経鼻内視鏡のメリットとデメリット

最近、患者さんが「先生のところは鼻からの胃カメラは使ってないんですか」
という質問をしばしばします。
そんな質問をされると「予算がないもんで」とただただうなだれるだけです。
一頃新聞やテレビでしきりに経鼻内視鏡の宣伝をしていました。
ジェネリック薬品もそうですが、患者さんに向かっての宣伝は非常に効果的です。
そんな中、こんな記事が目に留まりました。

ここ数年来,経鼻内視鏡が急速に普及してきた。
その最大のメリットは被験者の負担が軽減した点。
実際,経口内視鏡に拒否反応を示していた被験者も楽に受けられるようになったが,デメリットはないのだろうか。
東京慈恵会医科大学内視鏡科の貝瀬満・准教授に聞いた。


最大のメリットは被験者の負担軽減
経鼻内視鏡と通常の経口内視鏡のメリットとデメリットについて,比較検討を進めている貝瀬准教授は,まず経鼻内視鏡のメリットについて次のように話す。
「経鼻内視鏡に用いる極細径内視鏡の直径は約5mm。これに対し,一般的な経口内視鏡は9~10mmである(写真1)。直径が倍近くなると,面積で4倍ほどの差が出る。つまり経鼻内視鏡は,経口内視鏡の4分の1程度の面積なので,被験者の負担が大幅に軽減できる」
c0129546_23531248.jpg


いくら直径が細くても,口から挿入すると嘔吐反射を起こしうるが,鼻から挿入すると患者にとってつらい嘔吐反射を回避できる。
「加えて,経鼻では経口と違い,被験者も話しながら検査を受けられるので,安心できるという精神的なメリットも見逃せない」

このため,これまで経口内視鏡に抵抗のあった人も,食道や胃の内視鏡検査を苦痛なく受けられるようになった福音は大きい。

ただし,こうしたメリットが,逆にデメリットにつながっているともいう。
「直径が細くなった分,経口内視鏡に比べて診断に必要な画質や操作性が犠牲になっていると言える」


デメリットは画質と操作性
もちろん,経口内視鏡も種類によって画質の差は生じるが,貝瀬准教授らは極細径内視鏡と高精細経口内視鏡を用いて診断能を比較検討している。

対象は同科を受診した症例。
文書で同意を得たうえで,同一症例に極細径内視鏡と高精細内視鏡検査を施行した。
挿入経路が異なると正確な比較ができないため,極細径内視鏡も経口で用い,臨床情報を全くブラインドにした異なる医師が極細径と高精細を別々に検査した。

その結果,高精細内視鏡で診断できた早期胃がんや潰瘍瘢痕が,極細径内視鏡では発見できなかったケースが少なくなかった。
「現在,集計中なので詳細は明言できないが,私の印象では2割ほど見落とし例が増える危険性がある。特に,極細径の遠景観察は光量不足から画質が低下して,微細な病変を見逃す可能性を否めない」


メリット・デメリットを理解して使い分けを
こうした結果から,貝瀬准教授は経鼻内視鏡のデメリットとして次の2点を挙げている。

経鼻内視鏡は,高精細経口内視鏡に比べて画素数が約9分の1と少ない。
さらに経鼻内視鏡の光量は高精細の約5分の1であり,経鼻内視鏡は微細な病変の診断に必要十分な画質を得にくい。

内視鏡検査は,吸引,送気,鉗子による生検といった一連の操作が必要だが,経鼻内視鏡ではルートが細いので検査に時間を要する。
「確かに経鼻内視鏡のもたらしたメリットは大きいが,こうしたデメリットを理解して用いないと,思いがけない問題が生じるだろう」と注意を促している。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41140761&year=2008[

出典 Medical Tribune 2008.4.3
版権 メディカル・トリビューン社


c0129546_1932778.jpg

ヒロ・ヤマガタ 「ジャズフェスティバル」
http://page10.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/m55357867

<コメント>
経鼻内視鏡は精度や操作性にかけるという話は初めて知りました。
販売業者を呼んで話を聞いたことがありますが、そんな話は一切ありませんでした。
これからは患者さんには「検査がラクでもガンの見逃しがあっては困るでしょ」といって経口内視鏡でやらせていただくつもりです。
最近は腹腔鏡手術で代表されるようにユーザー(?)フレンドリーな手技が全盛になってきています。
医療技術のスキルアップは益々要求されてきています。

大変です。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-04-09 00:38 | 消化器科

脳梗塞病型と抗血小板療法 その2(2/2)

昨日の続きです。

豊田 
抗血小板薬の併用についてですが各薬剤個々に機序が違っており,理論的には異なる機序の薬剤を併用すればより高い効果が得られるとの意見もあります。
しかし実際行われた試験においてはいまだ十分な結論が得られていません。

発症 3 か月未満かつハイリスクな虚血性脳血管障害患者約7,600例を対象としたMATCHManagement of Atherothronbosis with Clopidogrel in high-risk patients with recent transient ischemic attack or ischemic strokes)クロピドグレル単独またはアスピリン併用群で二次予防効果を検討した結果,両群間で主要血管イベントの相対リスク減少効果に有意差は見られず,一方頭蓋内出血発症率はクロピドグレル単独群で有意に低いとの結果が示されました。

この結果は,患者の危険因子・病態・投薬期間やリスク/ベネフィットを考慮しながら単独/併用療法を選択する必要があることを示唆しています。
実際にMATCHでは高血圧が78%を占めており厳重な血圧管理が必要だということだと思います。

卜部 
日本人に対して,国内臨床試験でクロピドグレル単独ではチクロピジンに比し安全性が確認されましたが,併用に関してはいかがですか。

豊田 
一般住民を対象とした疫学研究では,欧米人に比べ脳出血発症率が高いことが明らかにされており,抗血小板薬の併用療法による出血についても十分に考慮する必要があります。
しかし,その点に関する日本独自のエビデンスはほとんどありませんでした。
BAT(Bleeding with Antithrombotic Therapy)Studyでは,国内19施設で脳卒中または心血管疾患により抗血栓療法を受けている約4,000例を抗凝固薬/抗血小板薬の単独あるいは併用の 4 群に分け,出血性合併症の頻度を調査しました。
抗血小板薬はそのほとんどがチクロピジンでしたが,その結果,抗凝固薬および抗血小板薬の単独あるいは併用療法における日本人の出血性合併症の頻度は欧米での報告とほぼ同じであり,特に高いということはなかったという結果でした(表 2)。
c0129546_23471870.jpg


しかしながら出血性合併症の危険性は考えられるので,抗血小板薬の併用療法にあたっては十分な適応の考慮はもちろんのこと,注意深い血圧の観察がやはり必要不可欠と考えています。

危険因子を有する症例におけるクロピドグレルの意義
卜部 
抗血小板薬の選択の実際についてまとめたいと思います。

豊田 
私が脳梗塞の初発後・再発後にクロピドグレルを選択する根拠は,チクロピジンからの切り替えが必要な場合,アスピリン服用下で再発した場合,そして高血圧や糖尿病・脂質異常症など危険因子を有する場合です。
このような症例では,クロピドグレルを考慮するとよいと思います(表 3)。
c0129546_23551590.jpg


卜部 
図 2はエビデンスに基づき,当院の非心原性脳梗塞に対する抗血小板薬の選択方法を表したものです。
c0129546_23491037.jpg

まず大きくアテローム血栓性脳梗塞/TIAとラクナ梗塞に分類し,次にラクナ梗塞をアテローム関与の有無などで分けます。
一見ラクナ梗塞のようでも実際はアテロームの関与するものが多く,またTOAST分類における「その他の脳梗塞」にもクロピドグレルを選択できる症例が多いと思います。
これらのことよりクロピドグレルを脳梗塞の初発後・再発後の第一選択薬と考えています。
 
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109221&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-04-08 00:12 | 循環器科

脳梗塞病型と抗血小板療法 その1(1/2)

日本人の脳梗塞病型と抗血小板療法の実際

出席者
順天堂大学医学部附属 順天堂医院脳神経内科先任准教授
 卜部 貴夫 氏
国立循環器病センター内科 脳血管部門医長
 豊田 一則 氏

脳梗塞の発症にはさまざまな背景があり,その分類や治療戦略も多岐に渡ります。
本対談は,脳梗塞病型や危険因子, ならびに抗血小板療法に関する知見と薬剤選択の実際についてです。


施設における脳梗塞病型
卜部 
本日は脳梗塞の疫学的現況を交えて治療の実際を豊田先生と話し合ってまいります。
まず急性期脳梗塞症例の病型分類についてですが,当院では2007年 4 月から脳卒中患者のレジストリーを本格的に始めておりTOAST分類を用いて病型分類を実施しています。
10月までの集計によると脳梗塞が80%を占め,その内訳は心原性脳塞栓症,ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞の順です(図 1 )。
c0129546_15345346.jpg


豊田 
「その他の脳梗塞」の内訳についてはいかがですか。

卜部 
「その他の脳梗塞」のうち,原因が確定できたものは胸部大血管術後や心カテーテル術後の発症例が最も多く,動脈解離・分岐粥腫病変(BAD)・大動脈弓部複合粥腫が含まれます。
原因未確定には,2 つ以上の原因によるものが含まれ,多くは頸動脈狭窄とそれ以外の病因,例えば心房細動や卵円孔開存・大動脈弓部複合粥腫の合併で,こうした症例が最近増えています。

豊田 
当センターの2006年 1 年間に入院した急性期脳梗塞症例の病型分類では,一過性脳虚血発作(TIA)を除外すると,心原性脳塞栓症が約 3 分の 1 を占め,次いでアテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞の順です。
循環器病センターという施設特性のために心原性の割合が高いと考えられます。
また,原因が確定した「その他の脳梗塞」には動脈解離やBADなどが含まれます。
複数病因を有する場合ですが,その際には治療の優先順位をかんがみた病型分類も考慮します。
例えば卵円孔開存と心房細動を合併する症例であれば,卵円孔開存による奇異性脳塞栓の可能性が低い場合には心房細動を優先して,心原性に分類しています。


病型分布の変化には糖・脂質代謝異常の増加が関与


卜部 
アテローム血栓性脳梗塞が増えてきた背景には,日本人の脳卒中危険因子が変化してきたことが挙げられます。
当院ではどの病型で見ても高血圧の頻度が最も高く,次いで脂質代謝異常・糖尿病となっています。
また,糖尿病と診断されていない脳梗塞症例でも,入院時に経口糖負荷試験を行うと62.8%の高頻度で何らかの糖代謝異常が見つかります。
こうした耐糖能異常(IGT)と糖尿病を合わせると,当院では脂質代謝異常を抜いて 2 番目に多い危険因子となります。

豊田 
九州医療センターで2001~04年にかけて,発症24時間以内に入院した脳梗塞症例における危険因子を調査した結果,やはり高血圧が圧倒的に多くアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞患者の 4 分の 3 以上に認められました。
また,糖尿病や脂質代謝異常の患者も30~40%でした。

卜部 
個々の危険因子のみならずそれらが重積したメタボリックシンドロームが脳梗塞の危険因子になるというデータが,久山町研究で最近発表されていましたね。

豊田 
脳卒中データバンクに登録された脳梗塞患者を急性期再発例と非再発例に分けて,その背景因子を調査・報告したのですが,再発例・非再発例ともに高血圧があった患者が60%強・脂質異常症は23%・糖尿病は25%という結果でした(表 1)。
c0129546_15362353.jpg


また糖尿病に関してはIGTを含めて考えるとさらに割合が増すと予想されます。
となると,脳梗塞の大多数の患者が何らかの危険因子を併せ持つと考えてよいかと思います。


再発予防としての抗血小板療法
卜部 
2006年に発売されたクロピドグレルは,約 2 万例を対象としたCAPRIE(Clopidogrel versus Aspirin in Patients at Risk of Ischaemic Events)で,単独投与により血管イベント,脳梗塞・心筋梗塞・血管死などの累積イベント発症率,虚血または出血による再入院率が有意に低下するなど,数々のベネフィットが示されました。

同試験のサブ解析では,糖尿病患者や脂質異常症治療薬を服用している症例で,よりイベントが予防されることがわかりました。
こうしたエビデンスに基づき,既に欧米の各種ガイドラインで再発予防に有効な薬剤としてクロピドグレルが推奨されています。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109221&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社

<過去ブログ>
脳梗塞と抗血小板療法 その(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080224
脳梗塞と抗血小板療法 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080225/1

<参考サイト>

わが国におけるStroke unitの有効性に関する多施設共同前向き研究
http://stroke-unit.jp/faq.html
病型を確定することは治療方針を決めるうえでも重要ですが,COPE TrialではTOAST分類によって病型の診断を行うことが定められています。
TOAST分類では、脳血管障害を脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、TIAに分類した上で、脳梗塞をアテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症,ラクナ梗塞,その他の原因または分類が不能の脳梗塞に分類しています。
ただし,日常臨床においてこの分類を運用する際にはいくつかの問題があります。
1 つの問題は,アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞との鑑別です。
TOAST分類では,アテローム血栓性脳梗塞は1.5cmより大きい梗塞巣があり,責任血管に50%以上の狭窄が認められ,塞栓源となる心疾患が否定されていることと規定されています。梗塞巣が1.5cm未満の場合はラクナ梗塞と診断されるのですが,実際には,主幹脳動脈に明らかな狭窄が認められないが,梗塞サイズが1.5cm程度と比較的大きい症例が少なくありません。
このような症例の場合,主幹動脈から穿通枝に至る入口付近にプラークが付着していることがあります。
症状としては麻痺が進行し,通常のラクナ梗塞より後遺症が残る確率が高いようです。
つまり,アテローム血栓性脳梗塞にかなり近い病態と言えますが,TOAST分類上はラクナ梗塞と診断します。

アテローム血栓性イベントリスクの高いすべての患者に対して2剤併用抗血小板療法を行うべきか?
http://www.natureasia.com/japan/ncp/ncpcardio/pp/0608/1.
アテローム血栓性イベントリスクのある患者における、clopidogrelとアスピリンの併用療法は支持されない。症候性患者では効果が得られる可能性があるが、2剤併用抗血小板療法は、無症候性患者にとって有害である可能性がある。



高度頸動脈狭窄に対する薬物療法とその指標について教えて下さい
http://www.kessen-junkan.com/2005061302/38.
チクロピジン,クロピドグレルはADP 受容体のP 2 Y12 を特異的に阻害することが最近のクローニングで明らかとなっている.
チクロピジンの作用機序はADP によるアデニレートシクラーゼの抑制を阻害し,サイクリックAMP を増加させる.
その結果,血小板膜糖蛋白(GP2b/3a)複合体へのフィブリノゲンの結合を抑制し,ADP 依存性の血小板凝集抑制作用を示すと考えられている.
Ticlopidine Aspirin Stroke Study(TASS)ではTIA,軽症脳梗塞,網膜梗塞を対象とし,チクロピジン500 mg とアスピリン1,300 mg の比較検討が行われ,3 年目の判定でチクロピジンはアスピリンに比べて脳卒中の発症を21 %低下させたとしている.
しかしチクロピジンでは下痢,皮疹,好中球減少などの副作用の出現率がアスピリンよりも高率であった.
わが国でのチクロピジンの標準的な投与量は100 ~ 200 mg/日である.
先に示したATT のメタ分析ではチクロピジン単独投与は心筋梗塞,脳卒中または血管死などの血管性事故の発生率を32 %減少させており,アスピリンの23 %に比べ有意ではないが高い有効率を示している.
クロピドグレルはチクロピジンと同様のチエノピリジン骨格を持ち,血小板血栓の形成を抑制し,チクロピジンに比べ副作用が少ない薬剤である.
本剤の効果についてはすでに1996 年,アスピリンを対象としたCAPRIE 試験でその有効性が確かめられている.
抗血小板薬の種類に関するATT のメタ分析ではチクロピジン,クロピドグレルの血管イベント低減効果はアスピリンに比べてそれぞれ12 %,10 %勝っているが有意差は認めていないが,両者を一括して解析するとアスピリンとの差は有意になり,アスピリンよりも優れた結果になる.
本邦では最近,チクロピジンを対象とした臨床試験が開始され,その安全性が確かめられ,近い将来,本邦においても認可されることを期待したい.
欧米では軽症脳梗塞とTIA を対象としてクロピドグレル75mg 単独と,クロピドグレル75 mg とアスピリン75 mgの併用療法で血管イベントを減らすことができるかを比較するMATCH
(Managemant of Atherothrombosis with Clopidogrerl in High risk patients)が行われ,併用療法は単独療法に勝る効果はなく,むしろ出血による合併症が多くみられた.

[PR]
# by esnoopy | 2008-04-07 00:21 | 脳血管障害

下部消化管出血と大腸憩室

原因疾患はまず大腸憩室の想定を
防衛医科大学校内科第 2 講座の高本俊介氏らは,下部消化管出血に対する
緊急内視鏡例での検討から,出血の原因疾患としては患者年齢にかかわらず
大腸憩室が最も疑われるべき疾患であるとの認識を示した。
また「高齢者では合併症や抗血小板薬服用の有無を考慮して,内視鏡検査を
行う時期は慎重に検討する必要がある」との見解を表明した。


急性出血性直腸潰瘍では内視鏡的止血が有効 
高本氏らは,2001年 1 月?07年12月に,同大学校で消化管出血に対し緊急
下部消化管内視鏡を施行した146例,延べ施行回数176回(ポリペクトミー後
出血を除く)を対象に,65歳以上の高齢者群74例と65歳未満の非高齢者群
72例に分けて原因疾患,患者背景,転帰などを検討した。

原因疾患は高齢者群で大腸憩室25.6%,急性出血性直腸潰瘍(AHRU)21.6%,
虚血性腸炎12.1%の順で,非高齢者では大腸憩室26.3%,炎症性腸疾患(IBD)
18.0%,AHRU 6.9%,虚血性腸炎5.5%と,高齢者でAHRU,非高齢者でIBD
の割合が高かった。

患者背景として,抗血小板薬服用,心疾患合併,維持透析実施は高齢者群と非高齢
者群で有意差はなく,内視鏡前ヘモグロビン値は非高齢者で高い傾向が見られた。

転帰では,内視鏡的止血成功,開腹術施行は非高齢者群で割合が高く,緊急血管
造影施行,動脈塞栓術施行,死亡は両群間で差はなかった。なお,内視鏡的止血
成功例は高齢者群13例,非高齢者群18例だが,両群ともAHRUで内視鏡的止血
を行った例では全例が止血成功例となっていた。

以上のように下部消化管出血では高齢者,非高齢者にかかわらず,原因疾患としては
大腸憩室が最も多いことが確認され,出血時にまず念頭に置くべき原因疾患であった。

同時に,同氏は「憩室出血は出血点を特定できない場合やクリップで止血できない
ことが多く,インターベンションや手術を要することもあるが,クリッピング後も頻回に
出血を繰り返す例では,シアノアクリレートを併用した止血も試みている」との実績を
紹介した。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4108071&year=2008

Medical Tribune 2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社


シアノアクリレート
シアノアクリレート系接着剤(α-Cyanoacrylate adhesives)は、2-シアノアクリル酸エステルモノマーを主成分とする接着剤。反応系。
基材や空気中の水分によって急速に硬い皮膜状に硬化・接着する。作業性に優れた一液・常温硬化型でもあるため瞬間接着剤として使用される。末端のアルキル基を選択することにより特性を設計できる。粘度が低いため塗布が容易であり、また多様な被着材に適応する応用性の高さから、ゴム・金属やプラスチック類・医療用などから始まった使用範囲は広がり続け、最近では樹木接木などにも用いられる一方、皮質に馴染み易く白化する特徴から指紋判別用材料としても利用されている。剥離強度には優れるが、耐衝撃性や耐熱性に劣り、オープンタイムは短い。近年これらを改良したタイプも開発されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A5%E7%9D%80%E5%89%A4

抗血栓薬の大腸憩室出血に及ぼす影響http://jges.net/jges-z/gnt/gn490201.html
2002年7月~2005年11月までに下部消化管出血にて大腸内視鏡検査を実施した332例のうち,大腸憩室出血と診断されたのは32例(9.6%)であった.
大腸憩室出血は65歳以上の高齢者が90.6% と大部分を占めた.出血部位は左側結腸78.1%,右側結腸21.9%,出血形態は凝血塊付着81.3%,湧出性出血15.6%,噴出性出血3.1% であった。
憩室は多発93.8%,単発6.2% であった.
輸血を必要としない軽症は81.3%,内視鏡治療の必要がなかったものが81.3% と大部分を占めた。
抗血栓薬の内服率は50%(16/32)と他の下部消化管出血をきたした疾患に比べて高値であった。
大腸憩室出血例の半数は抗血栓薬を内服しており,高齢者が大部分を占めることから,大腸憩室を有する高齢者への抗血栓薬投与は出血の主な誘因の一つと考えられた。

<コメント>
当院にも70代の女性で大腸憩室に伴う下血を時々起こし、ひどい貧血になる方がみえます。
TIAがあるためやむを得ずアスピリンを投与しています。
この論文にまさしく合致する症例です。

大腸憇室症
http://wellfrog.exblog.jp/6874996

スハルト元大統領、大腸憩室で入院27 April 2004
http://www.tempointeraktif.com/hg/nasional/2004/04/27/brk,20040427-02,jp.html
ジャカルタ発:26日午後、スハルト元大統領がジャカルタ市内のプルタミナ病院に入院したことについて、担当医のアジズ医師は27日、年齢的な症状であることを明らかにした。X線検査の結果、大腸憩室が発見された。同氏のヘモグロビン濃度が6.3%に低下し容態も良くないため、医師団側は手術を避け薬物治療を行うことになった。

<コメント>
そうだったんですか。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-04-04 00:30 | 消化器科

高齢期のうつ病

"World Voice ― 世界のうつ病診療の今"
高齢期のうつ病―その特徴と治療戦略

高齢化は先進諸国に共通した社会問題であるが,特にわが国では近年高齢化が著しく,総務省統計局の調査によると2020年までには高齢者(65歳以上)は総人口の約25%を占めるだろうと予測されている。
このような状況のなか,高齢期うつ病への早期介入は今後ますます重要性を増し,社会全体として取り組むべき課題となりつつある。
先に大阪で開かれた第13回国際老年精神医学会(IPA)に招待講演のため来日されたアリゾナ大学精神科主任教授のAlan J. Gelenberg氏をお迎えし,高齢期におけるうつ病の特徴と治療戦略を中心にお話しいただいた。

高齢期と壮年期のうつ病に本質的な違いはない
高齢期うつ病(late-life depression)はいわゆる壮年期うつ病(mid-life depression)とどのような違いがあるのでしょうか。
Gelenberg 
高齢期うつ病と壮年期うつ病に本質的な違いはないと考えています。
興味・関心の減退,自信の喪失など,うつ病の基本的な特徴は同じです。
あえて違いを挙げるとすれば,壮年期うつ病の場合,患者さんが落ち込んでいると周囲が様子の変化に気付きやすいのに対して,高齢期うつ病の場合,家族や医師が,抑うつ状態は加齢に伴う不可避の現象であると考えてしまうことです。
しかし,高齢期うつ病は年をとったことが抑うつ状態を引き起こしたのではなく,うつ病という疾患に罹患してしまったことが原因で抑うつ状態に陥っているのです。
このごく単純な事実が,高齢期うつ病ではなかなか理解されていないという問題があります。

