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コーンバーグ博士 その2(2/2)

昨日の
コーンバーグ博士 その1(1/2)
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-11-27
の続きです。

迷いのない89年の人生
こうした親子の話を聞いただけでは、優れた業績を上げるために何が最も重要な
要素なのかは分からない。
ただ、アーサー・コーンバーグが繰り返し語ってきた科学という営みの素晴らしさは、
子供の価値観にも影響を与えたに違いない。

01年のインタビューでは、「孫が8人いますが、科学者としてのキャリアを持たせたい
かと聞かれれば、もちろんイエスです」と力強く話していた。
科学のキャリアは、ビジネスや政治、法律などとは比べものにならないほどの満足
が得られます。
芸術さえもかないません
」という言葉には、科学への熱い信頼感が溢れ、思わず
「同感です」と言いたい気分になった。
迷いのない信念は、そのまま、子供たちにも伝わったはずだ。

もう1つ、アーサー・コーンバーグが繰り返し語ったのは、「科学は、最初から何かの
役に立つことをめざしてやるのではない」ということだ。
「必要は発明の母」なのではなく、「発明が必要の母」だというのが、彼の持論だった。
つまり、なんの役に立つか分からないが、好奇心で行う基礎科学が、結果的に役に
立つことにつながるという構図だ。
これもまた、「同感です」と言いたくなる言葉だ。

最近の曰本の科学技術政策は、「役に立つ」ことに重きが置かれている。
「イノベーション」もそうだろう。
曰本だけではない。
米国でも、そうした傾向は強まっていると聞く。
だが、やはり、コーンバーグがいうように 科学は、ビジネスや政治、法律とは違う。
好奇心に根ざす基礎科学の素晴らしさを、コーンバーグのように訴え続ける人は、
これからますます欠かせないのではないだろうか。
(毎日新聞社論説委員 青野由利氏)

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千住 博 リトグラフ「水の惑星#11 月下」
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<コメント>
「職業に貴賎はない」というのは昔から言われている言葉です。
自分でどんな職業(この場合は進む道、一生の仕事と表現したほうがいいかも知れ
ませんが)より科学者を選んでよかった。
これは成功者だからこそ言える言葉かも知れません。
しかし成功云々の定義自体も怪しいですし、何よりも今やっていることに充実感を
(ささいなことでいいから)見出すことが大切かも知れません。
最近、私の体にはワインが流れているといった女優が婚約しました。
相手は東京で手広くレストランを経営しているオーナーシェフとのことですが、彼いわく
「大好きな料理を作ってお客様に喜んでいただく。世界一の仕事と思っています。」
それはそれで素晴らしいことです。
素敵な女性を手に入れたわけですからなおさらです。
毎晩二人で、どんなワインをあけるんでしょうか。

       そんなのカンケイナイ
                   

他にもブログがあります。
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by esnoopy | 2007-11-28 00:10 | その他

コーンバーグ博士 その1(1/2)

あるノーベル賞受賞者のインタビュー記事です。

昨今、医療をとりまく環境は悪化の一途をたどっています。
悪化と言い切るのは、私自身ある程度長い間、勤務医や開業医に携わってきて
その変化を目の当たりにして実感しているからでもあります。
私自身、医学生の時、そして医師になってからも医師としての職業を天職と考え
夢と希望に胸を膨らませていました。
しかるに、医療現場を知らない厚労省の役人により医療改悪が続き医師の生気
はすっかり抜けてしまいました。
やる気も社会的地位もプライドもすべてなくなりつつあります。
この点は先生方も同感と思いますし、M3のブログに不平不満が渦巻いています。


さて私事で恐縮ですが、私の子供2人が現在医学生です。
親として勧めた道でもなかったのですが、卒後は将棋の駒のように労働力として
いいように(厚労省に)あしらわれる姿を想像すると可哀相になってしまいます。
そしてそのことに激しい憤りを感じます。
まるで学徒動員です。
法的にも問題があります。


厚労省は医学部の定員を増やせば臨床医もそのまま増えると皮算用しています。
以下のコーンバーグ博士のインタビューを読むと、これからは基礎医学が優秀な
医学生の進む道かと思ってしまいます。
生活が臨床医と同様に保障されて、場合によってはベンチャーや特許で巨万の富
を得る(?)。
そんなことが可能なら基礎医学へ進むという医学生も多いのではないでしょうか。
このままでは臨床医に未来はないと思ってしまうのは私だけではないと思います。
厚労省もへたこいてると基礎に優秀な医学生は行ってしまいますよ。

最近プライマリケア実習に来た5年の医学生に以下の記事を見せました。

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ポール・アイズピリ “楽団” リトグラフ
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さて本題です。御一読下さい。
MMJ November 2007 VoL 3 No.11
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コーンバーグの言葉   「発明が必要の母」
アーサー・コーンバーグ博士にインタビューしたのは、2001年のことだ。
ある企画で、米カリフォルニアにあるスタンフォード大学に博士の研究室を訪れた。

RNAポリメラーゼの発見で59年にノーベル医学生理学員を受賞したコーンバーグ
博士は、当時すでに88歳。
それでも、自分のラボを持つ現役の研究者で、年齢を感じさせなかった。
親日家で、今夏にも来日して講演会に出席しており、なんだかい
つまでも元気で研究を続けているよな気がしていた。

だからだろう、この10月に呼吸不全のため亡くなったとの計報にびっくりした。
89歳で亡くなるまで研究への情熱を失わなかった博士は、稀有な存在であり
「幸福な科学者」だったのではないかと感じる。

息子も昨年ノーベル賞受賞
米国でのインタビューでは、印象に残ったことがいくつかあった。
1つは、「研究者ほどすばらしい職業はほかにない」という確固たる信念。
もう1つは、3人の息子のうち2人が科学者に、1人が研究室をデザインする
建築家になったという話だっ
た。

科学者になった2人の息子のうち、長男のロジャーは、昨年のノーベル化学賞
を受賞している。
新聞社の机の前でノーベル賞発表を待ち構えていたところへ「コーンバーグ」
の名前が飛び込んできた時には、どこかで聞いた名前だなあと思ったものの
ぴんとこなかった。
アーサー・コーンバーグの2度目の受賞はありえないだろう、などと思って
プレスリリースを見て、ようやく親子受賞と気づいたくらいだ。

