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引越しのお知らせ

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画像メモリの都合で本日をもって以下のサイトに引っ越しました。

井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp

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by esnoopy | 2008-05-21 00:39 | その他

消化器内視鏡の最新情報

消化器内視鏡の進歩はめざましいものがあります。
胃カメラひとつをとりあげても経口式では患者さんが嫌がる時代です。
最近、解像度に関しては経鼻式は経口式に少し劣り、2割の早期がんを見落とすという話を聞きました。
相変わらず経口式でやっている私としてはグッドニュースです。
開業医では経鼻式が普及しつつあるようですが、病院ではどうなんでしょうか。
以下のカプセル式の解像度も気になります。

特別企画
第74回日本消化器内視鏡学会総会ランチョンセミナー
消化器内視鏡の最新情報


座長
杏林大学医学部第三内科教授
高橋 信一 氏
演者
大阪医科大学第二内科教授
樋口 和秀 氏

 
近年,臨床の場にさまざまな機能をもった内視鏡が登場し,食道や小腸など,従来は使用できなかった部位に特化した内視鏡も開発されている。また,コンピュータの画像解析による診断の効率化や操作性の向上もみられ,診断・治療の上で大きく期待されている。ここでは,当研究室で開発中の,日本初の自走式カプセル内視鏡を中心に,消化管内視鏡の最新情報を紹介したい。

小腸内視鏡

最近,患者に嚥下させることにより消化管内を撮影するカプセル内視鏡が登場し,これまで不可能であった小腸粘膜表層の病変を捉えることが可能となった。
一方,オーバーチューブと内視鏡の先にそれぞれバルーンが付いたダブルバルーンおよび,オーバーチューブのみにバルーンが付いたシングルバルーン小腸内視鏡も新たに登場し,小腸粘膜からの出血も,内視鏡下で治療を行うことができるようになった。
また,1人でも操作できるなど,操作性も向上している。
 
大阪市立大学医学部附属病院において,原因不明の消化管出血患者32例を対象に,カプセル内視鏡とダブルバルーンの病変認識率・診断率を比較したところ,病変の検出率はいずれも約70%であったが,陽性所見認識率はカプセル内視鏡が優れていた。
カプセル内視鏡はスクリーニング的要素が,ダブルバルーン内視鏡は治療的要素が強いと考えられる。
診断面では,カプセル内視鏡はびらんや血管異形成などの小病変を検出しやすいのに対し,ダブルバルーン内視鏡では憩室や腫瘍を検出しやすいなど,相補的な部分も多い。
現時点では,小腸出血で緊急治療を要する場合はダブルバルーン,時間的余裕のある場合はまずカプセル内視鏡を行うことが勧められる。
ただしカプセル内視鏡では,特に消化管閉塞・狭窄・瘻孔が疑われる症例では,その停滞・滞留に十分な注意が必要である。
 
カプセル内視鏡は2枚/1秒,計5万枚の撮影が可能で,付属のソフトにより連続する類似画像を1枚の画面に結合することで効率的にチェックできるオートマチックモードや,色調とパターンの変化に基づき,より特徴的な画像を抽出するクイックビュー,赤みを帯びた画像を抽出する赤色領域推定表示などの機能がある。また前処置薬服用により,病変の検出率が向上することも明らかとなった。
今後は,標準的な前処置法の検討が必要と考えられた。


NSAIDs小腸潰瘍 
従来,NSAIDs潰瘍は胃・十二指腸のみが注目されていたが,原因不明の小腸出血の約10%がNSAIDs小腸潰瘍であることが知られてきた。
カプセル内視鏡を用いると,NSAIDsを3か月以上毎日服用している変形性関節炎,関節リウマチまたは非特異的関節炎患者(nonspecific arthritis)では,小腸潰瘍がコントロール群に比べ,約60%も高い確率で認められるとのデータもある。
 
このような小腸潰瘍に対する予防法としては,例えばプロスタグランジン(PG)製剤や防御因子増強剤などが考えられ,胃潰瘍とは異なり,酸分泌抑制薬は無効である。
 
しかし,NSAIDsによる胃への影響を考えると酸分泌抑制剤の使用機会は多く,小腸の炎症を悪化させない,抗炎症作用を有するラニチジン(商品名:ザンタックR)のようなH2ブロッカーも選択肢の1-つとなると考えられる。


H2ブロッカーと潰瘍治療の質
胃潰瘍において,治癒の状態を平坦型と非平坦型とに分けて再発率を見ると,平坦型は再発しにくく,また潰瘍瘢痕局所の炎症が抑制されていることが明らかにされている。
平坦型の治癒を促すためには,PG産生作用や抗炎症作用のある薬剤が適していると考えられる。
 
H2ブロッカーのなかで,ラニチジンは,好中球浸潤抑制,好中球の活性酸素産生能抑制および好中球エラスターゼ放出抑制作用が認められることが,動物実験により証明されている。そこで実際にヒトの潰瘍について多施設で検討したところ(図1)12週目の胃潰瘍の治癒率はほぼ95%以上であったが,ラニチジンでは平坦型瘢痕治癒率が63%であり,潰瘍治癒の質(QOUH)が優れていることが示された。
例えばHelicobacter pylori(H.pylori)除菌後の治療においても,ラニチジンは,抗炎症作用による除菌後の再発抑制効果が期待されること,偽陽性などの問題も少ないため,除菌終了1か月後のH.pylori除菌判定がラニチジン内服中でも可能,PPI(Proton Pump Inhibitor)に比べマイルドで日本人に合った酸分泌抑制作用,さらにPPIよりも安価,というメリットがあると考えられた。


食道用,大腸用のカプセル内視鏡と今後の課題 
食道用のカプセル内視鏡は,仰臥位で飲み込んだ後,徐々に頭を上げていくことで,食道内をゆっくりと写真をとるもので,海外では逆流性食道炎やバレット,食道静脈瘤などのフォローアップに用いられている。
ただし,今後これまでの内視鏡所見との比較検討が必要と考えられる。
 
大腸用のカプセル内視鏡は,前後にレンズが付いているためヒダの後方も撮影でき,憩室や腫瘍,ポリープなどが明瞭に描出できるのが特徴である。
 
すべての部位に共通するカプセル内視鏡の今後の課題としては,自立して動くカプセル,病変を認識しリアルタイムで観測できるシステム,体外からの電力供給,消化管内への治療薬・試薬の散布,腸液や腸内ガスの採取,および病変の自動認識システムなどが挙げられよう。