高齢期の抑うつ状態は,加齢による単なるエネルギーの減退ではなく,うつ病という疾患の関与を念頭に置く必要があるということですね。
Gelenberg 
そうです。
高齢期の抑うつ状態を自然経過と捉えるのはとても危険なことです。高齢期の抑うつ状態はうつ病をはじめ,認知症,脳血管障害,脳腫瘍など,さまざまな脳の病気のシグナルである可能性もあるのです。そのため,高齢期の抑うつ状態に早期に気付くことはもちろんのこと,器質的疾患の関与を完全に除外できるだけの十分な検査を行う必要があります。
脳血管障害や脳腫瘍の可能性はMRIやPETなどの画像診断により鑑別できるのですが,特に難しいのが認知症との鑑別です。
特に初期においては両疾患の症状は,例えば記憶力・集中力の低下,感情の喪失などの症状が一見すると確かに似ています。
そのため,抗うつ薬による薬物治療への反応性を見ることも有効な方法の1つです。高齢期うつ病の場合,薬物への反応性が悪く,反応が認められるまでの期間も長くかかるため,薬物への反応性をみることが認知症との鑑別に有効な方法とはいえないのではないかという意見もありますが,寛解に至る可能性に年齢が影響を及ぼすというエビデンスはないため,高齢者というだけで治療反応性が悪いとか治療期間が通常よりも長期になると考える理由は存在しません。

高齢期うつ病診療におけるプライマリ・ケア医の役割
日本ではうつ病と診断された患者さんの約90%はまずプライマリ・ケア医による診断を受けています。米国におけるうつ病の受診状況はいかがでしょうか。
Gelenberg 
正確な数字はわかりませんが,米国でもうつ病患者さんの多くが初診でプライマリ・ケア医を受診しているという現状は同じです。
この問題には,プライマリ・ケア医のほうが受診しやすいということに加えて,精神科医の数がたとえ大都市であっても十分ではないという現状も関係していると思います。
そのため,多くのうつ病患者さんは,精神科を訪れる前にまずプライマリ・ケア医や精神科以外の一般診療科を受診しているのではないでしょうか。実際,米国における抗うつ薬の処方のほとんどは一般診療科の医師によるものです。

プライマリ・ケア医や一般診療科医が精神科領域の問題に積極的にかかわるためのプログラムや啓発活動は米国で実施されていますか。
Gelenberg 
期待した結果が得られているかは別として,そのようなプログラムや啓発活動は積極的に行われています。
例えば,私も作成にかかわりましたが,米国精神医学会(APA)と米国医学会(AMA)が共同でプライマリ・ケア医のためのうつ病治療ガイドラインの改訂版を作成しています。

改訂版はいつごろ出版され,またどのような点が変更されるのでしょうか。
Gelenberg 
出版は2008年中あるいは2009年の前半になる見込みです。
現在はまだエビデンスの収集段階ですが,収集されたエビデンスは世界的に著名な専門家チームがうつ病治療に関する文献をレビューし,STAR*D(Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression)試験をはじめとする最新のデータを反映したものになるでしょう。
具体的には,治療戦略上,適切なタイミングで定期的に(例えば4~6週間ごとに)症状を評価し,治療の変更が必要かどうかを検討することがリコメンデーションに盛り込まれるのではないかと思います。
また,治療の変更が必要となれば,用量調節なのか,もう1剤追加するのか,薬剤のスイッチングなのか,という検討が必要となるでしょう。

日本では1998年以降,年間の自殺者数が毎年3万人を超え,そのうちの約40%は65歳以上の高齢者という報告が厚生労働省より発表されています。これについて米国の状況とあわせてご意見をお願いします。
Gelenberg 
高齢者の自殺のリスクが高いことは歴史的にみた事実です。
特に1人暮らしの高齢男性は自殺に対してハイリスクであることも明らかにされています。
米国における高齢者の自殺者数が今後どのような傾向をたどるのかは今のところわかりませんが,米国でもベビーブームの時代に生まれた年齢層が今高齢期の年代に達してきており,高齢化は確実に進行しています。

高齢期うつ病の診療におけるSSRIの位置付けと使用に伴う注意点
高齢期うつ病の治療において薬剤選択のポイントと留意点についてお聞かせください。
Gelenberg 
高齢期うつ病では,やはり身体的脆弱性が高いため,忍容性が認められているSSRIやSNRIが第一選択薬として位置付けられると思います。
これらの薬剤を投与する際に重要な点は,寛解に至っても服用を中止しないことです。
特に高齢者では再燃・再発を繰り返しやすいため,通常,最初のエピソードから少なくとも1年,さらに維持療法として最低2年は服用を継続すべきだと私は考えています。

日本では自己判断で服用を中止してしまったり,少し症状が改善すると「用量を減らして欲しい」と訴える患者さんが少なくありません。先生は日常臨床でこのような場面に遭遇した場合,どのように対応されていますか。
Gelenberg 
米国で現在改訂中のガイドラインでは最初のエピソードでも,少なくとも6か月から2年は寛解に達した用量で服用を継続するよう勧告することになります。
患者さんが薬の服用を好まないのはどの国でも同じです。
例えば,高血圧の場合でも脳卒中などの終末的疾患の状態にまで病状が進展しないかぎり,「高血圧の症状」というのは自覚しづらいものです。
そのため,患者さんはなかなか薬の服用を継続しません。これと同じことがうつ病でもいえます。さらに高齢者は高血圧や糖尿病など,1人で何種類もの身体的な基礎疾患に罹患していることも少なくありません。
この場合,既に身体疾患の治療薬を服用しており,ここにさらに抗うつ薬が加わるとなると服薬アドヒアランスを維持するのは大変なことだと思います。
それゆえ,服薬アドヒアランスの高い薬剤を選択することも患者さんの治療継続のためには必要な要素であると考えています。

最初に処方した薬剤を12週間継続しても十分な反応が得られない場合,先生はスイッチングを示唆されていますが,SSRIどうしであればどの薬剤へのスイッチングも同じように行ってよいのでしょうか。
Gelenberg 
まず,スイッチングの前に十分な反応が得られない理由を確認しておくことが大切です。
非反応例のなかには処方した薬剤をきちんと指示通りに服用していない場合がかなりみられます。
まして既に何剤もの身体疾患の薬剤を服用している高齢者では,きちんと飲まれていない可能性のほうが高いのではないでしょうか。
この点をきちんと確認し,本当に効果が不十分であればスイッチングを考えます。
ただし,スイッチングにおいてもSSRIであればどれも同じというわけではありません。
半減期やそのほかの薬理学的特徴は各薬剤で異なってきますので,それぞれの特徴を理解したうえで,スイッチングする薬剤を選択することが大切です。
また,ある患者さんでうまくいったスイッチングが別の患者さんでうまくいくとは限らないことも考慮しなければなりません。
例えば,抗うつ薬以外に多数の薬剤を処方されている高齢者では,最初のSSRIではほかの薬剤との薬物相互作用が認められなかったのに,別のSSRIにスイッチングしたことによって薬物相互作用が現れることもあります。
薬剤の処方数と薬物相互作用との関係を調べた試験では,1度に服用する薬剤が6剤になると薬物相互作用の発生率は約70%,12剤ともなるとほぼ100%の患者さんに起こることが報告されています()。
c0129546_816462.jpg


1人の患者さんが平均6剤の身体疾患治療薬を服用している高齢者の場合,相当の確率で薬物相互作用を起こす可能性があることを念頭に入れる必要があります。
そのため,薬物相互作用を考慮した薬剤選択という観点は高齢期うつ病では最重要事項です。
 

そのため,SSRIを処方する際には,そのSSRIがどのチトクロムP450(CYP)の分子種に対して阻害作用をもつかについて必ず確認してください。

SSRIのスイッチングの際に注意すべきとされているセロトニン症候群については,どのような点に気をつければよいでしょうか。
Gelenberg 
SSRI間のスイッチングでセロトニン症候群が大きな問題になる可能性はそれほど多くはありません。
激しいセロトニン症候群がみられるのはMAO阻害薬とSSRIを同時に服用しているような場合です。

セロトニン症候群の問題よりも,むしろSSRIのスイッチングにおいては,最初に処方したSSRIを突然中止して,いきなり次のSSRIに切り替える方法のほうが好ましくありません。

私は最初に処方しているSSRIの用量を徐々に下げつつ,同時に次のSSRIをゆっくり開始する,cross titrationという方法をとるようにしています。

セルトラリン(商品名:ジェイゾロフトR)は2006年に日本で承認され,現在,精神科だけでなくプライマリ・ケアの先生方でも使用されています。先生のご経験を踏まえ,特に高齢期うつ病治療におけるセルトラリンの有用性についてご意見をお聞かせください。
Gelenberg 
これまでにセルトラリンは高齢者のうつ病患者さんを対象に多くの検討がなされ,忍容性の高い抗うつ薬であることが評価されています。また,CYPを介する薬物相互作用のリスクが低く,さらに認知能力(cognitive performance)に障害を与える可能性が低い薬剤とされています。
認知症との鑑別が困難な高齢期うつ病の場合,認知能力の低下を来さない抗うつ薬というのはとても有用性が高いと評価できます。

セルトラリンは米国では1990年代から広く使用されていますが忍容性が高いことが認められていますので,SSRIのなかでも高齢期のうつ病治療における第一選択薬として使いやすい薬剤であると思います。

Medical Tribune 2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)



[PR]
# by esnoopy | 2008-04-03 00:43 | メンタルケア

BOT(Basal supported Oral Therapy)その2 2/2

1日1回の注射で24時間にわたり血糖を管理できるグラルギンはBOTに最適
河盛 
一般にOHAによる 2 次無効とは,高血糖や脂質異常症が膵β細胞内の酸化ストレスを高め,アポトーシスや線維化を惹起して血糖コントロールが悪化することです。
そのため良好な血糖コントロールが得られてさえいれば,内因性インスリンの効果も高くなります。
膵臓から出たインスリンは,肝臓に直接作用するので,食後の高血糖を下げるのに有効です。1日あたり 1 mgという少量のグリメピリドでも,長期にわたり血糖コントロールが維持できることもよくあります。

インスリン療法が必要と考えられる患者では朝食前も食後も血糖値が高い。
24時間インスリンを補充して,血糖値を"だるまおとし"のように下げる手段が登場しました。
インスリングラルギン(商品名:ランタス)です。
1 日 1 回の皮下注射で血中インスリンレベルを24時間にわたって安定して上昇させます。
グラルギンを巧みにSU薬などと組み合わせると,コントロールがよくなる可能性が出てきたのです。
グラルギンの登場は外来でのインスリン導入に大きく貢献しています。

清野 
従来の中間型(NPH)インスリン製剤は,投与 4 時間前後にピークがあり,ピークによる低血糖を気にすると,十分な増量を躊躇してしまうことがありました。
その点,持効型溶解インスリンアナログであるグラルギンは,効果にピークがなく,1 日にわたって安定した効果が持続します。
このような特徴を有することから就寝時に 1 日 1 回投与し,空腹時血糖を見ながら増量すれば,低血糖を来しにくくなります。
BOTに用いる基礎インスリンとして,グラルギンは最適であると思います。


患者の不安を軽減するためにもインスリン導入は少量から
河盛 
例えばグリメピリドを6mg/日服用し,αGIとBG薬を併用している患者に,BOTを試みる場合,グラルギンはどのくらいの用量からスタートしますか。

吉岡 
患者さんの体重にもよりますが,通常は 4 単位もしくは 6 単位から始めています。
個々の患者さんのインスリン抵抗性の差によって,必要量は異なりますが,ごく少量のインスリンで血糖コントロールが可能であるケースもあります。
そのため,BOTにおけるインスリンの初期投与量もあらかじめ決めずに,少量から開始して増量しながら決定していくことが重要だと思います。

まずは患者さんに,インスリン注射は「簡単」「痛くない」「確実に血糖値が下がる」ことを実感してもらうことが重要です。
実際,導入3〜4日後には多くの方がそれらを実感されています。

私の場合はHbA1cの値が低下するにつれ,SU薬をなるべく減量し,基礎インスリンを増量するという方法を取っています。

清野 
インスリン治療に対する心理的障壁を調査したDAWN(Diabetes Attitudes Wishes and Needs)studyでも,人前でインスリン注射をすることへの抵抗感が明らかになっています。
1 日 1 回投与のグラルギンは,自宅で打つことができるので,患者さんの心理的負担も軽減されます。
また,インスリン治療を始めると,血糖自己測定(SMBG)が保険適用となり費用負担が軽くなるばかりでなく,血糖値が確実に改善し,それを患者さん自身が実感できるというメリットがあります()。
c0129546_7393293.jpg


グラルギン投与は0.1単位/kgから開始しますが,その量であればまず低血糖を生じる心配はありません。


食後の高血糖に対する効果が不十分なら,追加インスリンも検討
清野 
BOTによりHbA1cが治療目標値に達するか否かは,罹病期間やインスリン分泌状況,インスリン抵抗性などにもよります。
空腹時血糖値を見ながらインスリン量を調整し,空腹時血糖値が是正されてもHbA1cが高い場合には,追加のインスリン投与を考慮します。
その場合,OHAはそのままの量を残して,SMBGで高値を示す食後の高血糖を抑えるために,食直前に超速効型インスリンを加えます。

SU薬を減量してインスリン投与量を増やすという考え方もありますが,一方でSU薬を最大量使いながらグラルギンを併用することで,インスリン投与量を低く抑えたまま安定した血糖コントロールの改善が望める例もあります。

河盛 
肥満があると「インスリン分泌が十分で,インスリン抵抗性のため高血糖」と捉えがちですが,日本人ではインスリンを測定するととても低い例が多いですね。
2 型糖尿病においては,わずかな内因性インスリン分泌を有効活用することが重要です。
SU薬によりわずかであれ内因性インスリン分泌が刺激されると,インスリンが肝に流入し食後血糖応答改善に有用です。
インスリン投与量が節約できることも認められていますね。

ところで,インスリン導入後のフォローアップはどうされていますか。

吉岡 
われわれの施設ではクリティカルパスを導入し,インスリン導入 3 日後に糖尿病療養指導士(CDE)が電話やメールで連絡を取り,さらに 1 週間後,2 週間後,1か月後に医師がフォローアップを行っています。

清野 
当院でも基本的には 2 週間に 1 度ご来院いただき,SMBGの結果によっては,インスリン投与量の調整を行います。

河盛 
診療所では,むしろ頻回の,きめ細かい外来診療が可能なのではないでしょうか。
そのメリットを活かして, BOTなどで積極的に「次の一手」を打っていただきたいと思います。HbA1c 9.0%を7.0%まで改善できれば,網膜症や腎症,神経障害,さらに脳卒中,心筋梗塞も確実に減らすことができるのです。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109781&year=2008
medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社


<以前のブログへの追加>
2008.1.23の当ブログ
肝硬変とエルトロンボパグ
http://wellfrog.exblog.jp/8052070
への追加です。

EltrombopagでC型肝炎患者の血小板数が増加
〔ニューヨーク〕ニューヨーク長老派教会病院肝疾患・移植センターの肝臓専門医でコーネル大学Weill医療センター(ともにニューヨーク)消化器病学と肝臓学部門のSamuel Sigal助教授は,新薬のeltrombopagがC型肝炎患者の血小板数を顕著に増加させ,効果的な治療法への道を開いたとNew England Journal of Medicine(NEJM,2007; 357: 2227-2236)に発表した。

30mg投与で患者の74%で血小板数が増加
C型肝炎患者では,しばしば疾患の進展に伴って血小板数が減少する。
この問題は,標準的な抗ウイルス療法が血小板数を危険なレベルにまで減少させることがあるため,結果として患者が必要な治療を受けられなくなることから複雑化している。

Sigal助教授は「今回の研究では,eltrombopagが血小板数を用量依存的に増加させ,重要な治療目標である最初の12週間の抗ウイルス療法を終了できた患者が増加した」と述べている。
同センターは22施設ある研究拠点の 1 つである。

第II相プラセボ対照試験では,C型肝炎ウイルス(HCV)感染により血小板数が少なく,肝硬変を呈する74例を追跡調査した。
対象をeltrombo-pagの投与量別の3群とプラセボ群にランダム化割り付けしたところ,同薬30mg/日投与の最低用量群では患者の74%で血小板数が有意に増加し,50mgまたは75mg/日投与群はそれぞれ79%,95%で増加した。
12週間に及ぶ抗ウイルス療法は3群でそれぞれ36%,53%,65%の患者が完遂した。プラセボ群でこの治療法を完遂できたのは 4 分の 1 未満であった。

副作用としては頭痛,ドライマウス,腹痛,悪心が確認されたが,いずれも治療を中断させるほど重度なものではなかった。

免疫性血小板減少性紫斑病にも有効
また,同センターのJames Bussel博士は,eltrombopagは血中の血小板数が著しく減少する自己免疫疾患である免疫性血小板減少性紫斑病(Immune Thrombocytopenic Pur-pura;ITP)患者で血小板数を増加させ,出血を減少させることに成功したと同誌(2007; 357: 2237-2247)に発表した。
今回の研究はeltrombopagを開発しているGlaxoSmithKline社から助成を受けている。同薬は血小板を産生する細胞の増殖と分化を誘導する研究段階の経口非ペプチド血小板増殖因子で,米国ではPromactaR,欧州ではRevoladeRとして販売されている。正常な血小板機能を回復させる他の薬剤は注入剤または注射剤であるが,同薬は 1 日1回投与の錠剤である。

米国では400万人,世界中では 1 億7,000万人がHCVのキャリアであると推定されている。
HCVはおもに輸血と血液製剤により感染する。感染患者の大多数は,輸血用血液のHCVスクリーニングが開始された1990年以前に輸血を受けるか静注の麻薬を使用していた。
また,かなりまれではあるが,性交渉時と周産期に感染することがある。

HCVは肝臓に炎症と瘢痕化を起こし,患者の約半数が治癒可能であるが,それ以外の患者では重度の肝損傷,肝がんが生じ,死亡することもある。HCV感染は肝硬変,肝移植の最も一般的な原因である。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109131&year=2008Medical Tibune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社
[PR]
# by esnoopy | 2008-04-02 00:12 | 糖尿病

BOT(Basal supported Oral Therapy)その1 1/2

経口血糖降下薬(OHA)に基礎インスリン注射との併用を行うBOTについて勉強しました。

特別企画
座談会
2型糖尿病治療「次の一手」
〜OHAに基礎インスリンを追加する併用療法BOTの可能性〜

2型糖尿病治療においては,細小血管障害や心筋梗塞,脳梗塞など動脈硬化症の発症・進展を防ぐためHbA1cの確実なコントロールが重要である。
近年は,経口血糖降下薬(OHA)のみによるコントロールが困難である場合,基礎インスリン注射との併用を行うBOT(Basal supported Oral Therapy)が有効な治療法として海外では広く行われるに至ったが,日本においてはまだ認知度が十分ではなく,経験が少ないのが現状である。

河盛 隆造 氏(司会) 順天堂大学医学部内科学教授
吉岡 成人 氏 北海道大学大学院医学研究科内科学講座・第二内科准教授
清野 弘明 氏 せいの内科クリニック院長
(発言順)


早期のSU薬による治療介入が良好な血糖コントロールのカギ
河盛 
2 型糖尿病の治療においては,血管障害の発症・進展を抑えるため,年齢や血管障害の程度,生活内容などの背景を考慮しつつ,しかし今まで考えられた以上に,よりよい血糖コントロールを行う必要があります。

ところが,わが国の治療の現状を見ると,必ずしも目標とするHbA1cのレベルに達していないのに,漫然と同一の治療が継続されているケースが少なくないのも事実です。
現在わが国では,HbA1c9.0%以上の糖尿病患者は100万人近くいると計算されているほどです。

加えて,近年20〜30歳代で,軽度の肥満で 2 型糖尿病を発症するケースが増えています。その多くが,糖尿病の家族歴のある方ですが,その方々は余命がとても長いので,今,高血糖を放置せず,速やかに積極的な治療を行う必要があります。

吉岡 
北海道でも,10歳代後半の糖尿病患者さんは,1 型よりも2 型が多い印象を持っています。

清野 
郡山でも若年層の 2 型糖尿病患者さんが増加傾向にありますが,どちらかというと高齢者の糖尿病の方が顕著です。
高齢者でも罹病期間が25〜30年と長い場合には,血糖コントロールの目標を学会基準のHbA1c 6.5%とし,インスリンを導入するなど積極的に治療が必要だと思います。

河盛 
特に,糖尿病に興味のない先生方は,SU薬を含むOHAを多剤服用している患者に対しては,高血糖であってもこれ以上打つ手がないと考えがちで,それが高血糖のままの患者が多い原因の 1 つと考えられます。
そこで, 2 型糖尿病の治療をいかに展開すべきか,どのような方法が有効なのかお聞きします。
最初に,OHAによる治療の現状についてはいかがでしょうか。

吉岡 
OHAの中で最も多く処方しているのはSU薬です。
処方の際は,グリメピリド(商品名:アマリール)を0.5mg/日から始め,症例によっては早い段階で,ビグアナイド(BG)薬あるいはαグルコシダーゼ阻害薬(αGI)の併用を考慮します。
ただし,SU薬についてはそれぞれの患者さんの病態に合った用量を設定するように注意しています。

清野 
私はグリメピリドを朝・夕各 3 mgずつ,1 日最大量の 6 mgまで使うことがあります。
1 mg/日からスタートして徐々に増量していき,2 mg/日あるいは 4 mg/日の時点でαGIやBG薬を併用します。
それでも血糖コントロールが不十分である場合に,6 mg/日への増量を検討します。
それでもうまくいかなければ,OHAに基礎インスリンを併用するBOTを試みます。

河盛 
われわれのグループが行った比較的早期の糖尿病患者を対象とした試験においては,グリメピリドを0.5mg/日から開始し,その後も少量で良好な血糖コントロールを達成できるという結果が出ました。

しかし大学病院や専門施設に紹介されてくる 2 型糖尿病患者は,糖尿病と診断されてから長期間放置していた,また治療期間も長くなった症例が多く,インスリン分泌が低くなっているケースが多いですね。
するとSU薬にBG薬やαGIを追加していてもHbA1cの目標値を達成できない症例も多く経験します。
以上のことから,糖尿病と診断したら,食事療法・運動療法の指導を行い,HbA1cが6.5%以下にならない場合,機を逸することなく薬剤療法を考慮すべき,と思いますね。

