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グリニド薬の新たな可能性 その1(1/2)

Medical Tribuneで糖尿病の「血糖変動抑制」について勉強をしました。

特別企画(製薬メーカー提供)の座談会からです。

出席者
(司会)
河盛隆造氏 順天堂大学内科学・代謝内分泌教授
(出席者)
Louis Monnnier氏 Professor of University of Montperllier I, France
田嶼尚子氏  慈恵医大 糖尿病・代謝・内分泌内科教授
錦田裕孝氏  順天堂大学内科学・代謝内分泌准教授
 
血糖変動抑制の意義
糖尿病の進展とその合併症としての大血管症の発症には、空腹時および食後の高血糖と血糖変動が促進因子として大きく影響することが指摘されている。
速効型インスリン分泌促進薬であるナテグリニド(商品名スターシス)は、食後高血糖および血糖変動の是正には有用な薬剤であり、その新しい可能性が熱心に探求されつつある。

本企画では、2007年9月にオランダ・アムステルダムにて開催された第43回欧州糖尿病学会(EASD)総会に合わせて座談会を開催。
血糖変動に関するトピックについて議論を尽くしていただいた。

血糖変動も血糖異常の1つ
酸化ストレスの亢進を介して糖尿病性合併症の形成に関与している

河盛 
現代の2型糖尿病治療では、HbA1c値の正常化に主眼がおかれていますが、最近では食後血糖値のスパイク状の上昇ならびに日中の血糖変動幅を最小限に抑制することも重要な治療目標であると考えられています。
本日はその根拠と治療、さらにスクリーニングについて議論したいと思います。

まず、Monnier先生から血糖変動と糖尿病性合併症形成に関与するとされる酸化ストレスについて説明をお願いします。

Monnier
2型糖尿病で見られる血糖異常は、空腹時血糖(FPG)、食後血糖(PPG)、MAGE(mean amplitude of glycemic excursions)で評価される血糖変動の3つの要因で構成されています。
高FPGと高PPGの亢進はともに慢性、持続性の高血糖を惹起し、糖化と酸化ストレスを上昇させます。

他方、MAGEと酸化ストレスの指標である尿中イソプロスタン排泄率を見ると、きわめて高い相関性を有していることがわかりました(図1)。
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つまり、血糖変動も糖尿病性合併症のリスクを増大させていると言えます。
糖尿病治療の最終目的はこの糖尿病性合併症のリスクを軽減し、健康な方と変わらない生活が送れるようになることですが、そのためには高FPG、高PPGとともに血糖変動も抑制することが重要なのです。

河盛 
血糖変動が、酸化ストレスの亢進に大きなインパクトを持っていることがMonnier先生から示されました。
血糖変動を知るには、特にPPG値を測定すべきですね。
日本でも朝食前のFPGとHbA1c値のみで評価している医師が未だ多いのが実情です。

Monnier
それは非常に残念です。 
HbA1c値だけではなく、FPG、朝食後PPGを組み合わせて考える必要があります。
つまり、FPGが正常でPPGのみが上昇している場合はPPGを低下させるための治療が必要であり、またFPGが上昇している場合はPPGも上昇している可能性がありますが、まずFPGに対処した後にPPGに対処しなければなりません。

河盛 そうですね。
日本ではHbA1c値の測定がほぼ月1回行われていますから、それに加えて患者さんの朝食前後の血糖値を測定することによって、患者さんの病態を詳細に推測することが可能です。

Monnier
日本でのPPG測定の意義について、朝食後血糖と昼食、夕食後血糖が同じレベルで考えられていますか。
それとも朝食後血糖だけが重要と考えられているのでしょうか。

田嶼
日本人は朝食に炭水化物を多<摂取しますが、欧米人に比べ膵β細胞の機能が弱いため、容易に朝食後高血糖を来しやすいと考えられます。
よって、早期の2型糖尿病では朝食後血糖を重視する傾向にあります。
しかし、どの食後がより重要かというのは、食習慣によって異なると思います。
また、病期によっても変わりますので、朝・昼・夕いずれの食後の血糖値も注目すべきだと考えます。

ナテグリニドは高PPGと血糖変動を抑制
河盛 
次に、綿田先生より、血糖変動と速効型インスリン分泌促進薬であるナテグリニドの研究についてお話を伺います。

綿田 
我々が開発した血管内皮細胞評価システム(NEMOes)を用いて、観察研究を行いました。
まず、Goto-Kakizaki(GK)ラットを用いて、持続性高血糖群、高PPG群、グルコース吸収阻害薬投与群の3群を検討したところ、血糖変動の激しい高PPG群で内皮細胞単球接着の亢進が見られました。

そこで、我々は高PPGおよび血糖変動でもたらされる内皮細胞機能障害に対するナテグリニドの影響をGKラットで検討しました。
対象は
①1日2回食事する群(対照群)
②食事 + ナテグリニド投与群(ナテグリニド群)
③食事 + インスリン投与群 (インスリン群)
の3群に分けました。

その結果、3群のHbA1c値はほぼ同様でしたが、ナテグリニド群とインスリン群では対照群に比べ、高PPGが有意に低下し、血糖変動を抑制しました。
このとき、NEMOesで評価した単球接着は、対照群に比べ、ナテグリニド群およびインスリン群で有意に抑制されました。
これらの結果から、ナテグリニドはアテローム性動脈硬化進展抑制のための有望な薬剤であることが示唆されました。

さらに,ナテグリニドによる動脈硬化進展抑制に対する影響をヒトでも検証するため、無作為化比較試験NITED(Nateglinid Interventional trial for Early type2Diabetes)を実施しました。
対象は初期の2型糖尿病患者で,HbA1c値が3か月以上にわたり6.5%未満にコントロールされている78例です。
ナテグリニド(270mg/日)群38例と非治療群40例に無作為割付し、12か月間にわたりHbA1c値、FPG、頚動脈内膜-中膜肥厚度(IMT)を検討しました。
その結果、12か月間の治療により、HbA1c値は開始時と比べナテグリニド群で有意に低下し(図2)、非治療群と比べ変化率で有意差が認められました。
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IMTは、非治療群では0.024±0.066mmと有意に増加しましたが、ナテグリニド群では-0.017±0.054mmと減少し、両群間の変化率には有意差が認められました(図3)。
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以上から、ナテグリニドによる厳格なPPG、血糖変動の管理により、糖尿病性合併症の1つでもある心血管疾患リスクの代理指標であるIMTを減少させたものと考えております。

Medical Tribune 2008.1.3
版権 メディカル トリビューン社


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(一般の方または患者さん向き)
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# by esnoopy | 2008-01-15 00:03 | 糖尿病

特発性頭蓋内圧亢進症

きょうは
Medical Tribuneから「特発性頭蓋内圧亢進症」について面鏡しました。
偏頭痛との鑑別が必要ということで偏頭痛の患者をみる際には念頭に置くべき疾患のようです。
肥満女性に多いとのことで、鑑別のために腰椎穿刺をルーチンに行うわけにもいかないので
疑わしい場合にはまず非侵襲的な眼底検査がよいと思われます。

~特発性頭蓋内圧亢進症~ 片頭痛との鑑別と肥満の解消が重要
〔ベルリン〕
チューリヒ大学病院(チューリヒ)大学病院神経内科のPeter Sandor講師は、長年、
反復性発作性の頭痛を片頭痛と誤診されたまま治療効果を得られずにいた若年の
肥満女性患者について、当地で開かれたドイツ神経科学会の第80回会議で報告した。
この女性は一過性の軽度の視覚障害を生じて眼科を受診。
検眼の結果,両眼に乳頭浮腫と視野狭窄を伴う盲点拡大が認められ、この時点で初めて
特発性頭蓋内圧亢進症が疑われた。
腰椎穿刺により髄液圧の亢進が確認され、診断が確定した。

静脈洞血栓症の除外が必要
Sandor講師は「特発性頭蓋内圧亢進症が片頭痛と誤診されることは珍しくはない。患者はおもに女性で、頭部全体に中等度の頭痛を訴えるケースが多い」と説明。
頭痛は当初は反復発作性に生じるが数週間後には慢性化して毎日生じるようになる。
Valsalva操作により頭痛は増強する。
鑑別に際して重要な手がかりとなるのは,症状の変動の大きい視覚障害である。
腰椎穿刺では髄液圧の亢進が認められるが,それ以外の異常知見はない。
さらに特徴的なのは、他の患者が同検査を非常に不快に感じるのに対し,同疾患患者
は快適に感じるという点である。
 