日本初の自走式カプセル内視鏡
われわれは現在,日本初の"自走式カプセル内視鏡"を龍谷大学理工学部・大塚尚武教授のグループと共同開発している。
構造が簡単であること,動力を非接触で供給できること,また遠隔制御が可能であることをコンセプトとし,磁場を利用した駆動制御を採用した(図2)。
磁石に交流磁場を与え磁石を振動させてカプセルの"ヒレ"に伝えることにより,ヒレが振動を推進力に変え自力で移動するもので,交流磁場の波形を変化させることにより速度や進行方向を制御でき(図3),バックや回転も可能である。現在,胃の模型に,ポリープに見立てたビーズを入れてカプセルを実際に動かし,撮像させる実験を行っている。
焦点距離や明るさなどの課題はあるものの,撮像可能な段階まできている。

以上,ここに紹介したのはほんの一部であり,最近注目されているNOTESと呼ばれる胃や子宮からの内視鏡下腹腔内手術をはじめ,内視鏡分野は今後さらなる進歩が期待される。

出典 Medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社



画像メモリの都合で本日をもって

井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp

に引っ越します。

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by esnoopy | 2008-05-21 00:10 | 消化器科

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症については昨年2007年9月28日のこのブログでとりあげました。

レビー小体型認知症(DLB)
http://wellfrog.exblog.jp/7065699

第26回日本認知症学会でのレビー小体型認知症の記事がたまたま目にとまりました。
きょうは認知症で勉強しました。


レヴィ小体型認知症
精神症状としては幻覚が最も多い

レヴィ小体型認知症(DLB)はアルツハイマー病に次いで多い神経変性認知症である。
滋賀県立成人病センター老年神経内科の長濱康弘氏らはDLB患者の精神症状を因子分析を用いて客観的に分類し,症状としては幻覚が78%と最も高頻度に見られたことを,第26回日本認知症学会で報告した。


妄想は女性性と正の相関
対象は,同科もの忘れ外来を受診した患者のうち,DLB国際合意基準に従って診断されたDLB患者100例(probable:臨床的確診96例,possible:臨床的疑診4例)である。
男性31例,女性69例と女性が多く,平均年齢は77.2歳。
それぞれの精神症状の有無を明らかにするため,患者とその主介護者に,精神症状(幻覚,妄想,誤認)と気分障害(気分変調)に関して構成された質問表を用いた半構造化面接を行った。
 
解析の結果,4因子解が得られた。
因子1~4の固有値はそれぞれ2.58,1.77,1.59,1.40であり,因子間の相関は非常に低かった。
因子1は,人物や場所の誤認,カプグラ症候群(既知の人が"そっくりの人物"に置き換わったと確信する錯覚),"幻の同居人",人物や場所の重複記憶錯誤が含まれる。
因子2は,人物の重複記憶錯誤,死亡した身内が生存していると信じている,来訪していない身内が家のなかにいると信じているというもの。
因子3は,動物や虫の幻視,物体の幻視,要素幻視。
因子4は,人物の幻視や実体意識性(実際はいないのに背後に人がいる気配を感じる)である。
なお,物盗られ妄想や迫害妄想は上記因子とは独立したものだった。
 
DLBの精神症状は表のように分類された。78%が幻覚カテゴリーの症状を,56%が誤認カテゴリーの症状を,25%が妄想症状を有していた。
幻覚や誤認は,性,教育レベル,気分変調,認知機能障害の重症度と関連しなかったが,幻覚のある患者はない患者よりも有意に年齢が高かった(78.2±6.4歳 vs. 73.5±5.3歳,P=0.0019)。
妄想の存在と女性性とには正の相関が見られた(妄想患者25例中22例と妄想のない患者75例中47例が女性,χ2=4.50,P=0.034)。また,この女性優位は特に物盗られ妄想において顕著であった(14例中13例)。
年齢や教育レベル,気分変調,認知機能障害の重症度に関しては,妄想の有無に有意差は認められなかった。
 
以上から,長濱氏は「DLBの基礎にある病態生理および精神病理を理解するうえで,幻覚,誤認,妄想は分けて考える必要がある」 と結論付けた。
なお,同研究の論文はAm J Geriatr Psychiatryの11月号(2007; 15: 961-967)に掲載されている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4050181&year=2007
出典 Medical Tribune 2007.12.13
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
AD治療薬ドネペジル 中止率は予想より高く,重症例ほど高頻度
アルツハイマー病(AD)の治療にはコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルが用いられているが,名古屋大学大学院老年科学の梅垣宏行氏らは,同薬の中止率は予想より高く,重症例ほど高頻度であることを明らかにした。

重症例では無効がおもな理由
対象は,2003年7月~05年6月に同科外来を訪れ,精神疾患の分類と診断の手引き第 4 版(DSM-IV)基準に従ってADと診断された患者である。
薬物治療はドネペジル3mg/日で開始し,1~2週間服用して耐容性が認められたら,5mg/日まで増量するというもの。
認知症の重症度は臨床認知症評価尺度(CDR)により評価した。
 
ドネペジルを処方されたのは264例(平均年齢79.6±6.5歳,男性87例,女性177例)で,内訳はCDR0.5が9例,同 1 が165例,同2が58例,同3が32例。ちなみにCDRは数値が大きくなるほど重症度が増す。
 
観察期間中に同薬を中止したのは140例(53.1%)で,継続群と中止群の平均年齢に差はなかった(それぞれ79.5±6.7歳,79.8±6.4歳)。
 
Kaplan-Meier解析の結果,認知機能障害がより重症な患者ほど,より早期に中止し,中止率も高いことがわかった。

中止理由は,治療している医師の交替が71例,薬剤の無効が16例,消化器系の副作用が11例などであった。
年齢で補正してロジスティック回帰分析を行ったところ,中止に関連する変数として,年齢,性,CDR,独居が抽出されたが,そのうち中止に有意な影響を及ぼしているのはCDRだけであった(オッズ比1.654,95%信頼区間1.122~2.439,P=0.011)。
 
CDR 1~2の患者では医師の交替が中止理由として圧倒的に多かったが,CDR 3の重症患者では医師の交替と薬剤の無効がほぼ同数でおもな中止理由となっていた。
 
梅垣氏は「大学病院のもの忘れ外来においてドネペジルはわれわれが予想したよりも高い頻度で中止されており,とりわけ認知症が進展した患者で高かった。薬物治療をとぎれなく行っていくという観点からは,認知症が進展した患者への効果的な薬剤が切望される」と締めくくった。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4050181&year=2007
出典 Medical Tribune 2007.12.13
版権 メディカル・トリビューン社



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by esnoopy | 2008-05-20 00:44 | 認知症

各国の肝癌の診断と治療 その2(2/2)