めずらしいこともあると思ったが、調べてみると親子でのノーベル賞受賞はすでに
6組に上リ、 コーンバーグで7組目だった。

そのとき、思わず頭をよぎったのは、遺伝か、環境か」という言葉だ。
ノーベル賞を受賞するほどの能力には、生物学的な要素が無関係とはいえない
のか、それとも家庭環境などのなせるわざなのだろうかという素朴な疑問である。

3人の息子と7月に来日
アーサーコーンバーグと3人の息子は、今年7月に東京に集まった。
東京大学が主催した講演会「独創的研究の真髄:コーンバーグ親子から学ぶ」
というイベントに招かれたためだった。
□ジャーと次男のトムが科学者、三男のケンが建築家という顔ぶれだ。
東京大学のねらいもまた、それぞれの分野で活躍する親子を生んだ環境は
いったいなんだったのかというところにあったのだろう。

ただ、科学者になった2人の息子も、それぞれ科学に対する思いは違ったようだ。
ロジャーは、子供のころからの科学好きで、好きな場所を聞かれると「実験室」
と答えたという。
9歳の時にクリスマスに何が欲しいか聞かれ、「実験室での1週間」とお願いした
そうだから「筋金入り」だ。

次男のトムは、子供のころからチェロの演奏家をめざし、ジュリアード音楽院に
進んだ。
同時に、コロンビア大学の学生にもなった。
当時、父親のアーサーの研究成果に対する批判の声があり、その正当'性を
示すための研究がきっかけで科学者の道からへ進んだという。
そういう意味では、□ジャーとは異なる道を歩んだこと
になる。
 「トムが私の名誉を挽回した」というアーサー自身は、どちらかといえば、
後から科学にめざめたトムのタイプらしい。

講演会で家庭環境などについて聞かれたアーサーは、「子どもたちに科学を
押しつけようとは思わなかったが、自分の仕事を認めてほしいと願っていた」
と語った。
結果的に、ロジャーもトムも、父親と同じ分野で業績を上げた。
やはり「親の背中を見て育つ」ということはあるのか
もしれない。
一方、□ジャーは「家では科学の話はあまりしない」と語っている。


酵素に恋して
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by esnoopy | 2007-11-27 00:05 | その他

無症候性脳血管腫・脳出血

東海大学医学部講師 高橋若生先生    日医雑誌 136:4 2007.7 より


MRIの普及に伴い,無症候性脳病変が見つかる機会が増えているが,脳血管腫
もその1つである.

MRIでは、静脈性血管腫が0.6%、海綿状血管腫が0.4%、脳動静脈奇形が
0.2~0.3%程度の発見率
とされる。
山中湖クリニックの成績では、脳ドックを受診した3、780名(平均年齢55±10歳)
のうち16例(0.4%)にいずれかの無症候性脳血管奇形が認められた。
比較的まれな病変であるが、脳血管奇形の種類によっては脳出血を来す場合
があり、無視できない病変の1つである。
一方、上述の検討では、血管腫に伴うものを除いた無症候性脳出血は2例
(0.05%)のみであった

また、何らかの神経疾患を有する例のMRIについて検討した成績によると、
2、757例中高血圧性脳内出血が12例、脳血管腫などの二次性脳出血が
5例にみられた。
したがって、通常のT1,T2強調画像で認められる無症候性脳出血は,
慢性期の高血圧性脳内出血もしくは脳血管奇形が主体と考えられるが,
その頻度はきわめてまれである。
最近、磁性体を鋭敏に捕えるsusceptibility‐weighted MR sequences
と呼ばれる撮影法が実用化され、無症候性の脳微小出血microbleeds
(MBs,図1矢印)が想像以上に高頻度に存在することが明らかとなった。
Gradient-echoT2*強調画像
を用いた検討では、脳内出血例の
66~71%、ラクナ梗塞例の62%にMBSが認められたという。
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MBS
は,脳内出血の再発、アスピリン内服中や血栓溶解療法後の
脳出血と関連するとした報告が相次ぎ、その存在意義が注目されている


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マヌキャン リトグラフ 「母子」
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<コメント>
従来のMRIでは無症候性脳出血はほとんどみられない。
しかし、susceptibility‐weighted MR sequencesという新手法を用いると
脳微小出血は決して珍しいものではないということです。
さらに、脳内出血例やラクナ梗塞例の多くに脳微小出血を伴っていたということです。
出血性梗塞の概念とは異なるかも知れませんが、理論上も多いにありうることと思い
ます。
脳梗塞の二次予防やTIAに対して安易に(?)抗血小板療法が行われますが、一つ
の警告とも思われるデータです。
私も常々、これらの症例に対して抗血小板療法を行うことについて、再発時に梗塞
とは限らず出血(つまり初発が脳梗塞、2回目が脳出血)という場合もありうると危惧
しながらも抗血小板療法を行っていました。
なかなか抗血小板療法も一筋縄ではいかないようです。


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by esnoopy | 2007-11-17 00:10 | その他

腹囲論争

メタボリックシンドロームの診断基準の必要条件としての腹囲。
11月に入ってからこの数字について急展開をしています。
十分な検討がなされないまま基準が決まった感がありますが、どの数字に落ち着くか目が離せません。

「メタボ腹」基準に異論 「男85センチは平均的」
おなかに脂肪がたまるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、通称メタボ)の診断基準を巡り、専門家から異論が相次いでいる。
基準の一つであるウエストサイズ(腹囲)が、女性で90センチ以上なのに対し、男性は85センチ以上と、諸外国に比べても厳しいなどが理由だ。
この症候群の人を見つける「特定健診・保健指導」が来年度に始まるが、「これでは健康な人まで『異常』と判定される」との指摘もあり、日本肥満学会などは今後、診断基準に関する委員会を開き、基準の見直しの必要性を検討するとしている。
この症候群は、腹囲に加え、血圧、空腹時血糖、血中脂質のうち2項目以上で異常があった場合に診断される。
特定健診・保健指導は、40〜74歳が対象で、現在の健診の項目に腹囲測定が新たに加わる。
内臓脂肪は、内臓の周りにたまる脂肪のこと。画像診断で、へその位置の胴回りの内臓脂肪面積が一定以上の場合、糖尿病や心筋梗塞(こうそく)などを引き起こす恐れが高まるとして、日本肥満学会などが、内臓脂肪面積を基に腹囲の基準を定めた。
だが、国際的にみても、男性の方が厳しい基準となっているのは日本だけだ。
米国の指針では、男性102センチ超、女性88センチ超を腹囲の基準としている。 
約160の国と地域の医師らで作る国際糖尿病連合の基準では、欧州で男性94センチ以上、女性80センチ以上、中国・南アジアは男性90センチ以上、女性80センチ以上だ。日本人についても今年、男性90センチ以上、女性80センチ以上との基準を打ち出した。
同連合副会長で中部労災病院(名古屋市)の堀田饒(にぎし)院長は「男性の方が女性より厳しいのはおかしい。
腹囲が85センチぐらいの男性は平均的で最も多く、健康な人でも基準に引っかかる恐れが強い」と指摘する。
診断基準をまとめた住友病院(大阪市)の松沢佑次院長は「腹囲の基準を超えたら病気、基準以下なら健康ということではない。
女性の基準値が緩いのは皮下脂肪が多いため。
女性の方が心筋梗塞などは少なく、現時点では大きな問題はない」としながらも、異論があることを考慮し、「今後、診断基準の見直しの必要性を検討する」と話している。
(2007年10月14日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071014-OYT8T00078.htm

