確実に減らすことができるのです。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109781&year=2008
medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社


<以前のブログへの追加>
2008.1.23の当ブログ
肝硬変とエルトロンボパグ
http://wellfrog.exblog.jp/8052070
への追加です。

EltrombopagでC型肝炎患者の血小板数が増加
〔ニューヨーク〕ニューヨーク長老派教会病院肝疾患・移植センターの肝臓専門医でコーネル大学Weill医療センター(ともにニューヨーク)消化器病学と肝臓学部門のSamuel Sigal助教授は,新薬のeltrombopagがC型肝炎患者の血小板数を顕著に増加させ,効果的な治療法への道を開いたとNew England Journal of Medicine(NEJM,2007; 357: 2227-2236)に発表した。

30mg投与で患者の74%で血小板数が増加
C型肝炎患者では,しばしば疾患の進展に伴って血小板数が減少する。
この問題は,標準的な抗ウイルス療法が血小板数を危険なレベルにまで減少させることがあるため,結果として患者が必要な治療を受けられなくなることから複雑化している。

Sigal助教授は「今回の研究では,eltrombopagが血小板数を用量依存的に増加させ,重要な治療目標である最初の12週間の抗ウイルス療法を終了できた患者が増加した」と述べている。
同センターは22施設ある研究拠点の 1 つである。

第II相プラセボ対照試験では,C型肝炎ウイルス(HCV)感染により血小板数が少なく,肝硬変を呈する74例を追跡調査した。
対象をeltrombo-pagの投与量別の3群とプラセボ群にランダム化割り付けしたところ,同薬30mg/日投与の最低用量群では患者の74%で血小板数が有意に増加し,50mgまたは75mg/日投与群はそれぞれ79%,95%で増加した。
12週間に及ぶ抗ウイルス療法は3群でそれぞれ36%,53%,65%の患者が完遂した。プラセボ群でこの治療法を完遂できたのは 4 分の 1 未満であった。

副作用としては頭痛,ドライマウス,腹痛,悪心が確認されたが,いずれも治療を中断させるほど重度なものではなかった。

免疫性血小板減少性紫斑病にも有効
また,同センターのJames Bussel博士は,eltrombopagは血中の血小板数が著しく減少する自己免疫疾患である免疫性血小板減少性紫斑病(Immune Thrombocytopenic Pur-pura;ITP)患者で血小板数を増加させ,出血を減少させることに成功したと同誌(2007; 357: 2237-2247)に発表した。
今回の研究はeltrombopagを開発しているGlaxoSmithKline社から助成を受けている。同薬は血小板を産生する細胞の増殖と分化を誘導する研究段階の経口非ペプチド血小板増殖因子で,米国ではPromactaR,欧州ではRevoladeRとして販売されている。正常な血小板機能を回復させる他の薬剤は注入剤または注射剤であるが,同薬は 1 日1回投与の錠剤である。

米国では400万人,世界中では 1 億7,000万人がHCVのキャリアであると推定されている。
HCVはおもに輸血と血液製剤により感染する。感染患者の大多数は,輸血用血液のHCVスクリーニングが開始された1990年以前に輸血を受けるか静注の麻薬を使用していた。
また,かなりまれではあるが,性交渉時と周産期に感染することがある。

HCVは肝臓に炎症と瘢痕化を起こし,患者の約半数が治癒可能であるが,それ以外の患者では重度の肝損傷,肝がんが生じ,死亡することもある。HCV感染は肝硬変,肝移植の最も一般的な原因である。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109131&year=2008Medical Tibune 2008.2.28
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by esnoopy | 2008-04-02 00:12 | 糖尿病

BOT(Basal supported Oral Therapy)その1 1/2

経口血糖降下薬(OHA)に基礎インスリン注射との併用を行うBOTについて勉強しました。

特別企画
座談会
2型糖尿病治療「次の一手」
〜OHAに基礎インスリンを追加する併用療法BOTの可能性〜

2型糖尿病治療においては,細小血管障害や心筋梗塞,脳梗塞など動脈硬化症の発症・進展を防ぐためHbA1cの確実なコントロールが重要である。
近年は,経口血糖降下薬(OHA)のみによるコントロールが困難である場合,基礎インスリン注射との併用を行うBOT(Basal supported Oral Therapy)が有効な治療法として海外では広く行われるに至ったが,日本においてはまだ認知度が十分ではなく,経験が少ないのが現状である。

河盛 隆造 氏(司会) 順天堂大学医学部内科学教授
吉岡 成人 氏 北海道大学大学院医学研究科内科学講座・第二内科准教授
清野 弘明 氏 せいの内科クリニック院長
(発言順)


早期のSU薬による治療介入が良好な血糖コントロールのカギ
河盛 
2 型糖尿病の治療においては,血管障害の発症・進展を抑えるため,年齢や血管障害の程度,生活内容などの背景を考慮しつつ,しかし今まで考えられた以上に,よりよい血糖コントロールを行う必要があります。

ところが,わが国の治療の現状を見ると,必ずしも目標とするHbA1cのレベルに達していないのに,漫然と同一の治療が継続されているケースが少なくないのも事実です。
現在わが国では,HbA1c9.0%以上の糖尿病患者は100万人近くいると計算されているほどです。

加えて,近年20〜30歳代で,軽度の肥満で 2 型糖尿病を発症するケースが増えています。その多くが,糖尿病の家族歴のある方ですが,その方々は余命がとても長いので,今,高血糖を放置せず,速やかに積極的な治療を行う必要があります。

吉岡 
北海道でも,10歳代後半の糖尿病患者さんは,1 型よりも2 型が多い印象を持っています。

清野 
郡山でも若年層の 2 型糖尿病患者さんが増加傾向にありますが,どちらかというと高齢者の糖尿病の方が顕著です。
高齢者でも罹病期間が25〜30年と長い場合には,血糖コントロールの目標を学会基準のHbA1c 6.5%とし,インスリンを導入するなど積極的に治療が必要だと思います。