スクリーニング間隔をめぐる問題

神代 
スクリーニングの間隔についてはいかがですか。
工藤先生が紹介されたように日本では,超高リスク群は3~4か月毎に経過観察するとしていますが。

Bruix 
間隔はリスクのレベルではなく,腫瘍の成長速度に基づくべきだと考えています。
なかには腫瘍の発症リスクが非常に高い患者もいますが,一般に腫瘍はそれほど早くは成長しません。
欧米のガイドラインでは6か月毎としていますが,これは6か月毎の超音波検査で経過観察を実施した研究を踏まえています。
中国で実施された研究であり,唯一の研究です。
肝硬変患者は6か月毎に1.5%を超える頻度で肝細胞癌を発症することが示されました。
正常肝や慢性肝炎の人ではこれよりも低い頻度で発症します。
現在,フランスでも6か月毎と3か月毎の経過観察を比較する無作為化比較試験が進められています。

工藤 
しかし,C型肝硬変からの肝発癌の頻度は日本と欧米では違います。日本では毎年7~8%と高率です。

Bruix 
確かに高いと思いますが,それはコホートのリスクに依存します。

工藤 
高リスク群では間隔を短くすべきだと思います。

Bruix 
現在,欧州の肝細胞癌のほとんどはアルコール性肝炎によるもので,多少の差はあるものの男性が多く,50歳より高齢です。
他の新たなパラメータを見出すことは困難ですし,検査間隔の短縮はさほど重大な事項とは考えていません。

Han 
腫瘍の倍化時間に基づいて経過観察の間隔を決定するというBruix先生の考えに同意しますが,診断の感度や特異度を上げるという意味で日本の先生方の意見にも同意します。
やはり超音波検査だけでは一部の腫瘍を見逃すことがあります。
特に大結節性肝細胞癌に類似した多結節性患者を見るのは困難ですので,こうした症例では診断ミスを避けるため頻回のスクリーニングが推奨されます。

Bruix 確かにそうです。

Han 
私たちは肝細胞癌の進行を予測するためのソフトを作成しています。
高リスク群,中リスク群,低リスク群の3群に分けていますが,おそらく高リスク群は日本での超高リスク群に含まれます。
ただ,いくつかの問題点があります。
例えば,代償性肝硬変の一部はキャリアーまたは単なる肝炎として過小評価されており,日常臨床で医師が患者に代償性肝硬変かどうか尋ねることはなく,データ集積が難しいのです。
 
最近,FibroScanRを用いて患者が高スコアか低スコアかをスクリーニングしています。
しかし,B型肝硬変はC型肝硬変と違い,評価がやや難しいのが難点です。
欧州の各国では低リスク群をスクリーニングから除外していますが,肝炎はゆっくり進行します。
それらの一部は肝硬変患者のリスク群に移行しますので早期からの注意深い観察が必要です。
現在私たちは高リスク群で3か月間隔と6か月間隔,低リスク群で1年間隔と6か月間隔の経過観察による予後の差を比較する無作為化比較試験を計画しています。

神代 病理の立場からは,B型肝硬変患者により注意を払うようにといつもアドバイスしています。
B型肝硬変とC型肝硬変では再性結節の大きさが有意に異なります。
ご存じのようにB型肝硬変は大結節性ですが,C型肝硬変は2~3mmの小結節性です。
そのため,C型肝硬変では,より小さな肝癌が診断され,B型肝硬変では進行した段階で診断される傾向があり,外科切除例で見るとC型肝硬変では腫瘍径がB型肝硬変に比べ有意に小さい結果が出ています。
こうした傾向は韓国でも見られますか。

Han 
はい。
B型肝硬変を6か月毎に経過観察していて,肝臓に腫瘍を見つけたとき,すでに肺に転移していた患者を最近経験しました。
B型肝炎ウイルスが関係する腫瘍は予測しにくいことがありますので特に注意すべきです。

Bruix 
米国のガイドラインでも,最低限注意すべきこととして,B型肝炎ウイルスと家族歴を挙げています。


肝細胞癌の治療
欧州では外科切除,韓国,日本ではアブレーション治療が第一選択

神代 
次に肝細胞癌の治療に話題を移します。
2cm未満の小さい腫瘍に対してどのような治療を選択されますか。

Han 
韓国では,一般にまず外科切除が勧められていますが,私たちはアブレーション治療のような内科的治療を勧めています。
治療の適応は患者の年齢や肝機能に応じて決めますが,アブレーション治療で十分な有効性が認められない場合には外科切除を勧めます。

神代 
アブレーション治療として何を選択されますか。

Han 
ほとんどは経皮的ラジオ波熱凝固療法(RFA)です。

Bruix 
欧州では,ほとんどの施設の第一選択は外科切除です。
最近は2cm未満の腫瘍も切除できるようになっています。
外科切除では,腫瘍の血管浸潤をチェックできます。
これは再発や播種のリスクを予測する最もよい方法です。
再発が予測される患者には肝移植を勧めます。
再発リスク予測因子が認められない患者は通常のスクリーニングで経過観察し,必要に応じてアブレーション治療で対応します。
 
ただ,最近,腫瘍が2cm以上で,移植の候補にならない患者には,最初にアブレーション治療を行うことが増えつつあります。
私たちは90%以上の患者で腫瘍の完全壊死を達成しています。
アブレーションでは血管浸潤に関する情報が得られませんが,その生命予後は外科切除とほぼ同等です。
イタリアではこうしたアプローチが多く行われており,全国規模の研究も進められています。
アブレーション治療としてはRFAがよく用いられます。
RFAが十分でない場合にはエタノール注入が行われることが多いようです。

工藤 
日本のガイドラインでは,肝機能のステージ,数,大きさを考慮した治療が推奨されています。
肝障害度(Child)A?Bの患者に対しては,単発であれば,まず外科切除,次にアブレーションを行います。
しかし,結節が2cm未満のchildB患者であれば,まずアブレーションを行います。
ただ,実際には,2cm程度の結節の患者にはほとんどの肝臓専門医がRFAを行っていると思います。
 
RFA後の壊死率はほとんどの文献が80~90%壊死としていますが,日本ではどの施設も壊死面積が100%になるまでRFAを繰り返しています。
CTによる評価で腫瘍周囲のマージンの完全な壊死が認められて初めてRFAを終了します。

Bruix 
CTはいつ行うのですか。

工藤 
翌日です。
2cm程度であれば,通常,1セッションで十分です。

神代 
日本でも,手術よりもアブレーションを希望する患者が増える傾向にありますね。

治療成績比較の問題
外科切除とアブレーションのステージングに違い


神代 
ただ,外科切除とアブレーションの選択をめぐっては議論もありますね。

工藤 
日本肝癌研究会の報告で,門脈浸潤を伴わない2cm径の腫瘍ではエタノール注入よりも手術のほうが生存率がよいことを示しましたが,最近のデータでは同追跡調査報告で,手術よりもRFAのほうが5年生存率がよいという成績も報告しています。