診断確定に際しては、脳の画像診断により占拠性病変を除外するとともに、静脈洞血栓症を必ず除外しておかなければならない

頭蓋内圧亢進の原因はまだ明らかになっていない。
患者の7割はbody mass index (BMI)が26を超える肥満であるが、これは女性患者にのみ影響していると考えられている。 
肥満患者では、減量が頭蓋内圧を下げるのに有効であり、薬剤療法と しては、acetolamideまたはフロセミドを使用する。
また2~4週間にわたるステロイド投与が効果をもたらすこともある。

治療に十分に反応しない患者、あるいは視覚障害が進行した患者では、手術も検討対象となる。
ただし、以前よく行われていた腰椎穿刺の反復的施行は効果の持続が見込めないため、
現在では適用されていない。

一般に特発性頭蓋内庄亢進症の予後は比較的良好で、自然治癒に至ることも珍しくなく、
患者の約7割では3か月間の薬剤療法後に症状は消失する。
ただし、再発率は高い。

基本的に同症は良性の経過をたどるとはいえ、視力低下については例外で、未治療のままだと患者の5%が片眼の失明に至る。
したがって、早期の対処が重要であることに変わりはない。

(Copyright 2007 Doctors Guide.com)
Medical Tribune 2007.12.20
版権 (株)メディカル トリビューン


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奥村土牛  水仙    日本画
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「特発性頭蓋内圧亢進(IIH)による頭痛」の診断基準
* 以前に使用された用語:
良性頭蓋内圧亢進症(Benign intracranial hypertension : BIH)、偽性脳腫瘍(pseudotumor cerebri)、髄膜水腫(meningeal hydrops)、漿液性髄膜炎(serous meningitis)
* 診断基準:
* A. 以下の特徴のうち少なくとも1項目が該当する進行性頭痛で、CおよびDを満たす
o 1. 連日性
o 2. 頭部全体 および・または 持続性(非拍動性)の痛み
o 3. 咳 または 息みによって増悪する
* B. 次の基準を満たす頭蓋内圧亢進
o 1. 意識清明の患者で、神経所見が正常、または次の異常のうちいずれかを示す
+ a) 乳頭浮腫
+ b) 盲点拡大
+ c) 視野欠損(治療しなければ進行性)
+ d) 第6脳神経麻痺
o 2. 髄液圧上昇(肥満がない場合は200ミリ水柱超、肥満がある場合は250ミリ水柱         超)が、臥位腰椎穿刺による測定、あるいは硬膜外圧モニターまたは脳室内圧モ         ニターによる測定で示される
o 3. 髄液化学検査および細胞検査が正常(髄液蛋白低値は許容される)
o 4. 適切な検査で頭蓋内疾患(静脈洞血栓症を含む)が否定される
o 5. 頭蓋内圧亢進をきたす代謝、中毒 または 内分泌性の原因がない
* C. 頭痛は頭蓋内圧亢進と時期的に一致して起こる
* D. 頭痛は、髄液ドレナージにより120-170 mmH2Oに減圧後に軽減し、頭蓋内圧が持      続的に正常化してから72時間以内に消失する
* コメント:
o 特発性頭蓋内圧亢進(IIH)は、若年肥満女性で最も多く起こる。
o IIH患者の大半が乳頭浮腫を呈するが、乳頭浮腫のないIIHもみられる。
o IIHのその他の症候には、頭蓋内雑音、耳鳴、一過性霧視、複視がある。

頭蓋内圧亢進
http://homepage2.nifty.com/uoh/rinshou/10nougeka.htm#%93%AA%8AW%93%E0%88%B3%98%B4%90i

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# by esnoopy | 2008-01-11 00:14 | その他

福山型筋ジストロフィー

1月1日の朝日新聞朝刊に朝日賞発表の記事があり受賞者の紹介がありました。
受賞者の一人の山中伸弥・京大教授については他のブログで紹介させていただきました。

万能細胞丹念な研究結実
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/12320091.html

きょうは小児科医師・臨床遺伝学者・生化学者という肩書きの3人の先生の受賞を紹介させていただきます。
最初に「日本人の名前のついた病気は珍しい」という冒頭の言葉から始まります。
日本人が最初に発見しても名前をつけない場合もあるので一概にはいえませんが、先生方はどれだけの名前が思い浮かびますか。
「田原結節」「橋本氏病」「川崎病」「間藤細胞」「猪瀬型肝性脳症」・・・・
もっとも「田原結節」「間藤細胞」は病名ではありませんが。
諸外国でどれだけ横文字になっているかはわかりません。
先生方、思いつく名前があったら是非コメントをお待ちしています。

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武者小路実篤 「蓮根と山葵」 日本画 
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v37857656?u=;ga_vision2004

世代・専門超え 難病と戦う
1993年には第9染色体上に原因遺伝子があることを解明。
98年に461個のアミノ酸からなるたんぱく質を作る遺伝子に変異が起きているのを見つけた。
福山型にちなみ、このたんぱく質を「フクチン」と名付けた。

福山型は筋ジスでは日本で2番目に多く、年30人前後の患者が生まれる。
2,000年以上前のたった1人の遺伝子の変異から広がった日本人特有の病気だとわかった。

一方、様々な糖が連なった糖鎖と生物の関係を研究していた遠藤さんは、1995年ごろから、筋肉細胞の膜にある糖鎖がくっついたたんぱく質を調べ、筋肉の構造や機能の解析を進めていた。
この糖鎖の合成に必要な酵素の遺伝子を解明。
病気との関係も調べようと、福山型の遺伝子解析をしていた戸田さんに共同研究を呼びかけた。

2001年、この酵素の遺伝子の変異で起こる糖鎖の異常が、福山型に似たMEBという病気を引き起こすことを突き止めた。
その後、同様の糖鎖の異常が、福山型の患者や、同じような脳の先天的障害を合併した類似の病気の患者でも起きていること明らかにした。

フクチンはこの酵素にくっついて作用していた。
遠藤さんは「こうした酵素を補充してやれば、糖鎖の異常による症状が改善する可能性がある」と話す。
治療法がない病気の治療に、道が見え始めた。

出典  朝日新聞・朝刊 2008.1.1
版権  朝日新聞社


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(画面をクリックして拡大ください)

<コメント>
専門分野でないのでうっかりしたことはいえませんが、日本固有の疾患かも知れません。
もしそうだとするとどこまでworldwideな病名なのでしょうか。
しかし3名のチームワークによる病因解明。
素晴らしいと思いました。
「フクチン」という名前も横山隆一氏の漫画「フクちゃん」みたいで可愛いですね。


『筋疾患百科事典』
http://www.jmda.or.jp/6/hyakka/kintop.html

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# by esnoopy | 2008-01-10 00:14 | その他

糖尿病の統合的理解を求めて

きょうは「第50回日本糖尿病学会年次学術集会」の会長講演で勉強してみました。
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ブラジリエ  草原の乗馬  リトグラフ
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糖尿病の統合的理解を求めて
東北大学 岡 芳知 氏

糖尿病はどのようなメカニズムで発症するのか?
岡芳知氏は,この答を見つけるべく取り組んできた自身の研究を振り返り,2 型糖尿病の成立および悪化において小胞体(ER)ストレス膵β細胞量の減少が重要な役割を果たすことを示すとともに,新たな治療の方向性について言及した。

Wolfram症候群の原因遺伝子を発見 
1985年,糖輸送体(GLUT)の遺伝子と構造が明らかにされ,当時留学から帰国直後であった岡氏はGLUTをターゲットに研究を開始。
ラット脳に少なくとも2種類のGLUTが存在することを突き止め,世界的に注目されることになった。

2型糖尿病患者では,食後の初期インスリン分泌の立ち上がりが遅く,ピークも低いことが知られている。
同氏は遺伝子研究を切り口とし,グルコキナーゼ遺伝子異常症やミトコンドリア遺伝子3243位変異による糖尿病においても,同様にインスリン初期分泌が低下していることを見出した。