河盛 
特に,糖尿病に興味のない先生方は,SU薬を含むOHAを多剤服用している患者に対しては,高血糖であってもこれ以上打つ手がないと考えがちで,それが高血糖のままの患者が多い原因の 1 つと考えられます。
そこで, 2 型糖尿病の治療をいかに展開すべきか,どのような方法が有効なのかお聞きします。
最初に,OHAによる治療の現状についてはいかがでしょうか。

吉岡 
OHAの中で最も多く処方しているのはSU薬です。
処方の際は,グリメピリド(商品名:アマリール)を0.5mg/日から始め,症例によっては早い段階で,ビグアナイド(BG)薬あるいはαグルコシダーゼ阻害薬(αGI)の併用を考慮します。
ただし,SU薬についてはそれぞれの患者さんの病態に合った用量を設定するように注意しています。

清野 
私はグリメピリドを朝・夕各 3 mgずつ,1 日最大量の 6 mgまで使うことがあります。
1 mg/日からスタートして徐々に増量していき,2 mg/日あるいは 4 mg/日の時点でαGIやBG薬を併用します。
それでも血糖コントロールが不十分である場合に,6 mg/日への増量を検討します。
それでもうまくいかなければ,OHAに基礎インスリンを併用するBOTを試みます。

河盛 
われわれのグループが行った比較的早期の糖尿病患者を対象とした試験においては,グリメピリドを0.5mg/日から開始し,その後も少量で良好な血糖コントロールを達成できるという結果が出ました。

しかし大学病院や専門施設に紹介されてくる 2 型糖尿病患者は,糖尿病と診断されてから長期間放置していた,また治療期間も長くなった症例が多く,インスリン分泌が低くなっているケースが多いですね。
するとSU薬にBG薬やαGIを追加していてもHbA1cの目標値を達成できない症例も多く経験します。
以上のことから,糖尿病と診断したら,食事療法・運動療法の指導を行い,HbA1cが6.5%以下にならない場合,機を逸することなく薬剤療法を考慮すべき,と思いますね。

吉岡 
SU薬はHbA1cを 1 %改善する効果を持っていると考えられます。
低血糖や体重増加に対する指導が重要ですが,少量のSU薬を上手なタイミングで用いることは,医療経済面においても望ましい方向性であると思います。


BOT導入時はSU薬を減量しないことが一般的
河盛 
SU薬を十分量用い,さらにαGIやBG薬を併用しても治療目標値を達成できない場合には,次のステップとしてインスリンの導入が必要です。

しかし,「2 型糖尿病ではインスリンは不要」と考える実地医家の先生も少なくありません。また慣れないので外来診療でのインスリンの導入に不安を感じることも多いようです。

さて,インスリン導入時にOHAを継続すべきか否かについては,迷われる点だと思いますが,近年はBOTという治療法が注目されています。

BOTはすでにOHAを服用しているところに基礎分泌インスリンを注射で補充する方法です。
インスリン投与前の血糖コントロール状況やSU薬の治療期間にも左右されますが,BOT導入時は,内因性分泌インスリンを有効利用するために,そしてOHA中止に伴う血糖コントロールの乱れを避けるために,SU薬はそのままの用量で継続するのが一般的です。

例えば,グリメピリド 6 mg/日を使っていてもHbA1c 8.0%以上が1年間続いている場合には,BOT導入時にSU薬を減量する必要はまずありません。

この方法についての先生方のお考えをお聞かせください。

吉岡 
いくつかのOHAを併用してなお血糖管理がうまくいかない場合でも,2 型糖尿病であれば,高血糖を是正し,糖毒性を解除することで,内因性インスリン分泌の回復を期待できます。

従来はSU薬とインスリンの併用は効果がないと言われてきましたが,2 型糖尿病においては,適切な時期でのインスリン導入により高血糖が解除されると,膵β細胞の機能が保持されることがいくつかのスタディで示唆されています。
血糖コントロールの悪化を防ぐためにSU薬をそのまま継続し,少量の基礎インスリンから始めて,徐々にステップアップする方法()は,糖尿病の外来診療において,患者・医師,さらに社会的にも受け入れられやすい方法であると思います。

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by esnoopy | 2008-04-01 00:08 | 糖尿病

BOT(Basal supported Oral Therapy)その1 1/2

1日1回の注射で24時間にわたり血糖を管理できるグラルギンはBOTに最適
河盛 一般にOHAによる 2 次無効とは,高血糖や脂質異常症が膵?細胞内の酸化ストレスを高め,アポトーシスや線維化を惹起して血糖コントロールが悪化することです。そのため良好な血糖コントロールが得られてさえいれば,内因性インスリンの効果も高くなります。膵臓から出たインスリンは,肝臓に直接作用するので,食後の高血糖を下げるのに有効です。1日あたり 1 mgという少量のグリメピリドでも,長期にわたり血糖コントロールが維持できることもよくあります。
 インスリン療法が必要と考えられる患者では朝食前も食後も血糖値が高い。24時間インスリンを補充して,血糖値を"だるまおとし"のように下げる手段が登場しました。インスリングラルギン(商品名:ランタス)です。1 日 1 回の皮下注射で血中インスリンレベルを24時間にわたって安定して上昇させます。グラルギンを巧みにSU薬などと組み合わせると,コントロールがよくなる可能性が出てきたのです。グラルギンの登場は外来でのインスリン導入に大きく貢献しています。
清野 従来の中間型(NPH)インスリン製剤は,投与 4 時間前後にピークがあり,ピークによる低血糖を気にすると,十分な増量を躊躇してしまうことがありました。その点,持効型溶解インスリンアナログであるグラルギンは,効果にピークがなく,1 日にわたって安定した効果が持続します。このような特徴を有することから就寝時に 1 日 1 回投与し,空腹時血糖を見ながら増量すれば,低血糖を来しにくくなります。BOTに用いる基礎インスリンとして,グラルギンは最適であると思います。
患者の不安を軽減するためにもインスリン導入は少量から
河盛 例えばグリメピリドを6mg/日服用し,?GIとBG薬を併用している患者に,BOTを試みる場合,グラルギンはどのくらいの用量からスタートしますか。
吉岡 患者さんの体重にもよりますが,通常は 4 単位もしくは 6 単位から始めています。個々の患者さんのインスリン抵抗性の差によって,必要量は異なりますが,ごく少量のインスリンで血糖コントロールが可能であるケースもあります。そのため,BOTにおけるインスリンの初期投与量もあらかじめ決めずに,少量から開始して増量しながら決定していくことが重要だと思います。
 まずは患者さんに,インスリン注射は「簡単」「痛くない」「確実に血糖値が下がる」ことを実感してもらうことが重要です。実際,導入3〜4日後には多くの方がそれらを実感されています。
 私の場合はHbA1cの値が低下するにつれ,SU薬をなるべく減量し,基礎インスリンを増量するという方法を取っています。