Han 
外科医と非外科医の間にはステージングに乖離があるように思います。
つまり,腫瘍径が同じであっても,病理学的には別のステージに分類されることがあります。
ですから,ステージングを同じにして比較すべきだと思います。

Bruix 
ステージの乖離は病理学の後ろ向き評価ではしばしば起こりますが,RFA後24時間以内にCTを実施してその所見をチェックする必要があります。
私たちはhypervascular spotがRFAによる炎症性変化を反映しやすいことを見出しました。
治療による炎症性変化を反映したものであればこのspotは3~4 週間で消失します。
ですから,アブレーションの種類にかかわらず,1週間後に造影剤検査あるいは超音波検査を行い,それで問題がなければCTあるいはMRIにより腫瘍の壊死を経過観察します。
治療の成否はこの経過観察で判明します。
それから,RFAの施行回数については,私たちは2回までとしています。
それで残った病変に対しては通常エタノール注入を行います。

神代 
韓国ではいつCTで治療効果をチェックしますか。

Han 
治療担当医の経験によります。完全と感じたら1か月後にCTスキャンを行いますが,不完全と感じたら2~3日後を勧めます。

Bruix 
効果判定の時期はアブレーションを試みた腫瘍の種類に依存するように思います。
小さい腫瘍であれば壊死していない病変はまず残っていないでしょうからCTを頻繁に行う必要はありませんが,より大きい腫瘍であれば,すべての腫瘍を除去できないことがわかっているわけですから,次の治療で標的とする病変の情報を得るためにCTでチェックする必要があります。

神代 
本日の議論からも,肝細胞癌の診断と治療をめぐる欧州,アジア,日本の一致点や相違点を垣間見ることができたと思います。
診断面では腫瘍マーカーの位置付けや経過観察の頻度に違いがあることがわかりました。
治療面では,進行病変については議論できませんでしたが,各国ともアブレーションを行うことが増える傾向にあるということでした。
今後もこうした情報交換の場をもち,肝細胞癌の診療の向上につなげることができれば幸いです。

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by esnoopy | 2008-05-19 00:05 | 消化器科

かえる切り抜き帖 2008.5.18

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出典 日経新聞・朝刊 2008.5.14
版権 日経新聞社
(画像をクリックすると拡大します)

<コメント>
またまたやってくれました。
「女医は・・・産婦人科などで特に必要とされ・・・」
きついからただでさえ成り手がないのに、女医がよりによって産婦人科医になると
いう幻想。
厚労省の「安心と希望の医療確保ビジョン会議」の構成員は一体?

矢崎義雄氏 循環器内科学の重鎮
野中 博氏  日本医師会常任理事(専門は内科)
辻本好子氏 学歴や経歴不詳

女医はメンバーに入っていない。
こうやって当事者を抜きにして物事が決まっていく。

<参考サイト>
「安心と希望の医療確保ビジョン」第1回会議の開催について
平成19年12月21日
出席予定者
舛添要一厚生労働大臣
松浪健太厚生労働政務官
矢崎義雄(独立行政法人国立病院機構理事長)
野中 博(野中医院院長)
辻本好子(NPOささえあい医療人権センターCOML理事長)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/s0107-1.html

野中医院
http://www.myclinic.ne.jp/nonaka/pc/doctor.html
野中博常任理事,介護保険制度を語る
http://www.med.or.jp/nichinews/n160805a.html
いのちの主人公、からだの責任者
http://www.lifence.ac.jp/goto/weblifence/inta/inta6.html
厚生省「医者にかかる10箇条」のここに学べ
http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/Isyanikakaru10kajyou.html
患者情報室の設置を――NPOささえあい医療人権センターCOML理事長 辻本好子氏
http://health.nikkei.co.jp/forum/index.cfm?i=2004042602345pe
辻本好子
http://www.u-shimane.ac.jp/01topics/file/kyakuin.pdf


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by esnoopy | 2008-05-18 22:42 | その他

各国の肝癌の診断と治療 その1(1/2)

肝癌の診断と治療法も国によって違うようです。

特別企画
座談会
日本・アジア・欧州における肝癌の診断と治療


現在,肝細胞癌による死亡者は世界中で年間60万人から70万人に及ぶとされ,東南アジア,アフリカだけでなく欧米でも増加傾向にある。
10~20年前には関心の低かった欧米でも近年,肝細胞癌が注目されるようになった。
しかし,長年経験を重ねてきた日本やアジアとの間には,診断や治療に対する考え方やアプローチにまだかなり異なる点がある。
その背景には
肝細胞癌のほとんどがウイルス性肝炎から発症する日本と違い,欧米ではアルコール性肝障害や原因不明の非ウイルス性の肝細胞癌が大部分であり,こうした疫学の違いが少なからず関係しているようだ。
本座談会では「日本・アジア・欧州における肝癌の診断と治療」と題して,日本,韓国,スペインの肝細胞癌の専門家4氏が,診断や治療をめぐる各国の状況について討議した。

司会
神代 正道 氏
久留米大学名誉教授,柳川病院特別顧問
出席者(発言順)
Jordi Bruix 氏
バルセロナ大学内科教授,Barcelona Clinic Liver Cancer Group主任
Kwang-Hyub Han 氏
延世大學校医科大學消化器内科教授
工藤 正俊 氏
近畿大学医学部消化器内科学教授


肝細胞癌の診断
欧米:腫瘍マーカーによらず画像検査で
神代 
まず肝細胞癌の診断をめぐる状況についてお伺いします。
Bruix先生は欧州肝臓学会(EASL)および米国肝臓学会(AASLD)の肝細胞癌に関するガイドライン作成の中心的な役割を担っておられますが,まず欧米の状況についてお聞かせください。

Bruix 
欧州と米国ではガイドライン内容の統一を図ろうとしています。
欧米では肝細胞癌に関する疫学や治療等の決定因子の多くは共通していますが,欧州では肝細胞癌の診断・治療に関する研究に長年取り組んでいること,スクリーニングプログラムの実施等で米国をかなりリードしていると言えます。
一方,米国では従来の知見が軽視され,画像診断技術に関心が向きがちでしたが,最近ではこうした問題も改善されつつあるようです。
 
ガイドラインについてですが,肝細胞癌の診断は腫瘍径の大きな病変/進行性の病変と早期の病変の2つに大別できます。
欧州および米国のガイドラインでは,径が2cm以上の病変において,画像検査で動脈性のhypervascularityの後に静脈相でwashoutが認められれば,それが肝硬変でも肝細胞癌と確定診断できるとしています。