さらに同氏はWolfram症候群に着目。
米国,英国の研究グループより狭い範囲に原因遺伝子を絞り込み,WFS1同定に成功した。
2型糖尿病でもERストレスにより膵β細胞量が減少

WFS1はERの膜蛋白の一種で,ERストレスへの防御作用を有することが知られている。
岡氏は,Wolfram症候群について「WFS1遺伝子異常によりERストレスに対する防御能が低下。
これにより膵β細胞におけるERストレスが増加し,膵β細胞数が徐々に減少する」との機序を推察。
また,2型糖尿病についても「少なくとも一部には,肥満・過食・運動不足を背景としたインスリン分泌の強要が膵β細胞におけるERストレスの増加につながり,ERストレスに対して遺伝的に脆弱な場合に膵β細胞数が徐々に減少する」との仮説も提唱した。

実際,最近では2型糖尿病でも膵β細胞量の減少が認められており,さらに生体膵移植のための膵細胞切除例においても,食後血糖値は正常でありながらインスリン初期分泌能が低下しているとの報告もある。

同氏は,「過栄養時代の今日,ERストレスが膵β細胞を減少させ,インスリン分泌を障害している可能性がある。今後は膵β細胞を守る治療法を確立するとともに,膵β細胞量の簡便な測定法の開発が急務となろう」と述べ,講演を終えた。


<コメント>
今回は糖尿病の基礎的な難しい話をとりあげてしまいました。
臨床場面に、このお話をどのように生かすかということも難しいことです。
糖尿病の原因究明が新しい治療薬の開発に結びつくことを期待するばかりです。


版権 メディカル トリビューン社
http://www.medical-tribune.co.jp/newsflash/jds2007/5-25/5-25-04.html

WOLFRAM症候群(DIDMOAD syndrome)
http://www.med.hokudai.ac.jp/~oto-w/slide/2004.6_kosaki/sld013.htm
糖尿病の新規治療法の開発
http://www.med.tohoku.ac.jp/sugamuracoe/pp-oka.html
研究室紹介
http://www.med.tohoku.ac.jp/room/146/japanese.html
研究案内
http://ds.cc.yamaguchiu.ac.jp/~baraa/kenkyuu/tn_naiyou.html小胞体ストレス (ERストレス) 応答機構
http://www.cis.ac.jp/~tomura/Contents_kenkyu-UPR.html
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# by esnoopy | 2008-01-09 00:05 | 糖尿病

惜別 アーサー・コーンバーグ博士

コーンバーグ博士については昨年(2007年)11月6日、7日の2日間にわたって紹介させていただきました。
奇しくもその時点ですでにお亡くなりになってみえたのです。(10月28日逝去)
11月16日の新聞記事から引用させていただきました。

生化学者、DNA研究でノーベル賞
アーサー・コーンバーグ

この(2007年)7月、家族みんなで日本を訪れ、
懐かしく旧友と言葉を交わしていた。
若手研究者とにこやかに写真に納まっていたのが昨日のようだ。
「9月にお会いしたときも元気で、来年の90歳のお祝いを楽しみにしていたのに」とまな弟子の一人、新井賢一東大名誉教授。
呼吸不全で倒れて1週間で世を去った。

1959年、遺伝子の本体、DNAを複製する酵素の発見で、師の故セベロ・オチョアとノーベル医学生理学賞を受け、その後も遺伝子の試験管内合成や複製機構の解明で最先端を走った。
その一方、何人もの日本人を含む多くの弟子を育てた天性のメンター(導師)だった。

米国留学中、数分の講演を聴いてほれ込み、弟子となった早石修・大阪バイオサイエンス研究所理事長は「科学は知識を集積することではない、ものを理屈で考えることだ、と身をもって示した」という。
その精神は直接・間接に多くの日本人生化学者に伝えられている。

もしかすると、そばにいるだけで自然に科学ができるようになるのかもしれない。
家族も例外ではない。
幼い時から研究室で遊んだ長男ロジャーさん(スタン
フォード大教授)は2006年のノーベル化学賞を受けた。
チェリストを指の故障で断念した次男トーマスさん(カリフォルニア大サンフランシスコ校教授)も生物学に転向、世界的な分子発生学者だ。
三男ケネスさんも建築家として大成した。

トーマスさんは「敵討ち」をした。
父のノーベル賞の対象となったDNA複製酵素は、後に複製の主役ではないとわかった。
授業で父の研究への悪口を聞いたトーマスさんは怒り、真の複製酵素を探し始め、3週間で見つけた。
結局、真の酵素も働きは原理的に父の酵素と同じだ
った。
父は息子に感謝したに違いない。
 
7月27曰、京都で「酵素への愛」と題し研究を回顧した。
自ら最後の言葉との意味の「スワン・ソング(白鳥の歌)」と言っていたという。

朝日新聞・夕刊 2007.11.16
版権  朝日新聞社

<コメント>
私は昔、大学に勤務していたことがあります。
循環器内科でしたが、病院勤務からの転向だったので、どんな研究をしていこうかと四苦八苦していました。
研究テーマを自分で探すのに、学内図書館に通って調べることで一日過ごすような毎日でした。
テーマは勿論のこと、方法論ゼロからの出発。
「科学は知識を集積することではない、ものを理屈で考えること」という言葉にもっと早く出遭っていれば、と今更になって思う次第です。

博士のご冥福をお祈りします。
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コーンバーグ博士 その1(1/2)
http://wellfrog.exblog.jp/7536813
コーンバーグ博士 その2(2/2)
http://wellfrog.exblog.jp/7536871

自分のよき師“メンター”を見つけよう
http://allabout.co.jp/career/careerplanning/closeup/CU20040825A/

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# by esnoopy | 2008-01-08 00:03 | その他

スポンサー付きのメタ解析

メタ解析に限らず大規模臨床試験も莫大な費用がかかるはずです。
メタ解析はあまり費用はかからないと思っていましたが結構スポンサーがついているようです。

製薬会社スポンサー付きのメタ解析は解釈に疑問が
単独スポンサー付きメタ解析では、結果と結論の不一致が37%に
Yank氏らは2004年12月までに出版された降圧薬臨床試験のメタ解析から、重複を除いた124解析を抽出した。
40%にあたる49解析が単独の製薬会社から資金提供を受けていた。

まず製薬会社に好ましい「解析結果」をもたらす要因を単変量解析で求めると、「試験の高品質」、「バラツキ検定の実行」、「感度解析の実行」が有意な因子であり、「単独製薬会社との経済的つながり」は有意な因子となっていなかった。

製薬会社に好ましい「結論」をもたらす因子は、唯一「単独製薬会社との経済的つながり」だけが有意だった。

事実、単独製薬会社と経済的つながりのあるメタ解析では、当該会社製品の有用性を示す結果が得られていたのは27解析(55%)だったにもかかわらず、45解析(92%)がその薬剤が有用であると結論しており、結果と結論の不一致が18解析(37%)に認められた。

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スポンサーなしの場合の不一致はゼロ
一方、複数製薬会社と経済的につながりのあるメタ解析14件では不一致率21%、経済的つながりの明記されていない25試験では12%、製薬会社以外と経済的つながりを持つ36解析では、結果と結論の不一致は1つもなかった。

Yank氏らは結果と結論が一致していないメタ解析を掲載した編集者とピアレビュアーを指摘している。
「データの解釈に問題がある」のであれば、いわゆる「総説」さらに「ガイドライン」も同様の問題を内包している可能性がある。
元New England Journal of Medicine編集長だったJerome P. Kassirer氏は著書「On The Take(買収の危機)」(Oxford Press、2005)において、具体的事例を挙げながら警告を発している。

Yank V et al. Financial ties and concordance between results and conclusions in meta-analyses: retrospective cohort study. BMJ. 2007 Dec 8; 335(7631): 1202-5. Epub 2007 Nov 16.


http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=1791
(「ケアネット」のパスワードが必要です。)