清野 インスリン治療に対する心理的障壁を調査したDAWN(Diabetes Attitudes Wishes and Needs)studyでも,人前でインスリン注射をすることへの抵抗感が明らかになっています。1 日 1 回投与のグラルギンは,自宅で打つことができるので,患者さんの心理的負担も軽減されます。また,インスリン治療を始めると,血糖自己測定(SMBG)が保険適用となり費用負担が軽くなるばかりでなく,血糖値が確実に改善し,それを患者さん自身が実感できるというメリットがあります(表)。
 グラルギン投与は0.1単位/kgから開始しますが,その量であればまず低血糖を生じる心配はありません。
食後の高血糖に対する効果が不十分なら,追加インスリンも検討
清野 BOTによりHbA1cが治療目標値に達するか否かは,罹病期間やインスリン分泌状況,インスリン抵抗性などにもよります。空腹時血糖値を見ながらインスリン量を調整し,空腹時血糖値が是正されてもHbA1cが高い場合には,追加のインスリン投与を考慮します。その場合,OHAはそのままの量を残して,SMBGで高値を示す食後の高血糖を抑えるために,食直前に超速効型インスリンを加えます。
 SU薬を減量してインスリン投与量を増やすという考え方もありますが,一方でSU薬を最大量使いながらグラルギンを併用することで,インスリン投与量を低く抑えたまま安定した血糖コントロールの改善が望める例もあります。
河盛 肥満があると「インスリン分泌が十分で,インスリン抵抗性のため高血糖」と捉えがちですが,日本人ではインスリンを測定するととても低い例が多いですね。2 型糖尿病においては,わずかな内因性インスリン分泌を有効活用することが重要です。SU薬によりわずかであれ内因性インスリン分泌が刺激されると,インスリンが肝に流入し食後血糖応答改善に有用です。インスリン投与量が節約できることも認められていますね。
 ところで,インスリン導入後のフォローアップはどうされていますか。
吉岡 われわれの施設ではクリティカルパスを導入し,インスリン導入 3 日後に糖尿病療養指導士(CDE)が電話やメールで連絡を取り,さらに 1 週間後,2 週間後,1か月後に医師がフォローアップを行っています。
清野 当院でも基本的には 2 週間に 1 度ご来院いただき,SMBGの結果によっては,インスリン投与量の調整を行います。
河盛 診療所では,むしろ頻回の,きめ細かい外来診療が可能なのではないでしょうか。そのメリットを活かして, BOTなどで積極的に「次の一手」を打っていただきたいと思います。HbA1c 9.0%を7.0%まで改善できれば,網膜症や腎症,神経障害,さらに脳卒中,心筋梗塞も確実に減らすことができるのです。
 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109781&year=2008
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by esnoopy | 2008-03-31 19:12 | 糖尿病

心血管イベント制御を念頭に置いた糖尿病治療

第43回欧州糖尿病学会(EASD)で「心血管イベント抑制」をテーマとしたサテライトシンポジウムが行われました。

「エビデンスを作る時代」から「実践する時代」へ  というチャーミングなサブタイトルがつけられています。
従来アカルボースなどのα-GI は欧米人では血糖降下作用などの効果が少ないといわれてきました。
しかし、MeRIA7の結果では心血管イベント抑制には有効という結果でした。
欧米人よりα-GI が有効と思われる日本ではよりよい効果が期待できそうです。

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特別企画
EASD2007 サテライトシンポジウム
心血管イベント制御を念頭に置いた糖尿病治療
―「エビデンスを作る時代」から「実践する時代」へ―

糖尿病に合併する心血管疾患(CVD)の予防,また糖尿病の発症自体の予防を完璧に成し遂げる方法は確立していない。
しかし,そのヒントを示唆するエビデンスの蓄積は着実に進んでいる。
次なる段階は,そうしたエビデンスを日常臨床の場に応用・実践することであろう。

昨年オランダ・アムステルダムで開催された第43回欧州糖尿病学会(EASD)のサテライトシンポジウムにおいて,今や世界的な脅威となった糖尿病,CVDの現状とエビデンス,それらの制圧に向けた取り組みが紹介された。
ここではその概要を紹介する。


Rury Holman 氏(座長) 英国・Oxford大学糖尿病・内分泌代謝センター名誉顧問

エビデンスの蓄積が食後高血糖を治療ターゲットに
シンポジウム序盤では,ドイツ・Academic Hospital第三内科主任教授のEberhard Standl氏とスウェーデン・Karolinska大学心臓病学教授のLars Ryden氏より,高血糖とCVDリスクの関連,およびその事実を踏まえたガイドラインについて解説が行われた。

まずStandl氏は,空腹時血糖値(FPG)1mmol(約18mg/dL)の上昇により,60歳未満人口の虚血性心疾患死亡率は42%,脳卒中死亡率は36%も高まるとしたDanaeiらのデータ(2006)を提示。
高血糖がCVDリスクを大きく押し上げることを強調した。

現在,糖代謝異常を呈する人は急速に増加している。
Standl氏は,Ryden氏らが行ったGAMI研究(2004)から,急性心筋梗塞で入院した患者の 3 人に 1 人に糖尿病が,同じく 3 人に 1 人に耐糖能異常(IGT)が潜んでいたことを明らかにしたデータを紹介した。
CVD患者の多くが糖代謝異常を呈することを示すこのデータは,糖尿病の蔓延がCVD増加につながることを危惧させるものという。