早期の病変については,一致したデータが得られていないため議論が続いていますが,私たちは前向き研究で欧州の基準の有用性を確認しました。
1~2cmの病変があり,動脈濃染と静脈のwashoutが認められれば,肝細胞癌と診断されます。
ただ,この診断方法だけでは偽陽性の可能性もあり,例えば,画像上の確認が難しい10mm未満の腫瘍の場合には,診断や経過観察を完全に行う方法はなく,課題が残ります。
 
次に治療レベルですが,欧州では肝移植だけでなく効果的な内科治療を受けられる施設がごく一部しかありません。
市中病院の技術は最適とはいえず,進行性の肝細胞癌に対しても頻繁に生検やCT,MRIを行うことはありません。

神代 
スペイン,イタリア,フランスは他の国よりもレベルが高いとされていますが,同じ欧州でも国により診断レベルに大きな違いがあるようですね。

韓国:腫瘍マーカーの有用性にも期待
神代 
韓国の状況はいかがですか。日本と似ていると思いますが。

Han 
欧州のガイドラインに基本的に同意しますが,一部,異なる点があります。
1 つは生検です。
これまで論文を投稿しても生検をしていないという理由で却下されることが多かったのですが,私たちは必ずしも生検は必要ないと考えています。
この点については,2001年のバルセロナのコンセンサス会議で生検によらない診断が支持されましたので評価しています。
 
もう1つは腫瘍マーカーです。
AFPやPIVKA-IIが有用だと考えています。
私たちは長期にわたる経過観察中に新たに認められた腫瘍について調査していますが,一部の腫瘍ではPIVKA-IIと腫瘍径の拡大の間に強い関係が認められます。
そうした腫瘍は2cm未満のこともあり,生検は必要ありません。
腫瘍マーカーは,すべての症例でというわけではありませんが,肝細胞癌の早期診断の感度や特異度を高める可能性があります。
韓国では腫瘍マーカーは非常に安価ですので,スクリーニング実施の観点からも有用性にも期待しています。
それに対して,超音波検査は非常に高価なため,スクリーニングのネックになっています。
 
画像診断については,私たちは通常,CTスキャンを行い,それで結論が得られなければMRIを使用します。
しかし,
バルセロナのコンセンサスでは,診断ツールとしての血管撮影使用が否定されました。
ですから,血管造影の有用性を検討する前向き無作為化試験を実施する必要があると考えています。
血管造影は欧州では非常に高価な方法ですが,韓国ではそれほどではなく,MRIとほぼ同じぐらいです。
また,最近,私たちの施設ではPETスキャンを導入しました。
診断ではなく,治療経過をモニタリングするためです。
他の方法ではわからない腫瘍の変化も捉えられるものと期待しています。


日本:高リスク群は6か月毎の超音波と腫瘍マーカーで


神代 
工藤先生,日本における肝細胞癌の診断について紹介していただけますか。

工藤 
日本では20年前に全国的なスクリーニングプログラムが確立されました。
最近発表されたわが国のガイドラインでは,超高リスク群としてB型肝硬変およびC型肝硬変が示されています。
これらの患者に対しては
3~4か月毎の超音波,3~4か月毎の腫瘍マーカー,12か月毎のダイナミックCTあるいはダイナミックMRIが推奨されています。
腫瘍マーカーはAFP,AFPL-3およびPIVKA-IIの3種類です。
また,<
span style="color:rgb(255,0,0);">高リスク群としてはC型肝炎,B型肝炎,および非ウイルス性肝硬変
が示され,6か月毎の超音波検査,6か月毎の腫瘍マーカー測定が推奨されています。
こうしたスクリーニングが日本では全国のほとんどの病院で行われています。
欧米のガイドラインと日本のガイドラインでは,腫瘍マーカーとスクリーニング
の間隔が異なります。
 
日本では画像診断には偽陽性や偽陰性の問題があるため,画像診断だけで検討することはほとんどありません

APシャントや不規則なhyper-enhancing areaを有する症例ではAFP,AFPL-3,およびPIVKA-IIが肝細胞癌の診断に役立ちます。
2001年のEASLガイドラインはAFPを含めましたが,2006年の改訂版(EASL2006)では,肝細胞癌の診断・治療において推奨される腫瘍マーカーのうち,陽性率や特異度が低いことを理由として,AFPが除外されました。
おそらく日本の肝臓専門医の多くは,なぜAFPを除外したのか理解できないと思います。
この点は欧米と日本のきわめて大きな違いです。
 
さらにEASL2006と日本のガイドラインのもう1つの違いはダイナミックスタディーです。
EASL2006では,1~2cmの結節に対して2つのダイナミック画像による診断を同時に行う必要があるとされています。 しかし,
肝癌結節ではhypervascularityと静脈相のwashoutが典型的ですので,1つのダイナミックスタディーの画像診断で十分と考えられます。

腫瘍マーカーの位置付け神代 
欧米とアジアの違いとして,腫瘍マーカーの位置付けやスクリーニングの間隔などが指摘されました。
Bruix先生,欧米のガイドラインではなぜ腫瘍マーカーが除外されたのですか。
日本では25~30年前までは肝癌の多くは進行した状態で診断され,平均生存期間は3~6か月でした。
しかし,高リスク集団が確立され,AFPを含めスクリーニングプログラムの全国実施により診断能が劇的に改善しました。
この点についてどうお考えですか。

Bruix 
欧米にも腫瘍マーカーが有用なツールであると考えている人たちもいます。
私も腫瘍マーカーの有用性を否定するわけではありませんが,ガイドラインで診断ツールの1つとして取り上げるためには,その有用性を証明するデータが必要です。
とりわけ米国ではそれが強く求められます。
 
20年ほど前,私が肝癌の研究を始めた頃,欧米では肝癌は存在しないと思われていました。
私は最初の論文を米国の雑誌に投稿しましたが,その論文も受理されませんでした。
ところが,1990年に日本に来たとき,ここでは肝臓病が先進的な病理学者によって適切に分類され,超音波で肝癌が見つけられていました。
もちろんコホートやリスクファクターは違うのですが,基本的なところは欧州と同じでした。
 
当時,画像診断の感度や特異度は十分ではなく,腫瘍マーカーが非常に有用でした。
しかし,画像診断技術が格段に進歩した現在,腫瘍マーカーの使い方は難しくなっています。
hypervascularityが確認された場合,腫瘍マーカーの異常の有無にかかわらず肝細胞癌と診断できます。
一方,hypervascularityが確認されない腫瘍に対しては,腫瘍マーカーの有用性を検討した研究が非常に少ないため,現時点では肝生検を実施せざるを得ないと考えています。
ですから,腫瘍マーカーがガイドラインで取り上げられるためには,実際の臨床における腫瘍マーカーの役割を明らかにするため大規模コホート研究などを実施し,そこで有用性を証明する必要があります。ただ,近い将来,画像診断を補完する新たな腫瘍マーカーが出てくる可能性はあります。