<コメント>
「経済的つながり」は結構メタ解析の結論に影響するという内容です。
結果はロジカル、結論はエモーショナルといったところでしょうか。
「経済的つながり」の有無の記載のない論文も多いようです。
どうせスポンサーがつくのなら単独より複数の方がバイアスが少なくなる(?)かも知れません。
いっそのこと研究対象となる薬剤のすべての製薬メーカーにスポンサーになってもらうのがよいのかも知れません。

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# by esnoopy | 2008-01-07 00:10 | その他

小児の咳とハチミツ

明けましておめでとうございます
皆様どのように新年を迎えられましたか。

さて、きょうは初めて小児科領域を取り上げてみました。
新年早々ということで”甘い”お話です。
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片岡球子『ゆたかなる富士』リトグラフ
http://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/107223453

小児の上気道感染症による咳の改善にハチミツが有効
小児の上気道感染症による夜間の咳の改善にハチミツが有効であることを示すデータが、米ペンシルベニア州立大学のグループによりArchives of Pediatrics & Adolescent Medicineの12月号に発表された。

同グループは、小児の上気道感染症に関連する夜間の咳と睡眠困難に対するハチミツまたは鎮咳薬(デキストロメトルファン)の1回投与の効果を無治療と比較した。
対象は上気道感染症による夜間症状があり、罹病期間が7日以内の2~18歳の小児105例。

就寝30分前にソバのハチミツを投与する群、ハチミツ風味のデキストロメトルファンを投与する群、無治療群にランダムに割り付けた。
最初の来院時とその翌日の来院時に、投与前の夜間と投与した夜間の症状について親に記入させ、咳の回数や程度、患児と親の睡眠の質などについて評価した。

評価スコアはハチミツ群が一貫して最高で無治療群が最低であった。
群間比較でハチミツ群は無治療群より咳の回数と合計スコアが有意に優れていたが、デキストロメトルファン群はいずれの項目においても無治療群を明らかに上回ることはなかった。
ハチミツ群とデキストロメトルファン群の比較では有意差は認められなかった。

同グループは「ハチミツは小児の上気道感染症に関連する夜間の咳と睡眠困難のよい治療法かもしれない」としている。

Paul IM,et al.Arch Pediatr Adolesc Med 2007;161:1140-1146.

出典 Medical Tribune 2008.1.3
版権 (株)メディカル トリビューン社

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<参考>
デキストロメトルファン(DM:多くの市販風邪薬に含有される咳止め成分)
<コメント>
ハチミツ関連業界の出資で設立された米農務省傘下の「米国蜂蜜(はちみつ)協会」から資金提供を受けての研究と、あるサイトで紹介されていました。
「おばあちゃんの教えは正しかった」ということでしょうが、いささかバイアスがかかっているかも知れません。
さて、この報告で気道感染症ということが気になります。
普通の咳は中下気道感染症ですから、上気道を刺激する咳ということなんでしょうか。
そして成人ではどうなんでしょうか。
18歳の小児というのも何だか変ですが、18歳で効くんなら当然成人にも効くということになるんですが。


#小児用の咳(せき)止めシロップは、効果が認められないという理由で多くが市場から排除されたが、民間療法(folk remedy)で古くから使われているはちみつに、シロップと同等かそれ以上の効果があることが、米国の研究で明らかになった。
#同大小児医学臨床研究ディレクターのIan Paul博士は、はちみつは古くから風邪など上気道感染症の症状の治療に用いられてきたが、抗酸化作用や抗菌作用があり、喉(のど)の奥の症状を和らげる効果があると述べている。
しかし同時に、乳児ボツリヌス中毒の危険性がわずかながらあることから、1歳未満の乳児には与えないよう忠告。
また、ラベルに「はちみつ」含有と記載する咳止めも、人工的に添加したものだとして注意を促している。
http://health.yahoo.co.jp/news/detail/?idx0=w16071203

そばはちみつと小児咳
http://www.yamaka-seifun.co.jp/topics/t0003.htm
(普通のはちみつよりも濃色の「そばはちみつ」には、抗酸化物質がより多く含まれるため、「そばはちみつ」がより効果が望まれるとのこと)
はちみつに優れた抗酸化作用
http://health.yahoo.co.jp/news/detail/index.html?idx0=w03070301

<コメント>
1歳未満の乳児にははちみつは食べさせてはいけないということは比較的有名な話です。
1歳を過ぎれば大丈夫かというとそんな保証もないようです。
乳児ボツリヌス症とハチミツ
http://www.kodomo-iin.com/QA/QAbox2002/QA200210-006.html
乳児ボツリヌス症
http://www.harenet.ne.jp/senohpc/disease/botulinus.html
乳児ボツリヌス症
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g3/k01_46/k01_46.html
乳児ボツリヌス中毒
http://www.imic.or.jp/mmwr/backnum/5202.html
ボツリヌス症
http://www.yoshida-pharm.com/information/dispatch/dispatch17.html


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ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/(循環器科関係の専門的な内容)
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# by esnoopy | 2008-01-04 00:05

基礎インスリン補充の意義 その2(2/2)

昨日の
基礎インスリン補充の意義 その1(1/2)
http://wellfrog.exblog.jp/pg/blog.asp?dif=d&acv=2007-12-27&nid=wellfrogの後半です。

1日にわたり安定した血糖降下作用を示すグラルギン
最近、グラルギンの作用持続時間について正常血糖クランプ法により検討した成績が
Diabetes Care誌に掲載されました。
本試験は内因性インスリン分泌がゼロのⅠ型糖尿病患者に二重盲検クロスオーバー
法によりグラルギンまたはインスリン デテミルを2週間にわたり投与した後、正常血糖
クランプ法により、インスリン製剤の作用の強さと降下の持続時間を検討したものです。
この試験ではインスリンの血糖降下作用が消失し、血糖値が150mg/dLを超えるまで
の時間をエンドポイントとしています(24時間で試験終了)が、グラルギンは血糖降下
作用が24時間持続したのです(図③)。
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つまり、以前の報告と同様にグラルギンは作用のピークをきたすことなく、1日1回の
投与で24時間にわたり安定した血糖降下作用
を示し、基礎インスリン補充に適した
製剤であることが確認されました。

SU薬効果不十分例におけるグラルギンの上乗せ効果
我々はSU薬を服用している2型糖尿病でコントロール不良(HbA1c 7.5%以上が1年
以上継続)の44例の患者に朝食直前あるいは眠前にグラルギン皮下注射を追加し、
18ヵ月にわたり治療効果を検討しました。
その結果、18ヵ月解析可能例(n=27)ではHbA1cが開始時の9.7±1.8%から
18カ月後に7.7±1.3%に低下しました。
全体では十分な結果とはいえないかもしれません。
しかし、SU薬を十分量用いてもコントロール不良という患者に1日1回投与という最小限
の負担で達成できた結果としては意義があり、インスリン導入に抵抗感の強い患者や
頻回注射が困難な患者への選択肢としてまず考慮されるべき方法ではないかと考え
られます。

また、最初の6カ月間でHbA1c7.0%以下を達成した改善群(n=11、平均HbA1c
6.7%)では18ヵ月後もグラルギンの増量なく良好なコントロールを継続している症例が
大部分を占め(図④)、SU薬効果不十分例におけるグラルギンを用いた
基礎インスリン補充の有効性が認められました。
c0129546_2123011.jpg

(図をクリックすると大きくなります)
一方、それほどまで顕著な改善がみられなかった群は朝食前血糖値が正常域に到達
したにもかかわらず、毎食後高血糖が持続した例でした。
この結果から、開始数ヵ月以内で判断し、食後血糖コントロールに追加インスリン注射が
必要と考えられた際には、積極的に夕食前に超速効型インスリンを用いるべきであることも
示唆されました。

明らかなピークをきたすことなく24時間にわたり安定した血糖降下作用を示す基礎
インスリン製剤グラルギンの登場により、2型糖尿病の治療体系は変化しつつあります。
SU薬を含む経口薬のみでは十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者に
おいて、経口糖尿病薬を使用しながら基礎インスリンを追加するこの方法は最近BOT
( Basal supported Oral Therapy )
と呼ばれ、血管障害の発症・進展を阻止する
ためのインスリン導入の有用な方法の1つとして注目されているのです。
c0129546_21262948.jpg