腹囲の数値先走り メタボ基準に十勝の医師も疑問の声
男性85センチ女性90センチ これでいいの? 一部学会に見直しの動き
来年度から国が、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策を柱にした特定健診をスタートさせる。
これに合わせ専門家などからは男性85センチ、女性90センチ以上とするメタボ基準に異論が相次ぎ、十勝の医師らからも疑問の声が上がっている。
現場の医師は「腹囲基準だけが強調されるとメタボ自体が誤解される」などと指摘。
関連学会では基準を見直す動きもあり、論議はなお続きそうだ。

帯広厚生病院の吉川隆志副院長は16日の「とかち健康セミナー」で、「メタボ基準を見直さなければという機運がある」とし、メタボの基準となる腹囲測定値に疑問を投げかけた。

吉川副院長は同病院が昨年度行った健診受診者約1万3000人のデータを基に、基準以下の腹囲でも高脂血症、高血圧、高血糖のリスクを持つケースがあると指摘する。
その上で、「腹囲は絶対的なものではない。基準以下でもメタボとして対応しなければならない人もいる。
基準値ばかりをみるとメタボの趣旨が誤解される可能性がある」と強調している。

また、医療法人啓和会の前田修一理事長は「国が示す基準には根拠がある。身長の高い人が(健康でも)基準に該当することもあり、ただ、個人の意見としては身長180センチ以上の人の腹囲基準値は緩和されるべきだ」と話す。

帯広保健所の渡部正行所長も「腹囲が前面に出て数値だけが先走りするのは疑問」とする。現在の基準では中・高年男性のほぼ半数がメタボに該当する推計だが、「果たしてそれが妥当なのか。医療界からも異論が出ており、今後見直される可能性もある」とみる。

一部関連学会では基準値を見直す動きもあり、厚労省は「策定した8学会が見直せば、必要に応じて検討する」(生活習慣病対策室)としている。
メタボ基準 日本肥満学会など8団体が2005年に策定したものを厚労省が導入し、来年度からの特定健診の必須項目に盛り込む。腹囲基準を中心に、血中脂質、血圧、血糖の各基準値の該当数により、保健指導の支援内容が異なる。
十勝毎日新聞 - 2007年10月16日
http://www.tokachi.co.jp/WEBNEWS/071017.html

女性の腹囲は80センチを基準に メタボ診断、東北大発表 '07/10/19

東北大大学院薬学研究科の今井潤教授らのグループは18日、メタボリック症候群の診断基準になっているウエストサイズ(腹囲)について「男性87センチ、女性80センチが適切な基準値」と発表した。
厚生労働省は腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、さらに高脂血、高血圧、高血糖の2つ以上に当てはまるかどうかを基準としている。
女性の腹囲を男性よりも大きく設定していることには、異論も出ていた。研究グループは「女性の腹囲は引き下げが必要ではないか」と指摘。
25日から沖縄県で開かれる日本高血圧学会で発表する予定。
研究グループは、2000—06年にかけて、岩手県花巻市大迫町の男女約四百人(平均63歳)に健康診断を実施。血圧などの健診データを分析し、メタボリック症候群に該当する人を見つける上での最適な腹囲の値を導き出した。
 現行の診断基準は、日本高血圧学会などが作成、05年に発表した。
その後、国際糖尿病連盟が「男性90センチ、女性80センチ」を発表するなど諸説出ている。
中国新聞 - 2007年10月18日
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200710190102.html

メタボ腹基準、緩めません…男性85センチ  肥満学会が見解 
男性に厳しく女性に甘いメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の腹囲による国内診断基準が、世界標準と大きく異なる点について、基準策定の中心となった日本肥満学会は19日、「基準を変える必要はない」との見解を公表した。
内臓の周りに脂肪がたまるメタボリックシンドロームの診断基準は、腹囲が「男性85センチ以上、女性90センチ以上」の条件を満たした上で、血圧、血糖値、血中脂質の値のうち2項目が基準を上回ること。来年度から40歳以上を対象に始まる特定健診では、メタボリックシンドロームやその予備軍と診断された人は、生活習慣病予防のための特定保健指導を受けることになる。
しかし、米国の肥満基準は腹囲が「男性102センチ超、女性88センチ超」で、世界的には男性の方が緩いのが普通。特定健診の導入を半年後に控え、基準の妥当性を疑問視する声が出ていた。
これに対し同学会の松沢佑次理事長は、「内臓脂肪の量から腹囲基準を決めたのは日本だけ。単なる肥満基準とは違う」と診断基準の妥当性を訴えた。
(2007年10月20日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071020-OYT8T00067.htm