では,具体的にはどのような対策を講じればよいのか。
EASDと欧州心臓学会(ESC)の合同ガイドラインには,エビデンスに基づく75項目の推奨事項が掲げられている。
そのなかでもRyden氏が「最重要ポイントの 1 つ」として挙げるのが,経口糖負荷試験(OGTT)による糖尿病およびIGTの早期発見である。
OGTTを冠動脈疾患有病者などには全例実施,それ以外の人々には後述するFINDRISCなどの質問票と組み合わせて適宜実施することは,費用対効果からみてもリーズナブルなやり方だと同氏は述べた。

なお,OGTTによる負荷後 2 時間血糖値がFPGよりも強力にCVDリスクと相関することは,「レベルA」のエビデンスに裏打ちされた最高ランクの推奨事項となっている。
実際,Ryden氏らが遂行したEuro Heart Surveyにおいて,食後高血糖是正作用に優れるアカルボースを中心とした薬物治療を受けた糖尿病新規発症者で,著明なイベント抑制効果が認められたことが,2007年のESC年次集会にて報告されている。
食後高血糖をターゲットとした治療は,現行のガイドラインではレベルC,クラスIIbの推奨にとどまるが,新たなエビデンスを考慮すれば「より高いランクの推奨がなされてしかるべきだ」とRyden氏は指摘した。


発展途上国では,糖尿病に対する意識向上が最重要課題


アカルボースによる食後高血糖改善のCVDに及ぼす影響
シンポジウム終盤に再びChiasson氏が登壇し,CVD一次予防を視野に入れた 2 型糖尿病治療について語った。

前述のように高血糖はCVD発症に寄与する最大の要因であるにもかかわらず,ほとんどの血糖降下薬には2型糖尿病患者に対するCVD抑制効果は認められていない。
そのなかで抑制エビデンスを有するのが,食後高血糖改善作用の高いアカルボースである。
Chiasson氏は,アカルボースを用いた 7 つのプラセボ対照試験のメタ解析・MeRIA7(Meta-analysis of Risk Improvement under Acarbose-7)の結果を提示し,アカルボース群では35%もの有意な全心血管イベント抑制効果が認められたことを紹介した()。
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なお,本シンポジウムの最後に,座長を務めた英国・Oxford大学糖尿病・内分泌代謝センター名誉顧問のRury Holman氏より, IGTを有するCVD既往患者におけるアカルボースのCVD二次予防効果を検討する大規模臨床試験・ACE(Acarbose Cardio-vascular Evaluation)が紹介された。予定追跡期間は最低 4 年。結果発表は2013年に予定されている。


出典 Medical Tribune2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社

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by esnoopy | 2008-03-25 00:05 | 糖尿病

糖尿病と心血管疾患

糖尿病患者が心血管障害の合併が多いことは異論の余地がありません。
きょうの2つの報告も当たり前のような内容かも知れません。
しかし実際に論文になっているわけですから、その深い意味を汲み取らなければなりません。

2型糖尿病の高齢者には心保護薬のみでは不十分
ラバル大学(カナダ・ケベック)薬学部のCaroline Sirois氏らがDiabetes Care(2007; 30: 1880-1882)に発表したところによると,同氏らが実施した66歳以上の 1 万2,150例を対象とした住民対象コホート研究から,新たに治療を受ける 2 型糖尿病の高齢患者では,心保護薬のみでは不十分であることが明らかになった。


今回の研究知見は>「経口血糖降下薬による治療を開始した患者に対する心血管リスク管理は,適切とは言えないことを示唆している」と結論付けている。

経口血糖降下薬の投与開始後,最初の 1 年間に, 1 万2,150例のうち2,649例(21.8%)が抗血小板薬,4,813例(39.6%)が降圧薬,2,562例(21.1%)が脂質異常症治療薬の投与を受けた。
糖尿病治療薬の開始前に,これら 3 系統の薬剤のいずれかによる治療を受けていた患者は除外した。

総合的心保護療法(CCR)を受けていた患者は,882例(7.3%)のみであったことが明らかにされた。
CCRは,糖尿病治療薬投与開始後 1 年以内に降圧薬,脂質異常症治療薬,抗血小板薬のうち 1 剤以上を使用することと定義した。
この定義によると,フォローアップ期間中の異なる時期にこれら 3 剤それぞれの使用が可能だったことになる。


5 人に 1 人は血糖管理が不十分
多変量解析では,3 因子は有意水準で統計学的に有意のままだった。
高齢患者では比較的若年の患者と比べて,CCRを受けていた割合が低かった。
心血管疾患と診断された患者は,CCRを受けていた割合が高かった。


また,2000年,2001年または2002年に糖尿病治療薬の投与を開始した患者は,1998年または99年に開始した患者と比べて,CCRを受けていた割合が高かった。
したがって, CCRを受けているオッズ比は,98年の3.5%から99年には3.8%,2000年には7.3%,2001年には 10.4%,2002年には12.9%に上昇した。
 

今回の研究知見は,糖尿病患者における薬剤の使用は最適でないことを立証した以前の観察研究 3 件の知見を支持している(Klinke JA, et al. Clinical Therapeutics 2004; 26: 439-446,Toth EL, et al. Pharmacotherapy 2003; 23: 659-665,Saaddine JB, et al. Annals of Internal Medicine 2006; 144: 465-474)。 

米疾病管理センター(CDC)慢性疾患予防・健康増進センターのJinan B. Saaddine氏らは,これらの観察研究のなかで最も新しい研究として,糖尿病と診断された18〜75歳の患者を対象とした米国の調査について報告しており,治療法が改善されたにもかかわらず「糖尿病患者の 5 人に 2 人はLDLコレステロール,3 人に 1 人は血圧,5 人に 1 人は血糖の管理が不十分なことが明らかにされた」としている。

