<   2007年 10月 ( 26 )   > この月の画像一覧

アルコールとGERD

きょうはみなさんがよくご存知の内容になってしまいました。
日医雑誌に掲載された内容なのでご覧になられた先生方も多いことと思います。
GERDに対してはPPIテストが有名ですが、GERDを悪化させてしまう薬剤を
想定することも臨床現場では重要と考えて、あえて紹介させていただきました。
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高齢になると食道裂孔ヘルニアとなる例が増加する.
ヘルニアになると胃酸が逆流しやすくなるため、食後あるいは就寝後に胸やけや
口の苦みを感じ、食事の楽しみや安眠が妨げられ、QOLが低下する。
さらに食生活、体格が欧米人に近づくにつれ,かつて低酸が多かった日本人の
胃酸分泌も高酸傾向にシフトしている。

アルコールは食道粘膜に対する直接刺激によって食道炎を引き起こすのみならず、
食道の運動を低下させ、下部食道括約筋(lower esophageal spincter;LES)
圧を低下させるので、常習飲酒家では胃酸が食道内に逆流しやすくなり、GERDを
合併する頻度が高くなる。

以上のような背景から、GERDは高齢者の生活習慣病として、今後大きな比重を
占め、計画的な対策が必要になると考えられる。
GERDの主症状は胸やけであるが、胸痛を訴えて狭心症との鑑別を要する例や,
胃酸の逆流が慢性咳嗽、気管支喘息の原因となることがある。

さらに、狭心症を疑ってCa拮抗薬や亜硝酸薬を投与したり、気管支喘息と診断して
テオフィリンを投与すると、これらの薬剤はLES圧を低下させるので、GERDによる
胸痛・咳嗽症状がかえって悪化することになるので注意を要する。

また、制酸目的で抗コリン薬あるいは不定愁訴の緩和目的でジアゼパムを投与するとLES圧が低下するので、期待に反して胸やけが増悪することもある

GERDに対する薬物治療としてはプロトンポンプ阻害薬
(proton pump inhibitor;PPI)が有効であり,患者のQOLも改善する。
PPI投与はGERDの治療的診断、狭心症や気管支喘息との鑑別診断にも
有効である。

慶大 永田博司先生
日医雑誌 135;2 2006.5


<コメント>
アルコールはLESを弛緩させます。
特にビールやシャンパンは胃の中で炭酸ガスが発生して胃を膨らませるためよくないようです。

他にもブログがあります。
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(一般の方または患者さん向き)
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(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2007-10-31 00:40 | 消化器科

工藤分類

私は消化器が専門ではありません。
したがって恥ずかしながら工藤先生の名も初めて聞きました。
消化器専門、特に大腸専門の先生には知らない人がいない
という有名な先生だそうです。
WHOでの分類にKudo's Classificationという名前を冠した
分類もあるそうです。
最近、たまたま新聞にその工藤先生が紹介されており、
臨床医としての執念に感動を覚えました。
最初、評価されなかった点ではピロリ菌発見物語にも通じる
ものがあります。

まずは大腸がんについての勉強をしてみました。

06/1/17 上毛新聞
http://takisan.fc2web.com/gan5.htmlの記事からです。

増え続ける大腸がん 10年後 がんのトップに?
定期検査で臓器発見を!
大腸がんになる人が増えている。欧米型の病気とされ、国内
の年間罹患者数は1990年に約6万人だったが、99年には
9万人を超えるなど増加が際立っている。2015年には
胃がんを抜いて、ガンのトップになるとの予測もある。
治療には定期的な検査による早期発見が重要だ。
 
遺伝が原因も
大腸がんが増えているのは高脂肪、高カロリーの食事が増えた
からと言うのが定説だ。
脂肪が肝臓で分解されると、胆汁酸などさまざまな酸が出る。
その酸が腸内細菌と絡んで発がんに至ると考えられてきた。

「しかし動物実験からは、それが原因だと言い切れず、環境的
因子は本当のところ、よく分かっていない」と大腸がんの研究
で世界的に知られる昭和大横浜市北部病院消化器センター長、
工藤進英教授は指摘する。

遺伝が原因だとはっきりしている大腸がんもある。
そうした「家族性」の大腸がんは全体の5〜10%を占めると
みられ、確実に遺伝する。
工藤教授によると、大量のポリープができ、何度も手術を繰り
返さねばならない場合もあるという。

「陥凹型」発見
工藤教授は秋田赤十字病院に勤務していた1985年、
早期の大腸がんの中に隆起型のポリープではなく、隆起はなく
進行とともにえくぼのように潜っていく「陥凹型」があることを
見つけた。
陥凹型は1センチ以下の大きさでも、その45%が大腸の粘膜
下層に浸潤しているという極めて悪性度の高いがんだ。

小さいとエックス線撮影やPET(陽電子断層撮影装置)では
分からず、内視鏡でもうっすら赤く見えるだけで。インジゴ
カルミンという色素をかけると、内視鏡でも見えるようになる。

工藤教授は陥凹型を詳しく調べるため、工学機器メーカー
のオリンパスと倍率百倍の拡大内視鏡を共同開発。
粘膜の凹凸や模様から、ガンかどうかや、ガンの進行を正確
に判定する。「ピットパターン分類」を確立した。

現在は倍率が千倍まで上がる高性能の拡大内視鏡を開発中。
実現すれば、ガンになると細胞の核が大きくなる現象を利用
して、より精密な診断が可能になる。

無駄のない治療
小さなポリープは誰でもあり、中にはがんでないものもある。
「しかしポリープは“がんの目”だと思っているから、内視鏡
の検査のときに、すべて取った後で、病理で検査する。
意味のないことを世界中でやったわけです」と工藤教授。