工藤 
一般臨床でAFPを測定しないのですか。

Bruix 
測定しません。
最近,肝硬変患者をAFPやPIVKA-IIなどの生化学検査と超音波検査で1年毎に経過観察する研究を終了したところですが,AFPもPIVKA-IIも有効性は認められませんでした。
米国立衛生研究所(NIH)もアラスカで同様の研究を実施しましたが,有効性は認められませんでした。

神代 
AFP-L3についてはどうですか

Bruix 
腫瘍マーカーに可能性があるとすれば,それは再発や急速な進展のリスクの予測だろうと思います。
例えば,肝移植の優先度を決定するパラメータの1つになる可能性があります。もしAFPが100を超える腫瘍であれば,それはAFPを産生しない腫瘍に比べてリスクが高いとみなされます。AFP-L3およびPIVKA-IIについても,そういう状況での可能性はあると思います。

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by esnoopy | 2008-05-16 00:13 | 消化器科

骨粗鬆症へのビス剤投与は5年で十分か

骨粗鬆症治療の際に、「いつまでこのお薬は飲み続けるのですか」という質問を受けられた先生も多いのではないでしょうか。
ビスホスホネート剤のアレンドロネートでの研究で、5年飲み続ければ大丈夫という結果が出(てしまい)ました。
メーカー主催の講演会では取り上げてもらえない内容です。
これからの診療現場で患者さんに正直にこのことを説明するかしないかは「自由だ~!!」ということでしょうか。
それにしても米国の研究者って面白い研究をするもんですね。
まさか製薬メーカーが背景にいて、こんな結果が出てしまって困っているということではないでしょうね。
ちょうどゼチーアのENHANCE試験を思い出させる結果です。
ENHANCE試験をめぐる論争 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080428/1
ENHANCE試験をめぐる論争 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080429

5年で投与中断しても骨折リスクの有意な上昇見られず
閉経女性の骨粗鬆症に対する治療期間はどの程度にすべきか。
これまで、最適な治療期間を検討した大規模研究はなかった。
米California大学San Francisco校のDennis M. Black氏らは、アレンドロネートを約5年間使用、その後5年間治療を継続した場合と、後半の5年間に偽薬を投与された場合の骨量や骨折リスクを比較した。
その結果、多くの症例で、5年で治療を中止しても骨折リスク上昇に結びつかない可能性が示された。
研究成果はJournal of American Medical Association(JAMA)誌2006年12月27日号に報告された。

閉経後女性の骨粗鬆症治療に最も広く用いられているのは、骨の再吸収を抑制するビスホスホネート剤だ。
なかでもアレンドロネートは骨粗鬆症女性の骨代謝を抑制、骨密度を高めて、骨折リスクを減らすことが示されている。

薬物動態学的研究によると、ビスホスホネートは骨に蓄積される期間が長い。
骨基質に取り込まれた薬剤は不活性化され、骨吸収時に徐々に放出されて活性を現すという。末梢での半減期は骨ミネラルと同等の約10.5年という報告もあり、骨への影響は治療中止後も数年間継続する可能性が示されている。

著者らは、ビスホスホネート治療をリスク上昇なしに中断できるかどうかを調べるため、Fracture Intervention Trial(FIT)の被験者の一部を対象に、Fracture Intervention Trial Long-term Extension (FLEX)試験を実施した。

FITは、二重盲検の無作為割付比較対照試験で、骨密度低値の閉経女性を対象に骨密度と骨折リスクに対するアレンドロネートの影響を調べた。
アレンドロネート5mg/日を2年間投与し、その後10mg/日に増量して治療を継続(3236人)した患者と、偽薬群(3223人)を比較した。平均追跡期間は3.8年だった。

FLEX試験では、これらの患者の中から、少なくとも3年間アレンドロネートを使用した女性を選び、その他の条件も満たした1099人を被験者として、アレンドロネート5mg/日(329人)、10mg/日(333人)、または偽薬(437人)に割り付け、5年間投与を継続した。カルシウム(500mg)とビタミンD(250U)を含むサプリメントも投与した。

主要アウトカム評価指標は大腿骨近位部の骨密度、2次評価指標は、他の部位の骨密度と骨の再構築を示す生化学的マーカーを測定、予備的な評価指標として骨折の発生率も調べた。

その結果、アレンドロネート使用群と偽薬を使用した中断群で、各部位の骨密度の差は有意だったが、FLEX終了時、中断群の骨密度の平均値は、10年前の治療開始前と同等かそれ以上の値を維持していた。
5年を超えて治療を継続した場合、腰椎の骨密度はさらに増加したが、大腿骨においては、最初の5年間に増加した骨密度の値が維持されるに留まった。

中断群では血清中の骨代謝マーカー値は治療群に比べ、55.6%(1型コラーゲンC-テロペプチド:1CTP)、59.5%(1型コラーゲンN末プロペプチド:pro N)、28.5%(骨特異的アルカリホスファターゼ)などと有意に上昇していたが、FIT試験開始時点よりも低い値を維持していた。

5年間の非脊椎骨折の累積発生率は、治療群で19%、中断群では18.5%で、リスクに有意差はなかった。疼痛のある骨折を臨床骨折、疼痛がないものを形態骨折に分類すると、治療群では、脊椎の臨床骨折リスクは有意に低かった(中断群5.3%、治療群2.4%、相対リスクは0.45)。
しかし、脊椎の形態骨折には、有意な減少は見られなかった(中断群11.3%、治療群9.8%、相対リスク0.86)。

以上のように、5年間のアレンドロネート治療後、使用を中止した女性の骨密度は減少し、生化学的マーカー値は徐々に上昇したが、治療継続群に比べ、骨折リスクが有意に増大したのは、脊椎の臨床骨折のみだった。
臨床骨折の発生率は中断群でも5.3%程度であるため、臨床骨折リスクが高い女性を除く多くの女性については、5年間の治療後、最高5年間投与を中断しても、骨折リスクは上昇しないのではないか、と著者らは考えている。

本論文の原題は「Effects of Continuing or Stopping Alendronate After 5 Years of Treatment: The Fracture Intervention Trial Long-term Extension (FLEX): A Randomized Trial」。

骨粗鬆症へのビス剤投与は5年で十分か
5年で投与中断しても骨折リスクの有意な上昇見られず
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/hotnews/int/200701/502270.html
出典 日経メディカル オンライン 2008. 4. 29
版権 日経BP社