サルボ シルク『プランテーションへの道』
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p90763819?u=;artfolio11


<引用文献>
l) Yki-Jarvinen H, et al、Diabeles Care23:1130-1136、2000
2) Porcellati F, et al. Djabetes Care 30:2447-2452, 2007
3) 後藤広目,ほか, 糖尿病50: 591-597, 2007

<参考>
カートリッジ型のインスリン製剤(ランタス注オプチクリック300)及び
専用の手動式医薬品注入器(オプチクリック)に関する注意喚起について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/09/h0930-7.html
持効型溶解インスリンアナログ製剤「ランタス」発売へ
http://www.yakubutsuryoho-center.jp/yakubutsu/detail.php?id=150サノフィ・アベンティス株式会社の「ランタス」の新規患者への発売開始について
http://www.saga-cs.org/IDDM/20071114.pdf

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皆様、よいお年をお迎え下さい。
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# by esnoopy | 2007-12-28 11:10 | 糖尿病

基礎インスリン補充の意義 その1(1/2)

持効型溶解インスリンアナログ製剤 ランタス注オプチクリック300
(製造販売サノフィ・アベンティス)、一般名インスリン グラルギン
が薬価収載されて4年経過しました。
糖尿病専門医でない私としては使用経験のない薬剤ですが、日経メディカル
最新号に紹介され興味深く勉強させていただきました。
きょうはその記事を転載させていただきます。
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ギヤマン 水彩画15号『コンサート』
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v36889791?u=;artfolio11


我が国では40歳以上の3人に1人が糖尿病または糖尿病予備群であることが、平成18年国民健康・栄養調査速報で発表された。
2型糖尿病患者の血糖コントロールを良好に保ち、血管障害の発症・進展を阻止することは医療経済においても重要な課題である。
我が国で初めての持効型溶解インスリン製剤であるインスリングラルギンが発売されてから4年が経過し、臨床的知見も蓄積されてきた。
今回「増えゆく2型糖尿病へのアプローチ」シリーズの第1回として、血糖コントロール改善のための基礎インスリン補充療法の意義について、順天堂大学教授の河盛降造先生にお話を伺った。

2型稲尿病における高血糖の病態生理は?
健康な人では夜半の内因性基礎インスリン分泌率は1時間当た1単位弱であり、その結果、朝食前空腹時血中インスリン値が5~7μUノmLとなります。
インスリンによる全身糖取り込み率と肝糖放出率が一致し、血糖値は100mg/mlL以下に維持されています。

一方、摂食後には1回の食事あたり10~20単位ものインスリンが分泌され、肝糖放出率を0とし、かつ肝糖取り込み率が高まり、さらに筋糖取り込み率が増え、血糖値は速やかに食前値に復します。
2型糖尿病は、インスリン分泌量が少ないという遺伝表現型を有するところに、ライフスタイルの乱れから内臓脂肪蓄積、脂肪肝、脂肪筋が起こり、インスリン感受性を軽度であれ低下させることにより、発症してくるのが一般的です。
 
病初期においては、主に肝のインスリン感受性が低下し食後の肝への急激なブドウ糖流入に対して、わずかなインスリン分泌では肝糖取り込み率を十分高めることができなくなっており、食後血糖の異常な上昇とその遷延となって表れます(図①A)。
さらに病期が進み基礎インスリン分泌までが低下してくると、SU薬を含む経口薬を使っていても朝食前空腹時血糖値が140mg/dLを超えるようになってきます。
食後血糖値はより一層高くなります(図①B)。
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したがって、こうした2型糖尿病の血糖コントロール改善には基礎インスリン補充が必要になります。

基礎インスリン補充による血糖プロファイルの是正
上昇している朝食前空腹時血糖値を基礎インスリン補充により、適切にコントロールすれば、血糖プロファイル全体を押し下げることが可能と考えられます。
実際にSU薬を含む経口薬を使用しても十分な血糖コントロールが得られなかった2型糖尿病患者を対象に、インスリン グラルギン(遺伝子組換え)(以下グラルギン)を1日1回就寝前に52週にわたり投与したところ、朝食前空腹時血糖値だけでなく、食後血糖値も含めた1日の血糖プロファイルが全体に40~60mg/dl低下したことが示されています(図②)。
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(図をクリックすると大きくなります)

基礎インスリン補充に適した薬剤の条件
高用量のSU薬に加え、他の経口糖尿病薬が長期間使用されているにもかかわらず、高血糖状態(HbA1c 8%以上)が持続している2型糖尿病患者では、機を逸することなくインスリン療法を導入すべきです。
「患者がインスリン注射を嫌がるから」といって放置すべきではないでしょう。
外来でインスリン療法を導入する際には、それまで使用していたSU薬を含む経口薬を継続しながら、基礎インスリン製剤を1日1回だけ追加するという方法は、こうした患者にとっても受け入れやすいものとなるでしょう。

それでは2型糖尿病患者の基礎インスリン補充に適した製剤の条件とは何でしょうか。
1日1回の投与により基礎インスリン分泌を模倣するには、何よりも24時間にわたり安定した効果が得られることが第一条件です。

出典  日経メディカル 2007.12
版権  日経BP社


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# by esnoopy | 2007-12-27 00:47 | 糖尿病

胆石とNASH,Mets

胆石は非アルコール性脂肪肝炎とメタボリックシンドロームに関連
〔米ルイジアナ州ニューオーリンズ〕
アジア消化器病学研究所(インド・ハイデラバード)病理学顧問医師のAnurada Sekaran博士らは,症候性胆石症患者は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の有病率が高く、メタボリックシンドロームと有意な関連がられるとする前向き研究の結果を、米国臨床病理学会(ASCP)年次集会で報告した。

胆嚢切除術中に肝生検を実施
NASHは非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)がさらに進展した疾患であり、肝細胞障害と線維化に関連している。
症候性胆石はしばしば肥満、高卜リグリセライド血症、インスリン抵抗性、2型糖尿病と関連しており、それらがNASHと関連することもある。
メタボリックシンドロームは、ウエスト周囲径の増加、高トリグリセライド血症、高コレステロール血症、高血圧、高血糖の基準のうち3点を有するものと定義されている。

Sckaran博士らは、腹腔鏡下胆嚢切除術を行った症候性胆石症患者88例を対象に、NASHとメタボリックシンドロームの有病率を評価した。
また、2006~07年に実施された胆嚢除術中に同時に肝生検を行った。
なお、術後合併症は見られなかった。

多量の飲酒、ウイルス陽性のB型・C型肝炎、自己免疫疾患とウィルソン病の患者は除外した。

NASH患者とNASHでない患者で、人口的特徴、身体的数値、肝機能検査、脂質プロフィール、超音波所見を比較した。
NASH診断後、肝生検所見を修正Brunt線維化スコアにより評価し、NAFLD Activity Score(NAS)を用いて脂肪化、すなわち脂肪変性、小葉性肝炎、バルーニングを評価した。

単変量解析の結果、生検時NASH患者では、脂肪化(P<0.0001)、肝細胞性のバルーニング(P<0.0001)、小葉性肝炎(P=0.0128)、繊維化((P<0.0001)との有意な関連が認められない。
また、多変量解析ロジスティック回帰分析の結果、脂肪化(P=0.027)、肝細胞性のバルーニング(P=0.16)、小葉性肝炎(P=0.002)でNASHとの関連が示された。

NASH患者はNASHでない患者に比べて糖尿病の有病率が高く(31.8%対17.9%)、血清コレステロール値が高く(53%対33.1%)、血清トリグリセライド値も高かった(29.4%対18.5%)ことから,NASHはメタボリックシンドロームと関連することが示唆された。
症候性胆石症患者はNASHの有病率も高かった。
同博士らは、NASHを早期診断すれば、患者がライフスタイルを改善し、同疾患の進行を予防する動機付けになる可能性があると結論付けた。

また同博士らは、腹腔鏡下胆嚢切除術中に肝生検を安全に行え、さらに組織学的評価が肝硬変の早期診断に役立つとしている。
同博士は「NASHを早期診断すれば、これらの患者を追跡し、肝硬変に進展するか否かを観察することが可能となる。
つまり、ライフスタイルを修正してNASHのさらなる進展を予防することができる」と付け加えた。
   (Copyright 2007 Doctors Guide.com)
Medical Tribune 2007.12.20
版権 (株)メディカル トリビューン