メタボ基準検証へ 厚労省研究班、2万4千人の腹囲分析
2007年11月08日23時01分
 生活習慣病を引き起こす原因ともされるメタボリック症候群の診断基準を見直すため、全国2万4000人を対象とした大規模調査を厚生労働省の研究班(主任研究者=門脇孝・東京大教授)が始める。「男性に厳しく、女性に甘い」といわれるウエストの数値を中心に、将来の心筋梗塞(こうそく)や脳卒中のリスクを予測するのに最もふさわしい基準値をつくるのが狙いだ。
現在のウエストの基準は、日本肥満学会が中心となってつくった。男性85センチ、女性90センチ以上。健康障害にかかわる内臓脂肪の面積に対応する値として設定された。だが、心筋梗塞や脳卒中の発症との関係を直接調べているわけではないため、医学的な信頼性を疑う専門家も少なくなかった。
 また、国際糖尿病連合が今年、「リスクのある人をより正しく見分けられる」として、日本人について「男性90センチ、女性80センチ」とする独自基準を決めた。日本の基準とは男女が逆転しているが、国内の研究チームからもこれが最適とする報告が出ている。ただ、調査人数は2500人程度にとどまる。
茨城、大阪、福岡など全国7地域では、一般市民を対象にウエストを測り、その後の健康状態を長く追跡して心筋梗塞などとの関係を直接調べている。厚労省の研究班は、これらの研究をまとめて、ウエストの基準をどの値に設定すれば、心筋梗塞や脳卒中につながりやすい人を最も効率的に見分けられるか、といった点を検討する。
 基準値を探る調査としては最大規模の研究になる。今のウエスト値は2度にわたって検討されたが、いずれも調べた人数は1000人ほどだった。班のメンバーには肥満、血圧、血糖、脂質の専門家らが参加。2年後をめどに、新しい基準値をまとめる。
健康保険法改正で、来年度から40〜74歳の全国民を対象に導入されることになった特定健診は当面、現行の基準でスタートする。ただ、ウエスト基準に合致しない人を見落としたりしないよう、肥満度をみる別の基準も設けている。門脇教授は「医学的根拠の高い基準値をつくるため、一定の質を保っている研究だけを集めた。日本人の予防医学に役立てられるようにしたい」と話した。
 日本肥満学会の松澤佑次・理事長らは10月の記者会見で「当面はウエスト値を変える予定はない」と表明。ただ、信頼性の高いデータが明らかになれば、見直しは否定しないと述べている。
 《メタボリック症候群の診断基準》 腹部の内臓脂肪の面積100平方センチに相当するウエストの長さが男性85センチ、女性90センチとされる。これに加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうち二つ以上当てはまる場合。
 ウエストの基準は、米国は男性102センチ、女性88センチ、欧州では男性94センチ、女性80センチで、いずれも身長と体重をもとに計算した体格指数(BMI)に対応する値として決めている。
朝日新聞 - 2007年11月8日
http://www.asahi.com/life/update/1108/TKY200711080242.html


<コメント>
腹囲をめぐって百家争鳴。
真剣な論争ですが、よくわからない第三者からみれば滑稽にうつるかも知れません。
たかが腹囲、されど・・・。
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ビュッフェ  チェロ弾き 
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(持っているのはバイオリンなのに・・・)

他にこんなブログがあります。
井蛙内科開業医/診療録 
 http://wellfrog.exblog.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく 
http://blog.m3.com/reed/
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by esnoopy | 2007-11-16 00:05 | その他

L-FABPの臨床的意義

L-FABPがCKDの予後判定に有用であることを最近知りました。
このサイトを他の私のブログにリンクしようとしましたが、うまくいきませんでした。

CKD合併高血圧患者とL-FABP
http://blog.m3.com/reed/20071110

数少ないL-FABPの論文です。
L-FABPのアウトラインが把握できると思います。
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葛西四雄 雪の館 油彩画20号
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s75439804

最近の話題
尿中肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)の臨床的意義
聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科
上 條 敦 子・木 村 健二郎
田辺製薬創薬研究所 菅 谷 健
栄研化学生物化学研究所 樋 川 明 久
Lab.Clin.Pract.,21(1):12-15(2003)

www.jaclap.org/LabCP/LabCP21_01/04kamijyo.pdf
(ダイレクトリンクできないためアドレスのC&Pでお願いします。)
http://cache.yahoofs.jp/search/cache?ei=UTF-8&fr=slv1-snvaio&p=L-FABP&u=www.jaclap.org/LabCP/LabCP21_01/04kamijyo.pdf&w=l-fabp&d=LgvyUfL9Pun9&icp=1&.intl=jp
(ダイレクトリンクできないためアドレスのC&Pでお願いします。)


はじめに
慢性糸球体疾患の進行には,臨床的に高血圧や高脂血症,病理学的に
糸球体病変や間質尿細管障害と関係がある。
最近,慢性糸球体疾患の予後が,糸球体病変そのものよりは間質尿細管
障害の程度と強く相関する事が明らかになり,注目されている。
この糸球体障害に伴う間質尿細管障害の原因として,尿蛋白,尿蛋白
とともに糸球体から漏出した補体,トランスフェリン,酸化 LDLや腎硬化症
に伴う peritubular capillary(PTC)の障害などの関与が指摘されている。
特に尿蛋白は,従来,糸球体障害の存在を示すマーカーとして考えられて
いたが,尿蛋白自体が尿細管から MCP-1や RANTES等の炎症性サイト
カインの放出に関与し,間質尿細管障害の進行の mediator となる事が
明らかになってから,さまざまな施設で研究が進められている。
しかし,尿蛋白が間質尿細管障害の発症,進行に関与する詳細な機序は
あきらかではない。
血清のアルブミンには遊離脂肪酸が結合しており,慢性糸球体疾患で
尿蛋白が増加すると,近位尿細管には,アルブミンだけでなく脂肪酸も過剰
に負荷される。
過剰に負荷された脂肪酸は容易に過酸化を受けるため,このような状況では,
間質へマクロファージ遊走因子が放出される事が報告されており,そのため
間質尿細管障害が発症し腎疾患が進行すると考えられる。
実際,私たちは,蛋白負荷モデルを作成し,尿蛋白が間質尿細管障害を進行
させる機序の一つとして尿蛋白に結合した脂肪酸が重要である事を in vivo
の系で明らかにした。
そこで,ヒトの近位尿細管に発現し,細胞内の脂肪酸代謝に関与する肝臓型
脂肪酸結合蛋白(liver type fatty acid binding protein, L-FABP)に
注目した。
しかし,慢性腎疾患とL-FABPについて検討した報告はない。
ここでは,L-FABP についての最近の知見と L-FABP の尿中排泄の臨床的
意義について私たちの成績を紹介する。

2.脂肪酸代謝に関与する L-FABP
L-FABP はヒト近位尿細管に発現する分子量約14kd の低分子可溶性蛋白
で細胞質に存在し,腎臓以外に肝臓や小腸でも発現している。
肝臓において L-FABP は細胞内の脂肪酸と結合し,脂肪酸のβ酸化が行われ
るミトコンドリアやペルオキシソームへこれらの脂肪酸を輸送し,また脂肪酸
代謝に関与する遺伝子の転写調節に関与することで,細胞内の脂肪酸代謝に
関与することがわかっている。
近位尿細管に発現しているL-FABPにも同様な機能があると推測される。