ポリープを一個取るのにかかる医療費は5、6万円。
拡大内視鏡とピットパターン分類の登場によって無駄が
なくなった。

現在、国内の約半数の施設でこの治療が実施されている。
早期発見のため工藤教授は拡大内視鏡による検査を勧める。
検査にかかる時間は慣れた医師なら20分から30分。
工藤教授は5分で済ませる。


「無症状でも50歳以上になったら1年から3年に1回、
定期的に内視鏡検査を受けた方がいい」。
手軽な便潜血検査では進行がんしか見つからないと言う。


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拡大内視鏡によるsm癌の特徴的所見
http://masumitsu.or.jp/research/3.html

大腸内視鏡治療の新しいパラダイム 大腸内視鏡治療
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2001dir/
n2432dir/n2432_05.htm


大腸内視鏡治療
http://www.igaku-shoin.co.jp/prd/review/
0000305.html


大腸腫瘍に対する拡大内視鏡観察─
V 型 pit pattern 診断の問題点
http://ej.islib.jp/ejournal/1403100457.html

大腸腫瘍性病変における腺口構造の診断学的意義の
解明に関する研究
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant
/2005/keikaku/14-11.pdf


V 型 pit pattern 診断の現状と問題点─V 型亜分類に焦点
を当てた多施設アンケート結果から
http://ej.islib.jp/ejournal/1403100460.html


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by esnoopy | 2007-10-30 00:05 | 消化器科

降圧療法中に発症する新規の糖尿病

降圧剤がもし糖尿病を誘発するようなことがあればそれはそれで
大問題です。
サイアザイド系利尿薬では以前から問題になっていましたが、
はたして他の薬剤はどうでしょうか。


日本医事新報4336  2007.6.2 の
「海外情報セレクト」コーナー
                 からの紹介です。


降圧療法中に発症する新規の糖尿病
Elliot WJ,et al:lncident diabetes in cIinical
trials of antihypertensive drugs:a network
meta-analysis. Lancet369:201-207,2007.

 
近年、優れた降圧薬が多数開発されたことから、高血圧治療に際し血圧
を低下させることは比較的容易となった。
そのような進歩に伴い、降圧の質が求められるようになり、臓器保護効果
や代謝面への優れた効果が期待できる降圧療法が望まれている。

本研究では、最近注目されている降圧薬の糖代謝への影響、特に降圧
療法中に生じる新規の糖尿病発症率をメタ解析により検討した。
降庄薬の効果に関する大規模臨床試験成績の中から、対象患者数、
試験方法、治療期間、結果の評価等に関して評価できる論文22を抽出し、
メタ解析した。

対象者数は14万3,153名である。
その際、各降圧薬の効果を直接および間接的に比較するネットワークメタ
解析という新しい手法で解析され、サイアザイド系利尿薬による新規の糖
尿病発症率を1として、他の降圧薬による発症率と比較した。
その結果、糖尿病の発症頻度が最も少ないのがARBで0.57、次いでACE
阻害薬0.67、Ca措抗薬0.75、プラセボ0.77,β遮断薬0.90の順であった。

これは、これまでの日常臨床で予測されていた通りで、レニン・アンジオテン
シン(R-A)系抑制薬が他の薬剤より優れており、糖代謝に対して中立とされ
るCa拮抗薬はプラセボと同等であった。
本研究ではARBがACE阻害薬より優れた結果であったが、両薬剤を比較
した研究はなく、間接的な比較であったことから、今後の検討が必要である。

日本で最近発表されたARBとCa措抗薬の比較試験で、ARBではCa
拮抗薬より有意に糖尿病の発症が少ないことが明らかにされており、R-A
系の抑制は糖尿病の発症を抑えることは確かと思われる。
このような新規の糖尿病の発症抑制が、心血管系イベントの発症抑制に
連携しているのか明らかでなく、長期間の観察結果が待たれる。

慶應義塾大学名誉教授・
      済生会中央病院特別顧問
                  猿田享男

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<コメント1>
ARBがACE阻害薬より優れた結果であったとのことですが、優位差
があったのかどうか。
もしARBが優位ということであれば、ACE阻害薬に対する優位性が咳の
副作用がないということ以外にはなかなかないARBにとっては朗報です。

<コメント2>
ARBのポジションが糖尿病の新規発症を抑制しているのか、新規発症を
誘発するがサイアザイド系利尿薬より少ないだけのことか。
ここのところは是非知りたいところです。
最近発売された降圧剤のプレミネント(ARBと降圧利尿剤の合剤)もしばらく
は慎重に催糖尿病作用がないか注目したいと思います。

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by esnoopy | 2007-10-29 00:49 | 糖尿病

インパクトファクター

自宅で銀行のAさんと話をする機会がありました。
話は格付機関の話になりました。
ムーディーズやスタンダード&プアーズという格付け会社の名前は皆さんご存知のはずです。

行員Aさん「スタンダード&プアーズって標準と貧乏、つまり中流と極貧。考えてみると変な会社名ですよね。」
私「人名じゃないの? よく外国では二人の名前つけるから」
行員Aさん「でもプアーズって名前っていくらなんでもありですか?」
私「そりゃそうだけど。日本人の名前でそんな名前思いあたらないよね。ところで格付機関の格付けはどこでやってんの?」
行員Aさん「?!?!」

格付機関(格付会社)リンク集
carsensor.net/catalog/mitsuoka/
今では大学も格付けされる時代になっています。
中には怪しげな格付けもあります。

民間機関による大学格付け(ランキング)
http://homepage3.nifty.com/katu-kobayashi/doppo/rankingu_1.htm
大学格付け決定版
http://www.geocities.jp/daigakuranking/
米誌の大学「研究力」格付け、東大16位
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060913ur03.htm