<コメント>
医学生の頃、胆石症の診断の糸口として「4S」を習った記憶があります。
その中の一つがFattyですから、NASHやMetsとの関連は首肯するところです。

文中に「症候性胆石はしばしば肥満、高卜リグリセライド血症、インスリン抵抗性、2型糖尿病と関連」と出てきます。

ここでどうして「症候性」なのかという点はよくわかりませんでした。
Metsの概念は、欧米ではどの程度の取り扱いなのでしょうか。
日本ほどではないように思うのですが、その点も興味のあるところです。

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# by esnoopy | 2007-12-26 00:10 | 高尿酸血症

α-グルコシダーゼ阻害薬による消化管症状

日経メディカル2007.12に掲載されたα-グルコシダーゼ阻害薬の副作用に関する記事です。
私は個人的には夕食1回から開始して、患者さんに腹満などの副作用について説明しながら
漸増しています。
正しいやり方かどうか自信はありません。
この手を使うのは、糖尿病治療薬の「持ち球」を減らしたくないという気持ちがあるからです。
患者さんはいきなりいやな副作用が出ると、もうその手の薬は服用してもらえないことがしばしばあります。
このことはカルシウム拮抗剤などでもしばしば経験することです。

消化管症状は副作用というより主作用
HECサイエンスクリニック
(横浜市磯子区)理事長    平尾 紘

α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)が発売されて10年以上になる。
欧米では、発売当初から血糖があまり下がらないとの評判が多かったが、日本では食後血糖低下薬として受け入れられた。
現在、わが国では、アカルボース(商品名グルコバイ)、ボグリボース(ベイスン)、ミグリトール(セイブル)の3剤が使用されている。

α-GIは、小腸粘膜上皮細胞に存在する二糖類加水分解酵素(α-グルコシダーゼ)を阻害することにより、二糖類の消化・吸収を遅延させ、食後の異常な血糖値の上昇を抑える。
そのため、食事の中の炭水化物の割合が50~60%以上でなければ効果がはっきりしない。
欧米で評判が悪いのは、蛋白質や脂質の多い食事をしているからで、炭水化物の多い日本では理にかなった薬といえよう。

副作用が強いほど効果が高い
近年、食後2時間の血糖値が高くなると膵β細胞の疲弊が進み、次第に空腹時血糖も上昇して明らかな糖尿病になることや、食後2時間血糖値が高いと心血管疾患にかかりやすいことなどが明らかになり、α-GIの重要性が指摘されるようになった。

食後2時間血糖値を下げることができる経口薬は、グリニド系とα-GIのみである。
そのうちα-GIは、インスリンを含む他の血糖降下薬と併用しやすいことが特徴である。

α-GIは、発売当初はインスリンとの併用が認められていなかった。
しかし、食後血糖値は病状が悪化するほど上がりやすくなる。
そのため、筆者は、むしろインスリン治療者こそα-GIを併用すべきだと考え、早い時期から1型糖尿病の患者を含む糖尿病の患者に積極的に使用してきた。
インスリンにα-GIを併用すると、HbA1cが0.8%程度改善することも報告した。

また、食後血糖を低下させることでインスリン抵抗性も改善するのではないかと考え、インスリンクランプ法でインスリン抵抗性を改善することも報告した(表1、図1)。
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    (クリックしていただくと大きくなります)

ただ現在は、超速効型インスリンアナログが発売されたことにより、食後高血糖の管理のためにα-GIを使う必要がなくなり、特に1型糖尿病については、α-GIを併用することは少なくなっている。

α-GIの副作用としては、腹部膨満感、放屈、下痢、腹鳴などの消化管症状がよく知られているが、筆者はこれらの症状は大なり小なり起こるものとして使用すべきと考えている。

通常、炭水化物は小腸の上部半分でほぼ100%吸収されるが、α-GIを投与することによって小腸の上部での吸収は50%に抑えられ、小腸の下半分で40%程度吸収されるようになる。
つまり、炭水化物の半分が2~3時間程度消化されない形で存在するということで、消化管症状は、消化・吸収されなかった糖質が下部消化管へ大量に流入することで起こる。
筆者は、α-GIによる消化管症状は副作用というより主作用であると考えている。

逆に、消化管症状が少ないのは、目指す主作用(食後過血糖の抑制)も弱いことを意味している可能性がある。
筆者の独断と偏見で述べると、食後血糖抑制作用が最も弱いのはボグリポース0.2mgで、続いて、アカルボース50mg、ボグリポース0.3mg、アカルボース100mgの順で食後血糖抑制効果が強くなる。
消化管症状はその逆の順で強い。

これらの2剤により便が柔らかくなることもあるが、下痢はめったに見られない。
筆者は、アカルボースが発売されたころ、ある患者さんに、「先日出してくれた便秘の薬を下さい」と言われて処方せんを調べたところ、便秘薬は1回も処方したことがなく、困った経験がある。

最近発売されたミグリトールは上記2剤とは作用機序が異なるため、副作用も若干異なるように思われる。頻度はそれほど多くないが、消化管症状の中で特に下痢の症状が目立つ印象がある。
なお、開発段階では摂取した炭水化物のうち10%が吸収されないのであれば、「やせ薬」になるのではないかと考えられたが、残念ながら残りの10%は大腸で吸収されることが判明している。

低血糖は起こりにくい
私のデータではないが、α-GIは低血糖を少なくするという学会発表がある。
1型糖尿病の患者に聞いてみても、低血糖は少なくなったという声が多い。
α-GIを服用すると、食後1~2時間の血糖上昇が抑えられ、その後、糖がゆっくり吸収されることにより、食後3~4時間の血糖が底上げされる。
そのために低血糖を起こしにくくなるのではないかと考えられる。

ところでα-GIを服用して低血糖を起こした場合には、砂糖では回復しないので、必ずブドウ糖を服用するようにいわれているが、本当にそうだろうか。
筆者は以前から、低血糖を起こす食後3~4時間には、α‐GIの作用は消えているのではないだろうかとの考えを持っており、実際、1型糖尿病の十数人の患者から、砂糖で十分回復するという体験談も聞いている。

新薬の使用に際しては、メーカーからの情報だけに頼ることなく、患者の意見もよく聞きながら、自分の考えをしっかり持って対応することが肝要である。

出典 NIKKEI MEDICAL 2007.12
版権 日経BP社

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上利 真永  湿原に
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s78509358?u=edelcoltd

<コメント>
ある講演会でこんな話がありました。
「炭水化物の摂取量の少ない欧米ではα-GIは効かない経口糖尿病薬と位置づけられている。
日本人は炭水化物の摂取量が多いので、有効例が多い。」


他にもブログがあります。
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# by esnoopy | 2007-12-25 00:04 | 糖尿病

PK/PDパラメータ

最近、キノロン系経口抗菌剤で「PK/PD超えて叩く」をキャッチフレーズにした新薬が発売されました。
私自身古い部類の医師になります。
薬理学は少しは学生時代勉強しましたが(当時の教授が結構売れ筋の教科書の著者でした)、臨床薬理学の概念があまりない時代でした。
きょうは(株)SAFEのSAFE-DI「薬効シリーズ」の記事でPK/PDを勉強してみました。
生体内に投与された抗菌薬は、薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)の過程で刻々と変化していくため、臨床における抗菌薬の評価では、抗菌力の他に、薬物動態を考慮することが必要となります。
そこで、抗菌薬の投与計画を立てる際には、薬物動態(PK)の指標と抗菌力(PD)の指標を組み合わせて考えることで、臨床効果の予測や評価を行うことができ、また、副作用や耐性菌発現の抑制が可能になります。
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版権 (株)SAFE

<参考>
TDM、薬物動態関連の専門用語解説
薬物動態(ファーマコキネティックス) 
体内動態ともいう。薬物の吸収、分布、代謝、排泄を包括した表現である。「生体が薬物に対して何をするか(What the body does to the drug)」という簡明な説明もされる。TDMの領域では、主に薬物の血液(血漿、血清)中濃度推移を意味することが多い。PKと略記されるが、吸収、分布、代謝、排泄を表すADMEも用いられる。