吉岡 
SU薬はHbA1cを 1 %改善する効果を持っていると考えられます。
低血糖や体重増加に対する指導が重要ですが,少量のSU薬を上手なタイミングで用いることは,医療経済面においても望ましい方向性であると思います。


BOT導入時はSU薬を減量しないことが一般的
河盛 
SU薬を十分量用い,さらにαGIやBG薬を併用しても治療目標値を達成できない場合には,次のステップとしてインスリンの導入が必要です。

しかし,「2 型糖尿病ではインスリンは不要」と考える実地医家の先生も少なくありません。また慣れないので外来診療でのインスリンの導入に不安を感じることも多いようです。

さて,インスリン導入時にOHAを継続すべきか否かについては,迷われる点だと思いますが,近年はBOTという治療法が注目されています。

BOTはすでにOHAを服用しているところに基礎分泌インスリンを注射で補充する方法です。
インスリン投与前の血糖コントロール状況やSU薬の治療期間にも左右されますが,BOT導入時は,内因性分泌インスリンを有効利用するために,そしてOHA中止に伴う血糖コントロールの乱れを避けるために,SU薬はそのままの用量で継続するのが一般的です。

例えば,グリメピリド 6 mg/日を使っていてもHbA1c 8.0%以上が1年間続いている場合には,BOT導入時にSU薬を減量する必要はまずありません。

この方法についての先生方のお考えをお聞かせください。

吉岡 
いくつかのOHAを併用してなお血糖管理がうまくいかない場合でも,2 型糖尿病であれば,高血糖を是正し,糖毒性を解除することで,内因性インスリン分泌の回復を期待できます。

従来はSU薬とインスリンの併用は効果がないと言われてきましたが,2 型糖尿病においては,適切な時期でのインスリン導入により高血糖が解除されると,膵β細胞の機能が保持されることがいくつかのスタディで示唆されています。
血糖コントロールの悪化を防ぐためにSU薬をそのまま継続し,少量の基礎インスリンから始めて,徐々にステップアップする方法()は,糖尿病の外来診療において,患者・医師,さらに社会的にも受け入れられやすい方法であると思います。

c0129546_0513989.jpg

[PR]
# by esnoopy | 2008-04-01 00:08 | 糖尿病

BOT(Basal supported Oral Therapy)その1 1/2

1日1回の注射で24時間にわたり血糖を管理できるグラルギンはBOTに最適
河盛 一般にOHAによる 2 次無効とは,高血糖や脂質異常症が膵?細胞内の酸化ストレスを高め,アポトーシスや線維化を惹起して血糖コントロールが悪化することです。そのため良好な血糖コントロールが得られてさえいれば,内因性インスリンの効果も高くなります。膵臓から出たインスリンは,肝臓に直接作用するので,食後の高血糖を下げるのに有効です。1日あたり 1 mgという少量のグリメピリドでも,長期にわたり血糖コントロールが維持できることもよくあります。
 インスリン療法が必要と考えられる患者では朝食前も食後も血糖値が高い。24時間インスリンを補充して,血糖値を"だるまおとし"のように下げる手段が登場しました。インスリングラルギン(商品名:ランタス)です。1 日 1 回の皮下注射で血中インスリンレベルを24時間にわたって安定して上昇させます。グラルギンを巧みにSU薬などと組み合わせると,コントロールがよくなる可能性が出てきたのです。グラルギンの登場は外来でのインスリン導入に大きく貢献しています。
清野 従来の中間型(NPH)インスリン製剤は,投与 4 時間前後にピークがあり,ピークによる低血糖を気にすると,十分な増量を躊躇してしまうことがありました。その点,持効型溶解インスリンアナログであるグラルギンは,効果にピークがなく,1 日にわたって安定した効果が持続します。このような特徴を有することから就寝時に 1 日 1 回投与し,空腹時血糖を見ながら増量すれば,低血糖を来しにくくなります。BOTに用いる基礎インスリンとして,グラルギンは最適であると思います。
患者の不安を軽減するためにもインスリン導入は少量から
河盛 例えばグリメピリドを6mg/日服用し,?GIとBG薬を併用している患者に,BOTを試みる場合,グラルギンはどのくらいの用量からスタートしますか。
吉岡 患者さんの体重にもよりますが,通常は 4 単位もしくは 6 単位から始めています。個々の患者さんのインスリン抵抗性の差によって,必要量は異なりますが,ごく少量のインスリンで血糖コントロールが可能であるケースもあります。そのため,BOTにおけるインスリンの初期投与量もあらかじめ決めずに,少量から開始して増量しながら決定していくことが重要だと思います。
 まずは患者さんに,インスリン注射は「簡単」「痛くない」「確実に血糖値が下がる」ことを実感してもらうことが重要です。実際,導入3〜4日後には多くの方がそれらを実感されています。
 私の場合はHbA1cの値が低下するにつれ,SU薬をなるべく減量し,基礎インスリンを増量するという方法を取っています。




清野 インスリン治療に対する心理的障壁を調査したDAWN(Diabetes Attitudes Wishes and Needs)studyでも,人前でインスリン注射をすることへの抵抗感が明らかになっています。1 日 1 回投与のグラルギンは,自宅で打つことができるので,患者さんの心理的負担も軽減されます。また,インスリン治療を始めると,血糖自己測定(SMBG)が保険適用となり費用負担が軽くなるばかりでなく,血糖値が確実に改善し,それを患者さん自身が実感できるというメリットがあります(表)。
 グラルギン投与は0.1単位/kgから開始しますが,その量であればまず低血糖を生じる心配はありません。
食後の高血糖に対する効果が不十分なら,追加インスリンも検討
清野 BOTによりHbA1cが治療目標値に達するか否かは,罹病期間やインスリン分泌状況,インスリン抵抗性などにもよります。空腹時血糖値を見ながらインスリン量を調整し,空腹時血糖値が是正されてもHbA1cが高い場合には,追加のインスリン投与を考慮します。その場合,OHAはそのままの量を残して,SMBGで高値を示す食後の高血糖を抑えるために,食直前に超速効型インスリンを加えます。
 SU薬を減量してインスリン投与量を増やすという考え方もありますが,一方でSU薬を最大量使いながらグラルギンを併用することで,インスリン投与量を低く抑えたまま安定した血糖コントロールの改善が望める例もあります。
河盛 肥満があると「インスリン分泌が十分で,インスリン抵抗性のため高血糖」と捉えがちですが,日本人ではインスリンを測定するととても低い例が多いですね。2 型糖尿病においては,わずかな内因性インスリン分泌を有効活用することが重要です。SU薬によりわずかであれ内因性インスリン分泌が刺激されると,インスリンが肝に流入し食後血糖応答改善に有用です。インスリン投与量が節約できることも認められていますね。
 ところで,インスリン導入後のフォローアップはどうされていますか。
吉岡 われわれの施設ではクリティカルパスを導入し,インスリン導入 3 日後に糖尿病療養指導士(CDE)が電話やメールで連絡を取り,さらに 1 週間後,2 週間後,1か月後に医師がフォローアップを行っています。
清野 当院でも基本的には 2 週間に 1 度ご来院いただき,SMBGの結果によっては,インスリン投与量の調整を行います。
河盛 診療所では,むしろ頻回の,きめ細かい外来診療が可能なのではないでしょうか。そのメリットを活かして, BOTなどで積極的に「次の一手」を打っていただきたいと思います。HbA1c 9.0%を7.0%まで改善できれば,網膜症や腎症,神経障害,さらに脳卒中,心筋梗塞も確実に減らすことができるのです。
 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109781&year=2008
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-31 19:12 | 糖尿病

ドイツの副鼻腔炎ガイドライン

独で新たな鼻副鼻腔炎ガイドライン抗菌薬からステロイドスプレーまで
〔独マンハイム〕 鼻副鼻腔炎の治療に際して,抗菌薬にステロイドを併用すべきか否か,またその併用期間はどれくらいか,あるいはすぐに手術をすべきなのか。
ドイツ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が新たに策定した鼻副鼻腔炎ガイドラインはこうした疑問に答えるものである。
マンハイム大学耳鼻咽喉科のBoris A. Stuck教授らは,同ガイドラインの内容についてHNO(2007; 55: 758-777)で紹介した。


マクロライド系薬に抗炎症作用 
慢性鼻副鼻腔炎は急性のものより発見されにくく,症状は鼻呼吸障害,頭痛,顔面痛,嗅覚障害,くしゃみ,鼻水など,かろうじて副鼻腔炎を疑わせる程度の非特異的なものである。
この場合,画像所見(CT,MRI,内視鏡,超音波)が確定診断の決め手となる。

診断が確定したら,保存療法か手術のいずれかを選択する必要があるが,手術を回避して抗菌薬とステロイドの長期併用投与を行う選択肢もある。
慢性鼻副鼻腔炎の起炎菌は,ほとんどの場合,グラム陰性菌とブドウ球菌であるため,アミノペニシリンとβラクタマーゼ阻害薬の合剤または第 2 世代セファロスポリンを投与する。
再発を防ぐには,症状消失後も 8日間は服用を継続すべきである。

最近の治療法で興味深いのは,低用量マクロライド系抗菌薬の長期投与である。
同薬には抗炎症作用もあるとされており,手術で治癒に至らなかった慢性鼻副鼻腔炎に有効であったとの報告もある。

炎症抑制には,ブデソニドなどの局所ステロイドを用いる。
プロピオン酸フルチカゾンやフランカルボン酸モメタゾンは全身性の影響が特に弱い。
ステロイドの噴霧により,頭痛,顔面痛,鼻閉,鼻水,咳の緩和が見込め,特に鼻ポリープの患者に対して有効である。
未治療の鼻ポリープでは手術の代替療法として,または術後の再発予防を目的としてステロイド療法を 6 〜12か月行うことがある。

抗ヒスタミン薬は急性鼻副鼻腔炎のアレルギー患者に多く用いられる。
また,アセチルシステインなどの気道粘液溶解薬や塩酸アンブロキソールについては,急性鼻副鼻腔炎に対する効果は証明されていない。
保存療法で症状の緩和が全く見られない場合は手術を行う。
眼窩内合併症,頭蓋内合併症,敗血症などが生じた場合も手術に踏み切るべきである。

〈その他の鼻副鼻腔炎治療の有効性〉
・慢性鼻副鼻腔炎の症状緩和のため,鼻副鼻腔炎ガイドラインでは鼻洗浄または高張緩衝液スプレーの使用を推奨している
・湯気などの暖かい蒸気を吸入するという方法は症状緩和には有効と考えられるが,そのことを証明する有力なデータはない
・芳香性オイルの吸入は勧められない。
同オイルが粘膜に付着すると清涼感のために腫脹が消退したかのように感じられるが,臨床的効果は確認されていない
・赤外線や短波療法についても信頼できるデータはないが,局所温熱作用による効果は考えられる
・鍼療法の効果に関するデータはまちまちであるが,頭痛に対する効果は証明されているため,対症療法として利用することができる

独で新たな鼻副鼻腔炎ガイドライン
Medical Tribune
版権 メディカル・トリビューン社

c0129546_7431243.jpg

アイベン・ロール 「ダークサイレンス」  シルクスクリーン 
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p108191220?u=;artfolio11

文部科学省調査 小学生の鼻・副鼻腔疾患の割合が過去最高
文部科学省が実施した平成19年度の学校保健統一調査速報によると,花粉症などのアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの「鼻・副鼻腔疾患」に罹患している小学生の割合は12.0%と,中・高校生や幼稚園児とともに過去最高に,また,成長期に関する調査では早まる傾向が明らかになった。

中高校生や幼稚園児も増加 
調査では,全国の小中高校,幼稚園の健康診断結果から抽出した約332万人,発育調査は約69万5,000人のデータをもとに解析した。

その結果,平成19年度の鼻・副鼻腔疾患の罹患率は,幼稚園児3.7%,小学生12.0%,中学生11.1%,高校生8.4%といずれも前年度と比べて,すべての学校段階で0.1~0.4ポイントの上昇が認められた。
喘息の小学生は3.9%,中学生3.1%,高校生1.8%といずれも前年度より0.1?0.2ポイント増え,過去最高を記録。幼稚園児は0.2ポイント減の2.2%にとどまった。

文部科学省の見解によると,アレルギー疾患情報が一般に知られるようになり,これまで感冒と認識されていたものがアレルギーと判明した例も考えられ,実際にどの程度増加したのかは把握しにくいとしている。

成長期の体格を親の世代と比較すると,現在の高 3 男子が最も身長が伸び,体重が増えたのは小 6 のときなのに対し,30年前の高 3 男子は中1 のときであった。
同様に,現在の高 3 女子の場合は小 4 ~5 にかけて成長幅が大きかったのに対し,30年前の高 3 女子は小 5 ~ 6 のときとなっており,成長期が男女ともに 1 年ほど早まる傾向が認められた。

身長と体重は前年の横ばいであった。
30年前の1977年度と比べて最も差が見られたのは中 1 男子で,身長は+3.4cmの152.5cm,体重は+4.2 kgの44.5kg。女子は小 5 で,身長は+2.6cmの140.3cm,体重は+2.3kgの34.3kgであった。


小学生の鼻・副鼻腔疾患の割合が過去最高
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=å¯鼻èÂÂ&perpage=0&order=1&page=0&id=M4102683&year=2008&type=article" target

慢性副鼻腔炎 
  
生食水による鼻腔洗浄が有効<〔米ニュージャージー州ホーボーケン〕 オックスフォード大学(英オックスフォード)とロイヤル国立耳鼻咽喉科病院(ロンドン)のRichard Harvey博士は,生理食塩水を鼻内に噴霧すると鼻腔の長期感染に伴う痛みや鼻詰まりの症状を緩和できるとCochrane Database of Systematic Reviews(2007; 3: CD006394)に発表した。

アジュバント療法として推奨
人口の 5 ~15%が持続的な鼻腔の感染(慢性副鼻腔炎)を経験している。
多くのホメオパシー(同種療法)やヨガによる健康管理で症状緩和のために生理食塩水を鼻内噴霧することが勧められており,現在では一般的な治療プログラムの一環としても推奨されている。

コクランの研究者チームは,生理食塩水による洗浄の潜在的効果について1,659例を検証した 8 件のランダム化試験と他の16件の研究におけるデータについて考察した。
Harvey博士は「生理食塩水が一般的治療の代替になるというエビデンスはないが,生理食塩水の鼻内噴霧または洗浄は,持続的な感染を抱える患者の症状を改善すると考えられる」と述べている。
 
生理食塩水が症状緩和に効果をもたらす機序については不明であるが,粘液を軟化し,除去しやすくすることによるものと考えられる。
鼻の細胞表面を覆う小さな毛状の突起(線毛)が粘液を除去するための働きをしなくなった場合,生理食塩水が線毛の機能を助ける可能性がある。
さらに生理食塩水は細菌やウイルス,アレルギー物質を鼻外へ洗い出すのにも役立つ。同博士は「慢性副鼻腔炎の症状を緩和するためのアジュバント療法として,食塩水による治療を勧めるべきである」と述べている。

生食水による鼻腔洗浄が有効
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=aA ̄e?≫eAA&perpage=0&order=1&page=0&id=M4035022&year=2007&type=article


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-31 00:20 | 耳鼻科

抗血小板薬と消化管出血

第42回日本成人病(生活習慣病)学会の発表で勉強しました。

~ 抗血小板薬服用時の上部消化管出血 ~
酸分泌抑制薬の併用が発生リスク低減に高い効果 
昭和大学藤が丘病院消化器内科の安田宏講師と同院循環器内科の嶽山陽一
教授らは,虚血性心疾患治療における薬剤溶出性ステント(DES)挿入症例で
抗血小板薬を服用した場合の上部消化管出血発生について,日本人でも欧米
での報告とほぼ同等の頻度で認められることを報告するとともに,「酸分泌抑制
薬を併用すると,そのリスクを回避できる可能性がある」と述べた。


リスクは欧米と日本で差ない
虚血性心疾患での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)では,血管の再狭窄
防止効果が高いDES使用とそれにより発生が危惧される血栓によるステント閉塞
という重篤な合併症を未然に防ぐため,出血傾向のない患者にはDES留置後 1
年間は複数の抗血小板薬服用
が一般的となっている。
 
一方,高齢者の消化管出血発生は抗血小板薬の有無による影響が大きく,欧米
では抗血小板薬のアスピリンとチエノピリジン誘導体の併用投与患者で年間
4 ~5 %の消化管出血が報告されている。

ただ,日本人では欧米人と比べて胃酸分泌量が少なく,胃潰瘍の原因菌
Helicobacter pylori の感染率が高いことがわかっており,PCI後の抗血小板薬
服用で欧米と同程度の消化管出血頻度が見られるかどうかは必ずしも明らかでは
ない。

このため安田講師らは,同院でDES留置後,複数の抗血小板薬を服用し,経過
観察が可能だった198例(血液透析患者,ワルファリン併用者を除く)で,上部
消化管出血の発生頻度と酸分泌抑制薬併用の有無によるリスク軽減効果を調査
した。

198例で判明した抗血小板薬服用状況は,アスピリンとチクロピジンあるいはクロ
ピドグレル併用191例,アスピリンとシロスタゾール併用 7 例。
また,121例は酸分泌抑制薬を服用しておらず,49例がプロトンポンプ阻害薬,
28例がH2受容体拮抗薬を服用していた。

経過観察期間中の酸分泌抑制薬非併用群全体での上部消化管出血発生は
6 例で,累積発生率は 1 年4.5%, 2 年7.5%と欧米とほぼ同様の結果が得
られた。

一方,いずれかの酸分泌抑制薬併用例では,上部消化管出血は 1 例も報告
されず,同薬が消化管出血防止に大きな効果があることが示唆された


http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4108071&year=2008
Medical Tribune 2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
要するにPPIとH2RAを併用すると抗血小板薬服用時の上部消化管出血を完璧に予防することが出来るという報告です。
はたしてこの併用療法、基金は通るのでしょうか。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-28 00:17 | 消化器科

高齢者骨折予防にビタミンD

高齢者の骨折予防にビタミンDが有効
3 件のランダム化比較試験

〔米オハイオ州クリーブランド〕 骨量減少だけでなく,転倒とそれによる骨折を予防するための高齢女性向けビタミンD補給効果について,オーストラリアとフィンランドから 3 件の研究が発表された。

複合的な危険因子の存在示唆
 
<span style="color:rgb(0,0,255);">チャールズ・ガードナー卿病院(オーストラリア・ネッドランズ)のRich-ard L. Prince博士らは,転倒に対するビタミンD補給の効果を検討するため,女性302例(70?90歳)を対象に,オーストラリアのパースで 1 年にわたる研究を行い,その結果をArchives of Internal Medicine(2007; 168: 103-108)に発表した。

同博士らは,この研究の実施背景を
毎年,65歳以上の高齢女性の約 3分の 1 が転倒を経験しており,そのうち 6 %が骨折している。さらに,高齢者では転倒することへの恐怖が大きな問題となっている」と説明している。

この研究では,被験者の抽出に当たり,ビタミンD値が研究対象地域における中央値(24ng/mL)より低いこと,転倒歴があること,クエン酸カルシウム(Ca)1,000mgを毎日摂取していることを条件とした。
被験者を半数ずつ,ビタミンD2 (エルゴカルシフェロール)1,000IUの摂取群とプラセボ群にランダムに割り付けて,6 週間にわたって転倒に関するデータを収集した。
 

試験中に 1 回以上の転倒を経験したのは,ビタミンD2群の80例(53.0%)に対し,プラセボ群では95例(62.9%)であった。
転倒の危険因子である身長の調整後では,ビタミンD2 は転倒が多数回あった被験者には効果が見られなかったものの, 1 回以上転倒するリスクを19%軽減した。
同博士らは,この結果から複合的な転倒危険因子があるものと見ている。
また,ビタミンD2 群のうち,Ca摂取量が多い被験者の転倒リスクは,天候によりリスクが高まる冬季・春季でも23%低下し,夏季・秋季と同レベルであった。


定期トレーニングとの相乗効果で転倒予防
Prince博士らは別の研究で,ビタミンD2 摂取に対するランダム化対照二重盲検比較試験を行い,Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism(2007; オンライン版)に発表した。
これは,女性(70?80歳)における大腿骨骨密度に対するCa補給の相対的な摂取効果を 1 日1,200mgのCa摂取群(ビタミンD2 1,200mg/日またはプラセボ追加)と対照群にランダムに割り付け,5 年にわたり評価したものである。
その結果,ビタミンD2 群では研究期間を通して骨密度が一定に保たれていた一方で,3 年または 5 年経過後のCa単独の摂取効果については,対照群と差は認められなかった。

さらに,タンペレ大学病院(フィンランド・タンペレ)外傷・筋骨格外科・リハビリテーション部整形外科・外傷科の研修医Teppo L. N. Javinen氏らが同様の研究を実施し,BMJ(2008; 336: 124-126)に発表した。
同氏らは,骨折リスク評価における骨密度の適用と精度について疑問を投げかけており,高齢患者に対する重度骨折の予防には,骨粗鬆症の有無よりも転倒リスクに注意を払うよう,医師に推奨している。

同氏らは,転倒予防法として,ビタミンDやCaの摂取に加えて,筋力トレーニングや平衡性トレーニングを定期的に行うことを勧めている。
出典 Medical Tribune2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-27 00:14 | 骨粗鬆症

足首-上腕血圧比と高齢者心血管系イベントリスク

足首-上腕血圧比は高齢者の心血管系イベントリスクを予測する
足首-上腕血圧比が低下または上昇している高齢者は心血管系イベントのリスクが高い。
特に、下肢動脈の硬化は脳卒中とうっ血性心不全の予測因子である。


足首-上腕血圧比が低下または上昇している高齢者は心血管系イベントのリスクが高く、特に下肢動脈の硬化(noncompressible leg arteries)は脳卒中とうっ血性心不全のリスク上昇を予測する因子であるとの研究結果が『Stroke』3月号に報告された。
「足首と上腕の収縮期血圧比が低い場合、死亡や心血管系イベントの発生が予測される」とピッツバーグ大学(ペンシルヴェニア州ピッツバーグ)のKim Sutton-Tyrrell, DrPHとThe Health, Aging, and Body Composition Studyの研究者らは書く。
「動脈の石灰化に伴う足首-上腕血圧比の上昇も死亡のリスクになる。足首-上腕血圧比の上昇と低下や下肢動脈硬化が高齢者の死亡や脳卒中などの心血管系イベントにどの程度関連しているかを中心に検討する」。

研究コホートは70~79歳の成人2,886名で、その生存状況と冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性心不全にしぼった心血管系イベントについて追跡が行われた。
平均追跡年数は6.7年であった。

80%のコホートは足首-上腕血圧比が正常値(0.91±1.3)であった。
低値(≦0.9)は13%、高値(>1.3)は5%であった。
下肢動脈硬化は2%に認められた。