格差社会、格差会社、格差大学・・・・。

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片山みやび リトグラフ 月の葉脈
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さてそんな話をしていて、医学雑誌の格差すなわち「格付け」に思い当たりました。
医学研究者にとっては生命線ともいえるインパクトファクターです。

Impact Factorとは1論文あたりの引用回数の平均値を計算したもので、その雑誌の影響力を表しています。インパクトファクターが高いほど、影響力の高い論文を収録していると言えます。雑誌の発行形態や発行の規模の違いに関わりなくその雑誌の影響力や重要度がわかります。2005年のインパクトファクターは次の計算式で算出されています。

1999年のインパクトファクター=(2003年と2004年にある雑誌に掲載された論文が1999年に引用された総被引用回数)/(2003年と2004年にある雑誌に掲載された論文総数)



インパクトファクターの計算式を見てわかるように、インパクトファクターは2年間という短期間のあいだに引用された回数で計算していますので、すばやく影響力を与えるような雑誌の方が値が高くなる傾向があり、長年にわたって少しずつ引用されるような雑誌は相対的に値が低くなります。
また、「インパクトファクターが指標として正しくない」と批判する人が指摘するのは、レビュー論文を多く載せている雑誌の方がインパクトファクターが高くなりやすいということです。たとえば、Annual Review ofシリーズはどの分野でも高いインパクトファクターになっていますし、レビューが多いCell系の雑誌もインパクトファクターが高くなっています。

最近では、教授選考の際にインパクトファクターの合計点でアシキリするようなケースもあるそうで、研究者にとっては好む好まざるとに関わらず、ついて回る指標になってきています。

インパクトファクターとは?
http://www.kenkyuu.net/biotech-01.html
(上の文章はこのサイトから引用させていただきました。)

インパクトファクター
http://www.thomsonscientific.jp/products/jcr/support/faq/
(質疑応答形式で書かれています。)
インパクトファクター
http://ja.wikipedia.org/wiki/インパクトファクター
(インパクトファクターの長所、誤解、批判が書かれています。)
インパクトファクター関連論文
http://www.thomsonscientific.jp/resources/if/
(8つのインパクトファクターに関する論文が紹介されています。これらの論文が掲載された専門誌にもインパクトファクターがつくわけです。)
<コメント>
こんなことを気にする時間があったら研究の時間に回す。
おっしゃる通りですが、教授がインパクトファクター至上主義で決まるとしたら教授を目指す人にとっては看過出来ないのがこのインパクトファクターです。
いろいろ問題も含んでいるだけに悩ましいですね。
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NEJMの広告に出ていたインパクトファクターです。

他にこんなブログもあります。
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
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by esnoopy | 2007-10-27 00:43 | その他

ちょいデブが一番健康にいい?

わが国の健康に関する話題はメタボ一色です。
日本人の体格は向上しています。
男子で185cmと160cmの人とで同じ腹囲85cm以下という基準っておかしくありませんか?
最近、全死亡で調べると若干肥満傾向の方がいいという結果が出てきています
総コレステロールについてもそのようなことがいわれておりあながち「ちょいコレ、ちょいデブ」は間違っていないことになります。
185cmで腹囲80cm。
内臓脂肪のことはさておいて、BMIはいくつぐらいになるのでしょうか。

まずは

冠動脈疾患診療におけるメタボリックシンドロームの意義
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir
/n2746dir/n2746_02.htm

というすばらしい内容の書かれたサイトの一部紹介です。
ご本人の了解をいただかないままアップさせていただきますがリンクという考え方でお許し下さい。
久しぶりに中身の濃いサイトに巡り会いました。