力学(ファーマコダイナミックス) 
薬動力学ともいうが、「ファーマコダイナミックス」の表現が比較的多く用いられるようである。
薬物の作用の観点から、薬物動態と対比させて用いられる。「薬物が生体に対して何をするか(What the drug does to the body)」という簡明な説明もされる。PKに対して、PDと略記される。

PK-PD
以前は「PK/PD」と表記されることが多かったが、英語圏では“/”が“or”の意味で用いられ、誤解を呼ぶ不適切な表記法であることから「PK-PD」と表記されるようになってきている。薬物のPKとPDを関連させて解析することにより、薬物の作用をより理論的・合理的に解釈・説明する方法論を総括的にPK-PDと呼ぶ。PK-PDは、狭義には、個体内の血中濃度の時間変化(PD)と薬理作用の時間変化(PD)をモデル解析により関連付けて解析するものを指す。より広義には、薬物投与による長期的な曝露(Exposure)と臨床反応(Response)の関係(E-R)も含めてPK-PDと呼ぶこともある。 FDAからE-Rに関するガイダンスが出ている。(Exposure-Response Relationships: Study Design, Data Analysis, and Regulatory Applications)

細菌感染症の領域では、PDの指標である起炎菌の薬物感受性(MIC)と薬物動態パラメータを組み合わせ、AUC/MIC比、Cmax/MIC比、T>MICなどの指標をPK-PDパラメータ(PK-PD index)と呼んで用いている。International Society of Anti-Infective PharmacologyはPK-PD用語の標準化を提言している(Standardization of Pharmacokinetic/harmacodynamic(PK/PD)terminology for anti-infective drugs: an update)

ピーク値(濃度) 
最高濃度(Cmax)ともいう。投与後、吸収過程の大部分が終了し、血漿中濃度が最も高くなった時点の濃度(図1)。臨床効果や副作用との関連で評価が必要な場合があるが、吸収速度が一定しない場合には評価が困難である。

トラフ値(濃度) 
最小濃度(Cmin)ともいう。反復投与時の投与直前の血漿(血清)中濃度(図1)。血漿中濃度の経時的推移の中で、変動の小さい時点であるため、血漿中濃度のモニタリングに最も適し評価時点である。

AUC、濃度―時間曲線下面積 
「血中濃度-時間曲線下面積」という表現もあるが、「AUC」が広く用いられている。通常、添え字を用いて、AUCの時間範囲を表記する。単回投与後の無限時間までのAUC(AUC0-∞、AUCinf)や反復投与時の1投与間隔のAUC(AUCτ)あるいは24時間のAUC(AUC24h)などが多く用いられるが、non-conpartment解析(NCA)では、最終測定点までのAUC(AUC0-T)も汎用される。Introduction to the Pharmacokinetic Equationsには、AUCをはじめ、多くのPKパラメータの算出式が多数掲載されている。

ベイズ推定(値)
TDM、薬物動態の領域では、PPK解析でよく用いられるパラメータの推定方法で、事前確率分布(母集団パラメータ)に加えて、観察値(個体の濃度値)が得られたとき、その観察値に基づく事後確率分布を推定の確信度とし、その個体の最も確からしいパラメータを推定する方法をベイズ推定と呼び、その値をベイズ推定値という。

文中の図は以下のサイトでご確認下さい。

TDM、薬物動態関連の専門用語解説
http://jstdm.umin.jp/yogo/yogo.html
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# by esnoopy | 2007-12-21 00:03 | その他

コレステロール低値の脳卒中死リスクは必ずしも低くない

観察研究のメタ解析としては最も信頼性の高いProspective Studies Collaboration(PSC)が、血清脂質と心血管系イベントに関する解析をLancet誌12月1日号で公表した。
虚血性心疾患死のリスクは予想通り、血清総コレステロール(TC)低値例で年齢を問わず低かった。
一方、脳卒中死では、TC高値がリスクとなっていたのは、相対的若年者と収縮期血圧がほぼ正常である場合のみだった。

約90万例、1千万例・年のデータを解析
解析対象となったのは、観察開始時に心血管系疾患の既往がなかった40~89歳の89万2,337人。
前向きコホート研究61件のデータが集められた。わが国からのデータも含まれているが、主として欧米人の成績である。
また一般的なメタ解析と異なり、PSC解析では原則として、オリジナルデータが入手可能だった。

1,160万人・年のサンプル(平均追跡期間13年)中、55,262例が血管系イベントで死亡していた。
内訳は「虚血性心疾患死」が33,744例、「脳卒中死」11,663例、「その他の血管死」が9,855例である。

虚血性心疾患リスクはTC低値に従い減少
性別、年齢と参加した試験で補正後、血清脂質と死亡リスクの関係を検討すると、以下が明らかになった。

まず虚血性心疾患死のリスクだが、リスク対数値とTC値の間に正の相関を認めた。
年齢の高低、性別を問わず、TC値が37.8mg/dL(1mmol/L)低いと虚血性心疾患死のリスクも有意に低かったが、相対リスクの減少率は若年者で顕著であり、高齢になるに従ってTC低値による相対リスク減少率は小さくなっていた。

また、このTC低値における虚血性心疾患リスクの減少は、収縮期血圧の高低、喫煙習慣の有無、BMIの高低を問わず認められた。

脳卒中リスクは血圧145mmHg以上では有意に大きい
一方、脳卒中死リスク(対数値)とTC値は、40~59歳で弱い正の相関が認められるのみで、それより高齢では相関していなかった。

試験開始時の収縮期血圧別に検討すると、「145mmHg未満」ではTC値が37.8mg/dL低値であれば脳卒中死リスクは有意に低くなっていたが、「145mmHg以上」であった場合、リスクは逆に有意に大きくなっていた。
この脳卒中と総コレステロールの関係については、更に検討する必要があると著者らは記している。

なお本コホートにおける「非血管系死亡」は42,865例。TCが37.8mg/dL低値だとリスクは相対的に10%有意に増加していた(95%信頼区間:1.08~1.11)。
この結果を著者らは、TCを低下させる基礎疾患などによりリスクが増加した結果であろうと記している。

TC値と総死亡の関係は示されていないが、TC低値は「虚血性心疾患死」のリスクは低いが、血圧コントロール不良例では「脳卒中」抑制に注力が必要であり、また一般的にTC低値例では続発性の低コレステロール血症を除外する重要性が示された。

http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=1644
2007/12/13(木)No.J000209

Prospective Studies Collaboration et al. Blood cholesterol and vascular mortality by age, sex, and blood pressure: a meta-analysis of individual data from 61 prospective studies with 55,000 vascular deaths. Lancet. 2007 Dec 1; 370(9602): 1829-39.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?Db=pubmed&Cmd=ShowDetailView&TermToSearch=18061058&ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum

<コメント>
タイトルほどにはインパクトに欠ける内容です。
コレステロール低値で総死亡が増加するというエビデンスは以前からあるようです
が、スタチンの学術集会などでは、そのことは一切取り上げられません。
コレステロール値のLower the betterという考え方。
どうも私自身受け入れることが出来ませんでしたが、少なくともこの論文は心強い
味方になりそうです。
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# by esnoopy | 2007-12-20 00:05 | 循環器科

超音波内視鏡下穿刺吸引法

米ルイジアナ州ニューオーリンズ
ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部ノースウェスタン記念病院(NMH、シカゴ)細胞病理学Songlin Zhang博士らは、超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FFNA)法が、多数の臓器病変の評価精度を有意に改善し、侵襲的な診断・病期分類施行数を減らすとする試験結果を、米国臨床病理学会(ASCP)の年次集会で報告した。

5年間に951例を再検討
EUS-FNA法は、癌の診断、病期分類、治療に用いられていたこれまでの方法に徐々に取って代わりつつある。
同法は食道、胃、膵臓、直腸、縦l隔の腫瘍における病期分類の精度がきわめて高いことが、多数の試験
で報告されている。
また、穿刺吸引時の生検針やブラシの新たな開発に
より、腫瘤の壁内や嚢胞から十分な標本材料を得ることも可能となっている。