足首-上腕血圧比が1.0未満の低値あるいは1.4以上の高値に該当する場合、死亡率の上昇と関連があった。
足首-上腕血圧比が低い人、下肢動脈硬化が認められる人のイベント発生率は、すべてのエンドポイントに関して足首-上腕血圧比が正常な人より有意に高かった。
足首-上腕血圧比の低下、上昇および下肢動脈硬化に伴う冠動脈疾患のハザード比(HR)は、年齢、性別、人種、有病率の高い心血管疾患、糖尿病、主要な心血管系危険因子の調整後で、それぞれ1.4、1.5、1.7(すべてP<0.05)であった。
下肢動脈の硬化は、特に脳卒中(HR 2.1)およびうっ血性心不全(HR 2.4)のリスク上昇と関連した。

「高齢者では足首血圧の低下あるいは上昇が多くみられるが、そのような場合は心血管系イベントのリスクが高い」と著者らは結論する。
「下肢動脈が硬化した高齢者は、特に脳卒中、うっ血性心不全、心血管疾患による死亡のリスクが高い。今回のデータは、足首血圧からだけでも臨床的に非常に大きな情報が得られることを示している」。

Stroke. 2008;39:863-869.
Medscape Medical News 2008. (C) 2008 Medscape

http://www.m3.com/news/news.jsp?pageFrom=m3.com&sourceType=SPECIALTY&articleId=69822&articleLang=ja

足に動脈硬化が疑われる症状あっても8割が放置--ネット調査
足の血管が細くなったりつまったりする閉塞(へいそく)性動脈硬化症(PAD)が疑われる症状があっても、8割以上の人は医療機関を受診せずに放置していることが、「ジョンソン・エンド・ジョンソン」(本社、東京都千代田区)のアンケートで分かった。

昨年12月、30-60代の男女800人を対象にインターネットで調査を実施。
「歩行中に足にしびれや痛みを感じて歩けなくなり、休むと解消する」というPADの典型的な症状を経験したことのある人は214人いたが、このうちPADを疑った人はわずか8人(3・7%)だった。
対処法は「安静にして様子を見る」が84人(39・3%)で最も多く、▽特に何もしない49人(22・9%)▽市販薬などで対処する16人(7・5%)--が続いた。「病院に行く」と回答したのは35人(16・4%)だった。

同社によると、国内のPAD患者は約600万-700万人。進行すると足の切断に至る恐れもあり、同社は「循環器科、血管外科などを受診することによる早期発見・治療が重要」と呼びかけている。
動脈硬化:足に症状、8割が放置-ネット調査
毎日新聞社 2008.3.25
版権 毎日新聞社

http://mainichi.jp/select/science/news/20080325ddm013100167000c.html

透析患者の心血管イベント予測に足首上腕血圧比が有用
心血管リスクの評価指標として、足首上腕血圧比(ABPI)のほか脈波伝搬速度(PWV)がしばしば用いられる。
日本人の透析患者を対象にした5年間の前向き研究の結果、動脈硬化による心・脳血管イベントに対する予測能は、ABPIの方が優れていることが明らかになった。
米国心臓協会・学術集会のポスターセッションで11月4日、名古屋共立病院循環器内科の青山徹氏が報告した。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/aha2007/200711/504669.html



冠動脈病変を疑う患者における両上腕の血圧左右差と Ankle-Brachial Pressure Index の臨床的有用性
目 的:
両上腕の血圧測定は臨床上実用的であるが,冠動脈病変を疑う患者においての臨床的有用性は明らかではない.冠動脈病変を疑う患者における両上腕の血圧左右差とankle-brachial pressure index(ABI)の臨床的有用性を検討した.
結 論:
両上腕の血圧左右差はしばしば冠動脈病変が疑われる患者にみられ,有意な冠動脈病変と末梢動脈病変を持つ患者において関連がある.このように,両上腕の血圧左右差は冠動脈病変と末梢動脈病変の評価の簡便な指標として有用である.
JC Original Article Abstract 505-1J
50-5;281-289 2007.11
http://www.jcc.gr.jp/green/abstractJ/505-1J.html


<コメント>
他の内科開業医の先生方もそうでしょうが、当院も動脈硬化測定装置なるものを導入しています。
導入して2年近くになります。
患者さんの経過をみていくとPWV(当院の装置ではCAVI)の値が確実に増加していく方がいる一方、変化がないか逆に減少する方がみえます。

血圧脈波検査装置 VaSera VS-1000
http://was.fukuda.co.jp/medical/products/catalog/vascular_screening/vs_1000.html 
増加する方にはEPA製剤を処方するのですが、従来数値で動脈硬化を評価する方法がなかっただけに、かえって説明にとまどってしまうことがしばしばあります。
スタチンを投与してコレステロールの数字だけで話をしている分にはラクだったのですが・・・。
PWV,CAVIといった数値より足首上腕血圧比(ABPI)の方が心血管イベントの評価に有用であるという報告は皮肉な結果でもあります。


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-26 00:02 | 循環器科

心血管イベント制御を念頭に置いた糖尿病治療

第43回欧州糖尿病学会(EASD)で「心血管イベント抑制」をテーマとしたサテライトシンポジウムが行われました。

「エビデンスを作る時代」から「実践する時代」へ  というチャーミングなサブタイトルがつけられています。
従来アカルボースなどのα-GI は欧米人では血糖降下作用などの効果が少ないといわれてきました。
しかし、MeRIA7の結果では心血管イベント抑制には有効という結果でした。
欧米人よりα-GI が有効と思われる日本ではよりよい効果が期待できそうです。

c0129546_8205269.jpg

マックナイト 「夜の神戸コースト」 オリジナル限定シルクスクリーン 
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s90617322?u=;artfolio11

特別企画
EASD2007 サテライトシンポジウム
心血管イベント制御を念頭に置いた糖尿病治療
―「エビデンスを作る時代」から「実践する時代」へ―

糖尿病に合併する心血管疾患(CVD)の予防,また糖尿病の発症自体の予防を完璧に成し遂げる方法は確立していない。
しかし,そのヒントを示唆するエビデンスの蓄積は着実に進んでいる。
次なる段階は,そうしたエビデンスを日常臨床の場に応用・実践することであろう。

昨年オランダ・アムステルダムで開催された第43回欧州糖尿病学会(EASD)のサテライトシンポジウムにおいて,今や世界的な脅威となった糖尿病,CVDの現状とエビデンス,それらの制圧に向けた取り組みが紹介された。
ここではその概要を紹介する。


Rury Holman 氏(座長) 英国・Oxford大学糖尿病・内分泌代謝センター名誉顧問

エビデンスの蓄積が食後高血糖を治療ターゲットに
シンポジウム序盤では,ドイツ・Academic Hospital第三内科主任教授のEberhard Standl氏とスウェーデン・Karolinska大学心臓病学教授のLars Ryden氏より,高血糖とCVDリスクの関連,およびその事実を踏まえたガイドラインについて解説が行われた。

まずStandl氏は,空腹時血糖値(FPG)1mmol(約18mg/dL)の上昇により,60歳未満人口の虚血性心疾患死亡率は42%,脳卒中死亡率は36%も高まるとしたDanaeiらのデータ(2006)を提示。
高血糖がCVDリスクを大きく押し上げることを強調した。

現在,糖代謝異常を呈する人は急速に増加している。
Standl氏は,Ryden氏らが行ったGAMI研究(2004)から,急性心筋梗塞で入院した患者の 3 人に 1 人に糖尿病が,同じく 3 人に 1 人に耐糖能異常(IGT)が潜んでいたことを明らかにしたデータを紹介した。
CVD患者の多くが糖代謝異常を呈することを示すこのデータは,糖尿病の蔓延がCVD増加につながることを危惧させるものという。

では,具体的にはどのような対策を講じればよいのか。
EASDと欧州心臓学会(ESC)の合同ガイドラインには,エビデンスに基づく75項目の推奨事項が掲げられている。
そのなかでもRyden氏が「最重要ポイントの 1 つ」として挙げるのが,経口糖負荷試験(OGTT)による糖尿病およびIGTの早期発見である。
OGTTを冠動脈疾患有病者などには全例実施,それ以外の人々には後述するFINDRISCなどの質問票と組み合わせて適宜実施することは,費用対効果からみてもリーズナブルなやり方だと同氏は述べた。

なお,OGTTによる負荷後 2 時間血糖値がFPGよりも強力にCVDリスクと相関することは,「レベルA」のエビデンスに裏打ちされた最高ランクの推奨事項となっている。
実際,Ryden氏らが遂行したEuro Heart Surveyにおいて,食後高血糖是正作用に優れるアカルボースを中心とした薬物治療を受けた糖尿病新規発症者で,著明なイベント抑制効果が認められたことが,2007年のESC年次集会にて報告されている。
食後高血糖をターゲットとした治療は,現行のガイドラインではレベルC,クラスIIbの推奨にとどまるが,新たなエビデンスを考慮すれば「より高いランクの推奨がなされてしかるべきだ」とRyden氏は指摘した。


発展途上国では,糖尿病に対する意識向上が最重要課題


アカルボースによる食後高血糖改善のCVDに及ぼす影響
シンポジウム終盤に再びChiasson氏が登壇し,CVD一次予防を視野に入れた 2 型糖尿病治療について語った。

前述のように高血糖はCVD発症に寄与する最大の要因であるにもかかわらず,ほとんどの血糖降下薬には2型糖尿病患者に対するCVD抑制効果は認められていない。
そのなかで抑制エビデンスを有するのが,食後高血糖改善作用の高いアカルボースである。
Chiasson氏は,アカルボースを用いた 7 つのプラセボ対照試験のメタ解析・MeRIA7(Meta-analysis of Risk Improvement under Acarbose-7)の結果を提示し,アカルボース群では35%もの有意な全心血管イベント抑制効果が認められたことを紹介した()。
c0129546_7492693.jpg


なお,本シンポジウムの最後に,座長を務めた英国・Oxford大学糖尿病・内分泌代謝センター名誉顧問のRury Holman氏より, IGTを有するCVD既往患者におけるアカルボースのCVD二次予防効果を検討する大規模臨床試験・ACE(Acarbose Cardio-vascular Evaluation)が紹介された。予定追跡期間は最低 4 年。結果発表は2013年に予定されている。


出典 Medical Tribune2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-25 00:05 | 糖尿病

女性の脱毛症

近当院を風邪で受診された40代の女性の話です。
風邪としての診察を終わった後に、「風邪とは関係ない話なんですが・・・」といって、髪の毛をいきなり後ろから前へかきあげました。
円形脱毛症というにはあまりにも大きな脱毛でした。
「ここ数週間で急に毛が抜けるようになって」とのことでした。
とりあえずフロジン液を処方し、今後の治療方針はまた考えましょうといって帰っていただきました。
そんな中、こんな記事が目にとまりました。

女性にも脱毛症は大問題
 

〔ニューヨーク〕女性の 3 分の 1 以上は生涯のうちで病的な脱毛を経験している。
より重要なのは,脱毛による精神的影響が医師により過小評価されていることである。
ブリティッシュコロンビア大学(UBC,カナダ・バンクーバー)とニューヨーク大学(ニューヨーク)に所属するJerry Shapiro博士は New England Journal of Medicine(2007; 357: 1620-1630)に総説を発表した。


前頭部は保たれるのが特徴
脱毛は瘢痕性と非瘢痕性に大別される。 
瘢痕性脱毛は円板状ループス,毛孔性扁平苔癬,禿髪性毛包炎などで生じるが,今回の総説の焦点は女性の非瘢痕性脱毛である。

女性型脱毛は女性の脱毛原因として最も多く,ほとんどは家族性で,思春期以後のいつの時点でも発症し,70歳以上の女性では38%が発症する。
女性型脱毛は頭皮の中央部に生じ,前髪は残る。また,後頭部より中心線上に多い。
一部の女性ではさらに他の型の脱毛が加わり,側頭部の頭髪も薄くなる。
前頭部の脱毛が目立つ女性の場合,中心線はモミの木のようになる。
このパターンは前頭部強調と呼ばれる。
また,側頭部の頭髪が薄くなる女性もいる。

女性型脱毛はしばしばアンドロゲン性脱毛と呼ばれるが,Shapiro博士は「このタイプの脱毛におけるアンドロゲンの役割は不明で,患者の多くは血中アンドロゲン値が正常である」と説明している。

男性型脱毛が女性に生じることもある。
このパターンでは頭頂部と前頭・側頭部の頭髪が薄くなる。
男性型脱毛の女性は高アンドロゲン血症と想定されることが多いが,実際には異なる。中等度?重度の脱毛女性109例の研究で生化学的高アンドロゲン血症が認められたのは42例(38.5%)で,このうち11例は臨床的多毛の証拠がなく,24例は希発月経・無月経の証拠がなかった。 


他疾患,薬剤,ストレスも要因
女性における脱毛のもう 1 つの大きな原因は休止期脱毛である。
その特徴は多数の成長期毛が突然休止期毛に移行することである。成長期毛の毛幹は皮下脂肪に深く固定されており,頭皮に 3 ~7 年とどまるのに対して,休止期毛は皮膚の表面にあり深く固定されていない。
正常な頭髪には定期的に 3 か月程度の休止期がある。成長期毛と休止期毛の比率は通常 9 対 1 であるが,休止期脱毛では 7 対 3 になる。
休止期脱毛の女性では24時間以内に300本以上の頭髪が抜けることもある。

Shapiro博士は「このタイプの脱毛は一般に重大な疾患などのストレス(手術,出産,急激な体重減少,栄養不良,高熱,出血など)またはホルモン障害(甲状腺機能不全など)から約 3 か月で発症する」と述べている。
休止期脱毛は30種類以上の薬剤の投与開始後にも報告されている。例えば,ヘパリン,インターフェロンα,isotretinoin,リチウム,テルビナフィン,チモロール,バルプロ酸,ワルファリンなどである。

休止期脱毛では原因が除去されれば約 6 か月以内に回復するが,一部の患者では長引くこともある。

抗がん薬は成長期脱毛を引き起こし,成長期毛が直ちに破壊されて脱落する。

その他の非瘢痕性脱毛の原因として円形脱毛がある。
これは自己免疫性と考えられ,時として頭髪全体の脱毛(全頭脱毛)ないしは全身の脱毛(汎発性脱毛)に至ることもある。

間違った手入れによる脱毛も
髪の手入れが脱毛の原因となることもある。
例えば,髪の自然な成長方向とは逆方向へのブラッシングやコーミング,パーマ剤,脱色剤,弛緩剤の使用,編み髪などである。

強迫性の抜き毛(抜毛狂)も脱毛の重要な原因である。
抜毛狂は他の精神疾患と関連していることがある。
さらに,細菌感染や頭部白癬も重要である。
決定的ではないが鉄欠乏の関与も示唆されている。

臨床では,脱毛の持続期間とパターンを記録しておく必要がある。
髪が抜け落ちるのは円形脱毛か休止期脱毛を示唆し,一方,髪が薄くなるのは女性型脱毛を示唆している。
髪が付け根から抜け落ちるか(休止期脱毛,女性型脱毛,円形脱毛を示唆),毛幹に沿って切れているか(髪の手入れによる脱毛,抜毛狂,頭部白癬の特徴)の識別も重要である。

髪の手入れについてと,まつげや眉毛,その他の体毛の脱落についても問診すべきである。
Shapiro博士は「脱毛の始まる 1 ~ 3 か月前に他疾患の既往,出産,手術,心理社会的ストレス,新しく服用し始めた薬剤があれば休止期脱毛が示唆される。
ニキビ,月経不順,多毛はアンドロゲン過剰による女性型脱毛が示唆される。
甲状腺機能亢進症や低下症の症状も評価すべきで,過去と現在の服薬は入念に見直すべきである。
厳格な菜食主義や月経過多の患者は鉄欠乏性貧血が関与している可能性がある」と述べている。

まず頭皮と頭髪を詳細に観察
臨床診察は 4 段階を踏むべきである。
まず,頭皮の炎症,鱗屑,紅斑を調べる。
次に,脱毛に伴う瘢痕を評価する。
非瘢痕性脱毛は毛包が開いている(小孔)のに対して,瘢痕性脱毛には小孔がない。
 
3 番目に,脱毛の分布と頭髪の密度を調べる。
4 番目に,毛幹の質すなわち,径,脆弱性,長さ,形状を調べる。髪の先端が鈍いなら,断毛が疑われる。
次第に細くなる先端は正常である。脱毛の活動性と重症度を評価するには引毛試験を行う。
60本くらいの髪をつかみ,根元から先端に向かって引いてみる。
6 本以上の髪が抜けると陽性で,脱毛は活動中である。

血液検査ではフェリチンと甲状腺刺激ホルモンを調べる。
アンドロゲン過剰であれば遊離テストステロンを評価すべきである。梅毒の危険因子があれば,この疾患を除外すべきである。

白癬が疑われるなら脱毛部の鱗屑を水酸化カリウム塗抹標本で菌糸を調べ,培養検査すべきである。
毛幹も採取して培養検査すべきである。
特定の皮膚糸状菌( Microsporum canis )があれば,ウッド灯で観察すると緑色の蛍光を発する。
Shapiro博士は「診断に疑問が残れば,頭皮からの 4 mmパンチ生検も有益である。
この検査は瘢痕性脱毛が疑われる患者では特に有益である」と述べている。


minoxidilの局所投与が効果的
治療の前に,一般に頭皮の中心線部分の写真を撮影し,その後の比較に用いるべきである。治療効果が現れるには 6 ~12か月を要する。

治療にはminoxidilの 2 %と 5 %の局所投与液が用いられる。
5 %液の優位性を示す客観的なデータはないが,Shapiro博士は臨床経験と患者の満足度に基づいてminoxidil 5 %液を好んで用いる。
1 年以内に有効性が明らかになれば,治療を無期限に続けることが多いという。

Minoxidilは妊婦や授乳中の母親には禁忌である。
同薬局所投与液の副作用は接触皮膚炎と対称性顔面多毛(女性の 7 %で頬と額に細毛が生える)で,5 %液で多く認められる。

最近,minoxidil 5 %フォームも発売されており,局所投与液よりも接触皮膚炎がはるかに少ない。

抗アンドロゲン薬と経口避妊薬も時として女性型脱毛の治療に用いられるが,それを支持する堅固なエビデンスはほとんどない。
同博士は「抗アンドロゲン薬は催奇性が知られているので,妊娠可能年齢の女性には経口避妊薬も同時に処方すべきである」と説明している。


頭髪移植も選択肢
脱毛治療の外科手術を求める女性は増加しつつある。
現在,頭髪移植は毛包単位で行われており,経験ある外科医が施行する自然な結果が得られる。
Shapiro博士は,この方法は費用がかかり,そのうえ頭皮のドナー部位に十分な頭髪密度が必要で,長期的アウトカムのデータはほとんどないと指摘している。
移植片脱落率はきわめて低いがゼロではない。
合併症は少ないが,感染,永続的な頭皮異常感覚,動静脈奇形がある。

移植後のminoxidil療法は多くの外科医により推奨されているが,この方法についての厳密な研究は行われていない。

患者のための脱毛情報は,北米頭髪研究学会(North American Hair Research Society)のウェブサイト(www.nahrs.org)で入手可能。

c0129546_7222857.jpg
c0129546_722471.jpg


Medical Tribune 2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-24 00:17 | その他

高齢虚血性大腸炎の重症化因子

第42回日本成人病(生活習慣病)学会での発表で勉強しました。

虚血性大腸炎

心血管系合併症や便秘は高齢患者の重症化因子に 
虚血性大腸炎は,動脈硬化に伴う血管攣縮や血栓・塞栓といった血管側因子,便秘による腸管運動異常に伴う腸管内腔圧上昇といった腸管側因子が相互に作用して
大腸粘膜血流障害を引き起こし,発病すると考えられている。
東京都で開かれた第42回日本成人病(生活習慣病)学会(会長=昭和大学豊洲
病院外科・熊谷一秀教授)では北里大学東病院消化器内科の春木聡美氏らが,
虚血性大腸炎症例の解析から「心血管系の全身合併症や便秘習慣を有する高齢者
は重症化する危険性が高く,発病や病状の進展に血管側因子と腸管側因子が関与
していると考えられる
」との見解を示した。

症状再発率に合併症などの有無は影響少ない 
春木氏らが解析対象としたのは,虚血性大腸炎441例(平均発病年齢51.5±
11.8歳)。
病型別内訳は一過性型425例,狭窄型16例で,平均発病年齢はそれぞれ
50.9±15.5歳と68.1±14.9歳であり,重症度がより高い狭窄型で平均発病年齢
が高い傾向が見られた。

これら解析症例のうち,心血管系全身疾患を合併していたのは130例。
合併症内訳(重複あり)は高血圧症87例,脂質異常症21例,糖尿病19例,虚血性
心疾患18例,不整脈13例,その他 4 例。

合併群では平均発病年齢63.2±12.4歳,狭窄型割合8.5%(11例)に対し,非合併
群では平均発病年齢46.6±14.5歳,狭窄型割合1.6%( 5 例)と非合併群でともに
低かった。

また,排便習慣では,便秘傾向があるものが221例存在し,このなかでの狭窄型割合
は5.9%(13例)と排便傾向がない182例での1.6%( 3 例)より高率となっていた。
これらから心血管系合併症や便秘を有する症例では重症化,高齢化することが確認
された。

一方,解析対象の4.8%(21例)で一過性型の再発が認められたが,再発率は心血管
系合併症を有する症例群5.4%,合併症のない症例群4.5%,便秘傾向の有無では
便秘傾向を有する症例群5.0%,便秘傾向のない症例群3.8%と,いずれのケースでも
有意差はなく,心血管系合併症や便秘の有無と再発との間に相関関係は認められな
かった。

c0129546_8135533.jpg

安居素子 [花]油彩3号
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p106906656

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-21 00:14 | 消化器科

基礎研究者の壊滅が将来の医学界の崩壊に

展望   基礎研究者の壊滅が将来の医学界の崩壊に
現在の危機的状況を認識すべき

将来,基礎医学の教育や研究を支える人材の壊滅が現実味を帯びている。
現在,医学部では卒業後2年間の臨床研修必修化,モデルコアカリキュラム導入がいずれも実施され,大学外の臨床志向を求める医学生が増加している。
一方で,基礎医学領域においては生化学講座などの統廃合がなされ,Medical Doctor(MD)の大学院生やポスドクの人数はきわめて少数なのが現状。
日本生化学会医科生化学・分子生物学教育協議会委員長である日本医科大学生化学教室の西野武士教授は「医学は本来,基礎と臨床のそれぞれの専門科目のきっちりした習得のうえに立った統合のなかから,多様な創造が生み出されるが,基礎医学領域の教育的基盤が崩れている現状は近い将来,臨床領域の崩壊をも導くことになり,医学界全体の崩壊につながりかねない」と危機感を募らせている。
同教授に基礎医学領域で今,何が起こっているのか聞いた。


基礎医学研究者は1990年をピークに減少
西野教授によると,基礎医学に携わる研究者数は1980年代には増加していたが,90年ころをピークに現在まで減少の一途をたどっている。