最初の部分 略

一つの症候群としてのメタボリックシンドロームの概念と診断基準はまだ新しいものであるため,その疾患概念や診断基準に疑念を呈する意見も聞こえてくる。
ここでは,私たちが日頃,冠動脈疾患の診療を行っている現場での実感や,自身や他施設による臨床研究の結果から,冠動脈疾患診療においてメタボリックシンドロームをどう扱うべきか,その意義について考えてみたい。
<一次予防コホートにおいて肥満は重要な危険因子>
 メタボリックシンドロームといえば,その診断の基本条件となる内臓脂肪型肥満がまず頭に浮かぶが,古典的な冠危険因子で,永年にわたり幾多の疫学研究でその意義が検討されてきた肥満の危険因子・予後予測因子としての役割はどのように考えられているのか。
肥満の危険因子や予後規定因子としての役割を考える場合,その他の患者背景が重要な意味を持つ。
患者が冠動脈疾患を持たない危険因子保因者,すなわち,一次予防コホートに属するのか,すでに冠動脈疾患を有する二次予防コホートに属するのかで,肥満の危険因子/予後規定因子としての意義が違ってくるようだ。
多くの臨床研究結果からも,肥満が冠動脈疾患の一次予防における有意な危険因子であることは疑いの余地がない。
とりわけ若年者では,肥満は重要な危険因子であり,若年発症冠疾患患者では,年齢,性別が揃った健常者や中高齢冠疾患患者に比べて,有意に肥満者が多いとする報告が多い。
しかし,高齢者における冠危険因子としての肥満の意義に関しては,若年者の場合ほど明確で一貫性のあるデータが示されているわけではない。
<二次予防コホートでは肥満の予後への影響は不明>
二次予防コホートにおける心血管イベント再発や全死亡,心血管死の予後規定因子としての肥満の役割を考えた場合には,その意義にはさらに疑問が生じる。
冠血行再建術を施行された患者や心筋梗塞後の患者を対象に,その中・長期予後規定因子を解析してみると,肥満者(多くの場合,BMI高値が基準)のほうが,生命予後が良好であることが繰り返し報告されている。
実際,私たちが30施設での2000〜02年の3年間の初回冠血行再建例9877例を対象に,平均3.5年追跡し予後規定因子を解析したCREDO-Kyoto研究の結果でも,BMI≧25kg/m2の患者はBMI<25kg/m2の患者よりも予後良好であり,この結果は,悪性腫瘍合併例を除外し一般的な冠危険因子を変量に加えて補正した多変量解析を行っても同様であった。
もちろん,メタボリックシンドロームにおける内臓脂肪型肥満は,BMIを基準とした肥満と同じものではない。
冠動脈疾患の二次予防における予後予測因子としての意義について,メタボリックシンドロームの合併は急性冠症候群患者の不良な予後の予測因子であるとする報告が見られるが,糖尿病合併急性冠症候群患者の生命予後が不良であることが知られているように,そこでは耐糖能障害の存在が大きな意味を持つのかもしれない。
また,肥満の場合と同様に,死亡,心血管死などのハードエンドポイントに関する予後規定因子としてのメタボリックシンドロームの役割が,高齢者など患者群によって変わってくる可能性も否定できない。
したがって,二次予防コホートにおける肥満やメタボリックシンドロームの予後への影響に関して不明な点が残された現状では,メタボリックシンドロームを単なる肥満と明確に区別する必要がある一方で,冠動脈疾患の一次予防と二次予防における危険因子・予後規定因子としてのメタボリックシンドロームの意義も必ずしも同じではない可能性を認識しておくべきあろう。
また,内臓脂肪型肥満に加えてメタボリックシンドロームの診断基準に含まれる高血圧,脂質代謝異常,糖代謝異常は,それら自体が重要な冠危険因子であるため,メタボリックシンドロームを疑う患者では,肥満以外の基準を正しく診断することが重要である。
二次予防コホートでメタボリックシンドロームに治療介入を行う場合に,肥満そのものに対しての介入のイベント抑制効果を証明することは難しく,この点からも他の介入可能な危険因子を生活習慣の改善と薬物治療で厳格に管理することが必要とされる。



<個々の危険因子の積極的管理が今後も重要>
以上,冠危険因子の重積は冠動脈疾患の予防における重大な問題であるが,何か一つの原因を取り除くことにより複数の危険因子を十分に管理することは難しく,心血管イベント予防のためには,個々の危険因子を厳重に管理する姿勢が大切である。メタボリックシンドロームの管理に関しても同様のことが言えるであろう。
このように,将来まったく新しいメタボリックシンドロームの治療薬が登場し,複数のリスクファクターを一つの治療ターゲットで十分に管理できるようにならないかぎり,冠イベント抑制のための薬物治療は個々の危険因子管理に最適と思える薬剤を併用していくことが基本であると私たちは考えている。
その際に,メタボリックシンドロームの概念は,特に一次予防コホートにおいて,個々の危険因子のリスクが一見小さく見える早期から薬物治療も考慮した介入を行う機会を与えてくれるという意味で,非常に有益である。
もちろん,その前に生活習慣の改善が必須であることは言うまでもない。

<コメント>
御用学者でない(?多分)先生の書かれた内容は実に爽やかです。
いつまでも薬業界に染まらないことを祈るばかりです。

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マティス 『青いドレスの女
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そして最新の論文です。

Am J Med. 2007 Oct;120(10):863-70.
Obesity paradox in patients with hypertension and coronary
artery disease.
Uretsky S et al.

PURPOSE:
An obesity paradox, a "paradoxical" decrease in morbidity and mortality with increasing body mass index (BMI), has been shown in patients with heart failure and those undergoing percutaneous coronary intervention.
肥満パラドックス、すなわちBMIが高いほど心不全の死亡率やPCIの施行率が減少することがわかっている。

However, whether this phenomenon exists in patients with hypertension and coronary artery disease is not known.
しかし、この現象が高血圧やCAD患者にもあてはまることなのかは知られていない。

METHODS:
A total of 22,576 hypertensive patients with coronary artery disease (follow-up 61,835 patient years, mean age 66+/-9.8 years) were randomized to a verapamil-SR or atenolol strategy.
CADを有する22,576例の高血圧患者を徐放性ベラパミルとアテノロールにふりわけて服用。
Dose titration and additional drugs (trandolapril and/or hydrochlorothiazide) were added to achieve target blood pressure control according to the Sixth Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure targets.
JNC6の基準を満たす血圧になるまで、2種類の降圧剤の増量やトランドラプリルや降圧利尿剤(ヒドロクロロチアジド)の追加を行った。
Patients were classified into 5 groups according to baseline BMI: less than 20 kg/m2 (thin), 20 to 25 kg/m2 (normal weight), 25 to 30 kg/m2 (overweight), 30 to 35 kg/m2 (class I obesity), and 35 kg/m2 or more (class II-III obesity).
BMIの程度に応じて5つのグループに分類された

The primary outcome was first occurrence of death, nonfatal myocardial infarction, or nonfatal stroke.
一次エンドポイントは死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中であった。