家庭医で低い処方率 
同様に,王立自由大学(ロンドン)プライマリケア・人口科学のJonathan R. Emberson氏らは,60〜79歳の男女(8,538例)を対象とした研究により,「糖尿病患者では,糖尿病が認められない患者と比べて冠動脈性心疾患(CHD)リスクを低下させる薬剤の投与を受ける率が高かったが,予防的治療を受けている患者の比率は両群とも低いことがわかった」とHeart(2005; 91: 451-455)に発表した。 
さらに最近,新たに糖尿病と診断された65歳以上の10万5,714例のデータを用いたカナダの住民対象研究から,降圧薬の投与を受けていた患者は 3 分の 2 にすぎず,脂質異常症治療薬の投与を受けていた患者は 4分の 1 にすぎなかったことが明らかにされた。
さらに,この研究から内科医,老年病専門医,内分泌専門医と比べて,家庭医は降圧薬や脂質異常症治療薬の処方率が最も低かったことが明らかにされた(Shah BR, et al. Diabetic Medicine 2006; 23: 1117-1123)。
 
一方,ウェイクフォレスト大学(ノースカロライナ州ウィンストンセーラム)のDavid C. Goff, Jr.博士らはAmerican Journal of Cardiology(2007; 99: S4-S20)に発表した 2 型糖尿病患者を対象とした心血管疾患予防に関する論文で,「 2 型糖尿病患者は人口動態特性が同様である非糖尿病患者と比べて,心血管疾患死亡率が 2 〜 4 倍高い」と指摘している。
 同博士らは「疫学分析から,グリコヘモグロビンが 1 %上昇するごとにCVDリスクは約18%上昇することが示唆された」と述べている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4044381&year=2007
Medical Tribune 2007.11.1
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
糖尿病患者を診療する場合、総合的心保護療法(CCR)を行う必要があるとのことです。
しかし、私自身この「総合的心保護療法(CCR)」という言葉を今まで聞いたことがありません。
それにCCRは何の略(abbreviation) なんでしょうか。
そして「心保護薬のみでは不十分」というタイトルとのつながりもよく理解できませんでした。
しかし、心血管疾患合併の多い糖尿病患者ではそれらの予防を含めた積極的治療介入を行う必要があるという趣旨は理解できました。
要するに血糖の数値だけみていてはいけないということなんでしょう。

糖尿病と心血管疾患
http://www.e-clinician.net/vol39/no408/pdf/sp11_408.pdf
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糖代謝異常で心血管疾患リスクや死亡率が上昇
〔ニューヨーク〕 オーストラリア国際糖尿病研究所(オーストラリア・コールフィールド)のElizabeth L. M. Barr氏らは,血液循環に関する全豪レベルの大規模コホート研究を実施し,糖尿病レベルには至らない高血糖により心血管疾患(CVD)死亡率や全死亡率が上昇するとCirculation(2007; 116: 151-157)に発表した。

CVD予防が必要 
この研究は対象の 1 万428例を5.2年(中央値)にわたり追跡調査したもので,糖尿病と診断されていない場合でも,糖代謝異常と死亡率との間に強い相関が認められることを明らかにしている。
空腹時血糖異常(IFG)やimpaired glucose tolerance(IGT)が認められる患者では,5 年死亡リスクが50~60%高かった。 
耐糖能正常者と比べて,IFG患者の調整ずみ全死亡のハザード比(HR)は1.6〔95%信頼区間(CI)1.0?2.4〕だった。
またIGT患者のHRは1.5(95%CI 1.1?2.0)だった。

これと比べて,糖尿病が既知の患者のHRは2.3(95%CI 1.6?3.2)で,新たに糖尿病と診断された患者のHRは1.3(95%CI 0.9?2.0)であった。 

Barr氏らは「全カテゴリーの糖代謝異常の患者に対してはCVD予防が必要と思われる」と述べている。

対象の 1 万428例中298例が死亡した。
そのうち88例はCVDが死因で,そのうちの65%は既に糖尿病か新規に糖尿病と診断された患者,または試験開始時にIFGまたはIGTが認められた患者であった。

年齢,性のほか一般的なCVD危険因子を調整した後でも,既知の糖尿病(HR 2.6,95%CI 1.4?4.7)だけでなく,IFG(HR 2.5,95%CI 1.2?5.1)も独立したCVD死亡予測因子であった。
対照的にIGT(HR 1.2,95%CI 0.7?2.2)は独立したCVD死亡予測因子ではなくなった。

同氏らは「今回の研究から,IGTは全死亡と関連するだけでなく,IFGも全死亡やCVD死亡の独立した予測因子であることが明らかになった」と述べている。


血糖障害は二次的予防の標的 
Barr氏らは「糖代謝異常は正常な内皮機能を妨げ,アテローム動脈硬化巣の形成を促進し,動脈硬化巣の破裂やそれに続く血栓形成に寄与するため,糖代謝異常により大血管疾患の尤度が上昇することが,実験的研究からも示されている」と説明。
さらに,「高血圧や脂質異常などのCVD危険因子は,糖代謝異常の存在により悪化する可能性がある」としている。

今回の研究とは別に,スカラボリ病院(スウェーデン・スケブデ)内科のM. Bartnik氏らは>「CVDリスクは,正常とみなされるレベルで明らかに血糖値のスペクトルに伴い上昇する」とJournal of Internal Medicine(2007; 262: 145-156)に掲載された高血糖とCVDとの関係についてのレビューで説明している。
このレビューで同氏は,経口耐糖能検査を「冠動脈疾患の全患者を対象とした総リスク評価の一部とすべきだ」と主張し,「血糖障害は一般的で検出が容易であるため,新たな二次的予防努力の適切な標的となりうる」と述べている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4044381&year=2007


Medical Tribune 2007.11.1
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
まずは、「糖代謝異常」という言葉ですが定義はどうなっているのでしょうか。
文中には空腹時血糖異常(IFG)やimpaired glucose tolerance(IGT)と書かれています。
IFGとIGTを分けて検討していることでかえって理解しにくくなっている感もありますが、それとも分けたことが新知見なのでしょうか。

糖代謝異常の病態と管理
http://www.jc-angiology.org/journal/pdf/2006/449.pdf
糖尿病型にも正常型にも含まれないものが境界型となる。
この境界型は,
① 将来糖尿病を発症する可能性が高い,
② 糖尿病性細小血管合併症(網膜症,腎症,神経障害)を来すことはほとんどない,
③ 虚血性心疾患などの動脈硬化症のリスクは糖尿病と変わらない,といった特徴がある。