日本生化学会の会員を対象とした調査を見ると,生化学または分子生物学を専攻している医学部または歯学部学生会員数は1989年の670人から2007年には201人と約3分の1にまで減少した(図1)
c0129546_20495521.jpg

クリックすると拡大します。

大学でも全国的に基礎医学に携わる研究者数の推移は同様の傾向にある。
日本を代表する某国立大学を例に取ると,1990年ころをピークに基礎医学研究者数は右肩下がりに顕著な減少が見られ,2007年における医学部卒業者のうち基礎医学に携わる研究を専攻していたのは1~2人であった。

同教授は現在の医学教育制度の問題点として,「基礎医学教育・研究の軽視や基礎医学研究者(特に医学部出身者)の減少,講義・実習時間数の減少や基礎医学講座の縮小,統合などによるリストラなどが挙げられる」と言う。


大学院の博士研究員がいない
こうした現状に対し,日本生化学会医科生化学の分子生物学教育協議会では前委員長である大阪大学微生物病研究所疾患糖鎖学の谷口直之教授が中心となり,「基礎医学教育・研究の危機」をテーマに,2006年10月に同協議会会員(44大学の教授51人)を対象にアンケートを行った。
西野教授は,アンケート結果から「学生の臨床志向,研究者減少,生化学講座の縮小など,基礎医学研究が着実に衰退に向かっている」と警告している。

アンケート内容を見ると,基礎医学教育・研究に対する危機について聞いたところ,「実感している」と答えたのは88%,「少し実感している」は12%で,「あまり感じていない」との回答はなしであった。
その理由(複数回答)は,「学生の臨床志向」と「研究者の減少」がそれぞれ60~70%,「生化学講座の縮小・統合」と「予算面・資金面」がそれぞれ約40%,「教育面での縮小」が約30%などであった。
生化学講座の統合・縮小が「実施されている」との回答は25%,「計画中」との回答は18%であった。

また,基礎医学研究におけるMD研究者の必要性について聞くと,存在が「必須」と答えたのが49%,「あれば望ましい」が47%と,多くが必要性を認識していた。
基礎と臨床の医学が統合されている全国共用試験(CBT)で基礎医学を独立させる考え方については,「賛成」37%,「反対」25%などであった。

ところが,臨床医学領域の所属を除いた大学院生,博士研究員,MD研究者の在籍数を見ると,大学院生では在籍数が「1人」の回答が23%と最も多く,次いで「0人」21%,「2人」20%,「3人」または「4人」それぞれ10%,「5人」8%,「8人以上」4%で,平均2.7人であった。
大学院生の在籍数のうちMD数については,「0人」と答えたのが60%と過半数を占めており,「1人」16%,「2人」14%,「7人」または「8人」はそれぞれ回答なしなどで,平均0.9人であった(図2)。

博士研究員の在籍数でも,「0人」の回答が80%(平均0.7人),「1人」6%など,博士研究員在籍数に含まれるMD研究者数も「0人」が86%(同0.2人),「1人」6%などときわめて少数であった。

また,モデルコアカリキュラムでbiologyなど語尾に「-ology」が付く科目を廃し,臨床志向の基礎医学が重視されている現状については,「まず科学者を育てる視点から基礎医学を位置付けるべき」との回答は約40%,「『-ology』を教えることが重要」は約35%であった(図3)。

c0129546_20503064.jpg

臨床研究の進歩に大きな弊害
「基礎医学教育・研究の危機」に対する打開策(複数回答)で半数以上得られた回答は,「臨床研修制度を改善し基礎系大学院に入学しやすくする」(約70%),「総合科学技術会議・日本学術会議などから基礎医学重視の政策提言」(約65%),「各教員が魅力ある教育を行う」,「各学会が連携して文部科学省に予算を含めて基礎医学の重視を訴える」(それぞれ約55%)などであった。

このような,基礎医学研究の戦略的プログラムの必要性から,同協議会では,MD-PhDコースに特別進学プログラムを設置するなどの制度改革や基礎医学重視の政策など,トップダウンの実効的な提言・改革を推進していくとしている。

西野教授は「現在の医学教育は,臨床医を養成するためのプログラムを先行している現状にあることから,基礎医学にかかわる研究者が,近い将来には皆無になってしまう恐れがある。
さらには,臨床研究の基盤の壊滅にもつながり,ひいては臨床研究の進歩への大きな弊害になることが考えられる」と危惧している。


プラス選択で医学研究発展を 
ただし,アンケート項目のモデルコアカリキュラムで廃止が検討されている-ologyについて,西野教授は「なぜ廃止という二者択一のマイナス選択になるのか,基礎と臨床の両方,さらにこれらを融合させた科目などプラスの選択があってもよいのではないか」と疑問を呈しており,「-ologyは医学研究では分子レベルに応用した段階であり,さらに分子レベルをさまざまな体系で複雑に組み合わせて統合して初めて創造性を構築することになる。
その過程が医学研究全体の発展につながる。
きちんとした生化学・分子生物学などの基盤が臨床研究の進展に果たす役割は大きい」と強調する。

さらに,研究者が創造性を見出すためには,さまざまな研究分野の専門家(スペシャリスト)から学ばなければならない。
「医学部出身のスペシャリストが存在しなくなると,学ぶ側は基礎医学を軽視し結果的に基礎学力が乏しくなることで創造性が衰弱してしまい,模倣の研究を繰り返すことになる。ひいては臨床応用の幅を狭めてしまうのではなかろうか」(同教授) 

同教授が米国のメディカルスクール(医学部)に留学していたときは医学部としての教育だけでなく,理学部や薬学部などのスペシャリストからも教育を受けていたという。

こうした医学研究にかかわる多様な専門分野を学ぶことができるという教育基盤を,わが国で整備できるのかというと現実的には難しい。

同教授は「現在,医療崩壊が指摘されているが,問題が実感されてから対策を講じていくのでは間に合わないし,まさに今は危険な泥船に乗っているようなものである。
基礎医学領域の研究者がほとんどいないという現実は,10~20年後に医学界自体の衰退という第二の医療崩壊に向かっている」としており,「対策を考えることは早急な課題であるが,まずは現在の医学界の危機的状況を認識してもらうことが第一歩ではないか」と主張した。
Medical Tribune 2008.3.13
版権 メディカル・トリビューン社


c0129546_21193336.jpg

シャガール  「捕らわれのクロエ」  リトグラフ
http://page11.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/n55136492

<コメント>
先生方は基礎医学教室の出身学部をみられたことがありますか。
以前からもそうだったんでしょうが、最近では特に医学部出身者が減っているようです。
原因としては、臨床研修必修化などによる臨床医育成志向が根底にあるのは間違いないところです。
現場を知らない役人が臨床現場だけでなく、基礎分野の生態系を見事に荒廃させてくれています。
医学研究は総合大学も単科医科大学も余り変わりない研究体制のような気がします。
文中の、米国では学部を超えた相乗りの研究云々とありましたが学部間の横断的研究を国内では余り聞かないのが残念です。
最近、早稲田大学と東京女子医科大学の共同研究の話題もありますが、おおいに学部の垣根を越えた研究をしていただきたいものです。

基礎医学研究者の減少が国内だけなのか、世界的な傾向なのか是非知りたいところです。
国内だけの問題とすれば政府は医師偏在(これも愚策が原因)といった問題でけでなく、この問題にも早急に手をうつ必要があります。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-19 00:45 | その他

ガムをかんで体重が激減

ソルビトールにより小腸吸収が低下
ワシントン〕 フンボルト大学シャリテ病院(ベルリン)消化器病学のJugen Bauditz博士らは,チューイングガムや菓子などの無糖食品中に広く用いられている甘味料ソルビトールは緩下作用を有し,小腸における吸収を低下させるため過剰摂取には注意が必要と BMJ(2008; 336: 96-97)で警告を発した。

体重が約20%減少
この助言は,慢性下痢,腹痛,体重の激減を伴う 2 例を検討した結果行われた。
広範な検査が実施されたものの,最終的な診断は食習慣の詳細な分析の後に確立された。
問診の結果,2 例とも大量のシュガーレスガムと菓子を摂取していたことがわかった。
 
1 例目(21歳女性)は,大量のシュガーレスガムをかんでおり,ソルビトール( 1 枚のチューイングガムに1.25gを含有)の 1 日の摂取量が18~20gにのぼった。
2 例目(46歳男性)では,毎日20枚のシュガーレスガムをかんで200gの菓子を食べており,両者で30gのソルビトールを摂取していた。

2 例ともソルビトールを含有しない食品を食べるようになると,下痢は軽減し,正常な便通が再開するとともに体重が増加した。

Bauditz博士らは「予想される副作用は,通常はソルビトール含有食品に記されている細かい注意書きにのみ書かれているため,消費者はその緩下作用に気付かず,また自己の胃腸障害との関連性を認識できずにいる恐れがある」と述べている。

結論として,同博士らは「これらの症例は,ソルビトール摂取が慢性的な下痢と機能的な胃腸の不快感を引き起こすだけでなく,意図しない大幅な体重の減少(通常の体重から約20%の減少)の原因となりうることを実証している」と述べている。
このように,説明のつかない体重減少の研究には,ソルビトール含有食品に関する詳細な食事歴を含むべきである。

Medical Tribune  2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社


c0129546_951438.jpg

五十嵐晴徳 日本画10号「鯉」
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s89714950?u=;ginza_kaigakan

<関連サイト>
シュガーレスガムのかみ過ぎは重度の体重減少を招く
http://health.yahoo.co.jp/news/detail/?idx0=w14080117
独身者やガムをかむ人は肥満になりにくい
http://health.yahoo.co.jp/news/detail/index.html?idx0=w02071104
高齢者の便秘の治療に安価なソルビトールを推奨したい
http://www.e-clinician.net/vol39/no412/pdf/recently_412.pdf

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-18 00:30 | その他

動脈硬化と脳機能に密接な関係

高齢者の学習能力と記憶能力に影響
〔米テキサス州ダラス〕 メリーランド大学(メリーランド州ボルティモア)心理学科のShari R. Waldstein教授らは,加齢研究の参加者1,749例について動脈硬化度と脳機能の関係を検討し,動脈硬化は高齢者の学習能力や記憶能力の低下をもたらすとの結果を Hypertension(2008; 51: 99-104)に発表した。

脈波の伝播速度で検討 
加齢に伴い,動脈は硬化し,これが進むと収縮期血圧(SBP)が上昇する。
SBPの上昇は心血管疾患(CVD)リスクの上昇を意味する。

動脈硬化の指標には,脈圧(PP)とより直接的な脈波伝播速度(PWV)がある。共同研究者で米国立加齢研究所(NIA)の心血管科学研究所臨床心血管研究部長であるSamer Najjar博士は「心臓が拍動するたびに血液が拍出され,これが波のように大動脈を流れ器官に到達するが,その際に大動脈が膨張する。
このようなPWVは測定可能で,動脈壁が硬いほど脈波は速く移動する」と説明している。
PWVはPPよりも鋭敏な指標とされているが,PPとPWVの上昇はいずれも脳卒中などのCVDの独立した予測因子であることがこれまでの研究で明らかにされている。


記憶力に大きな差 
今回の研究では,NIAが1958年に開始し,現在も継続しているボルティモア加齢縦断研究(Baltimore Longitudinal Study of Aging)の参加者1,749例(平均年齢57歳)から得られたデータを検討した。
被験者は初回スクリーニング時に認知症と脳卒中がなかった。

14年間の追跡期間中,スクリーニングを繰り返して脈圧上昇を検討し,言語記憶と非言語記憶(言葉と絵の想起),作動記憶(情報を保持し処理する能力),注意力など広範囲に及ぶ脳機能の検査を定期的に行った。

今回の研究では,11年間追跡した582例(男性258例,女性324例)で測定したPWVのデータも解析した。
なお,PWVは試験開始時の測定値のみ含めた。

その結果,PPおよびPWV上昇が記憶に影響を及ぼすことが明らかになった。

Waldstein教授は「動脈硬化が進行している症例では学習,記憶と作動記憶に経時的な低下が見られた。
研究では認知症または脳卒中と診断された症例は解析対象外としていることから,今回の解析結果は,動脈硬化度が認知症や脳卒中既往のない症例における認知機能の低下と関連していることを示している」と述べている。

一方,注意力,手と眼の協調,ものの名称を正しく挙げる能力や発話の流ちょう性には動脈硬化の影響は見られなかったことについて,同教授は「特定の脳領域が動脈硬化の影響を受けやすいことを示している」と説明している。

研究では,現在得られる最大の,PPと認知機能の繰り返し行われた同時検査の値を使用し,広範囲の神経心理学的検査を実施したが,被験者は教育レベルが高く,白人の割合が高かったことから,他集団でもこの知見が当てはまるとは限らない。


脳機能保護を目標とした動脈硬化対策を 
Najjar博士は「動脈硬化に関連する危険因子を治療すれば,最終的には高齢者の脳機能の保持に役立つ可能性がある」と期待を寄せ,将来的には動脈硬化が精神機能の維持を目的とした薬剤療法の標的となる可能性も示唆している。
また脳機能の維持を目的として,動脈硬化を直接の標的とする新しいクラスの薬剤が開発される可能性がある
今後は各種クラスの降圧薬を検討し,PPとPWVと認知機能との関連に及ぼす影響を調べる必要があるとしている。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4108011&year=2008Medical Tribune  2008.2.21
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
文中に「動脈硬化を直接の標的とする新しいクラスの薬剤」とありますが、現時点ではそれを謳った薬剤がないことを不思議に思ってきました。
抗動脈硬化作用を目的にスタチンやARBが、脂質異常や高血圧のない方に使用されている例も現時点であるかも知れません。
EPA製剤が現時点での抗動脈硬化剤といったところでしょうか。
昔エーザイがエラスチームという薬剤を出していました。
もちろん今でもあるのでしょうが、とんと話題にならなくなりましたが。
c0129546_7361130.jpg

平松礼二 「路・花の月」 日本画4号
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v47790688?u=;ginza_kaigakan

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-17 00:35 | 脳血管障害

ウエスト周囲径「偏重」は疑問

ちょっと古い記事の紹介で申し訳ありません。
日経メディカル2005年12月号への掲載記事(「オピニオン」)からです。
この時点ですでに門脇先生は鋭く「ウエスト周囲径」の基準値について問題提起してみえます。
この慧眼には敬服します。

東大代謝内科教授 門脇 孝 先生
今年4月、日本内科学会や日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会など国内8学会が合同でメタボリックシンドロームの診断基準を発表した。

高血圧、脂質代謝異常、耐糖能異常は重積しやすく、これらが心血管病の大きなリスクになることは疫学調査からも明らかであり、これまでも「死の四重奏」として同様の病態が心血管病のリスクとなることは指摘されてきた。
今回、国際的なコンセンサスのある診断基準が策定されたことで、新たに国際比較することが可能となった。
また、「ウエスト周囲径」という理解しやすい項目を必須としたことで、医療関係者や国民の意識が向いたことも評価すべきだろう。

だが、ウエスト周囲径(男性85cm、女性90cm)を必須条件とし、他に血圧、食後血糖値、脂質の異常の3つのうち2つを満たす場合をメタボリックシンドロームとする診断基準を、正しく運用していくためには臨床上、次の点に留意が必要である。

「90」はリスクを広く拾えず
まず注意が必要なのは、ウエスト周囲径の基準値だ。
第3次米国コレステロール教育プログラム成人治療パネル(NCEP  ATP-mⅢの基準では男性102cm、女性88cm、国際糖尿病学会(IDF)ではそれぞれ94cm、80cmとされている。
女性の基準値が男性より大きいのは日本だけであることに加え、現場の医師からは90cm未満の女性でもリスクが集積しているとの声が上がっている。

われわれ東大糖尿病・代謝内科では、新潟県のコホート研究で調査を行い、リスクファクターの重積とウエスト周囲径の関係を調べた。その結果、男性では85cmという基準でリスク重積者の75%をとらえることができた一方で、女性は90cmでは80%程度を見逃すことになってしまった。
ウエスト周囲径を必須項目とするならば、これだけリスク重積者を見逃してしまうのは問題だ。

そもそも、ウエスト周囲径を必須条件にすること自体にも疑問が残る。
米国で男女1万人以上を11年間追跡したARIC(Atherosclerosis Riskin Community)スタディーでNCEP-ATPⅢの5項目(高血圧、HDLコレステロール(HDL-C)低値、中性脂肪高値、空腹時血糖高値、ウエスト周囲径)のうち、何が心血管病を予測するかを調べたところ、高血圧とHDL-C低値は有意に相関を示し、中性脂肪についても有意差こそ示さなかったものの、相関の傾向が見られた。
だが、空腹時血糖値高値とウエスト周囲径については心血管病を予測しなかった。
この結果を見れば、心血管病予測の点からは、ウエスト周囲径を診断基準上必須条件とする根拠は少ないと考えざるを得ない。

概念自体には賛成
私はメタボリックシンドロームの概念自体には賛成である。
生活習慣病の予防として有用な概念であり、高リスク者を把握するという観点からも意味がある。
今後エビデンスが集積されることで、診断基準はより良いものに改訂されていくはずだ。

ちなみに、われわれのコホート研究で、80%のリスク重積者を拾い上げるためのウエスト周囲径は男性83cm、女性73cmだった。
日常診療にメタボリックシンドロームの診断基
準を使う場合には、
①ウエスト周囲径のみを絶対の指標としない
②診断基準とは別に「男性83cm、女性73cm」を境界域として扱う
などの工夫が必要となってくるだろう。

Nikkei Medical 2005.12


c0129546_1634436.jpg

マックナイト『ミコノスの眺め』アートポスター
http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g63338517

<関連サイト>
腹囲論争
http://wellfrog.exblog.jp/7416058

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-14 00:12 | その他

予期せぬところに疾患リスク

米オハイオ州クリーブランド〕これまであまり想定されていなかったリスクが,最近いくつか報告された。

コンピュータからノロウイルス感染 
ノロウイルスは感染力が強く,米疾病管理センター(CDC)は,感染者が使用したコンピュータのキーボードやマウスから感染が拡大する恐れがあると Morbidity and Mortality Weekly Report(2008; 56: 1340-1343)に発表し,新たに注意を呼びかけている。

今回の警告は,ワシントンの小学校(教職員66人,児童314人)で発生した103例のノロウイルス感染の調査結果を受けたもの。CDCの疫学者Shua Chai博士によると,コンピュータのキーボードやマウスがノロウイルスの感染源になりうることを示した報告は今回が初めてという。

同博士は「コンピュータ使用後に手を洗うことが予防につながる。また,コンピュータのキーボードやマウスは希釈した漂白剤で定期的に消毒すべきである。ノロウイルス感染は,米国の感染性嘔吐下痢症のおもな原因であり,こうした予防措置が感染拡大の防止に役立つはずだ」と述べている。


脚の軽度外傷が血栓形成に関与 

ライデン大学(オランダ・ライデン)臨床疫学のKarlijn J. van Stralen博士らは,1999?2004年に静脈血栓症を発症した2,471例と,非患者群3,534例を比較した結果,患者群では血栓症発症前 3 か月間の軽度外傷の受傷率が11.7%(289例)であったのに対し,非患者群の同時期の受傷率は4.4%(154例)であったと Archives of Internal Medicine(2008; 168: 21-26)に発表した。

同博士は「手術やギプス包帯,長期の就床安静の必要がない軽度外傷により,血栓症の相対リスクは 3 倍に増加した。
相関は血栓症発症 4 週間前の受傷で最も強く,10週間前の受傷では顕著でなかったため,一過性の影響であることが示唆された。
また,血栓症の遺伝的リスクを保有していた患者では,さらに相関が強かった」と述べている。

さらに,「血栓症を発症した患者は,おそらく最初に家庭医を受診したと思われる。
したがって,家庭医が静脈血栓症発症リスクの高い患者を同定し,予防的措置を講じられるようにすることが重要な課題である」と指摘している。


水分大量摂取で低Na血症に 
マラソン競技中には多くの水分を補給し,体内の水分を維持する必要があることは,ほとんどのランナーが知っている。
しかし,水分の過剰摂取に重大な危険が潜んでいることは,おそらくあまり知られていない。これに関してメソジスト病院(テキサス州ヒューストン)内科のJames Muntz部長らは「水分を大量摂取するランナーに見られる低ナトリウム(Na)血症は,緊急治療を行わないと死亡するケースもある。
高血圧でない限り,大量の水ではなく塩分を多く含むスポーツドリンクを摂取すべきである」と忠告している。

同部長によると,ボストンマラソン参加者を対象とした最近の研究で,完走者の13%が低Na血症を呈していた。ランナーが悪心や脱力を感じている場合,大量の水分補給を続けると,こうした症状が悪化する場合もある。


ホルモン含有補助食品に前立腺がん進行リスク 
テキサス大学サウスウェスタン校(UTS,テキサス州ダラス)泌尿器科学のClaus Roehrborn主任教授らとベイラー医科大学(テキサス州ヒューストン)の研究者らは医師に「前立腺がん患者に対するホルモン製剤を含む栄養補助食品の使用は前立腺がんの進行を加速させ,抗がん治療の有効性を低下させる恐れがあることを警告すべきである」と Clinical Cancer Research(2008; 14: 607-611)に発表した。

このような栄養補助食品には,実際には含まれていない成分が容器ラベルに表示されていたり,抗がん治療に悪影響を及ぼす成分が含まれている場合もあった。

今回の研究では,テストステロンとエストラジオールを含有する栄養補助食品の摂取で,ヒト前立腺がん細胞の増殖が促進されることがわかった。
処方薬と異なり,こうした栄養補助食品に対する監視は不十分であるため,同教授らは米食品医薬品局(FDA)に改善要求を提出。
これにより,メーカーへの警告と当該製品の市場からの回収が行われた。

筆頭研究者でUTSのShahrokh Shariat博士は「米国の現行法では,栄養補助食品に流布されているような薬理学的効果が実際にあるのか,製品のラベルが消費者に正確な情報を提供しているかに関する監視や確認をほとんど行っていない」と指摘している。

米国では,成人の42?69%がなんらかの栄養補助食品を摂取していると推算されている。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4110542&year=2008

[PR]
# by esnoopy | 2008-03-13 01:35 | その他

糖尿病と心血管疾患

糖尿病患者が心血管障害の合併が多いことは異論の余地がありません。
きょうの2つの報告も当たり前のような内容かも知れません。
しかし実際に論文になっているわけですから、その深い意味を汲み取らなければなりません。

2型糖尿病の高齢者には心保護薬のみでは不十分
ラバル大学(カナダ・ケベック)薬学部のCaroline Sirois氏らがDiabetes Care(2007; 30: 1880-1882)に発表したところによると,同氏らが実施した66歳以上の 1 万2,150例を対象とした住民対象コホート研究から,新たに治療を受ける 2 型糖尿病の高齢患者では,心保護薬のみでは不十分であることが明らかになった。