<参考ブログ>
アレンドロネートの骨折抑制効果(FIT試験)
http://fosamac.jp/secure/related_data/fit.html

<ココメント>
製薬メーカーのサイトで検索しましたが、この研究報告の内容はのっていませんでした。
当然といえば当然です。
メーカー主催の講演会の話の内容もそういった気持ちで聞かなければいけませんね。
私もメーカーから講演を頼まれたら(そんな機会はありませんが)、きっと都合の悪い話はしないと思います。

テレビや新聞の報道も公平なようにみえて決してそうではないわけですから。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2008-05-15 00:25 | 骨粗鬆症

ビス剤中断例の服薬継続可能

ビス剤中断例は他のビス剤への切り替えで半数以上が継続可能
横浜市立大学附属市民総合医療センターリウマチ膠原病センターの大野滋氏
関節リウマチ(RA)患者は骨粗鬆症を合併しやすく、骨折の頻度も一般人口に比べて高いことが知られている。
このため、骨粗鬆症の治療はより重要な意味を持つ。
現在、骨粗鬆症治療薬として最も広く使用されているのはビスフォスフォネート製剤だが、服薬アドヒアランスをどう向上するかが課題となっている。
横浜市立大学附属市民総合医療センターリウマチ膠原病センターの大野滋氏らは、服薬困難などの理由でビス剤を中断しても、別のビス剤にスイッチングすることにより、治療を継続できる症例が多いことを明らかにし、第52回日本リウマチ学会のポスターセッションで報告した。

骨粗鬆症は自覚症状に乏しいため、服薬アドヒアランスが悪い。
なかには、1年継続率が20%を切るという報告さえある。ビス剤を中断した患者には、もう一度同じビス剤の服用を再開してもらうと、継続可能となる患者が少なくないことが報告されている。例えば、消化器症状のために1日1回アレンドロネート(ALN)を中断した患者にALNを再処方したところ、消化器症状で再び中断する割合は15%に留まり、プラセボ群の17%と有意差がなかったという成績だった。また、1日1回リセドロネート(RIS)の中断例でも、再処方により、47%が服用を再開・継続できたことが報告されている。

ビス剤間でのスイッチングという方法も試みられており、大野氏らは今回、スイッチングの状況や効果を検討した。

 2000年1月~2005年6月の間、横浜市大市民総合医療センターでビス剤を処方した1307例のうち、中断が認められたのは497例(38%)だった。
このうちビス剤間のスイッチングが行われた146例(29%)を対象とした。ALNやRISは現在、1日1回製剤に加え、週1回製剤も使用できるようになっているが、今回の対象はいずれも、週1回製剤が登場する前の症例だ。

中断の理由は、副作用22%、服薬困難6%、処方忘れ30%、その他41%。副作用のほとんどは消化器症状だった。
また、処方忘れが中断理由となった症例はすべて、3カ月ごとに処方するエチドロネート(ETD)の服用例であった。

スイッチングした2剤目の継続率を検討すると、3年継続率は65%で、1剤目の3年継続率45%より有意に高かった。
スイッチングが行われた症例の背景を見ると、若年、女性、産婦人科やリウマチ膠原病科など内科系の患者、1剤目がETD、ステロイド薬併用といった患者が有意に多かった。

スイッチングした2剤目を再び中断してしまう症例も認められたが、そのリスクファクターを検討すると、高齢、副作用によるスイッチング、男性、2剤目がETDといった要因が浮かび上がった。
1剤目を副作用のためにスイッチングした症例では、2剤目も副作用で中断するリスクが4.2倍高く、中断要因としての副作用の重要性が改めて強調される形となった。

大野氏は「服薬困難などの理由で1剤目のビス剤治療の継続が困難な場合でも、別のビス剤へのスイッチングを行うことで治療を継続できることが多い。
連日製剤の服用が困難な場合はETDへの変更、また処方忘れの多いETDで服用継続困難な場合は連日製剤への変更により、治療継続が可能になりうると推測される。
現在では週1回製剤も使用できることから、中断例に対しては、患者の状況に合わせてスイッチングを積極的に試みることが望まれる」と話していた。

ビス剤中断例は他のビス剤への切り替えで半数以上が継続可能
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcr2008/200804/506294.html

出典 日経メディカル オンライン 2008. 4. 29
版権 日経BP社

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by esnoopy | 2008-05-14 00:38 | 骨粗鬆症

頚椎性頭痛

治療の柱は理学療法とコルチゾン
〔独ウィースバーデン〕 エッセン大学病院(エッセン)神経内科のHans-Christoph Diener教授は,一側性の頭痛を訴える患者に対する頸椎性頭痛の除外診断,片頭痛と持続性片側頭痛との鑑別,そしてその治療法について,ドイツ神経科学会で説明した。

局所麻酔を用いて診断を確定 
頸椎性頭痛の診断基準は“痛みが常に一側性で,特定の頭の動きや姿勢により誘発されること”である。
例えば,「パソコンのモニターを特定の位置に置くと,頭と頸部にひどい痛みを生じる」との訴えが典型的な例で,この現象は再現性が高く,医師の目の前で患者が繰り返し再現することも可能である。
大後頭神経もしくは後頭部の腱起始部を圧迫した場合にも同様の症状を誘発できる。
この場合,片頭痛発作時のような拍動性の痛みを訴えることはない。
 
診断確定の方法は原則的に 1 つで,プラセボ対照下で局所麻酔薬注射を行う。
大後頭神経の出口,C2神経根およびC2/C3の椎間関節部に麻酔薬を注入すると,実薬投与では無痛状態が48時間持続するが,プラセボでは無痛とならないことから,診断を確定できる。
 
X線像では,多くの患者で頸椎の変形が認められるが,変形の程度と頸椎性頭痛との間に相関関係がないため,X線撮影は診断の役には立たない。
これに対して,MRIでは神経根における変化をより明確に描出することができる。


薬剤療法のエビデンスはない 
Diener教授は「evidence-based medicine(EBM)の観点からすると,臨床試験データのない頸椎性頭痛の治療は悪夢のようだ。
非ステロイド抗炎症薬(NSAID)と三環系抗うつ薬の鎮痛用量での投与が推奨されているが,これは単に実用主義的観点から勧められているだけで科学的根拠を欠いている。
細胞膜安定薬についても同様で,私自身,例えばバルプロ酸ナトリウムの効果を確認したことはない」と指摘した。
これに対して,理学療法に関するデータは数多く存在する。
頸部の筋肉トレーニングと穏やかな徒手療法の治療効果は既に実証されており,これらの治療法は,必要に応じて筋弛緩薬と組み合わせながら積極的に行うべきであるという。
 