一方,メタボリックシンドロームにおける耐糖能異常は検診でスクリーニングすることを念頭に設定されており,日本では空腹時血糖値が110mg/dl以上で診断する。

耐糖能障害(IGT):病気ではない?
http://www.id.yamagata-u.ac.jp/LaboratoryMedicine/Japanese/DiabetesCare.html

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by esnoopy | 2008-03-12 00:04 | 糖尿病

糖尿病・食後代謝異常 その2(2/2)

昨日の続きです。


特別企画
第22回日本糖尿病合併症学会ランチョンセミナー
糖尿病治療の新しい動向
~食後代謝異常・エビデンスの確立をめぐって~
講演 2
大規模臨床試験によるエビデンス確立における問題点を指摘

佐倉 宏 氏 東京女子医科大学糖尿病センター 准教授
肥満 2 型糖尿病に対する経口血糖降下薬による治療に関し,「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」では残念ながらエビデンスに基づいた具体的な選択手順は明示されていない。
佐倉宏氏は,経口血糖降下薬の理論的な選択方法と実際の使い方を示したうえで,大規模臨床試験を検証し,エビデンスとするにはいまだ問題点が多いことを指摘した。


実地診療での経口血糖降下薬の選択はほぼ理論通り
肥満 2 型糖尿病に用いる経口血糖降下薬は,肥満という病態を考慮するとインスリン抵抗性改善作用を有するビグアナイド(BG)薬,チアゾリジン薬,食後高血糖のみ起こる段階であれば,α-GIが第一選択薬として考えられる。

実際に佐倉氏が自身の施設における経口血糖降下薬使用法を調査したところ,ほぼその理論通りであった。
なお,スルホニル尿素(SU)薬,速効型インスリン分泌促進薬は比較的やせ型の患者を中心に投与されていた。


同一系統の薬でも薬剤によって異なる成績
続いて佐倉氏は, BMI25以上の 2型糖尿病患者における経口血糖降下薬の有効性を示すエビデンスとなる,大規模臨床試験を紹介した。
それらの結果によると,細小血管症の進展抑制作用を認めたものはSU薬(グリベンクラミド)とBG薬(メトホルミン),大血管症の抑制を認めたものはBG薬(メトホルミン),チアゾリジン薬(ピオグリタゾン),α-GI(アカルボース)であった()。
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MeRIA7では,プラセボ群に比べ,アカルボース群で全心血管イベントが35%,心筋梗塞に至っては64%も減少することが明らかとなっている()。
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なお佐倉氏は,同一系統の薬でも薬剤により成績が異なる場合のある事例を紹介し,臨床成績の解釈には注意が必要であると付言した。

インスリン分泌量が異なる欧米人のデータをそのまま適用することは難しい
佐倉氏は,これらの大規模臨床試験は欧米のものが多く,欧米での試験成績をインスリン分泌量が大きく異なる日本人に適用するのは無理があると述べた。
また,1 つの系統薬のなかでは代表的な薬剤でしか検討が行われていない点に注意が必要であると指摘した。

さらに,試験成績の解釈を困難にするさまざまな問題が存在するという。1 つは臨床試験に参加する患者は食事・運動療法の遵守率が概して高いというセレクションバイアスである。
特に糖尿病ではこのバイアスの影響が大きいという。
また,2 型糖尿病は多様な病因・病態を示すため試験の選択基準を満たす患者はごく一部に過ぎないこと,二次無効により試験開始時の経口血糖降下薬からの変更や追加が必要な症例が多いことなどが挙げられた。

EBMの基本はClinical Expertise,Patient's Preference, Research Evidenceである。
同氏は,糖尿病はClinical Expertise,すなわち個々の患者の病態を専門的に判断し,病態に応じた薬物を選択する個別医療の考え方がまだまだ重要な疾患としたうえで「糖尿病のEBMを確立するためには,今後,Research Evidenceをどのように構築していくかが課題である」と結んだ。
メディカル・トリビューン 2008.2.28
版権 日経BP社

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<番外編>
高血圧で通院中の50代の男性の方のお話です。
その方は単身赴任で当地の会社で勤務してみえます。
昨日奥様から電話があり、自宅近くのガンセンターに急遽入院になったとのこと。
最後の診察の時に複視で近くの眼科へ通院中と言ってみえました。
内心、神経内科で精密検査がいいかなと思いましたが、余計なことは言わない
ほうがいいかなと黙って聞いていました。
さて、電話の件ですが、話の内容から結局、最終的にある大学病院でのMRIの結果、
複視の原因が上咽頭癌と判明したことが判りました。

私の大学時代、当時の助教授が上咽頭癌(NPC)の研究をしていて講義を詳しく
されたのを思い出しました。
たしか多発地域の台湾へ何回も足を運んでみえたように覚えています。
その先生もすでに他界してみえます。

複視の原因として、こんな疾患が原因の場合もあるんだなと勉強になった次第です。

上咽頭癌
http://www.mc.pref.osaka.jp/kabetsu-shoukai/jibika/kaisetsu/jouintougan.htm
咽頭がん
http://www.effect-japan.com/cancer/pharyngeal.html<上咽頭がん(癌)>
上咽頭がん(癌)の初期はほとんど無症状ですが、がんがある程度大きくなることで
現れる症状としては、首のリンパ節の腫脹があります。他に鼻づまり、鼻血、痰に血
が混じる、難聴、耳が詰まった感じがする耳閉感などがあります。また脳神経が圧迫
を受けることで物が二重に見えるなどの視覚障害や疼痛が起こることがあります。
上咽頭がんは低分化型の扁平上皮がんが多いため他の頭頸部がんと比較すると肺や骨、肝臓などへの遠隔転移が多く認められます


上咽頭癌
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/jyointou.html
上咽頭癌とは
http://www.geocities.jp/piyopiyogogo1101/page0.htm
厚生省の人口動態統計(1995年)では年間324例がこの腫瘍で死亡しており、
全癌死亡の0.12%であった。中国南部、台湾、シンガポールなどの東南アジアを
中心とする地域の中国系の人々に多く認められる。また発癌に関しEpstein Barr (EB) Virusが関与していると考えられている。


他にもブログがあります。
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by esnoopy | 2008-03-05 00:07 | 糖尿病