今回の研究知見は>「経口血糖降下薬による治療を開始した患者に対する心血管リスク管理は,適切とは言えないことを示唆している」と結論付けている。

経口血糖降下薬の投与開始後,最初の 1 年間に, 1 万2,150例のうち2,649例(21.8%)が抗血小板薬,4,813例(39.6%)が降圧薬,2,562例(21.1%)が脂質異常症治療薬の投与を受けた。
糖尿病治療薬の開始前に,これら 3 系統の薬剤のいずれかによる治療を受けていた患者は除外した。

総合的心保護療法(CCR)を受けていた患者は,882例(7.3%)のみであったことが明らかにされた。
CCRは,糖尿病治療薬投与開始後 1 年以内に降圧薬,脂質異常症治療薬,抗血小板薬のうち 1 剤以上を使用することと定義した。
この定義によると,フォローアップ期間中の異なる時期にこれら 3 剤それぞれの使用が可能だったことになる。


5 人に 1 人は血糖管理が不十分
多変量解析では,3 因子は有意水準で統計学的に有意のままだった。
高齢患者では比較的若年の患者と比べて,CCRを受けていた割合が低かった。
心血管疾患と診断された患者は,CCRを受けていた割合が高かった。


また,2000年,2001年または2002年に糖尿病治療薬の投与を開始した患者は,1998年または99年に開始した患者と比べて,CCRを受けていた割合が高かった。
したがって, CCRを受けているオッズ比は,98年の3.5%から99年には3.8%,2000年には7.3%,2001年には 10.4%,2002年には12.9%に上昇した。
 

今回の研究知見は,糖尿病患者における薬剤の使用は最適でないことを立証した以前の観察研究 3 件の知見を支持している(Klinke JA, et al. Clinical Therapeutics 2004; 26: 439-446,Toth EL, et al. Pharmacotherapy 2003; 23: 659-665,Saaddine JB, et al. Annals of Internal Medicine 2006; 144: 465-474)。 

米疾病管理センター(CDC)慢性疾患予防・健康増進センターのJinan B. Saaddine氏らは,これらの観察研究のなかで最も新しい研究として,糖尿病と診断された18〜75歳の患者を対象とした米国の調査について報告しており,治療法が改善されたにもかかわらず「糖尿病患者の 5 人に 2 人はLDLコレステロール,3 人に 1 人は血圧,5 人に 1 人は血糖の管理が不十分なことが明らかにされた」としている。

家庭医で低い処方率 
同様に,王立自由大学(ロンドン)プライマリケア・人口科学のJonathan R. Emberson氏らは,60〜79歳の男女(8,538例)を対象とした研究により,「糖尿病患者では,糖尿病が認められない患者と比べて冠動脈性心疾患(CHD)リスクを低下させる薬剤の投与を受ける率が高かったが,予防的治療を受けている患者の比率は両群とも低いことがわかった」とHeart(2005; 91: 451-455)に発表した。 
さらに最近,新たに糖尿病と診断された65歳以上の10万5,714例のデータを用いたカナダの住民対象研究から,降圧薬の投与を受けていた患者は 3 分の 2 にすぎず,脂質異常症治療薬の投与を受けていた患者は 4分の 1 にすぎなかったことが明らかにされた。
さらに,この研究から内科医,老年病専門医,内分泌専門医と比べて,家庭医は降圧薬や脂質異常症治療薬の処方率が最も低かったことが明らかにされた(Shah BR, et al. Diabetic Medicine 2006; 23: 1117-1123)。
 
一方,ウェイクフォレスト大学(ノースカロライナ州ウィンストンセーラム)のDavid C. Goff, Jr.博士らはAmerican Journal of Cardiology(2007; 99: S4-S20)に発表した 2 型糖尿病患者を対象とした心血管疾患予防に関する論文で,「 2 型糖尿病患者は人口動態特性が同様である非糖尿病患者と比べて,心血管疾患死亡率が 2 〜 4 倍高い」と指摘している。
 同博士らは「疫学分析から,グリコヘモグロビンが 1 %上昇するごとにCVDリスクは約18%上昇することが示唆された」と述べている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4044381&year=2007
Medical Tribune 2007.11.1
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
糖尿病患者を診療する場合、総合的心保護療法(CCR)を行う必要があるとのことです。
しかし、私自身この「総合的心保護療法(CCR)」という言葉を今まで聞いたことがありません。
それにCCRは何の略(abbreviation) なんでしょうか。
そして「心保護薬のみでは不十分」というタイトルとのつながりもよく理解できませんでした。
しかし、心血管疾患合併の多い糖尿病患者ではそれらの予防を含めた積極的治療介入を行う必要があるという趣旨は理解できました。
要するに血糖の数値だけみていてはいけないということなんでしょう。

糖尿病と心血管疾患
http://www.e-clinician.net/vol39/no408/pdf/sp11_408.pdf
c0129546_8171327.jpg

アイズピリ リト 「サントロペ」
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t65686490?u=;artfolio11


糖代謝異常で心血管疾患リスクや死亡率が上昇
〔ニューヨーク〕 オーストラリア国際糖尿病研究所(オーストラリア・コールフィールド)のElizabeth L. M. Barr氏らは,血液循環に関する全豪レベルの大規模コホート研究を実施し,糖尿病レベルには至らない高血糖により心血管疾患(CVD)死亡率や全死亡率が上昇するとCirculation(2007; 116: 151-157)に発表した。

CVD予防が必要 
この研究は対象の 1 万428例を5.2年(中央値)にわたり追跡調査したもので,糖尿病と診断されていない場合でも,糖代謝異常と死亡率との間に強い相関が認められることを明らかにしている。
空腹時血糖異常(IFG)やimpaired glucose tolerance(IGT)が認められる患者では,5 年死亡リスクが50~60%高かった。 
耐糖能正常者と比べて,IFG患者の調整ずみ全死亡のハザード比(HR)は1.6〔95%信頼区間(CI)1.0?2.4〕だった。
またIGT患者のHRは1.5(95%CI 1.1?2.0)だった。

これと比べて,糖尿病が既知の患者のHRは2.3(95%CI 1.6?3.2)で,新たに糖尿病と診断された患者のHRは1.3(95%CI 0.9?2.0)であった。 

Barr氏らは「全カテゴリーの糖代謝異常の患者に対してはCVD予防が必要と思われる」と述べている。

対象の 1 万428例中298例が死亡した。
そのうち88例はCVDが死因で,そのうちの65%は既に糖尿病か新規に糖尿病と診断された患者,または試験開始時にIFGまたはIGTが認められた患者であった。

年齢,性のほか一般的なCVD危険因子を調整した後でも,既知の糖尿病(HR 2.6,95%CI 1.4?4.7)だけでなく,IFG(HR 2.5,95%CI 1.2?5.1)も独立したCVD死亡予測因子であった。
対照的にIGT(HR 1.2,95%CI 0.7?2.2)は独立したCVD死亡予測因子ではなくなった。

同氏らは「今回の研究から,IGTは全死亡と関連するだけでなく,IFGも全死亡やCVD死亡の独立した予測因子であることが明らかになった」と述べている。


血糖障害は二次的予防の標的 
Barr氏らは「糖代謝異常は正常な内皮機能を妨げ,アテローム動脈硬化巣の形成を促進し,動脈硬化巣の破裂やそれに続く血栓形成に寄与するため,糖代謝異常により大血管疾患の尤度が上昇することが,実験的研究からも示されている」と説明。
さらに,「高血圧や脂質異常などのCVD危険因子は,糖代謝異常の存在により悪化する可能性がある」としている。

今回の研究とは別に,スカラボリ病院(スウェーデン・スケブデ)内科のM. Bartnik氏らは>「CVDリスクは,正常とみなされるレベルで明らかに血糖値のスペクトルに伴い上昇する」とJournal of Internal Medicine(2007; 262: 145-156)に掲載された高血糖とCVDとの関係についてのレビューで説明している。
このレビューで同氏は,経口耐糖能検査を「冠動脈疾患の全患者を対象とした総リスク評価の一部とすべきだ」と主張し,「血糖障害は一般的で検出が容易であるため,新たな二次的予防努力の適切な標的となりうる」と述べている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4044381&year=2007


Medical Tribune 2007.11.1
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
まずは、「糖代謝異常」という言葉ですが定義はどうなっているのでしょうか。
文中には空腹時血糖異常(IFG)やimpaired glucose tolerance(IGT)と書かれています。
IFGとIGTを分けて検討していることでかえって理解しにくくなっている感もありますが、それとも分けたことが新知見なのでしょうか。

糖代謝異常の病態と管理
http://www.jc-angiology.org/journal/pdf/2006/449.pdf
糖尿病型にも正常型にも含まれないものが境界型となる。
この境界型は,
① 将来糖尿病を発症する可能性が高い,
② 糖尿病性細小血管合併症(網膜症,腎症,神経障害)を来すことはほとんどない,
③ 虚血性心疾患などの動脈硬化症のリスクは糖尿病と変わらない,といった特徴がある。

一方,メタボリックシンドロームにおける耐糖能異常は検診でスクリーニングすることを念頭に設定されており,日本では空腹時血糖値が110mg/dl以上で診断する。

耐糖能障害(IGT):病気ではない?
http://www.id.yamagata-u.ac.jp/LaboratoryMedicine/Japanese/DiabetesCare.html

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-12 00:04 | 糖尿病

航空機内におけるドクターコールと医師の責任

飛行機や新幹線に乗っていてドクターコールを受けた先生方もおみえになると思います。
私は開業医のため、あまりそんな状況に遭遇する機会はありません。
しかし久しぶりに乗った新幹線で「お客様で具合の悪い方がおみえになります。お医者さんはいませんか」コールを受けてしまいました。

お医者さんはいませんか?
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2007/10/22

そんな時、先生方はどうされますか。
最近読んだエッセイで「飛行機に搭乗した時にまず祈るのは墜落しないようにということは勿論だが、乗客に病人がでないようにということ」。
そんなことが書かれていました。
少し古い記事ですが、ちょっと紹介させていただきます。

航空機内での急病人発生等で、医師をはじめとした医療関係者への協力を求める機内アナウンスについて、航空会社では「ドクターコール」と呼んでいる。
質問者の意図が医師法が適用される国内航空会社機内を想定していると思われるので、これを前提としたい。

ドクターコールの呼びかけに応じた医師の責任については、まず、機内での傷病発生に対する航空会社の責任について記述する必要がある。
航空会社は機内で発生した事故、事件が原因となった以外の発病や負傷については責任がない。
しかし、航空会社は機内での管理者として旅客の安全を確保する注意義務を負っており、傷病が発生した旅客について可能な範囲内での適切な措置をとる必要がある。
航空会社は、この管理者としての注意義務の観点から、機内で発生した傷病者に対応する具体的措置として、医師等の同情の有無を確認して援助を求めるためにドクターコールを行っている。
また、医師が自発的に治療を申し出た時に使用してもらう主旨から医師用医薬品(ドクターキット)を搭載している。

航空機内に限らず一般的な診療行為での医師の責任については、通常の医師等に期待される程度の注意を怠った時に、民事上の損害賠償責任が生じると考えられる。
さらに、注意義務違反の軽重によっては業務上過失罪等の刑事上の責任も追及される可能性がある。

しかし、機内でドクターコールに応じた医師にかかる責任については、飛行中の航空機内という特殊な状況下で行われる診療行為であることからも明らかなように、診療を行う場所が医療施設ではない上に、利用できる医療器具、医薬品も限られることから、医師に要求される注意義務違反は、通常の医療施設における診療行為に対する注意義務違反とは異なり、相当に軽減されると解される。

また、医師法一九条一項は「診療に従事する医師は、診療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と、医師の応召義務を規定している。
だが、医師法では「診療に従事する医師」と規定していることから、たまたま航空機に乗客としている搭乗している医師には応召義務は生じないと考えられ
る。

機内には医師のほかにも看護師や救急救命士といった有資格者が同乗している可能性があり、コメディカルにも呼びかけるアナウンス内容に変更してもよいではないか、という質問者からのアドバイスについては、国内航空会社大手三社からの返答を紹介したい。

現在の大手国内航空会社がドクターコールで呼びかける対象は、日本航空が「お医者様、看護師の方」、全日本空輸「お医者様、または医療関係の方」、日本エアシステム「医師、看護師、または医療関係の方」と呼びかけており、救急救命士に直接援助は呼びかけていない。

しかし、救急救命士が手伝いを申し出る例は多くある(日本航空広報部)という。
また、各航空会社によると、現在、機内での除細動器の取り扱いについて、客室乗務員だけではなく、救急救命士にも求める声が挙がっており、もし取り扱いが可能になるようであれば、医師や看護師のほかに救急救命士の援助を求めるように検討したいとの回答があったことを付記する。

最後に、急病人に対しその病態を診断し治療を行う診療行為の主体はやはり医師であろう。
このことから、もしドクターコールのアナウンスがあった場合には、人道上の立場から積極的な援助をお願いしたいと考えている。

日本医事新報 No.4094 2002.10.12


ドクター・コール
http://good-old-days.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_1014.html

機内のお医者様アナウンスに戸惑う
http://mainichi.jp/life/health/hitokoto/news/20080227ddn041070031000c.html

3万フィートの先進医療
http://www.jstm.gr.jp/mebio200102_3.pdf

3万フィートの心停止
http://www.jstm.gr.jp/mebio200102_2.pdf

飛行機内でのドクターコール
http://www.kanoya-travelmedica.com/DrCall.html

以下はスレのネタです。


■飛行機にお医者さんが乗り合わせる確立は7割だそうです

■この頃除細動器載せてる航空会社あるらしいけど
それってなんか有ったら医者にただ働きさせる気って事?

■機内でのドクターコールはご存知の通り任意ですよね。
こちらが事前に手にしているpassenger informationで、
職業や勤務先が記載されていますので(Cクラス以上ですが)お医者様が
どの席にいるか、私どもがわかっている場合でも、名乗り出ない方もいらっしゃいます。
それはそれで....
もし、本当に一人もいらっしゃらない場合は、コックピットから
無線で地上のお医者様とやりとりをして、指示をうけながら措置を行わなければ
ならないので本当に大変です。

■この前、ドクターコールを致しましたところ、6名ものお医者様が
載っていらっしゃいました。わたくしが知っている限りでは
6名は最高記録です。
大抵は必ずお一人はいらっしゃいます。

■新幹線で1度ある。その時、もう一人若い医者が来た。
気分悪くなった本人が「私、過換気症候群です。」と言ったので
紙袋を口に当てて、しばらく様子をみて席に戻った。若い医者は
英雄気取りで、「それは最後に下す結論です。」とか言って最後まで
付き添っていたみたい。降りるときに住所と名前をきかれた。
後で、時刻表と絵はがきが送られてきた。

■私が新幹線の中で倒れた人をちょっと見たときは、
その10日後に丁寧な礼状(もちろん印刷済のやつ)と
オレンジカード3000円分が送られてきたよ

■日経メディカルの飛鳥田一朗(日本航空宇宙環境医学会理事長)の論文上の
データから国際線国内線別にドクターコールに当たる確率を計算してみました.
98年度の日本航空の1日あたりの運航実績は,国際線243便,国内線129便,
1年間で国際線88695便,国内線44895便.それに対してドクターコールは
国際線年平均88.6件,国内線年平均18.4件.つまり1回の搭乗で
ドクターコールに当たる確率は,
国際線88.6/88695 × 100 = 0.1%
国内線18.4/44895 × 100 = 0.04%
言い換えると国際線では1001フライトに1回,国内線では2440回に
1回という低確率になります.

■98年度の日本航空の1日あたりの運航実績は,国際線243便,国内線129便,
合わせて376便.1年間で137240便.それに対してドクターコールは
年平均107件.つまり1回の搭乗でドクターコールに当たる確率は,
107/1371240 × 100 = 0.078%,
言い換えると1283フライトに1回という低確率になります.
確かにこのタイミングで偽造した医者の名刺を持っている人は
いないかも.
引用
飛鳥田一朗(2000)航空機内での医療.日経メディカル,1,127-131

■参考までに,1999年度全日空機内での急病人発生状況を記します.

急病人発生件数223件(うち,ドクターコール件数152件)

国内線()内は人数
意識障害(39),気分不快(31),痙攣発作(19),呼吸困難(14),
腹痛,背部痛(12),下痢,嘔吐(7),胸痛,胸部不快(6),
打撲,捻挫,骨折,切創(5),熱傷(2),
頭痛(2),急性アルコール中毒(2),発熱(1),その他(8),

国際線
意識障害(16),腹痛,背部痛(12),呼吸困難(10),
打撲,捻挫,骨折,切創(6),気分不快(6),胸痛,胸部不快(5),
痙攣発作(5),発熱(2),急性アルコール中毒(2),頭痛(1),
下痢,嘔吐(1),婦人科関連(1),その他(7),

■ユナイテッド航空
輸液セット,エピネフリン注射液,ジフェンヒドラミン注射液,
ニトログリセリン錠,血圧計,聴診器,エアウエイ,注射器,注射針,
駆血帯,消毒綿棒,手袋,

■ルフトハンザドイツ航空
輸液セット,エピネフリン注射液,エホチール注射液,アダラートカプセル,
ベラパミル注射液,ブスコパン注射液,ジアゼパム座剤,ジゴキシン注射液,
ネオフィリン注射液,アトロピン注射液,ラシックス注射液,
プレドニゾロン注射液・座剤,タベジール注射液,カルシウム注射液,
キシロカイン注射液,ニトログリセリン錠,メテルギン注射液,血圧計,
聴診器,注射器,エアバッグ,マスク(大,中,小,小児用),吸引器,喉頭鏡,
小外科セット(メス,鋏,鉗子,糸,針),消毒綿,気管挿管セット,導尿セット,
体温計,手袋

■私の調べた印象では,機内搭載医薬品・医療器具の充実度は
豪州>日系≧欧州>>>>>>>米系
です.米系では名乗り出てもろくな医薬品がないので,
知らん振りをした方が無難に思えます

■米国では「良きサマリア人」を保護する連邦法(Good Samaritan Law)
が制定されており,故意もしくは重過失の場合を除き緊急に機内急病人治療に
当たった医療従事者及び航空会社は米国内の裁判所にて損害賠償責任を免れる,
とされています(4).

■しかしながら,この問題に関して患者側から医療従事者への訴訟が
世界で一例も起こされていないので,どこまでが重過失に問われるかは
線が引かれていないのが現状です.実際の所,欧米のように
国民に「良きサマリア人」の概念が染みとおっていない日本でこそ
「良きサマリア人」を保護する法律が必要だと思います.



他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-11 00:09 | その他

小脳障害におけるめまい疾患の鑑別


浅の川総合病院脳神経センター 廣瀬源次郎先生

はじめに
小脳は視覚系、固有感覚系とともに前庭・小脳系として四肢体幹の筋肉を有効に活性化して四肢・体幹動作の協調制御に関与し、平衡感覚を保持する機能を持つ。
そのため、小脳障害では何らかの平衡運動障害がみられると同時に、急性障害では小脳から密な連絡を受ける前庭神経核機能にも左右アンバランスが突然生ずるため、眼球運動異常を伴い、しばしば回転感を伴い、自己あるいは周囲が回転する錯覚を経験する回転性めまいを訴える。
一方、徐々に起こる小脳疾患である腫瘍や変性疾患では、左右アンバランスが小脳の持つ特徴的代償機能により補正されることから、回転感の錯覚は起こらず、急性回転性めまいとはならず、緩徐進行する小脳失調だけの訴えが多い。

回転性めまいを来たす小脳疾患

回転性めまいを来たす小脳疾患の代表は、急性の血管障害で、小脳梗塞、椎骨脳底動脈不全症と小脳出血であるが、小脳を含む脳幹脳炎(傍腫瘍性を含む)でも異常眼球運動であるオプソクローヌス、ミオクローヌスを伴い、重篤な急性めまいを来たすことが多い。
上眼瞼向きや下眼瞼向きの垂直性自発眼振がみられる疾患、たとえば小脳結合腕や虫部脱髄巣を有する多発性硬化症、脊髄小脳変性症、Chiari奇形1型、フェニトイン中毒などでは、血管障害でなくとも回転性めまいがみられる。表に急性めまい・ふらつき症状を来たす小脳疾患をほぼその頻度順にあげる。

小脳血管障害の鑑別
突然に起こる急性回転性めまいと平衡感覚障害は本症の特徴であり、意識清明にもかかわらず、はげしい頭痛と嘔吐に加え小脳失調による著明な立位・歩行障害があれば小脳出血が疑われる。
通常、小脳歯状核周辺に出血することが多い。
めまいと平衡障害だけで意識清明、頭痛がなければ、小脳梗塞をまず念頭に置くべきである。
小脳血管支配は、上小脳動脈(SCA)、前下小脳動脈(AICA)および後下小脳動脈(PICA)による。

SCA症候群では、小脳半球上面・側面だけでなく、中脳、外側橋上部の虚血を来たすことから、病側の運動失調、企図振戦、回転性めまい、悪心・嘔吐、健常側への水平性眼振、著明な運動失調とめまいがみられ、眼球は健常側に偏位し、対側への衝動性眼球運動はovershoot、病側への運動はundershootする。
さらに、橋症状として対側体幹・上下肢の温痛覚低下、深部感覚低下がみられる。

AICAは、内耳動脈を介して内耳末梢迷路を灌流するほかに、中枢では吻側前庭神経核、中小脳脚、片葉、および近在の種々の小脳小葉を支配しており、本動脈域の虚血は小脳半球中部の虚血とともに橋下部外側虚血を来たし、PICAによる小脳障害と同様の病側運動失調、推尺障害とともに、前庭神経炎様の方向一定性眼振がまれにみられるが、ほかに橋症状が加わることが多い。
AICA症候群の特徴は、その分枝である内耳動脈も虚血を来たし末梢蝸牛症状である難聴が小脳・橋症状とともにみられることである。

PICAは尾側前庭神経核、延髄背外側、小脳垂、および小脳結節を支配する。
本動脈は内側枝と外側半球枝に分かれ、前者内側枝は小脳虫部の下部前庭小脳(片葉・小節)を灌流しており、この枝単独の虚血では急性めまいを来たし、その所見として回旋性方向一定性眼振のみがみられることから、急性の末梢性前庭臆害に似た症状を来たす(偽性迷路徴候)ため、前庭神経炎との鑑別が重要である。
後者の虚血では下部小脳半球の広範囲の梗塞を来たし、病側への偏い、推尺障害などの著明な小脳症状がみられる。
またPICAは延髄外側をも灌流するため、この領域での虚血は、延髄外側症候群=Wallenberg症候群として特徴的症候を呈すことでよく知られている。

出典  Medical View Point 2007.1.10

c0129546_755314.jpg

[PR]
# by esnoopy | 2008-03-10 00:05

ハイテク手術で肝がんを安全に切除

数日前に、当院へ通院してみえたHCV/HCCの患者さんが亡くなられました。
ある病院の依頼で、SNMC療法のみを当院で行っていた方です。
部分肝切除を目的に、しかる病院に入院されたのですが、入院中に肝不全が進行し、なすすべもなく亡くなったと、奥様が報告に来院されました。
血小板数も少なくLCもあるため手術は難しいと予想された症例ですが残念です。