RESULTS:
With patients of normal weight (BMI 20 to<25 kg/m2) as the reference group, the risk of primary outcome was lower in the overweight patients (adjusted hazard ratio [HR] 0.77, 95% confidence interval [CI], 0.70-0.86, P<.001), class I obese patients (adjusted HR 0.68, 95% CI, 0.59-0.78, P<.001), and class II to III obese patients (adjusted HR 0.76, 95% CI, 0.65-0.88, P <.001).
BMIが正常の患者に対して肥満(BMI別)患者では一次エンドポイント(死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の発生率が有意に少なかった。
Class I obese patients had the lowest rate of primary outcome and death despite having smaller blood pressure reduction compared with patients of normal weight at 24 months (-17.5+/-21.9 mm Hg/-9.8+/-12.4 mm Hg vs -20.7+/-23.1 mm Hg /-10.6+/-12.5 mm Hg, P<.001).
BMIクラス Iの軽度の肥満患者は、2年間の観察で、BMI正常患者より血圧の改善率は低かったが死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中は一番少なかった。
CONCLUSION:
In a population with hypertension and coronary artery disease, overweight and obese patients had a decreased risk of primary outcome compared with patients of normal weight, which was driven primarily by a decreased risk of all-cause mortality.
高血圧や冠動脈疾患の肥満患者は体重が正常の場合の患者と比較して全死亡率が低い。
Our results further suggest a protective effect of obesity in patients with known cardiovascular disease in concordance with data in patients with heart failure and those undergoing percutaneous coronary intervention.
われわれの研究結果から従来の心不全やPCIの成績と同様に、肥満がCVDに対して保護的な意味を持つことが示唆された。
世界の国を肥満率の高い順に並べるとこうなる
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070518_fat_list/
メタボリックシンドロームと腹囲論争
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-10-25

<コメント>
なぜちょいデブがいいのか考察はされていませんが、こんな論文を読むとダイエットが出来なくなってしまいます。
ちょっと考えるとBMIの正常値を少し上げればいいだけのような気もしますが、いかがなものでしょうか。
昨夜、COPDの勉強会に出席しました。
ちょっと本題からはずれるかも知れませんが、この領域でも体重維持の重要性が強調されていました。

非常に冗長な内容になってしまいましたが、一連のメタボキャンペーンの一つのアンチテーゼと受け取っていただけると幸いです。

長文を読んでいただいてありがとうございました。
コメントをお待ちしています。
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by esnoopy | 2007-10-26 00:11 | 循環器科

メタボリックシンドロームと腹囲論争

女性の腹囲は80センチを基準に メタボ診断で、東北大発表
東北大大学院薬学研究科の今井潤(いまい・ゆたか)教授らのグループは18日、
メタボリック症候群の診断基準になっているウエストサイズ(腹囲)について「男性87
センチ、女性80センチが適切な基準値」と発表した。
厚生労働省は腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、さらに高脂血、
高血圧、高血糖の2つ以上に当てはまるかどうかを基準としている。
女性の腹囲を男性よりも大きく設定していることには、異論も出ていた。
研究グループは「女性の腹囲は引き下げが必要ではないか」と指摘。
25日から沖縄県で開かれる日本高血圧学会で発表する予定。
研究グループは、2000-06年にかけて、岩手県花巻市大迫町の男女約400人
(平均63歳)に健康診断を実施。
血圧などの健診データを分析し、メタボリック症候群に該当する人を見つける上での
最適な腹囲の値を導き出した。
現行の診断基準は、日本高血圧学会などが作成、05年に発表した。
その後、国際糖尿病連盟が「男性90センチ、女性80センチ」を発表するなど諸説
出ている。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&articleId=58284
記事:共同通信社   2007年10月19日
<コメント>
もともと体格の差を考慮せずに絶対値で論ずることには無理があることは素人にでも
わかることです。
他国と異なり日本だけ、男性に厳しく女性に甘い腹囲の基準も説得力がありません
でした。
「腹囲の基準」は「メタボリックシンドローム」の必要条件だけにとても重要です。
地道な研究から学会に叛旗を翻した発表に敬意を表したいと思います。
以前、日本動脈硬化学会が作成した「コレステロール治療目標値220mg/dl」に対して
J-LITがAHAで240mg/dlと発表し、あわてて治療目標値を変更したことを思い出して
しまいました。

「メタボリックシンドローム」。何だか胡散臭い。

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横山申生 モレ―の村 P10号
http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g60104967


「男85センチは平均的」
おなかに脂肪がたまるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、通称メタボ)の
診断基準を巡り、専門家から異論が相次いでいる。
基準の一つであるウエストサイズ(腹囲)が、女性で90センチ以上なのに対し、
男性は85センチ以上と、諸外国に比べても厳しいなどが理由だ。
この症候群の人を見つける「特定健診・保健指導」が来年度に始まるが、
「これでは健康な人まで『異常』と判定される」との指摘もあり、日本肥満学会などは
今後、診断基準に関する委員会を開き、基準の見直しの必要性を検討するとしている。
 この症候群は、腹囲に加え、血圧、空腹時血糖、血中脂質のうち2項目以上で
異常があった場合に診断される。特定健診・保健指導は、40〜74歳が対象で、
現在の健診の項目に腹囲測定が新たに加わる。
内臓脂肪は、内臓の周りにたまる脂肪のこと。画像診断で、へその位置の胴回りの
内臓脂肪面積が一定以上の場合、糖尿病や心筋梗塞(こうそく)などを引き起こす
恐れが高まるとして、日本肥満学会などが、内臓脂肪面積を基に腹囲の基準を定めた。
だが、国際的にみても、男性の方が厳しい基準となっているのは日本だけだ。
米国の指針では、男性102センチ超、女性88センチ超を腹囲の基準としている。 
約160の国と地域の医師らで作る国際糖尿病連合の基準では、欧州で男性94センチ
以上、女性80センチ以上、中国・南アジアは男性90センチ以上、女性80センチ以上だ。
日本人についても今年、男性90センチ以上、女性80センチ以上との基準を打ち出した。
同連合副会長で中部労災病院(名古屋市)の堀田饒(にぎし)院長は「男性の方が女性
より厳しいのはおかしい。
腹囲が85センチぐらいの男性は平均的で最も多く、健康な人でも基準に引っかかる
恐れが強い」と指摘する。
<コメント>
ごもっとも。