糖尿病・食後代謝異常 その1(1/2)

今日と明日は糖尿病領域で話題となっている食後代謝異常について勉強
します。
「日本糖尿病合併症学会」のランチョンセミナーで発表された内容です。
恥ずかしながら、この学会の存在自体を今まで知りませんでした。

特別企画
第22回日本糖尿病合併症学会ランチョンセミナー
糖尿病治療の新しい動向
〜食後代謝異常・エビデンスの確立をめぐって〜

メタボリックシンドローム(MetS)は,糖尿病,高血圧,脂質代謝異常などを経て,臓器障害へと進展する。
最近,臓器障害へと至る過程で食後代謝異常(高血糖,高TG血症)が重要な役割を担うことが明らかとなり,注目を集めている。
昨年開催された第22回日本糖尿病合併症学会ランチョンセミナーにおいて,食後代謝異常の是正が腎障害を抑制する可能性が示された。
併せて行われた糖尿病治療のエビデンスの確立における問題点を指摘する講演とともに,その概要を紹介する。
田嶼 尚子 氏(座長) 
講演 1
食後代謝異常の改善により腎障害を抑制
小川 晋 氏 東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科

2 型糖尿病患者を対象とした 7 つのプラセボ対照比較試験のメタ解析であるMeRIA7(Meta-analysis of Risk Improvement under Acarbose-7)は,α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)・アカルボースが心血管イベントを抑制することを明らかにした。
同解析では同時に,アカルボースがMetSの主要な構成因子である体重,血圧,TG値,血糖などを軒並み改善することも示している。
小川晋氏はこの成績から,アカルボースはMetSに集積する多くの危険因子を改善することで,臓器障害を抑制するのではないかと推測し,アカルボースが腎障害の進展を抑制するメカニズムについて検討した。

食後,空腹時TGに対するアカルボースの影響を検討
血中トリグリセライド(TG)は,空腹時は肝で合成される超低比重リポ蛋白(VLDL)で,食後はVLDLと食事由来のカイロミクロン(CM)で構成される。
小川氏らが 2 型糖尿病患者にアカルボースを用いて行った検討では,食後のTG値,CM値が非投与群に比べ,継続投与群,単回投与群のいずれにおいても有意に抑制していた。
また,空腹時に高TG血症を呈する群では 8 週間投与後,VLDL値も有意に抑制されていた(図 1)。
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同氏はこの結果について,アカルボースの食後TG上昇抑制作用はCM上昇抑制によるもの,空腹時TG抑制作用はVLDL産生抑制によるものと考えた。
またこれを基に,アカルボースの食後代謝異常改善作用を図 2のように考察している。
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血糖上昇により酸化ストレスが増大し,血圧が上昇
次に小川氏は,腎障害における高血糖の関与を検討した。
 
インスリン抵抗性によるNO産生の低下は,酸化ストレスを増加させ,腎髄質の虚血を引き起こす。
髄質虚血はNa再吸収を増大し血圧を上昇させるとともに,酸化ストレスを増加させるという悪循環を形成すると考えられている。
実際,食塩感受性高血圧ラットに糖質を摂取させると,インスリン抵抗性と酸化ストレスが増加し,血圧が上昇したと報告されている。
同氏らは,高血糖ラットを用いた検討を行い,血糖上昇による髄質血流の低下は,酸化ストレスを介して起こること,血糖上昇そのものではなく腎内グルコース濃度の上昇が関与すること,尿細管における尿糖再吸収を阻害すると血圧上昇が抑制されることを確認した。

そこで,同氏らはアカルボースによる食後高血糖改善作用が食後尿糖を減少させ,尿糖再吸収を抑制するのではないかと考え,アルブミン尿を伴う軽症糖尿病患者を対象に,アカルボース投与を16週間行った。
その結果,収縮期血圧と食後高血糖は改善し,尿中酸化ストレスおよびアルブミン尿はいずれも有意に減少した。また,食後60分の血糖下降と,尿中酸化ストレス減少,アルブミン尿減少には相関関係がみられた。

以上より,同氏は「アカルボースは食後高血糖および食後代謝異常を是正することにより,高血圧を抑制,さらに動脈硬化,腎血管障害への進展抑制に働くと考えられる。
したがって,本剤はMetSのように軽度の因子が累積してリスクが上昇する疾患には非常に有効と思われる」と結論した。

メディカル・トリビューン 2008.2.28
版権 日経BP社


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<自遊時間>
「一番問題なのは、医者?役人?それとも患者?」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/honda/200802/505628.html
番組の中で、リスナーを対象としたアンケート「崩壊しつつあると言われる日本の医療で一番問題なのは、医者?役人?それとも患者?」が行われました。リスナーは、電話、ファクシミリ、インターネットで投票するのですが、その結果は、「医者18%、役人65%、患者17%」だったそうです。
アクセス特集・田中康夫+本田宏+渡辺真理・2月18日(月)
http://tbs954.cocolog-nifty.com/ac/files/actk20080218.mp3

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-03-04 00:09 | 糖尿病

J-DOIT3の継続決まる

糖尿病患者の血糖は下げすぎてはいけない。
こんな衝撃的なニュースが走りました。

ACCORD試験の血糖管理強化療法中止で広がる不安,10日で“断” 
2型糖尿病患者に対する多因子強力介入の有効性を検証する厚生労働省主導の臨床試験J-DOIT3(研究リーダー=東京大学大学院糖尿病・代謝内科教授・門脇孝氏)の継続が,2月15日に決まった。
同試験は,2月6日に米国で発表されたACCORD試験における血糖管理強化療法の中止を受け,8日から新規患者の登録などを一時停止していた。
ACOORD試験に関する突然の中間解析結果の発表は日本の糖尿病関係者の間でも大きな話題となり,厳格な血糖コントロールへの不安が広がる気配もあったが, 10日で“断”が下されたことになる。

HbA1c5.8%をめざすJ-DOIT3
J-DOIT3は,厚生労働省の糖尿病戦略研究J-DOITの1つで,高血圧または脂質異常症を合併する日本人2型糖尿病患者を対象に,血糖,血圧,脂質の3因子に対する強力な介入を行うことで,心血管イベントや死亡の発生を低減できるかどうかを検証する試験。
従来療法群,強化療法群1,500例ずつの登録を予定している。