大後頭神経とC2/C3椎間関節の局所ブロックには,診断上の重要性だけでなく治療効果も認められる。
プラセボ対照下の局所麻酔により頸椎性頭痛であることが確認された患者には,作用期間の長いコルチゾンを投与すべきで,頭痛を 6 ~8 週間抑える効果が期待できるという。
同教授は「コルチゾンで疼痛の消失が認められなければ,診断が正しかったかどうかを再検討する必要がある」と助言した。
 
同教授は外科的治療には反対の立場であり,「神経根切断術,微小血管減圧術,ラジオ波焼灼療法など,これまで試みられてきた外科的手技は患者に有益でないばかりか,高いリスクを伴うこともあるため,絶対に適用すべきではない」と強調した。


頸椎性頭痛の除外診断と診断基準
〈除外診断〉
・発作性片側頭痛または持続性片側頭痛はインドメタシン(25,50もしくは75mgを 1 日 3 回,3 日間投与)で除外する。片頭痛はインドメタシンによく応答するが,頸椎性頭痛は応答しない
・後頭神経の神経痛(わずかな接触で誘発される短時間の疼痛発作も含む)は臨床的に除外できる
・群発頭痛には酸素とトリプタンが有効で,片頭痛もトリプタンで除外できる
・軽度の頸椎性頭痛が疑われ,軽い自律神経系の随伴症状(眼の充血,一側性の鼻閉など)がある場合も,トリプタン試験を実施する。トリプタンで効果が認められる場合は非典型的な片頭痛で,片頭痛予防薬を処方すべきである
・緊張性頭痛は必ず両側性に発現する
〈おもな診断基準〉
(1)頸部と項部の臨床症状
・疼痛が頸部の動きや頭の位置,もしくは同側上頸部または後頭部の圧迫により再現可能
・頸椎の可動性制限
・同側の頸部,項部,肩または腕の痛み(腕の痛みは非根性であるが,まれに根性であることも)
(2)局所麻酔ブロックによる確認
(3)一側性の頭痛で,痛みのある側は変わらない
(4)頭痛の特徴
・中等度〜重度の非拍動性の痛みで,刺すような痛みでもなく,頸部から始まる
・発作の持続時間がばらついている,あるいは変動する持続性の頭痛
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M3929071&year=2006

出典 Medical Tribune 2006.7.20
版権 メディカル・トリビューン社


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by esnoopy | 2008-05-13 00:19 | 高血圧症

飲酒と死亡リスク

飲酒の量と頻度は死亡リスクに影響
〔米メリーランド州ベセズダ〕米国立衛生研究所(NIH)の一機関である米国アルコール乱用・アルコール依存研究所(NIAAA)疫学・予防研究部のRosalind A. Breslow博士らは,1988年に実施された全米健康調査に参加した4万4,000例のデータを用いて飲酒習慣と死亡との関係を検討し,飲酒の量と頻度はともに死亡リスクに独立した影響を及ぼすとの知見をAlcoholism: Clinical and Experimental Research(2008; 32: 513-521)に発表した。

飲酒パターンに着目すべき
Breslow博士は,米国立がん研究所(NCI)がん研究センターがん疫学遺伝学部門の統計専門家であるBarry I. Graubard博士とともに,1988年の全米健康調査のデータを検討した。調査に参加した約4万4,000例のうち約半数が1998年時点で飲酒習慣があった。
このうち,2002年末までに2,500例以上が死亡した。
 
同博士らは,死因と飲酒状況を比較した結果,男性では飲酒の頻度と量が心血管疾患による死亡率に影響を及ぼすことを明らかにした。
1回の飲酒量が多いほど心血管疾患死のリスクが高く,例えば1回に5杯以上飲む男性は1回に1杯しか飲まない男性に比べて心血管疾患死のリスクが30%高かった。
また,飲酒量は男性のがんによる死亡率の上昇と関連した。
これに対し,飲酒頻度は,男性では心血管疾患死亡率の低下と関連した。
飲酒頻度が120~365日/年の男性は,1~36日/年の男性と比べて心血管疾患死亡率が20%低かった。
しかし,今回の研究は,頻繁な飲酒による心血管疾患への影響の解明のためにはデザインされていない。
女性では,頻繁な飲酒は発がんリスクの増加と有意に関連し,飲酒量の増加が全死亡率の上昇と関連した。
 
NIAAAのTing-Kai Li所長は「われわれの知見は,適度な飲酒が重要であることを強調する内容となった。米国の飲酒者の大部分を占めるアルコール依存のない飲酒者にとり,飲酒の量と頻度は死亡に関する制御可能な危険因子と考えられる。今回の知見はアルコールに関連する健康アウトカムを調査する際は,飲酒のパターンも検討することが重要であることを示している」と述べている。


平均値の検討では不十分
過去の研究では,中等度の飲酒は心血管疾患死のリスクを低下させ,多量の飲酒は死亡率の上昇をもたらすことが明らかにされている。
しかし,Breslow博士は,このような研究の多くでは被験者の平均飲酒量を検討しており,このアプローチではたまに深酒をする人と継続的に軽く飲む人の区別が付かないという欠点があると指摘。
「平均飲酒量では,週に1回7杯飲む人と,毎日1杯ずつ飲む人を区別することができない。
われわれの研究は,米国民を代表するコホートにおいて,飲酒の量と頻度がともに死因別死亡率に独立した影響を及ぼすことを示した初の研究である」と述べている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41190283&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.8
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
個人的な話で恐縮です。
私は週4日の休肝日、すなわち3日が飲酒日です。
飲酒日はつい飲みすぎてしまいます。
我慢していたという「自分へのご褒美」気分と、次の日が飲めないからという「のん兵衛」の屁理屈からです。
この論文を読んでしまったからには飲酒の仕方を変えなければなりません。
毎日少量飲んで、週3日は少しだけメリハリをつけるとか。

以前、休肝日は意味がないという研究報告をみた覚えがあります。
たしか休肝日を作るとALDHの酵素活性が低下するといった内容でした。
さがしてみましたがネット上では検索できませんでした。
夢だったのかも知れません。


<参考ブログ>
アルコール性肝障害
http://www.kusuriyasan.org/byoukitoyobou/arukorusei-kanen.htm
休肝日をつくろう
http://www.health-net.or.jp/kenkozukuri/healthnews/050/050/k140/index.html
アルコール脱水素酵素2の遺伝子の個人差によって男性の脳梗塞の危険性は2倍にはねあがる
http://www.mitos.co.jp/jigyo/adh.html
日本人はお酒に弱いというのは本当か?
http://www2.health.ne.jp/library/0600/w0600001.html

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田崎広助 富士(紫) リトグラフ
http://page19.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/x33501214



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
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葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
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by esnoopy | 2008-05-12 00:03 | その他