このように肝がんの手術の多くは肝機能低下や出血傾向を持っているため、手術が難しいだろうということは内科医の私にも理解できるところです。

さて、そんな肝がんの手術ですが、ハイテク手術が現れました。

c0129546_11243795.jpg

アイズピリ  「青いバックのオレンジの花瓶の花束」 リトグラフ 
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t65686480

〔米ペンシルベニア州フィラデルフィア〕ジェファーソン医科大学(フィラデルフィア)外科の移植外科医であるCataldo Doria准教授は,非観血的肝切除術と名付けた新しい手術用の器具を開発した。
同准教授によると,この器具により人体で最大の臓器である肝臓を75%まで安全に切除できるという。
また,患者の予後は改善し,回復に要する日数は半減したという。

目標は無輸血
Doria准教授は何百例もの肝臓手術を手がけてきた。
今回新しく開発した 2 つの手術器具により,出血を防ぎながらがん組織の切除が可能になったことで,限局性肝がんや他の肝疾患患者の治療成績に驚くべき成果をもたらしている。
これらの器具を用いればほとんど出血しないため,患者の回復は早まる。
同准教授は「このことから,われわれは"非観血的"と呼んでいるが,目標は輸血を不要にすることだ」と述べている。

米国では原発性肝がんの新規発症例は増加し続けており,肝がんと診断される米国人の数は過去10年間で倍増した。
米国肝臓財団によると,米国では原発性肝がん例の80%以上に肝硬変が関与するとされている。
肝障害の原因はC型肝炎ウイルス(HCV)またはB型肝炎ウイルス(HBV)と過剰飲酒が大部分を占める。
肝がんの危険因子はほかに肝硬変がないHBV持続感染と肥満がある。

限局性肝がん患者に対しては,一般に外科的切除が最良の治療選択肢となる。
しかし,肝臓は門脈と肝動脈の 2 大血管から血液供給を受け,門脈には腸管からの血液がすべて流入する。
従来法による血管網のような肝臓の切除は,どのような外科医にとってもきわめて困難である。従来法では5~10単位以上の輸血が必要になるが,この新しい非観血的切除術ではそれらをすべて変えてしまった


メスを使わず肝細胞を吸引 
Doria准教授は「肝臓は血液で充満したスポンジのような臓器なので,従来法による切除では大出血の恐れがある。しかし,新しい方法ではメスで切除するのではなく,肝細胞を吸引したうえで速やかに血管を密封してしまう」と説明している。

新しい手法では,メスの代わりに超音波外科的吸引器(CUSA)を使う。
これは超音波を利用して肝細胞を吸引するもので,血管は温存される。
第2の器具であるTissue Linkと呼ばれる探触子(プローブ)を用いて別の外科医が執刀医をフォローする。
この探触子の先から滅菌温水を放出すると,肝臓の血管が凝固・結紮される。
この 2 つの器具により,非観血的手法の手術時間は2~4時間と,従来法(4~6時間)のほぼ半分に短縮できる。
また,非観血的手法ではメスを使った場合に比べ,組織への損傷を大幅に軽減できる。
この新しい非観血的肝切除術では,術後24時間で離床し,歩行できるようになる。
入院日数は5~7日(従来法では10~14日)で,2週間で通常の活動が可能となる(従来法では4週間)。
完全回復は 1 か月後である。
この術式を適用した患者の75%以上で,肝臓を安全に切除できた。
切除後,残った肝臓は再生し,2~3週間で本来の大きさに回復する。

ハイテク手術で肝がんを安全に切除
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4110011&year=2008
Medical Tribune 2008.3.6
版権 メディカル・トリビューン社


<参考サイト>

■肝臓がん
http://www.pref.chiba.jp/byouin/sawara/menu2/geka/kanzogan/kanzogan.html

肝機能が良くて腫瘍の大きさが3cm以上なら確実に治癒させる事のできる手術を第一選択としています。
このような場合手術は3-4時間で、ほとんど輸血は行いません。入院期間も手術後2-3週間と短くてすみます。
肝臓癌が門脈の中に入り込み腫瘍栓を形成した進行癌にも積極的に血管外科の手技を応用して手術を行っています。
ガンを完全に切除しきれた場合は3年生存率60%が得られています。
(手術前のコンピュータ上模擬手術というのがあることを初めて知りました)

肝臓がん(肝臓癌)の治療-外科手術(肝切除術) 
http://www.effect-japan.com/cancer/liver.html
肝切除はがんを含めて肝臓の一部を切り取る手術で、最大の利点はがんが治る可能性がもっとも高いということです。
デメリットは合併症が起こる場合が少なからずあり、1-2%ですが手術に起因する死亡があります。
また入院期間が1-2ヶ月さらに退院してからの自宅療養が1-2ヶ月必要で長期に及ぶことがあげられます。
肝臓はひとかたまりの臓器ですが、肝臓内を走る血管の分布によっていくつかの区画に分けて考えられます。
まず大きく左葉と右葉の二つに分かれます。左葉は外側区域と内側区域、右葉は前区域と後区域に分かれます。
さらに外側区域、前区域、後区域はさらに上下2つの亜区域に分かれ、これに内側区域と尾状葉(肝臓の後ろ側の小部分)を加えて合計8つの亜区域に分かれます。
肝臓の切り取り方は、これら肝の区画の「どこ」を「どのくらい」切除するかによって表現されます。
がんが区域をまたいでいる場合には複数の区域を切除します。
肝機能が低下していて大きく切除できない場合には安全のために、亜区域切除や部分切除などより小さい取り方を選ぶのが普通です。
がんでない肝臓をできるだけ残し、しかもがんを取り残さないのがよい手術ということになります。
残念ながら肝臓がんは再発の非常に多いがんであり、肝切除術により完全にがん細胞を切除したとしても3-5年後までに再発する確立は70%にも達してしまいます

[PR]
# by esnoopy | 2008-03-07 00:04 | 消化器科

高血圧患者のインターネット調査

通院良好群でもSBP 140mmHg以上が 4 割以上
〜高血圧患者のインターネット調査〜
 
サイレントキラーと言われる高血圧症などの生活習慣病は,自覚症状を伴わない場合
が多いため,通院や服薬に対する患者の意識が低いと自己判断で治療を中断する恐れ
がある。
ファイザー(株)は,インターネットで高血圧患者の治療に対する意識調査を実施した。
その結果を,獨協医科大学循環器内科の松岡博昭教授が,東京都で開かれたプレス
セミナー「高血圧症治療の通院・服薬コンプライアンスに関する調査報告」(主催=ファイ
ザー(株))のなかで報告し,通院コンプライアンスが良好な患者においても約半数が
目標血圧値を達成していない現状を明らかにした。
さらに,日本高血圧協会の荒川規矩男会長は,今回の結果を受け,高血圧に対する
社会的な取り組みの重要性を強調した。


自覚症状なしでは未通院の傾向に 
今回の調査対象は,高血圧の通院経験があり,治療開始から 5 年以上経過した40歳
以上の一般市民。
インターネット上でアンケートを配信し,実回収は2,106例であった。このうちスクリー
ニング漏れがあった196例を除外し,1,910例(男性1,547例,女性363例)について
集計した。

まず,通院コンプライアンスについて,治療開始時点から現在まで「完全に医師の指示
通りに通院」,「数日遅れる程度で通院」が当てはまる場合に通院コンプライアンス良好
とし,「 7 〜 8 割は指示通りに通院」,または「それ以下の通院」が当てはまる場合を
不良とした。
この結果,良好が全体の67.8%,不良が32.2%であった。

高血圧に対する意識については,全体の約 9 割が将来,脳卒中の発症リスクが高まる
と認知していたほか,最適な収縮期血圧(SBP)についても,全体の約 9 割が140mm
Hg以下と回答した。
高血圧を意識したきっかけは,両群ともに約60%が健康診断と回答。高血圧を意識して
からすぐに通院を開始した割合は良好群の62.3%に対して不良群は45.3%であった。

また,自覚症状の有無別に通院をすぐに開始した割合を見たところ,自覚症状があった
場合は80.6%であったが,自覚症状以外がきっかけで高血圧を意識した場合は55.5%
にとどまっており,自覚症状がない場合の約半数は通院につながっていなかったことが
明らかになった。
松岡教授は「高血圧はサイレントキラーと言われ,通常は自覚症状がない。
そのような場合に通院につながらない状況は問題である」と指摘した。

血圧コントロール不良で自己判断による服薬中止例が多い 
日常生活に関連する項目としては,家庭血圧計の所有率が全体の約 8 割にのぼって
いたものの,定期的に測定している割合は通院コンプライアンス良好群でも半分以下
であった。
健康維持,高血圧対策のために「できるだけ歩く」,「塩分摂取に気を付ける」と回答した
割合も通院良好群でも約半数にとどまり,年代別に見ると,40歳代でこれらを実行して
いる割合が他の年代と比べて低く,若年層の意識が低かった。

服薬状況については,良好群では82.1%が「ほぼすべてを服薬していた」と回答したが,
不良群では44.3%にすぎず,松岡教授は「通院状況がよくない場合に服薬状況も適切
でなくなることは十分に考えられる」と指摘した。
また,服薬しなかった理由として,「忘れてしまった」という回答が全体的に多かったが,
不良群では「高血圧に伴う症状がなくなった」を挙げる割合が高かった。これを裏づける
ように,不良群ではSBP 140mmHg以上でも服薬量を減量してよいと答える者が 3 割
を占めた。

現在SBP 140mmHg以上である割合は,不良群では66.0%,良好群でも44.2%を
占めていた。
SBP 140mmHg以上で通院をやめた患者のうち「自分自身の判断で通院を中止した」
と答えた割合は63.1%にのぼっていた。

なお,全体で見ても約 2 割が途中で通院を中止しており,このうち自己判断による中止
が約半数を占めていた。
通院中止群全体の通院期間は 1 年未満と 2 年未満とする回答が多く,併せて50%
前後であった。

同教授は「通院が 2 年以上継続すればコンプライアンスの維持が図れるのではないか」
と指摘。
「今後,治療による自覚症状の消失や血圧値の低下により,患者が自己判断で治療を
中止しないように厳格な降圧の意義を啓発していくことが重要」と述べた。

世界的に血圧管理は厳格化 
荒川会長は今回の調査について「インターネットを使用できる知的レベルが高い患者群
が対象であるにもかかわらず,治療を行っても半数近くがいまだに高血圧と診断される
状況」と評した。
そのうえで,外来治療中の高血圧患者を対象としたJ-HOME研究でも,6 割弱の患者
でSBP 140mmHg以上であったことを補足した。
一方,世界的に各ガイドラインの血圧基準値が厳格化するなか,米国合同委員会の
第 7 次報告(JNC-7)ではSBP 140mmHg未満でも高血圧前症と定義し,正常血圧
をSBP 120 mmHg未満に設定している。
同会長は降圧治療に携わる医師はこのような動きを踏まえ,厳格な降圧を実施していく
べきとした。

現在,日本高血圧協会では,一般市民に対して市民フォーラムを中心とした啓発活動
を推進しており,5 月17日の「世界高血圧の日」には日本でも啓発イベントを開催して
いる。
しかし,社会的な取り組みはまだ不十分であり,商品の塩分表示も行われていない
のが現状である。
同会長は「病院や学校の給食などでも減塩目標値( 6 g/日以下)への取り組みが
遅れている点を認識し,今後,実態調査や教育に取り組んでいく意向である」と述べた。

c0129546_8542621.jpg

ゴッホ 「夜のカフェテラス」 ジークレー 
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p99196583?u=;artfolio11

<自遊時間>
昨日、所属医師会会長名でこんな葉書が届きました。

特定健診・特定保健指導に関する説明会中止の
お知らせについて
 早春の候、先生には益々ご清祥のこととお慶び
申し上げます。
 さて、特定健診・特定保健指導の円滑な実施に
向け先般、標記説明会を3月○日(日)、○日
(土)に開催する旨ご案内させていただいたとこ
ろですが、未だ厚生労働省も内容について不透明
な部分も多々あり
、現時点で先生方に十分な内容
を提示することができず誤解を招く恐れがあり
ますので、大変ご迷惑をお掛けし誠に申し訳ござ
いませんが、今回の説明会を中止させていただく
こととなりました。
 つきましては、明確な内容がわかり次第再度
開催のご案内をいたしますので、その節は、よ
ろしくお願い申し上げます。

厚生労働省のドタバタぶりが伝わってきます。

内科開業医のお勉強日記
http://intmed.exblog.jp/i12/
では○○役人というカテゴリがありますが、
私にはそこまでの表現はできません。
(気持ちは同じです)

<自遊時間>
日頃、日本医事新報のエッセイを読むたびに、ドクターには文系の才能を兼ね備えた方がみえることに感心しています。
ちょっと古い週刊誌の記事で申し訳ありません。
文系と理系の話題が目にとまりましたので紹介させていただきます。

人間関係を通じて文系と理系が補い合えば、互いにプラスになり、対話が楽しいに違いないと思います。
夏目漱石と寺田寅彦の関係がそうだった。
科学好きの文系種族の漱石と、俳句や文学に造詣の深かった理系種族の寅彦との交流は、それぞれの仕事に見事に息づいています。
本来、理系と文系を分ける必要はないんだけど、理系的思考の流れはあって、理系は意識的に適用する。
文系はそれを排除してしまう傾向があるから、初めは理系に進むにがいいかも知れません。
  (池内了)サンデー毎日 2005.3.6

筑波大学大学院の感性認知脳科学では、医学系と心理学系だけではなく、デザイン学までも巻き込んで研究を進めています。
デザイナー出身の山中敏正助教授は、2人の間に置かれたお茶が人間関係にどういう影響を及ぼすかという、いわば「茶飲み友達の『場』」というおもしろい研究をしています。
「足元に埋もれている宝も忘れてはならない」
寺田寅彦先生が80年近く前に言っていた「等身大の科学」は、これから増えていくのかもしれません。
       サンデー毎日 2005.3.6
寺田寅彦
http://www.minken.city.kochi.kochi.jp/terada.html

寺田寅彦
http://ja.wikipedia.org/wiki/寺田寅彦
文系と理系の融合を試みた随筆
•『漫画と科学』
•『科学と文学』
•『西鶴と科学』
•『珈琲哲学序説』
•『神話と地球物理学』

寺田寅彦
出典: フリー引用句集『ウィキクォート(Wikiquote)』
http://ja.wikiquote.org/wiki/寺田寅彦
出典の確かなもの
• われわれがもっている生理的の「時」の尺度は、その実は物の変化の「速度」の尺度である。万象が停止すれば時の経過は無意味である。「時」が問題になるところにはそこに変化が問題になる四元世界の一つの軸としてのみ時間は存在する。
    (「春六題」)
•ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい。
    (「小爆発二件」)
•一見雑多な知識が実に不思議な程みんな後年の仕事に役に立った。それは動物や人間が丁度自分のからだに必要な栄養品やビタミンを無意識に食いたがるようなものではなかったかという気がするのである。
    (「科学に志す人へ」)

•「科学者とあたま」 (1933年)
•科学者になるには自然を恋人としなければならない。
自然はやはりその恋人にのみ真心を打ち明けるものである。
科学の歴史はある意味では錯覚と失策の歴史である。
偉大なる迂愚者の頭の悪い能率の悪い仕事の歴史である。
•失敗をこわがる人は科学者にはなれない。科学もやはり頭の悪い命知らずの死骸の山の上に築かれた殿堂であり、血の川のほとりに咲いた花園である。
•頭のいい、ことに年少気鋭の科学者が科学者としては立派な科学者でも、時として陥る一つの錯覚がある。
それは、科学が人間の知恵のすべてであるもののように考えることである。
科学は孔子のいわゆる「格物」の学であって「致知」の一部に過ぎない。
しかるに現在の科学の国土はまだウパニシャドや老子やソクラテスの世界との通路を一筋でももっていない。
芭蕉や広重の世界にも手を出す手がかりをもっていない。
そういう別の世界の存在はしかし人間の事実である。
理屈ではない。
そういう事実を無視して、科学ばかりが学のように思い誤り思いあがるのは、その人が科学者であるには妨げないとしても、認識の人であるためには少なからざる障害となるであろう。これもわかりきったことのようであってしばしば忘られがちなことであり、そうして忘れてならないことの一つであろうと思われる。

寺田寅彦と現代/等身大の科学をもとめて
http://mmaehara.blog56.fc2.com/blog-entry-739.html
http://www.msz.co.jp/book/detail/07126.html
寺田寅彦と現代
書評:池内 了『寺田寅彦と現代?等身大の科学をもとめて』
http://www008.upp.so-net.ne.jp/shonan/ikeuchi.htm
近年になりその手法と思想では説明できない種々の現象が登場し、それとは対極にある複雑系の科学やフラクタル理論(全体論的思想)が要請され、流行にさえなっている感がある。
科学研究の最前線は要素還元的な手法と思想のもとでは行き詰まり感があり、つぎつぎと「超」や「極」の接頭語をつけざるを得ない肥大化した事態になっている。
つまり、この思考をいくら推し進めたところで、とどのつまりは認識論的限界に陥り、人類の自然観を転換させるような発見は望めない状況にあるという。
こうしたどんづまりの閉塞状況をいかに乗り越え新たな道を切り開いていくかという問題意識から、著者は、物理学の先人のなした歴史的業績を真摯に学びそこからヒントを得ようとする。
いわゆる、著者が提唱する等身大の科学、新しい博物学、文理融合、複雑系の科学、フラクタル理論などを暗黙的に提唱した人物の業績である。
これらの種々の新たな科学の認識論的思考を希求する際、さきがけとなった人物がいた。
今年で没70年になる寺田寅彦(1878-1935)である。
寺田寅彦が生きた時代は、まさに先に述べた原子物理学の研究が花盛りのときであり、そのよってたつ思考態度は要素還元主義の思想であった。
寺田寅彦は流行する研究動向に反発するかのように、きわめて身近な自然現象を深く考察する研究態度をとったことはよく知られているが、本書は、寺田寅彦の科学的認識を現代の科学のなかに復権させようとする試み、そこから現代科学の困難性を打開しようともくろんでいる。


そんなことで、きょうは寺田寅彦と池内了の両氏をとりあげてみました。
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-06 00:04 | 循環器科

糖尿病・食後代謝異常 その2(2/2)

昨日の続きです。


特別企画
第22回日本糖尿病合併症学会ランチョンセミナー
糖尿病治療の新しい動向
~食後代謝異常・エビデンスの確立をめぐって~
講演 2
大規模臨床試験によるエビデンス確立における問題点を指摘

佐倉 宏 氏 東京女子医科大学糖尿病センター 准教授
肥満 2 型糖尿病に対する経口血糖降下薬による治療に関し,「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」では残念ながらエビデンスに基づいた具体的な選択手順は明示されていない。
佐倉宏氏は,経口血糖降下薬の理論的な選択方法と実際の使い方を示したうえで,大規模臨床試験を検証し,エビデンスとするにはいまだ問題点が多いことを指摘した。


実地診療での経口血糖降下薬の選択はほぼ理論通り
肥満 2 型糖尿病に用いる経口血糖降下薬は,肥満という病態を考慮するとインスリン抵抗性改善作用を有するビグアナイド(BG)薬,チアゾリジン薬,食後高血糖のみ起こる段階であれば,α-GIが第一選択薬として考えられる。

実際に佐倉氏が自身の施設における経口血糖降下薬使用法を調査したところ,ほぼその理論通りであった。
なお,スルホニル尿素(SU)薬,速効型インスリン分泌促進薬は比較的やせ型の患者を中心に投与されていた。


同一系統の薬でも薬剤によって異なる成績
続いて佐倉氏は, BMI25以上の 2型糖尿病患者における経口血糖降下薬の有効性を示すエビデンスとなる,大規模臨床試験を紹介した。
それらの結果によると,細小血管症の進展抑制作用を認めたものはSU薬(グリベンクラミド)とBG薬(メトホルミン),大血管症の抑制を認めたものはBG薬(メトホルミン),チアゾリジン薬(ピオグリタゾン),α-GI(アカルボース)であった()。
c0129546_035137.jpg

MeRIA7では,プラセボ群に比べ,アカルボース群で全心血管イベントが35%,心筋梗塞に至っては64%も減少することが明らかとなっている()。
c0129546_0353462.jpg


なお佐倉氏は,同一系統の薬でも薬剤により成績が異なる場合のある事例を紹介し,臨床成績の解釈には注意が必要であると付言した。

インスリン分泌量が異なる欧米人のデータをそのまま適用することは難しい
佐倉氏は,これらの大規模臨床試験は欧米のものが多く,欧米での試験成績をインスリン分泌量が大きく異なる日本人に適用するのは無理があると述べた。
また,1 つの系統薬のなかでは代表的な薬剤でしか検討が行われていない点に注意が必要であると指摘した。

さらに,試験成績の解釈を困難にするさまざまな問題が存在するという。1 つは臨床試験に参加する患者は食事・運動療法の遵守率が概して高いというセレクションバイアスである。
特に糖尿病ではこのバイアスの影響が大きいという。
また,2 型糖尿病は多様な病因・病態を示すため試験の選択基準を満たす患者はごく一部に過ぎないこと,二次無効により試験開始時の経口血糖降下薬からの変更や追加が必要な症例が多いことなどが挙げられた。

EBMの基本はClinical Expertise,Patient's Preference, Research Evidenceである。
同氏は,糖尿病はClinical Expertise,すなわち個々の患者の病態を専門的に判断し,病態に応じた薬物を選択する個別医療の考え方がまだまだ重要な疾患としたうえで「糖尿病のEBMを確立するためには,今後,Research Evidenceをどのように構築していくかが課題である」と結んだ。
メディカル・トリビューン 2008.2.28
版権 日経BP社

c0129546_8441666.jpg

大山 功 「赤富士」 油絵サムホール
http://page3.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/c157492088

<番外編>
高血圧で通院中の50代の男性の方のお話です。
その方は単身赴任で当地の会社で勤務してみえます。
昨日奥様から電話があり、自宅近くのガンセンターに急遽入院になったとのこと。
最後の診察の時に複視で近くの眼科へ通院中と言ってみえました。
内心、神経内科で精密検査がいいかなと思いましたが、余計なことは言わない
ほうがいいかなと黙って聞いていました。
さて、電話の件ですが、話の内容から結局、最終的にある大学病院でのMRIの結果、
複視の原因が上咽頭癌と判明したことが判りました。

私の大学時代、当時の助教授が上咽頭癌(NPC)の研究をしていて講義を詳しく
されたのを思い出しました。
たしか多発地域の台湾へ何回も足を運んでみえたように覚えています。
その先生もすでに他界してみえます。