3.L-FABP 染色体遺伝子導入(Tg)マウスを使用した検討
私たちは,野生型げっ歯類の近位尿細管には,L-FABP が発現していない
ため,L-FABP 染色体遺伝子導入(Tg)マウスを樹立した。
この Tg マウスには,ヒトの L-FABP 遺伝子の転写調節領域も含めて導入
しているため,マウスのヒト L-FABP 遺伝子の発現は,ヒトの同様の発現調節
を受けている徒考えられる.。
この Tg マウスを使用した腎症モデルの検討では,腎疾患では,腎臓におけ
る L-FABP遺伝子の発現が亢進し,尿中への L-FABP の排泄量が増加した。
この結果は,ヒトの病態においても,腎臓での L-FABP 発現は亢進し,
尿中への L-FABP の排泄が増加する可能性を示している。

4.慢性糸球体疾患における 尿中 L-FABP の臨床的意義の検討
a.L-FABP 測定法
L-FABP に対する特異的なモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ ELISA
法が開発され尿中L-FABP の安定した測定が可能となった。
b.臨床的意義
外来の慢性糸球体疾患患者を対象に尿中 L-FABP と臨床パラメーターとの
関係をステップワイズによる重回帰分析により検討した。
尿中 L-FABP と 相 関 が 高 い 因 子 と し て , 尿 蛋 白 (F =22.7),
尿α1-Mg(F=13.9),血清 Cre(F=11.4)が選ばれた。
さらに腎生検における間質尿細管障害の程度と尿中 L-FABP の関係を検討
した結果,間質尿細管障害を認めた群では,認めない群に比べて有意に
尿中 L-FABP が高値であった。
これらの結果より,尿蛋白は近位尿細管へのストレスになり,L-FABP の
尿中への排泄を促すことが示唆された。
患者を尿中 L-FABP の高値群(n=8)と低値群(n=6)にわけ血清クレアチ
ニンの経過を 1 年間みたところ,L-FABP の高値群では腎疾患が進行する
患者が有意に多いことが明らかになった。
また,腎疾患の進行度を血清 Cre の逆数(1/Cre)の時間経過における傾き
として定義し,腎疾患進行速度と関係のある臨床パラメーターをステップワイズ
法による重回帰分析で検討すると尿中 L-FABP(F=17.1)のみが有意な
パラメーターであることが明らかとなった。
これらの結果より,尿中 L-FABP は,従来の尿中α1-ミクログロブリンや尿中
NAG といった近位尿細管の構造的な障害により上昇する指標とは異なり,
近位尿細管に負荷されたストレスの程度を反映し腎疾患進行を予測すること
のできる重要な臨床指標であることが示された。
慢性腎疾患の進行は,尿蛋白や血圧と強く相関があることが,広く知られている。
しかし,私たちの検討では,その相関は低値であった。
腎疾患の進行には,尿蛋白や血圧以外にも薬剤や虚血といったさまざまな
ストレスが関与している。
尿中L-FABP は,そのようなストレスを反映している可能性が示唆される。
私たちは,近位尿細管に発現している L-FABPは,近位尿細管に尿蛋白などの
ストレスが負荷されると発現が増強し尿中への放出が増加する事を基礎実験で
明らかにした 。
この結果から,L-FABP は近位尿細管に過剰に負荷された脂肪酸に結合し
これらの脂肪酸をミトコンドリアやペルオキシソームに輸送すると同時に尿中
へ自らを放出することにより細胞内の脂肪酸レベルの恒常性に寄与している
可能性が示唆された。
ただし尿中へ排泄されるL-FABPが脂肪酸と結合しているかどうかはまだ
明らかにされていない。
慢性糸球体疾患で,尿蛋白が多い症例では,近位尿細管にアルブミンだけ
でなく,脂肪酸も過剰に負荷される.このような状況では,マクロファージ遊走
因子が間質に放出され,間質尿細管障害を進行させ,腎疾患が進行する。
L-FABPは,細胞内の脂肪酸と結合し,ミトコンドリアやペルオキシソームへ
輸送することで,また脂肪酸と結合し自ら尿中へ放出することにより,細胞内
の脂肪酸レベルの恒常性に関与すると考えられる。
私たちが従来の使用しているマーカーは,腎組織の構造上の障害の結果,
尿中への排泄が増加する。
例えば,尿蛋白は糸球体障害により,NAGは尿細管障害により,α1-Mg は
近位尿細管での再吸収低下により,尿中への排泄が増加する。
しかし,L-FABP は,近位尿細管に発現している蛋白で,ストレスにより発現
が増加し,尿中への排泄が増加するという今までのマーカーとはまったく異
なる特徴を持っている。

5.まとめ
尿中 L-FABP は,近位尿細管にかかるストレスの程度を反映し,腎疾患の
進行を予測する優れた臨床マーカーであり,さらに腎疾患のモニタリングと
して有効に利用されうると考えられる。
私たちは,尿中 L-FABP を測定することにより,間質尿細管障害の程度を
知ることができ,さらに近位尿細管にかかるストレスの程度を推測できると
思われる。
現在,私たちは,L-FABP の発現を増強することが,近位尿細管における
脂肪酸の負荷を軽減し,腎疾患の進行を抑制する可能性について検討を
行っている。



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by esnoopy | 2007-11-12 00:05 | その他

解明進む蛋白尿の分子レベル発現機序

きょうは
第50回日本腎臓学会
の特別講演からの紹介です。

CKDの概念の喧伝(?)により、いまや心血管病変の原流には腎疾患があるという考え方までになってきています。
循環器専門医と腎臓病専門医との間には同床異夢の感もありますがそこは別にして、循環器、腎臓病、糖尿病専門医の共通の話題としての蛋白尿をとりあげてみました。

出典は
Medical Tribune 2007.6.28
です。

解明進む蛋白尿の分子レベル発現機序
スリット膜関連機能分子の同定から相互作用の研究へ

蛋白尿は,最も客観的かつ普遍的な腎臓病の指標として広く用いられてきたが、最近,尿細管間質障害を介して腎病変を進展させること、また心血管障害と密接に関連する重要な因子であることが明らかとなった。
このため、蛋白尿の発現機序を解明し、その発現をコントロールすることは,腎病変の進展とそれに伴う心血管障害の抑制につながると考えられ,腎臓病研究の最も重要な課題の1つとされている。
同学会では,蛋白尿発現の分子機構の解明,新しい腎病変モデルなどを通じて,蛋白尿研究の発展に大きく貢献してきた新潟青陵大学の清水不二雄学長(前新潟大学腎研究施設分子病態学分野教授)が特別講演を行い、分子レベルの蛋白尿発現機序における最近の知見を示した。