診断基準をまとめた住友病院(大阪市)の松沢佑次院長は「腹囲の基準を超えたら病気、
基準以下なら健康ということではない。女性の基準値が緩いのは皮下脂肪が多いため。
女性の方が心筋梗塞などは少なく、現時点では大きな問題はない」としながらも、
異論があることを考慮し、「今後、診断基準の見直しの必要性を検討する」と話している。
<コメント>
相変わらず頑張ってます。
何のエビデンスもなく数字を具体的にあげれる態度は、科学者としてまことに立派(?)
です。
ウエスト/ヒップ比では内臓肥満を診断できないでしょうか。
論文でこの数値の方が肥満の検出については有用という論文があったのですが。

(2007年10月14日  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071014-OYT8T00078.htm?from=goo

メタボ腹基準、緩めません…男性85センチ  肥満学会が見解
男性に厳しく女性に甘いメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の腹囲による
国内診断基準が、世界標準と大きく異なる点について、基準策定の中心となった
日本肥満学会は19日、「基準を変える必要はない」との見解を公表した。
内臓の周りに脂肪がたまるメタボリックシンドロームの診断基準は、腹囲が「男性
85センチ以上、女性90センチ以上」の条件を満たした上で、血圧、血糖値、血中
脂質の値のうち2項目が基準を上回ること。来年度から40歳以上を対象に始まる
特定健診では、メタボリックシンドロームやその予備軍と診断された人は、生活習慣
病予防のための特定保健指導を受けることになる。
しかし、米国の肥満基準は腹囲が「男性102センチ超、女性88センチ超」で、世界的
には男性の方が緩いのが普通。特定健診の導入を半年後に控え、基準の妥当性を
疑問視する声が出ていた。
これに対し同学会の松沢佑次理事長は、「内臓脂肪の量から腹囲基準を決めたのは
日本だけ。単なる肥満基準とは違う」と診断基準の妥当性を訴えた。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071020-OYT8T00067.htm
<コメント>
なんじゃこりゃ。

メタボリックシンドロームの“つくられ方”:意外とあいまいな診断基準
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz06q3/507698/index.html
ウエスト・ヒップ比
http://www.kms.ac.jp/~hsc/izumi/taikei/west_hip.htm
肥満 BMI (Body Mass Index) ウエスト/ヒップ比
http://plaza.umin.ac.jp/~jnhs/newsletter/GNHS01NL02.pdf
肥満の判定はBMIよりウエスト/ヒップ比で
http://kudamononet.com/LifeStyle/medical/diet/obesity_6.html
他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)

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by esnoopy | 2007-10-25 01:37 | その他

アルツハイマー病 3療法同時並行

運動・娯楽・人づきあい 3療法同時並行
        アルツハイマー病 予防・改善に効果
 
埼玉医科大学の森隆准教授らの国際チームは運動と娯楽、社会的なコミュニケーション
の組み合わせが、アルツハイマー病の予防や改善に大きな効果があることをマウスの
実験で突き止めた。
それぞれの療法を単独で実施するよりも同時並行で実施する方が原因物質が減少し
認知機能の回復が顕著に表れた。
アルツハイマー病には決定的な治療法がなく薬剤も限られる。
ゲームや音楽などを楽しむ娯楽療法で認知機能を刺激したり食事・運動習慣を改善
したりして、症状の進行を遅らせようと試みているのが現状。
研究チームはアルツハイマー病のマウスを4つのグループに分けた。
「一匹で飼う」「複数で飼う」「複数で飼い、運動させる」の3グループに対し、「複数で飼い、
おもちゃを与えて運動もさせる」グループのみ、脳内の原因タンパク質「アミロイドベーター」
が大幅に減少。
認知機能も回復した。
森准教授は「運動娯楽に加え、家族が一緒に食事することや外出を促すことを心がけるべき」と話している。
日経新聞 朝刊 2007.10.22 より

<コメント>
「決定的な治療法がなく薬剤も限られる」・・・新聞記者にかかると一刀両断です。
新聞の見出しを見た時、臨床研究と思いました。
マウスの実験で「娯楽」「人づきあい」と書かれていた時にはちょっとびっくりしました。
マウスでこの2つが分かるのかと。
1匹で飼うと運動量は少なくなります。
複数で飼えば当然運動量が増え、おもちゃも与えればさらに運動量が増える。結局
運動量と予防・改善効果をみているだけということにはならないのでしょうか。
さてマウスに与えたおもちゃとは?
そして社会的なコミュニケーションとは闘争なのか?恋愛なのか??協調なのか???
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<アルツハイマー関連サイトの紹介>
誕生近し!アルツハイマー薬
http://allabout.co.jp/family/care/closeup/CU20041231A/
アルツハイマー病に対して有効で安全性の高いDNAワクチンを開発
http://www.igakuken.or.jp/kenkyu-katudo/press/060620.html
アルツハイマー病ワクチンはパッチ剤形式が安全
http://health.yahoo.co.jp/news/detail?idx0=w14070202
アルツハイマーに朗報
アイルランドの製薬会社、世界初ワクチン開発
http://www.boxweb.co.jp/hospital/news/000712_arutu.html
(2000.7.12の新聞記事からです。)
アルツハイマー病に対するワクチン治療法の進歩
http://tsubasa.gr.jp/118.html
アルツハイマー病のおきるしくみと治療/現在と将来
http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/books/tihou_pdf/24.pdf
<コメント>
アルツハイマーの治療に関してはいろいろ話題があるようです。
7年以上も前からワクチンが開発されているようですが実用化はどうなっている
のでしょうか。
副作用の問題もいろいろあるようですが、何だか出ては消えるインスリンの注射
以外の投与法の話のようです。
今まで何度期待を裏切られたことか。
しばらくは塩酸ドネペジル(アリセプト)も安泰といったところでしょうか。