同試験の治療目標値は,従来療法群では現行ガイドラインの推奨値を採用しているのに対し,強化療法群ではより厳格な値を設定している。
例えば,血糖については従来療法群6.5%未満,強化療法群5.8%未満である。強化療法群では目標値を達成するため,生活習慣や血糖・血圧などのきめ細かな自己管理と指導に加え,ステップアップ方式の薬物療法が行われる。

2月16日,高松市で行われた第42回糖尿病学の進歩におけるシンポジウム「糖尿病対策の現状」でJ-DOIT3について発表した研究リーダーの門脇氏によると,症例登録は2006年6月から始まり,現段階で約1,700例に達している。
20か月後の平均HbA1c値は従来療法群6.5%,強化療法群6.0%と治療目標値に近似したレベルにあり,入院を要する重篤な低血糖は強化療法群で1例発生したのみだという。

ACCORD試験の中間解析結果に考慮すべき問題点
このようななか,もたらされたのがACCORD試験の発表だった。
ACCORD試験もJ-DOIT3と同様,ハイリスク2型糖尿病に対する3因子強力介入の意義を問うもので,両者の試験デザインには類似点が多い。
それだけに,血糖管理強化療法の中止は「衝撃的だった」(門脇氏)という。

ACCORD試験の強化療法が中止されたのは,強化療法群の死亡例が257例(14件/1,000人・年)と従来療法群の203例(11件/1,000人・年)を上回ったための緊急処置だった(血圧・脂質に対する介入は継続される)。
なお,平均HbA1cは登録時の8.2%に対し,従来療法群7.5%,強化療法群6.4%のコントロールレベルにあった。
強化療法群で死亡が増加した理由については明らかにされていないが,ACCORD試験の研究グループは「ハイリスク2型糖尿病患者の血糖コントロールはHbA1c7%程度が推奨される」とコメントしている。

これに対し門脇氏は,
(1)ACCORD試験における死亡率は,同様の危険因子を有する米国の2型糖尿病患者における死亡率(50件/1,000人・年)よりかなり低い,
(2)研究グループは否定しているが,重症低血糖の増加が強化療法群における死亡増加に影響した可能性も払拭できない
ことを考慮すべき問題点として提起した。
米国糖尿病学会(ADA)も,ACCORD試験の中間解析結果をもとに,ガイドラインの血糖コントロール目標値(HbA1c7%未満)を変更することはないとして明言しており,逆に治療の変更を強く懸念するとの見解を発表しているという。

死亡の逐次モニターなどを条件に試験継続を承認 
ACCORD試験の中間解析結果発表後のJ-DOIT3研究の対応について,門脇氏は次のように説明した。

ACCORD試験の中間解析結果の解釈には上記のような疑問が残るものの,患者の安全性に万全を期すため,2月8日,新規患者の登録と血糖コントロールに関する新たなステップアップを一時停止することを決定。
参加医療機関などに連絡した。

一方,研究グループとは独立の試験評価委員会において,J-DOIT3の中間解析結果の評価を行い,
(1)現時点で強化療法群と従来療法群で一次エンドポイントの発生に有意差が認められない,(2)イベント発生時のHbA1cとイベントとの間に有意な関連が認められない,
(3)強化療法群においても重篤な低血糖はほとんど発生していない
ことを確認。
今後,一次エンドポイントのうち,死亡については年1回の中間解析だけでなく,可能な限り逐次モニターすることなどを条件に,患者の新規登録を含めた試験の継続が承認されたという。

J-DOIT3の継続決まる
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0802/080210.html

Medical Tribune
版権 メディカル・トリビューン社
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ACCORD試験~血糖値は下げすぎなほうが良い?
http://medicineblog.blog32.fc2.com/blog-entry-12.html
http://medicineblog.asablo.jp/blog/2008/02/10/2615727
(これらのブログでは開発中の薬剤や大規模臨床試験についてするどく斬り込んでいます。なぜか内容は同一です。)
治験論文が刊行され判断材料が揃うまでは軽率に判断しないほうが良い、また、この試験の組入れ条件を満たすのは二型糖尿病患者の一部に過ぎず二型糖尿病全般にあてはまるわけではない、というの賢者の知恵のようです。
ADA米国糖尿病学会はHbA1cを7%未満に下げることを目標とするよう推奨しています。AACE米国臨床内分泌学学会は6.5%以下が目標です。ACCORD試験の結果を額面通り受け止めるならば、AACEのガイドラインを遵守するのはリスクが高く、ADAのガイドラインも守らないほうが良いということになります。心血管リスクが低い患者には当てはまらないかもしれませんが、当てはまらないというしっかりとしたエビデンスもありません。
プライマリーケア医はリスク回避的なので学会のガイドラインを遵守していない人が多いでしょう。慌てる必要はないことになります。しかし、アグレッシブな治療を行う専門医は、今すぐにでも治療方針の正当性を再検討しなければならないでしょう。

<コメント>
糖降下強化療法と死亡リスク上昇の関連が示唆されたこのACCORD試験とは異なり、ACCORD試験と同様のデザインで実施されているADVANCE試験の途中解析では血糖レベルを現在の推奨レベル未満まで下げることを目標とした血糖降下強化治療と死亡リスク上昇に関連は認められないということです。


<参考>
For Safety, NHLBI Changes Intensive Blood Sugar Treatment Strategy in Clinical Trial of Diabetes and Cardiovascular Disease
http://public.nhlbi.nih.gov/newsroom/home/GetPressRelease.aspx?id=2551
J-DOIT
糖尿病診療のわが国発のエビデンス構築へ
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?id=M3929701&year=2006&type=article
2型糖尿病の発症を50%抑制へ         J-DOIT1
2型糖尿病患者の治療中断率を50%改善へ J-DOIT2
2型糖尿病の血管合併症を30%抑制へ  J-DOIT3

第40回糖尿病学の進歩
最近15年で血糖コントロール改善
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?id=M3910191&year=2006&type=article

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-02-20 00:05 | 糖尿病