スリット膜の関与明らかに
蛋白尿はおもに,糸球体毛細血管壁の蛋白質透過性方;進によって発生する。したがって,蛋白尿の発現機を明らかにするには,まず糸球体が正常な透過性を保つ仕組みを把握する必要がある。
この仕組みに関して,蛋白質の粒子が大きいほど通しにくくするサイズバリアと,大きさが同じであれば陰性荷電が強い蛋白質ほど通しにくくするチヤージバリアの両者によって糸球体透過性が制御されていることが解明された。 
チヤージバリアでは,陰性荷電分子が糸球体毛細血管壁の構成成分に含まれるために,陰性荷電蛋白質の透過性が抑制される。
一方,サイズバリアについては、糸球体基底膜と糸球体上皮細胞(足細胞)足突起間スリット膜のどちらがおもに関与しているか、論争が続いている。
清水学長らは,スリット膜構成分子に対する単クローン抗体をラットに静注すると,著しい蛋白尿が現れることなどを明らかにし,スリット膜における分子機構の異常が蛋白尿発現の重要なメカニズムの1つであることを示唆した。
このことは,フィンランド型先天性ネフローゼ症候群の責任遺伝子産物であるネフリンを同定し,そのスリット膜局在を証明しTryggvasonらの研究によっても確認される形となった。

同定相次ぐスリット膜関連機能分子
スリット膜で機能する分子として,ネフリンに続き,CD2AP,ポド
シンなどが同定されたが,清水学長らも最近、ピュロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)腎症で減少している遺伝子の検索から、Synaptic Vesicle Protein 2B(SV2B)を新しい関連分子として同定した。
これらスリット膜関連機能分子は、機能的複合体を形成してシグナル伝達に働くことが推測されており,現在,こうしたスリット膜関連機能分子の相互作用に関する研究が盛んに進められている。同学長は,その成果として,ネフリンとポドシンの解離が蛋白尿をもたらすこと,あるいは既に蛋白尿抑制作用が明らかにされているステロイドやアンジオテンシンⅡ抑制薬の作用機序として機能分子の発現亢進が認められることなど、さらに新しい知見が蓄積されつつあるとした。
蛋白尿の発現機序において、以上のような分子レベルの異常の関与がわかってきたことから,同学長は「従来の免疫抑制薬や抗炎症薬といった,いわば非特異的な治療法とは異なる透過性障害が起きている現場での原因を問わない直接の修復,すなわち分子レベルでの制御による蛋白尿発現阻止の可能性が示される。
分子レベルの異常に対してどのような直接的な治療アプローチが可能なのか,in vitroの系も加味した今後のさらなる研究の進展が求められる」と指摘した(図)。

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腎臓病と高血圧については他のブログでとりあげさせていただきました。

腎機能低下例における降圧治療(1)
http://blog.m3.com/reed/20071105

腎機能低下例における降圧治療(2)
http://blog.m3.com/reed/20071106

腎機能低下例における降圧治療(3)
http://blog.m3.com/reed/20071107
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by esnoopy | 2007-11-08 00:05 | その他

ORGとは

ORGはObesity related glomerulopathyの略です。

日本医事新報 4358  2007.11.3の記事から、この耳慣れないORGの紹介です。

慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科  脇野 修 ・伊藤 裕 両先生

肥満症患者の増加に伴い、メタボリックシンドローム(Metabolic syndrome; Mets)、肥満に伴う腎障害が慢性腎臓病(Chronic kidney disease; CKD)の原因として注目を集めている。
肥満に伴う腎障害には大きく分けて二つあり、一つはMetsに合併している糖尿病・高血圧による腎障害であり、もう一つは肥満に固有の腎障害である。
これは組織学的には糸球体肥大と巣状分節状糸球体硬化症(focal segmental glomerulopathy)を特徴としており、Obesity related glomerulopathy(ORG)といわれている。
このORGの概念は1974年、肥満症と蛋白尿との関連が指摘され、初めて報告された。
その後、2001年にKambhamらが、腎生検6818例中のBMI30超の肥満71例の解析を行った。
その結果、ORGは腎生検施行例の2%の頻度であること、1986年から2000年の15年で、倍に頻度が増加していること、原発性のFSGSと比較してネフローゼの頻度が低く、血清アルブミンのレベルは高く、血清コレステロールのレベルは低く、浮腫の頻度が低いことなどが明らかとなり、ORGという疾患概念が確立した。

現在、ORGは
①病的な肥満症(BMI 40超)
②浮腫を認めない蛋白尿
③正常血清アルブミン値

の三つをtriadとし、高血圧による腎硬化症と糖尿病腎症とを除外したものと定義される。
蛋白尿はネフローゼレベルのものから0.5g以下の軽度のものまである。

予後は、以前は良好とされていたが、先述のKambhamらの報告によれば、8年間の観察期間で14%が血清クレアチニン値の倍加、3.6%で末期腎不全への進行が認められたという。
またPragaらは、15名のORGのうち7名(46%)が腎障害が進行し、3名(20%)は血液透析に移行したと報告している。
したがって、必ずしも予後はよくないと考えられる。

ORGの発症機序は不明な点が多い。
糸球体肥大については一酸化窒素(NO)の代謝障害による輸入細動脈の拡張、レニンーアンジオテンシン(RA)系の活性化による輸出細動脈の収縮が糸球体の過剰濾過を引き起こしていることが指摘されている。
また肥満に伴う高インスリン血症がインスリン様成長因子(IGF)-1や-2といった成長因子の分泌を亢進させ、それが糸球体の肥大を引き起こすという報告もある。
肥満における高レプチン血症がtransforming growth factor-β1、(TGFI-β1)の発現を誘導し、これが糸球体肥大を引き起こすともいわれている。

また、原発性のFSGSの発症に腎臓内の虚血の存在が知られており、肥満に伴うことが多い睡眠時無呼吸症候群(SAS)による慢性的な腎臓の虚血がFSGSの原因とも考えられている。
ただし、原発性のFSGSでは虚血に陥りやすい腎臓の皮質髄質の境界にsclerosisの病変が認められるのに対し、ORGではその傾向はないとされている。