アルツハイマー病のワクチンについては後日また触れさせていただきます。


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<追記>
週刊朝日11月2日号(p118〜124)に興味深い記事が掲載されていました。
(以下次号ということなので第二弾もあるようです。)
題して「お役人の超高収入アルバイト」
厚労省の医師の原稿料、講演料が生々しく数字入りで公表されています。
これから講演を聴く際の参考(?)にもなります。
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by esnoopy | 2007-10-24 00:42 | その他

軽度認知障害(MCI)

きょうは正常と認知症のボーダーラインの状態について勉強してみました。
おそらく個人差のあることや加齢現象との区別が困難なことが予想されます。
もともとボーッとした人はどうやって診断するんだという声も聞こえて来そうです。


軽度認知機能障害(Mild cognitive impairment,MCI)は,正常と痴呆の間に位置する知的グレイゾーンとしてクローズアップされてきた概念である.
MCI には臨床的にも病因論的にも多様性があり,種々の痴呆症に進行しうる前駆段階を含む状態と考えられる.
これまでにも,Age-associated memory impairment やAge-associated cognitive decline などの概念も提唱され,研究者の間でも,正常と痴呆の間のBorderlineを加齢の延長線上にとらえる(Normality model)か,疾患の始まりとして位置づける(Pathology model)かの立場の違いが存在する.
東北大学老年内科におけるもの忘れ専門外来における経験から,医療機関を受診するMCI 患者の約70% は進行性に認知機能が低下し,脳脊髄液タウ値が高く,アルツハイマー病(AD)の前駆段階と思われ,実際MCI からAD への年間転化率は約15% であった(Progressive MCI,進行型MCI).
一方,他の30% は認知機能障害に進行がみられず,脳脊髄液タウ値が正常範囲内でMRI において脳室周囲白質病変が比較的高度であった(Stable MCI,非進行型MCI).
この脳室周囲白質病変には,Vascular risk factor や年齢が関連していた.

軽度認知機能障害と痴呆症の早期診断
http://www.med.or.jp/jams/symposium/kiroku/125/pdf/125021.pdf
東北大学大学院医学系研究科先端漢方治療医学荒井啓行教授
             より転載させていただきました。


軽度認知障害の診断とその意義
●軽度認知機能障害(mild cognitive impairment;MCI)は、多様な原因から生じる「正常でもない、認知症でもない」状態を指す用語である。
あるいは、物忘れなどの認知機能障害が軽度であるものの、日常生活は自立している状態と言い換えることもできる。
●健忘型MCI(多くはアルツハイマー病に進行する。)
 非健忘型MCI(前頭側頭型認知症やレビー小体を伴う認知 症などに移行する。)
●進行するMCI(アルツハイマー病や前頭側頭型認知症など の神経変性疾患や血管性認知症)
 進行しないMCI(脳室周囲白質病変や微小梗塞のある血管 障害、薬物性)
●臨床的に重要なのは「治療可能なMCI」を早期発見すること。
●ロッテルダム研究
糖尿病であることは(血管性認知症はもちろん)、アルツハイマー病の発症リスクも約2倍上昇することが示され、特にインスリン治療を受けている糖尿病患者では、アルツハイマー病発症のリスクは約4倍上昇していた。
(糖尿病と認知症については、また機会を改めて考えたいと思います。)
●スタチンを服用している高脂血症患者からのアルツハイマー病の発症が有意に低いという報告がある。
●適度な運動、魚の摂取が認知機能の維持に有効という報告がある。

<コメント>
「ロッテルダム研究」を検索すると実にさまざまな成果が出て来ます。
またロッテルダム研究については私の宿題とさせていただきます。


参考
日本医事新報4356 2007.10.20p89
荒井啓行先生

MCI(mild cognitive impairment;軽度認知機能障害)の概念と認知症予防としての生活習慣病対策が持つ可能性
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2006dir/n2664dir/n2664_04.htm
軽度認知機能障害と痴呆症の早期診断
http://www.med.or.jp/jams/symposium/kiroku/125/pdf/125021.pdf
(最初に転用させていただきました。MCIのすべてが学問的に記載されています。)
認知症は予備軍のうちに見つけよう
http://www.healthist.jp/news/175_02/02_01.html
進む画像による早期診断 アルツハイマー型痴呆 脳血流を解析して判定
http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/1005chihou.html
[PDF] 認知症予防・支援について
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/11/dl/tp1101-2h.pdf
若年性アルツハイマー|もの忘れドック-武田病院画像診断センター
http://monowasure.jp/demantia/young.html
“ありふれた薬”に意外なリスク 抗コリン剤を継続使用の高齢者、8割に軽度認知障害
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/421457.html
(「後で入力する」をクリックして下さい。)
東北大学病院 老年科
http://www.hosp.tohoku.ac.jp/sinryou/s07_rounen.ht
ミニメンタルステート検査
mlhttp://ja.wikipedia.org/wiki/ミニメンタルステート検査
認知障害なんでもサイト
http://www2f.biglobe.ne.jp/~boke/boke2.htm

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<関連メディカルニュース>
Donepezil for the Treatment of Agitation in Alzheimer's Disease
ドネペジルはアルツハイマー病患者の興奮を改善せず認知機能改善には有効
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200710/504370.html
(「後で入力する」をクリックして下さい。)