複視の原因として、こんな疾患が原因の場合もあるんだなと勉強になった次第です。

上咽頭癌
http://www.mc.pref.osaka.jp/kabetsu-shoukai/jibika/kaisetsu/jouintougan.htm
咽頭がん
http://www.effect-japan.com/cancer/pharyngeal.html<上咽頭がん(癌)>
上咽頭がん(癌)の初期はほとんど無症状ですが、がんがある程度大きくなることで
現れる症状としては、首のリンパ節の腫脹があります。他に鼻づまり、鼻血、痰に血
が混じる、難聴、耳が詰まった感じがする耳閉感などがあります。また脳神経が圧迫
を受けることで物が二重に見えるなどの視覚障害や疼痛が起こることがあります。
上咽頭がんは低分化型の扁平上皮がんが多いため他の頭頸部がんと比較すると肺や骨、肝臓などへの遠隔転移が多く認められます


上咽頭癌
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/jyointou.html
上咽頭癌とは
http://www.geocities.jp/piyopiyogogo1101/page0.htm
厚生省の人口動態統計(1995年)では年間324例がこの腫瘍で死亡しており、
全癌死亡の0.12%であった。中国南部、台湾、シンガポールなどの東南アジアを
中心とする地域の中国系の人々に多く認められる。また発癌に関しEpstein Barr (EB) Virusが関与していると考えられている。


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-05 00:07 | 糖尿病

糖尿病・食後代謝異常 その1(1/2)

今日と明日は糖尿病領域で話題となっている食後代謝異常について勉強
します。
「日本糖尿病合併症学会」のランチョンセミナーで発表された内容です。
恥ずかしながら、この学会の存在自体を今まで知りませんでした。

特別企画
第22回日本糖尿病合併症学会ランチョンセミナー
糖尿病治療の新しい動向
〜食後代謝異常・エビデンスの確立をめぐって〜

メタボリックシンドローム(MetS)は,糖尿病,高血圧,脂質代謝異常などを経て,臓器障害へと進展する。
最近,臓器障害へと至る過程で食後代謝異常(高血糖,高TG血症)が重要な役割を担うことが明らかとなり,注目を集めている。
昨年開催された第22回日本糖尿病合併症学会ランチョンセミナーにおいて,食後代謝異常の是正が腎障害を抑制する可能性が示された。
併せて行われた糖尿病治療のエビデンスの確立における問題点を指摘する講演とともに,その概要を紹介する。
田嶼 尚子 氏(座長) 
講演 1
食後代謝異常の改善により腎障害を抑制
小川 晋 氏 東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科

2 型糖尿病患者を対象とした 7 つのプラセボ対照比較試験のメタ解析であるMeRIA7(Meta-analysis of Risk Improvement under Acarbose-7)は,α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)・アカルボースが心血管イベントを抑制することを明らかにした。
同解析では同時に,アカルボースがMetSの主要な構成因子である体重,血圧,TG値,血糖などを軒並み改善することも示している。
小川晋氏はこの成績から,アカルボースはMetSに集積する多くの危険因子を改善することで,臓器障害を抑制するのではないかと推測し,アカルボースが腎障害の進展を抑制するメカニズムについて検討した。

食後,空腹時TGに対するアカルボースの影響を検討
血中トリグリセライド(TG)は,空腹時は肝で合成される超低比重リポ蛋白(VLDL)で,食後はVLDLと食事由来のカイロミクロン(CM)で構成される。
小川氏らが 2 型糖尿病患者にアカルボースを用いて行った検討では,食後のTG値,CM値が非投与群に比べ,継続投与群,単回投与群のいずれにおいても有意に抑制していた。
また,空腹時に高TG血症を呈する群では 8 週間投与後,VLDL値も有意に抑制されていた(図 1)。
c0129546_0331891.jpg


同氏はこの結果について,アカルボースの食後TG上昇抑制作用はCM上昇抑制によるもの,空腹時TG抑制作用はVLDL産生抑制によるものと考えた。
またこれを基に,アカルボースの食後代謝異常改善作用を図 2のように考察している。
c0129546_034418.jpg


血糖上昇により酸化ストレスが増大し,血圧が上昇
次に小川氏は,腎障害における高血糖の関与を検討した。
 
インスリン抵抗性によるNO産生の低下は,酸化ストレスを増加させ,腎髄質の虚血を引き起こす。
髄質虚血はNa再吸収を増大し血圧を上昇させるとともに,酸化ストレスを増加させるという悪循環を形成すると考えられている。
実際,食塩感受性高血圧ラットに糖質を摂取させると,インスリン抵抗性と酸化ストレスが増加し,血圧が上昇したと報告されている。
同氏らは,高血糖ラットを用いた検討を行い,血糖上昇による髄質血流の低下は,酸化ストレスを介して起こること,血糖上昇そのものではなく腎内グルコース濃度の上昇が関与すること,尿細管における尿糖再吸収を阻害すると血圧上昇が抑制されることを確認した。

そこで,同氏らはアカルボースによる食後高血糖改善作用が食後尿糖を減少させ,尿糖再吸収を抑制するのではないかと考え,アルブミン尿を伴う軽症糖尿病患者を対象に,アカルボース投与を16週間行った。
その結果,収縮期血圧と食後高血糖は改善し,尿中酸化ストレスおよびアルブミン尿はいずれも有意に減少した。また,食後60分の血糖下降と,尿中酸化ストレス減少,アルブミン尿減少には相関関係がみられた。

以上より,同氏は「アカルボースは食後高血糖および食後代謝異常を是正することにより,高血圧を抑制,さらに動脈硬化,腎血管障害への進展抑制に働くと考えられる。
したがって,本剤はMetSのように軽度の因子が累積してリスクが上昇する疾患には非常に有効と思われる」と結論した。

メディカル・トリビューン 2008.2.28
版権 日経BP社


c0129546_849326.jpg

中島千波 「薔薇」 リト
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p99196559?u=;artfolio11

<自遊時間>
「一番問題なのは、医者?役人?それとも患者?」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/honda/200802/505628.html
番組の中で、リスナーを対象としたアンケート「崩壊しつつあると言われる日本の医療で一番問題なのは、医者?役人?それとも患者?」が行われました。リスナーは、電話、ファクシミリ、インターネットで投票するのですが、その結果は、「医者18%、役人65%、患者17%」だったそうです。
アクセス特集・田中康夫+本田宏+渡辺真理・2月18日(月)
http://tbs954.cocolog-nifty.com/ac/files/actk20080218.mp3

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-04 00:09 | 糖尿病

メタボ健診 その1

メタボ健診 その1
メタボ健診の影響によるがん検診の停滞が心配
国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部長 斎藤 博 氏

特定健診・特定保健指導(メタボ健診)の実施を目前にして、各保険者、中でも、市町村国保は、後期高齢者医療制度への拠出金増額というペナルティーに脅え、万全の準備を進めている。
国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部長の斎藤博氏は「がん対策基本法に基づいて、自治体は2007年4月から、がん検診の質向上の体制作りに着手している。この取り組みに遅れが出なければいいのだが」と心配する。

2007年4月に「がん対策基本法」が施行され、それを受けて「がん対策推進基本計画」がまとまりました。
死亡原因第1位のがん対策として、数値目標や達成時期が盛り込まれるなど、これまでの「健康日本21」や「対がん10か年総合計画」より、意味の重い計画です。

がん検診推進で死亡率3.9%減少が目標 
計画では「75歳未満のがんによる年齢調整死亡率を今後10年間で20%減らす」との全体目標が示され、話題になりました。
この20%のうち10%は現状のままで減少すると見込まれ、残りの10%を対策により減少させる目標が立てられています。
その達成のために、がん医療の均てん化、がん検診の推進、たばこ対策の3つの課題が掲げられました。
それぞれ、一定の根拠に基づいて死亡率の減少率が計算されています。

その一つ、がん検診では、検診受診率を10年以内に50%にすることで、3.9%の全がん死亡率減少を目指しています。
この目標達成に向けて、市町村は、がん検診の事業評価を行うチェックリストなどを取り入れるよう指導されています。
そして今後は、受診率、精検率、がん発見率などのデータを把握するだけでなく、その分析結果を含め、データをフィードバックすることで、それらを生かした精度向上の取り組みを市町村が行うことになるかと思います。

ところが、そこへ「特定健診・特定保健指導(メタボ健診)」という新しい事業が加わり、地域の保健分野の現場では、人的資源がメタボ健診に割かれ、がん検診への取り組みがおそろかになっているところがあるようです。
新聞でも報道され、私自身も、複数の関係者から話を聞きました。

全国の現場をすべて調べたわけではなく、明確な根拠はありませんが、メタボ健診が、がん検診の質向上に、何らかの影を落とすのではないかと心配しています。

有効な検診を正しく行う体制作りが出発点 
私の専門は、癌を早期に発見し、早期の治療へつなげる「検診」です。これは、健康状態を評価し、隠れた疾患や危険因子の有無を調べる「健診」と少し異なりますが、健康な人を対象としている点、受診者に死亡率減少をはじめとする利益=健康結果(health outcome)の改善がもたらされるかについて、科学的な証拠を示す必要がある点など、基盤は共通です。ただ、この証拠、つまりエビデンスの有無に関しては、両者に違いがあります。

検診は、死亡率減少を実現することが目的で、そのためには「有効な検診」を「正しく」行う体制作りが極めて重要です。
科学的に有効性の確立した検診を実施する、その有効性を最大化し、不利益を最小化するために、精度管理(事業評価)を行う、そして受診率を上げる対策を講ずることで、初めて目的達成が可能になります。

がん検診で、科学的に効果が確立され、不利益とのバランスの上からも推奨されている「有効な検診」は、大腸がん検診、乳がん検診、胃がん検診、など5つです。

そして、今、求められているのは、これらのがん検診を「正しく行う」行う体制作りであり、そのためには、少なくとも従来レベルの人的資源は必要です。

個人の健康・医療情報管理の一元化の基盤になるか 
これまでのわが国のがん検診で、有効な検診を正しく行ってきたかと聞かれれば、不十分だったと言わざるを得ません。

「有効な」については、エビデンスのない検診も行われてきました。
また、「正しく」については、例えば、2005年の大腸がん検診では、要精検者のうち、25%が未受診、20%が未把握のままでした。

前者は、がん検診ガイドラインで有効性がきちんと整理される道筋がようやくついてきたところですが、後者は、その体制が極めて不十分なのが、わが国の現状です。
こうした現状を打破するきっかけが、がん対策基本法の施行であり、昨年4月から、ようやく精度管理を行う体制作りが検討され始めました。

しかし、市町村の中には、メタボ健診の目標値(受診率65%、保健指導実施率45%、メタボ減少率10%)の未達による、後期高齢者医療制度への拠出金増額という罰則に脅え、保健師らの業務の重心が、メタボ健診にシフトしているところがあると聞いています。
そういう自治体が、全国で何%なのか把握していないので、軽々には言えませんが、少なくとも保健師は使命感の一方で、多忙を極め、十分な活動ができていないというのが、私の認識です。

がん検診は、これまで“弱者”でした。
死亡原因第1位の疾患であるにもかかわらず、その対策の推進速度が、時の情勢にによって、何度も減速しています。
今回もメタボ健診の影響で、がん対策としてのがん検診がおろそかにならないことを願っています。

 メタボ健診が、有効性の確立された手法を用いるのか、その事業評価をどう行うのかの詳細を私は知りませんので、これが事業としてどう発展していくのかについては、コメントできません。
ただ、メタボ健診がうまく軌道に乗れば、各種の検診・健診結果や診療記録などが、個人にひも付けされるとの期待はあります。
社会保障カードの導入が2011年に迫っていることもあり、メタボ健診が、個人の健康・医療情報の一元管理の基盤になるかも知れません。メタボ健診に期待するとすれば、この点です。

Nikkei Medical ONLINE
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/200802/505579.html版権 日経BP社

c0129546_8393243.jpg

加藤東一 『分水嶺』 リトグラフ 
http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g64591365

<自遊時間>
たまたま、ある医学雑誌の記事を読んでいたら「角膜はなぜ透明か?」という内容の投稿に目がとまりました。
今まで謎だったという眼科医のお話で、血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)と絡めた研究でNatureに掲載されたということでした。
元来無血管である網膜中心窩に新生血管が出来るのが加齢黄斑変性であるということだそうです。

「無」ということを深く考える。
何だか般若心経の教えのようです。

マナティが角膜に血管を保持している理由
http://okwave.jp/qa3087413.html?ans_count_asc=2

留学記
http://immuno.bioreg.kyushu-u.ac.jp/5352696d751f3088308a/75595b668a18-6b6675307be44fe1/

ボスはいろいろな論文を検索してくるのが上手く、いつも論文を検索している姿には非常に感心させられます。
ラボに面接に来た時のこと、「角膜になぜ血管がないのか分かる? これから投稿するのだけど、様々な血管新生抑制因子のノックアウトマウスでも角膜は正常だけど、うちで着目したある血管新生抑制因子を角膜でノックダウンすると角膜に血管が侵入してくるんだよ。どうだ、面白いだろう。」と言われ、確かに面白いと思いました。そして、ポスドクとして採用された後ラボに行きますと、鯨、インド象、イルカ、さらにジュゴンの眼の切片をポスドクが免疫染色しています!?

一瞬私は眼獣医学のラボにでも来てしまったのかと思い、かなり焦りましたが、どうやらボスはフロリダ・マナティの角膜には血管が侵入しているのに対しマナティ類縁哺乳類の角膜には血管が侵入していないという文献を見つけ、そこに着目していたのでした。
その後、この話はNatureに掲載され、Science誌の“a signaling breakthrough of the year 2006”でも紹介されました。
また、ボスが興味を持てば様々な所からノックアウトマウスを手に入れて来ます。アメリカの凄いところの一つは簡単に種々のノックアウトマウスが手に入ることです。
マウスの専門の飼育施設があり、管理もテクニシャンがしてくれますのでただひたすら実験するだけです。
ここに来てかなりの種類のノックアウトマウスを使って実験しました。
現在は自然免疫とAMD、AMDの活動性を評価する指標(マーカー)の発見、といったプロジェクトを進めているところです。


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
[PR]
# by esnoopy | 2008-03-03 00:15

太りすぎの女性は癌リスクも高い


〔ロンドン〕 英国癌研究会が助成しているMillion Women Studyの参加者を追跡
した研究で,英国女性の子宮癌と食道癌患者の半数は過体重または肥満により引
き起こされていることがわかった
と,同研究会の疫学者でオックスフォード大学(英オッ
クスフォード)のGillian Reeves博士らがBMJ(2007; 335: 1134)に発表した。

5 %が過体重か肥満に起因 
今回の研究は,現在の英国女性における過体重・肥満とさまざまな癌との関連性に
ついて,信頼性の高いエビデンスを提供した初めての研究。
Million Women Studyは,女性の癌リスクを調べた研究としてはこれまでで最大
規模のものである。
 
今回の研究から,英国の中高年女性では,すべての癌の約 5 %,すなわち年間
6,000例の癌が過体重または肥満に起因することがわかった。
 
さらに,過体重または肥満が主要な危険因子となる癌として,子宮癌とある種の食道
癌だけでなく腎臓癌,白血病,多発性骨髄腫,膵癌,非ホジキンリンパ腫,卵巣癌,
さらに閉経後の年齢集団では乳癌,大腸癌にも関連することが明らかになった。
 

Million Women Studyにおいて 7 年間に追跡された女性は100万例余りで,この
うち発癌したのは 4 万5,000例,癌死亡は 1 万7,000例にのぼった。
 
筆頭研究者のReeves博士は「われわれの成績に基づいて推定すると,英国の中高
年女性における年間12万例の新規癌患者のうち,過体重者または肥満者はほぼ
6,000例を占める。
これらの癌患者の 3 分の 2 は子宮癌または乳癌である」と述べている。
 
過体重は,他の癌危険因子に比べて,いくつかの癌リスクにかなり大きな影響を及
ぼすことも示された。
しかし,body mass index(BMI)と癌との関連性は,女性が生涯のどの時期に
いるかによることもわかった。

例えば,閉経後に太っていると乳癌リスクが高くなり,大腸癌リスクは閉経前に太っ
ている場合のみ高くなる。
 
同研究所健康情報部のSara Hiom部長は「この研究は癌の発症と死亡に及ぼす
過体重・肥満の影響に関して,さらなるエビデンスを加えるものである。ほとんどの
人は余分な体重を背負っていることを一般的な健康リスクと関連付けているものの,
特定の癌と関連付けることはまずない。今回の結果は,既に確立している糖尿病や
心筋梗塞など癌以外の疾患と肥満との強い関連性と合わせて考察する必要がある」
とコメントしている。

Medical Tribune 2008.1.24
版権 メディカル・トリビューン誌


c0129546_8504133.jpg


鎮西直秀 「こころのスケッチ」 油彩3号
http://page3.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/c157314336

肥満で、全がん死亡率が上昇
http://www.metamedica.com/news2003/2003050501.html
#90万人の米国民を16年間追跡したところ、肥満度が高くなるほど全がん死亡率
が高く、がん死亡全体のうち、男性では14%、女性では20%が、肥満が原因と
推計された。
#個別のがんについて見ると、BMIの増加で死亡率が有意に高くなったのは、食道・
胃(男のみ)・結腸・直腸・肝・胆・膵・腎・非ホジキンリンパ腫・多発性骨髄腫・前立腺・
乳房・子宮・卵巣におよんだ。つまり、ほとんどの部位のがんで、肥満による死亡率の
上昇を認めた。
#これまでも、(閉経後乳がんなど)一部のがんのリスクが、肥満によって上昇する
ことは知られていた。けれども今回の結果は、肥満によるリスク上昇が、一部のがん
に限られるものではなく、多くの部位のがんに共通するもので、むしろ「普遍的」な
現象である可能性をうかがわせるものだ。
#食生活によるがん予防を考える際に、「なにを食べるか」(どんな食物や栄養素が
有用か)に限らず、「どれだけ食べるか」(エネルギー摂取をどれだけ控えて肥満を
予防するか)を重視することの大切さを示すデータと言えそうだ
#人口に占める肥満者の割合や程度は、米国より日本のほうがずっと小さい。
そのため、おなじ推計を日本人で行えば、この割合もずっと小さくなるはずだ。


肥満女性にがんリスク
http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/post_593.html
肥満度(BMI)とがん全体の発生率との関係について
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/17/obese_can.html
胆石症、肥満指数と胆道がんとの関連について
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/61/bmi_biliarytract.html
肥満指数・身長と大腸がんリスクについて
http://epi.ncc.go.jp/jphc/rnews/news016.html
#肥満指数27以上で、男性の大腸がんリスク上昇
肥満ががんの最大要因に?~最新調査
http://www.usfl.com/Daily/News/08/02/0220_002.asp

#現在、肥満自体にがん発生の原因があると考えられるようになり、証拠となる研究
データが続々と増えている。

肥満はがんの要因 米大統領がん諮問委
http://mhlab.jp/calendar/seikatsusyukanbyo_01/2007/08/001722.php
#がんによる死亡率は、肥満のある男性では50パーセント、女性では60パーセント高くなるという。

肥満者ではPSAによる前立腺がん検診でがんが見落とされやすい
http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/psa_4.html
#肥満者では、前立腺がんの発症リスクが高く、また 前立腺がんによる死亡リスクも高いことが既に明らかになっている。今回の研究から、肥満者ほど、PSA検査でがんが見逃される可能性があることが、肥満者の前立腺がん死亡リスクを高める一つの理由となる可能性が示されたといえる。
死亡数によるリスク表現 
http://www.yasuienv.net/RiskSortedbyDeath.htm 
(「リスク」についてのお話です)
がん予防に肥満対策が必要 世界がん研究基金 
http://mhlab.jp/calendar/pro/calendar1/2007/11/001964.php
[PR]
# by esnoopy | 2008-02-29 00:18 | その他

抗菌薬使用前の皮内反応試験

昨日に続いて日経メディカル2月号特集連動企画「その処置、必要?」 からです。


抗菌薬使用前の皮内反応試験
「既往歴ある患者への類似投与時など、特別な場合に実施」 
「抗菌薬を静脈注射する前に行う皮内反応試験は、アナフィラキシーを完全には予知できない」。

2003年に日本化学療法学会が出したこの報告を受け、厚生労働省は04年、抗菌薬の添付文書から皮内反応試験の実施を行う旨の記述を削除するよう通知した。

同報告の主旨は、
1. アレルギーの既往がある患者のみ皮内反応を行う米国より、皮内反応の実施を基本としていた日本の方がアナフィラキシー発生の頻度が高い()、
2. 皮内反応陰性でもアナフィラキシーが発生している、
3. 皮内反応の陽性率がアナフィラキシー発生率より数十倍から数千倍高い
という3点。
c0129546_17281387.jpg

皮内反応試験では完全にショック発生を予知できない上に、偽陽性の発生によって本来抗菌薬を投与できた患者にまで投与を控えられていた可能性があるため、ルーチンで行う皮内反応試験はデメリットの方が大きいというわけだ。

04年に同学会が出した『抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン』では、「アナフィラキシーを確実に予知する方法はない」とした上で、問診を十分に行うこと、ショックへの対応を迅速に行える体制をとることを強調。
皮内反応試験の実施は、アナフィラキシー既往歴がある患者に類似薬を使うときなど、特別な場合に限られるとした。

訴訟対策にはならない
しかし、「実際にまだ皮内反応試験をルーチンで行っている医師はいる」と同学会・皮内反応検討特別部会委員長を務める国立病院機構東京医療センター統括診療部長の岩田敏氏は話す。

07年、同学会が皮内反応試験実施の有無を医療機関にアンケートしたところ、704施設中469施設で皮内反応試験を全面中止していたものの、「アレルギー体質の患者に限って実施」が121施設、「ルーチンで実施」が50施設、「一部の診療科では実施」が29施設存在した。
調査対象はインフェクションコントロールドクターが在籍する医療機関で大病院が中心。
中小の医療機関ではさらに多いことが予想される。

このアンケートでは、皮内反応試験に対する過信も浮き彫りとなった。
皮内反応試験を行う理由として、「訴訟対策」「注射後に十分な観察が困難」という答えがそれぞれ3割ずつを占めたのだ。
「アナフィラキシーへの対応がまずいと訴訟になるかもしれないが、皮内反応試験実施の有無は関係ない」と岩田氏。
最低限、皮内反応試験さえしていればいいという考え方は通用しない。

岩田氏は「十分な観察といっても、医師が観察し続けるのは不可能に近い。抗菌薬投与後30分程度、誰かの目が届く範囲にいてもらったり、リスクを職員に周知徹底するなど、現実的な対策をとるべきだ」と話す。アナフィラキシー対策ガイドラインについても、ショックへの対処法を中心に今年中に見直す方針だ。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200802/505484.html


c0129546_883548.jpg

シャガール リトグラフ「エルサレムウィンドウ」Reuben
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p98439553?u=;ginza_kaigakan
[PR]
# by esnoopy | 2008-02-28 00:04 | その他