治療はまず減量だが、SAS合併例では血液の酸素化の改善とともに尿蛋白の消失も知られている。
脂質低下療法、RA系の抑制が妥当な治療法と考えられている。
 
このようにORGの存在は注目されており、その発症メカニズムの解明は重要である。
近年では低出生体重児との関連が示唆されている。
すなわち、低出生体重児は生後肥満になる可能性が高い上に、ネフロン総数の少ない腎臓となる可能性の高いことが示唆されている。
ネフロン数の減少に伴う腎病変はFSGSであることを考えると、低出生体重がORGの根本原因ではないかと考えられる。

今後の病因の解明と前向き研究を用いたORGの自然歴の解明、そしてその治療法の開発が重要な課題ではないかと考えられる。


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世界の国を肥満率の高い順に並べるとこうなる
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070518_fat_list/
<コメント>
15歳以上でBMIが30%以上の割合は米国で31%、日本は3%です。
ORGのtriadの一つの病的な肥満症(BMI 40超)となると日本ではほぼ皆無と思われます。

ちょいデブが一番健康にいい?
http://wellfrog.exblog.jp/7257657/

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by esnoopy | 2007-11-07 00:05 | その他

ピック病 (その3)

今日はピック病の3回目、最終回です。

ピック病 (その1)
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-11-01

ピック病 (その2)
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-11-02


出典は
日本医事新報4323  2007.3.3
「ピック病の診断」
群馬県こころの健康センター所長  宮永和夫 先生
群馬大学大学院医学系研究科 
  脳神経精神行動学講師      米村公江 先生            です。


PT(ピック病)とAD(アルツハイマー病)の鑑別
臨床症状については、PTでは初老期発症で男性に多く、対人接触の障害、前頭葉障害(性格変化、行動障害)と言語障害(常同言語、語義失語や非流暢性言語障害)がみられるのに対して、ADでは高齢発症で女性に多く、側頭葉障害(エピソード記憶障害と時間の失見当識)と頭頂葉障害(構成失行、空間的失見当識)がみられる。
また画像所見について、PTではCT/MRI検査で前頭葉に限局した萎縮や側頭葉極など先端部の萎縮が、PET/SPECT検査で前頭葉、側頭葉先端部・下面および基底核の血流低下がみられる。
他方、ADではCT/MRIで海馬と海馬傍回の萎縮、PET/SPECTでは側頭葉内側部(海馬領域)、頭頂葉および後部帯状側の機能低下がみられる。
(表3)
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ピック病の症状チェック
PTは非常に特徴的かつ印象的な患者が多いため、一度経験すると、以降の診断は比較的容易になる。
(表4)
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若年認知症「ピック病」で万引き 厚労省が調査
http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY200702250273.html
 「ピック病」と呼ばれる認知症になった公務員らが、症状の一つである万引きをして社会的地位を失うケースが相次いでいる。脳の前頭葉の萎縮(いしゅく)で感情の抑制を失って事件を起こしてしまうためで、犯行時の記憶がないのが特徴だ。しかし、正確に病気を診断できる医療機関は少なく、厚生労働省の若年認知症の研究班も、初めてピック病の実態調査に乗り出した。専門医は「まじめに仕事をしていた働き盛りの人が万引きをして『なぜ』ということがあれば、ぜひ専門の医療機関を受診してほしい」と話している。
http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY200702250273.html
<コメント>
pickという英語に「盗む」っという意味がるのは皮肉なことです。


脳の前頭葉と側頭葉の血流低下と萎縮で起きる認知症は「前頭側頭型」といわれ、うち8割が「ピック病」とされる。
http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY200702250273.html
<コメント>
「前頭側頭型」イコール「ピック病」というわけでもないわけです。
ややこしいですね。


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by esnoopy | 2007-11-05 00:05 | その他

ピック病 (その2)

昨日に続いてピック病の2回目です。

出典は

日本医事新報4323  2007.3.3
「ピック病の診断」
群馬県こころの健康センター所長  宮永和夫 先生
群馬大学大学院医学系研究科 
  脳神経精神行動学講師      米村公江 先生            です。


(1)FTD全体の臨床的特徴
①発症時から経過全体を通して性格変化と社会的な行動障害が優位であること。
②知覚、空間的能力、行為、記憶という道具的な認知機能は正常か、または比較的よく保たれていること。

(2)FTDの臨床類型
①脱抑制型(disinhibition form)
落ち着きなく、無目的な過活動、冷淡で不関、高度の社会性の喪失、行動異常が目立つ。
原因病巣は前方連合野~辺縁系、前頭葉眼窩面
および内側面である。
位であること。

具体的な症状は以下のようである。
 

A.窃盗、暴力行為や性的逸脱行為などの抑制のきかない行動
a.易怒的、衝動的、短絡的、無分別な行動。
b.意図的・計画的でない蒐集(癖)や万引きなどの行動(自制力低下)。

B.環境依存症候群(environmental dependency syndrome)
模倣行動や利用行動がみられ、言語によって行為の制御ができない。
制止命令に応答しない強迫的
な模倣行動ないし行動抑制障害で
ある。
a.医師や心理士などの試験者のまねをする=手を拳上する、床に座る、机の上に足をのせる、首をかしげる。
b.利用行動=眼前に置かれた道具を強迫的に使用する:櫛があれば髪を梳かす、食品は口に入れる、複数のめがねを手の上に置くと全部をかけようとする。 
c.スイッチをみれば押す、隙間があると物を入れ込む。
d.車のナンバープレートや看板の文字をみると、いちいち読んでしまう。
e.洗濯物が1枚あると、洗濯し、乾燥させた後、再び洗濯機に入れる(再帰的行動)。
もる
f.他患者への質問に答えてしまう。

②無欲型(apathetic form) 
無気力、自発性・意欲の低下、無頓着、融通性なく保続的、早期に失禁あり。
原因病巣は前部帯状回または前頭葉窮りゅう面(背外側面)である。
具体的な症状は以下のようである。
a.自己の衛生や整容・保清ができなくなる。
b.物や出来事に対する興味や関心が低下する。無関心、無頓着、無感動はうつ病と誤診される。
c.平気で会社を早退したり、家庭では家事をまったくしない。
d.社交性がなくなり、引きこもる。
e.無為(abulia)・無動(akinesia)状態になる。
f.指示し続けないと目の前の食事を食べ続けない(運動維持困難)。
g.空腹でも自発的に食べ物を探さない。
h.会話を維持できず、途中で止まってしまう(運動維持困雌)。
i.疼痛に対して反応が低下している、または痛がらない。