Treatment of Agitation in Alzheimer's Disease
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/357/14/1382
(NEJMに掲載された抄録です。)


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by esnoopy | 2007-10-23 00:13 | その他

血清尿酸値の軽度上昇が脳の白質病変の増加と関連

<要旨>
血清尿酸値が正常範囲内でも高めであると、小さな無症候性脳虚血があったことを示す
白質病変(WMH)の量が多い。

●尿酸には抗酸化作用があるが、高値の場合は脳卒中など心血管疾患のリスクと関連する。
●高齢者では血清尿酸値が正常値であっても高めであると、軽度の認知機能障害のリスク
上昇と関連があるとされている。
●20〜92歳の177人を対象に、血清尿酸値と頭部MRIのT2強調画像で高信号域として描出されるWHM の量との関連を検討した。
●血清尿酸値が正常範囲内で低め〜中程度の群と比べ、正常範囲内高値の群はWHM量
が最も多い四分位に入る傾向が強かった。
●60歳以上で血清尿酸値が正常範囲内高値の群はWHM量が4〜5倍も多かった。
<結論>
高齢者において血清尿酸値の軽度上昇が脳の治療あるいは予防のために、抗高尿酸血症
薬の臨床試験が必要かも知れない。

Schretlen DJ,et al. Neurology 2007;69:1418-1423
(ジョンス・ホプキンス大学のグループ)
Medical Tribune 2007.10.18で紹介

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高めの尿酸値は脳機能の低下につながるミニ脳卒中が増加
http://www.rda.co.jp/topics/topics3094.html
見過ごされやすい 『 ミニ脳卒中 』 に注意!!
-- 新しいリスク予測スコアの提案 --
http://www.rda.co.jp/topics/topics2377.html
ミニ脳卒中 (TIA) の迅速な治療が、脳卒中の 8 割を防ぐ
http://www.rda.co.jp/topics/topics3115.html
(はたしてミニ脳卒中という概念が学問的に確立されて存在するのでしょうか?
ミニ脳卒中 =TIAというのもいささか乱暴のようですが。)
なぜ、痛風から脳梗塞に?
http://www.asahi.co.jp/hospital/shinsatsu/040608.html(たけしの番組でも尿酸と脳梗塞の関係について紹介しています。)
<コメント>
高尿酸血症は、トッピックスの多い循環器領域においてはいわば日陰の身でした。
中性脂肪やアルドステロンが最近脚光を浴びつつありますが、「尿酸よ、お前もか」といった
感じです。

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by esnoopy | 2007-10-22 00:58 | 高尿酸血症

ミノサイクリンが急性脳梗塞患者の予後を改善

Lampl Y,et al. Neuroloogy 2007;69:1404-1410
の論文がMedical Tribune 2007.10.18で紹介されました。

以下紹介させていただきます。

虚血性動物モデルの実験で、ミノサイクリンの神経保護作用が報告されている。
ヒトの急性脳梗塞に対する同薬の効果を検討するために。オープンラベル(評価者は盲検)でミノサイクリン200mgまたはプラセボを5日間経口投与した。
治療開始までの至適時間(セラピューティックウインドー)は、脳梗塞発症後6〜24時間とした。
米国立衛生研究所の脳卒中尺度(NIHSS)、modified Rankin尺度(mRS)、Barthel指数(BI)によりデータを評価し、ベースライント時から90日目までの変化を比較した。
74例にミノサイクリン、77例にプラセボを投与した。
ミノサイクリン群はプラセボ群と比べて90日目のNIHSSとmRSスコアが有意に低く、BIが有意に高値で予後良好であった。
このパターンは追跡期間中の死亡、心筋梗塞発症、脳梗塞の再発、出血性変化は両群間で差はなかった。
<コメント>
ミノサイクリン200mgという量は、
「通常成人は初回服用量をミノサイクリンとして、100〜200mg(力価)とし、以後12時間ごとあるいは24時間ごとにミノサイクリンとして100mg(力価)を経口服用する。」
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se61/se6152005.html
ということで常用量です。
諸外国ではどうなっているのでしょうか。
そして作用機序はどうなっているのでしょうか。
またどのようなことからこのアイデアを思いついたもでしょうか?
(動物実験そのものが不思議です。)
私も脳卒中で倒れたら、意識がなくても何とかミノサイクリンを飲ませて貰うように頼んでおきます。
たとえ脳出血だったとしても害はない訳ですから。
しかし点滴投与の方が効くように思うのですが。


抗生物質が脳卒中の 24 時間後までの新たな治療法に
http://www.rda.co.jp/topics/topics3095.html
[PDF] National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS)
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/neuro/NIHSS.pdf
備後脳卒中ネットワーク[NIHSSトレーニング]
http://www.bingo-stroke.net/tr_nihss.html
NIHSS採点表
http://melt.umin.ac.jp/nihss/nihssj-table.htm

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<医療記事より>
バイアグラ使用で聴力失う恐れ、FDAが警告
2007.10.19
米食品医薬品局(FDA)は18日、男性の勃起(ぼっき)不全治療薬「バイアグラ」の使用で、聴力を失う恐れがあると警告した。FDAは、バイアグラの成分と聴力を失うことについて、はっきりとした関連性はまだ不明だが、1996年からすでに、29件の報告があったとして、警告の発表を決定した。

警告が出されたのはバイアグラのほか、同じく勃起不全治療薬のシアリス、レビトラ。また、バイアグラと同じく、クエン酸シルデナフィルを含む肺高血圧症治療薬「レバティオ」にも、警告が出された。
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200710190029.html
<薬剤情報>
持続性選択H1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤「クラリチン錠10mg」に、7歳以上の小児に対する用法用量の追加がありました。

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