③常同型(stereotypic form)
同じ行動や言葉、強迫的で儀式的な傾向がある。原因病巣は下部前頭前野、前部帯状回、線条体
である。
ただし、前頭葉の萎縮は軽く、線条体や側頭葉の萎縮が中心という。
具体的な症状は以下のようである。
a.時刻表的に、規則的で決まった生活をする。
b.同じ食物しか食べない(常同的食行動異常)。
特に甘いものが多い。
c.毎日同じ食事・献立を作る。
d.反復行動をする(反復言語、反復習字)。
e.強迫的な行為があり、制すると苛立ち怒る(ただし、自己内に葛藤はない)。
f.同じ場所や道を散歩ないし徘徊する(周徊ないし常同的周遊)。
g.スイッチの点滅を繰り返す。


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(表をクリックすると拡大されます。)

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(表をクリックすると拡大されます。)

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<コメント>
読んでいて自分にもあてはまる部分があってちょっと考えてしまいました。
皆様はいかがでしょうか。


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by esnoopy | 2007-11-02 00:10 | その他

ピック病 (その1)

日本は高齢化社会に突き進んでいます。
その現象に伴い、当然「認知症」というものは増加していきます。
内科医たるものは、いかなる分野であろうとも「認知症」の患者さんとの係わり合いは避けて通れない問題です。
実際、少なくとも知識として「認知症」の方の、ある程度の振り分けができることが実地内科臨床医としての責務と考えあえて取り上げました。

今回はピック病です。
この病気はいまだに世界的に統一された診断基準はありません。
以下は日本医事新報への掲載内容からの掲載です。


日本医事新報4323  2007.3.3

「ピック病の診断」
群馬県こころの健康センター所長  宮永和夫 先生
群馬大学大学院医学系研究科 
  脳神経精神行動学講師      米村公江 先生

はじめに   前頭側頭葉変性症の概念成立までの経過
ピック病の歴史は、チェコスロバキアのプラハあったドイツ人大学の精神科教授アーノルド・ピック(Pick A)が、1892年に言語障害、記憶障害と意欲低下の臨床症状を呈し、剖検下肉眼的に左側頭葉の限局性脳萎縮を認めた71歳の男性を報告したことに始まる。

なお、ピック病が大脳皮質の限局性萎縮とピック嗜銀球とピック細胞の病理組織学的所見を有することを初めて記載したのは、アルツハイマー病(以下ADと略)で有名なアルツハイマー(Alzheimer A)である(1911年)。
また、ピック病の命名は、1926年に満州医大精神科教授の大成潔とドイツ人神経病理学者スパッツ(Spatz H)によりなされた。
その後、ピック病の概念は、行動障害や人格変化などの症状を示す認知症の臨床診断名とする流れと、病理診断名とする流れ(ピック球を認めるものに限定する米国と、ピック球の存在は必要ないとするドイツや日本の病理学者間の意見の対立もあっ
た)に分かれ、定義自体に混乱を含んだまま、近年に至った。
ピック病(ピック型:以下PTと略)を含む前頭側頭葉変性症という症候群/疾患群の概念は、アルツハイマー型認知症の研究に影響を受け、非アルッハイマー型認知症(NADD)をいかに分類するかという試みの中で成立したものといえる。
その契機は、1987年にスウェーデンのルンド大学のブルン(Brun A)とグスタフソン(Gustafson F)らが提唱した非アルツハイマー型前頭葉変性症(frontal lobe degenenation of non-Alzheimer type:FLD)という名称で、ADの病理所見を有せず、かつPTとは区別された非特異的病理所見を有する群の報告からであった。

翌年1988年には、英国のマンチェスター王立診療所神経学部門のニアリー(Neary D)らのグループが、前頭葉型認知症(dementia of frontal lobe type:DFT)という名称で、病理学的限定を受けない前頭葉症状を呈する臨床症状群を提唱した。

しかし、いずれも疾患概念としては定着せず、類似の臨床と病理所見を示す症例が別の名称で報告されることが続いた。

1994年、ルンド大学とマンチェスター大学の両グループは、1986年と1992年に行った国際カンファレンスをもとに、前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobular degeneration:FTLD)という名称で、臨床診断基準とともに3病理類型{ピック型(PT)、前頭葉変性型、運動ニューロン疾患(MND)型}という神経病理学的診断基準を共同提唱し、前方型(前頭葉と側頭葉の両者)萎縮を中心としたNADDを包括的に分類した。

FTD提唱2年後の1996年に、マンチェスター大グループのスノウデン(Snowden JS)らは、前方型萎縮を中心とするNADDに対し、FTDだけでなく失語を伴う認知症{進行性失語型(PA)と意味記憶障害型(SD)}を加え、前頭側頭葉変性症(FTLD)という、より広い包括概念を提唱し、併せてFTDに関しても病理類型とは別に3臨床類型(脱抑制型、無欲型、常同型)を追加した。

これ以降、臨床症状と画像所見に基づいてFTDを臨床類型で区分することが可能になったが、実際は病理類型が先に提唱されたため、病理所見に基づかずにFTDの病理類型の診断名を使用しているのが現状のようである。
さらに、1996年に開催された国際カンファレンスで臨床診断基準の最終的な合意がなされ、
1998年にニアリーらの国際ワークグループにより詳細が報告されたのが、PTを含む症候群/疾患群に関する現在の最上位概念といえる。  

<コメント>
この疾患が神経内科医ではなく、精神科医によって概念が確立されたことに興味を持ちました。
先生方は、猪瀬型肝性脳症という疾患を聞かれたことがあるでしょうか。
レビー小体型認知症もそうですが、いずれも精神科医の業績です。
(この2つには日本の精神科医が大いに関与しています。)
このピック病も含め、まずはそのことに敬意を称したいと思います。

インスリン発見の話のようなドラマチックな歴史を想像しましたが、そうでもありませんでした。
疾患概念の確立に紆余曲折があったことだけがわかりました。
ピック病を深く理解するためには必須の事項と考え、あえて掲載させていただきましたが、いかがだったでしょうか。

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アイズピリ   グレーの背景の赤と黄の花  リト
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巨大な上腸間膜静脈-下大静脈短絡による猪瀬型肝性脳症の1手術治験例
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001310146/
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