Zhang博士らは、NMHでEUS-FNA法を用いて採取した過去5年間のサンプルを検討し、文献の現行法による知見と比較した。
2002~06年のEUS-FNA症例951例について細胞学的・組織学的な相関性を見直し、生じた矛盾については細胞学的検査または手術時に得られた標本を検討することで究明した。

感度、特異度、正診率とも良好
今回のEUS-FNA症例の病変部位は、膵臓465例、リンパ節249例、胃腸粘膜下111例、肝臓32例、その他94例であった。
偽陰性は3例で,偽陽性はなかった。
EUS-FNA法による細胞診は、悪性30.9%、異型性3.8%、腫瘍性12.9%、陰性37.9%,判定不能10.2%,その他4.3%であった。
 
全症例の37.5%について外科的追跡を行った。
おもに病期分類を検討したリンパ節は、判定不能例となる率が5.6%と最も低く、膵嚢胞病変では23.8%と最も高かった。
悪性と異型性を細胞診陽性、その他を陰性とすると、感度91.6%,特異度96.6%,正診率93.2%であった。
 
今回の知見から、NMHにおいてEUS-FNA法で、最も多く検出された病変を有する臓器は膵臓(48%)、次がリンパ節(26%)であった。
同法の全体としての感度は85~95%、特異度95~100%、正診率85~95%で、病変の位置と性状に左右された。
すなわち、膵臓の充実性病変の感度は95%であるのに対し、膵嚢胞では4.7%であった。

以前の試験で報告きれたように、適切な標本検体が得られるかどうかは専門医の経験に左右される。
Zhang博士は「EUS-FNA法は、有力な診断・病期分類ツールである。
今回の試験では、きわめて高い感度、特異度、正診率が得られた」と結論付けた。
(Copy light 2007 Doctors Guide.com)

Medical Tribune 2007.12.13
版権 (株) メディカル トリビューン

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# by esnoopy | 2007-12-19 00:10 | がん治療

呼吸器感染症への抗菌薬投与

呼吸器感染症への抗菌薬投与 ハイリスク高齢者にはメリット

肺炎のリスクが大きい高齢者への抗菌薬の投与は、呼吸器感染症後の肺炎リスクを
有意に低減するため、メリットが大きいことが示唆された。
英国ロンドン大学の研究グループが、研究結果をBritish Medical Journal(BMJ)誌
10月20日号で報告した。

162カ所のプライマリケア施設から集めた、呼吸器感染症の症例336万件を対象
とした。

主要アウトカム指標は、抗菌薬の処方を受けた患者と受けなかった患者それぞれの、
診断から1カ月間の重症合併症リスクとした。

処方なし群と比べた場合の、処方あり群の調整オッズ比は、上気道感染後の肺炎発症
で0.68(95%信頼区間0.58-0.79)、中耳炎後の乳様突起炎で0.56(0.37-0.86)、
喉の痛み後の化膿性扁桃腺炎で0.840.84(0.73-0.97)で、いずれも有意にリスクを
低減していた。

ただしこれらの重症合併症の発症はまれであり、NNT(治療効果を1人増やすために
何人治療しなければならないかを示す値)はいずれの場合も4000を超えていた。
従って、抗菌薬投与の利益は大きいとはいえない。

胸部感染後の肺炎発症も、抗菌薬投与により有意に減少した。
処方なし群と比べた場合の、処方あり群の調整オッズ比は、0~4歳で0.22(0.17-0.27)、5~15歳で00.18(0.13-0.24)、16~64歳で0.27(0.23-0.32)、65歳以上で0.35(0.33-0.38)だった。
NNTはそれぞれ101(85-125)、96(73-137)、119(105-136)、39(36-42)だった。
65歳以上の高齢者に限れば、39人への投薬で1人の重要感染症が回避できる計算になり、投薬の利益は大きいといえる。
(I Petersen et al、BMJ published online 18 0ct 2OO7.)
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友成晴雄 作品名:高台の聖堂 マルセーユ
http://page19.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/x28145723?u=edelcoltd

<番外編>
2007年認定内科医・認定内科専門医のためのセルフトレーニング問題集(B) 
~解答と解説~ より
原発性アルドステロン症
*原発性アルドステロン症(PA)はこれまで高血圧患者の0.1~1%とされていたが、最近は内分泌性高血圧の中で最も頻度の高い疾患であると考えられており、高血圧患者の5%以上を占めるとの報告もある。
*PAの原因疾患で最も多いのはアルドステロン産生腺腫(APA)であり、PAのおよそ75%を占める。
*さらにAPAの半数近くがマイクロアデノーマであるとされる。
*両側副腎皮質過形成による特発性アルドステロン症(IHA)はPAの20%を占める。
*PAで明らかな低K血症をきたす例は半数以下である。
*血清K値が正常で血圧上昇も顕著ではない軽症例が多数存在しており、すべての高血圧患者においてPAを疑いPRA、PACを測定することが望ましい。
*アルドステロン/レニン比(ARR:PAC/PRA)が300~500(PACの単位pg/ml)以上の場合にPAを疑うという報告が多い。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)

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# by esnoopy | 2007-12-18 00:05 | 感染症

抗癌効果のある食事はあるのだろうか?

ある種の果物と野菜を食べると癌のリスクが低下しその増殖が止まる可能性すらある
ある種の果物と野菜が癌のリスクを低下させ、その通過路に発生する癌を抑制するのに役立つ可能性があると、新規研究は示唆する。

「抗癌作用をもつ食事」が現実に存在するわけではないが、ある種の果物と野菜を多量に摂取することは、発癌リスクを低下させるのに役立つと、研究者らは米国癌研究学会の第6回国際癌予防研究フロンティア年次会議(フィラデルフィア)で報告した。

その知見は、果物と野菜の摂取量が多いことが癌リスクの低下と関連することを明らかにした、以前の研究を確認および補強するものである。

最新の「A」リストには、ブラックラズベリーが食道癌の予防、およびブロッコリーのようなアブラナ科の生野菜が膀胱癌の予防に推奨されている。

新しい知見にもかかわらず、「魔法のような効果のある」食物はないと、オハイオ州立大学総合癌センター(コロンブス)の栄養学の准教授であり、演者のひとりであったLaura Kresty, PhDは述べている。
「この研究から学ぶべき重要なことは、多様な[果物と野菜]を食べよ、旬のものを食べよということである。本当に目指すべきことは、果物と野菜の総摂取量を増やし、野菜中心の食事を摂るように努めることである」。

ブラックラズベリーが食道癌のリスクを低下させる可能性がある
ブラックラズベリーを食べることが、食道癌になるリスクの高い人々を保護する可能性があることを、Kresty博士らは見出した。
博士らは以前に動物実験において、ブラックラズベリーが口腔、食道、および結腸の癌を抑制することを見出していた。

果物はおそらく、酸化ストレス、すなわちフリーラジカルによる細胞破壊を減らすこと、およびDNA損傷と細胞増殖速度を軽減することによって、そのような作用をするのであろうと、博士は述べている。
博士らは、バレット食道と呼ばれる食道の前癌病変を有する高リスク患者に研究対象を拡大することにした。
バレット食道患者は食道癌のリスクが30 - 40倍高いと、Kresty博士は述べている。食道癌は致死的であり、5年生存率は15%しかない。

研究では、20例の患者が、凍結乾燥したブラックラズベリーを1日に1オンス(28.3g)または1.5オンス(42.5g)(男性はより多く)、26週間摂取した。
「我々は酸化ストレスのマーカーを測定した」とKresty博士は述べている。
そのひとつが、尿中に排出される8-イソプラスタンという物質である。

「研究終了時に、58%の患者は8-イソプラスタンが顕著に減少しており」、これは酸化ストレスの減少を反映していた。

研究者らは、発癌物質の無毒化を促進するGSTpiという酵素の組織内レベルも検討した。
37%の患者においてはこの保護作用を有する酵素が増加していたことが明らかになった。

研究では実際に癌が発生した人々が減少したかどうかを調べる長期追跡調査は行われなかったが、Kresty博士は、果物には「保護作用があるように思われる」とWebMDに語っている。

ブラックラズベリーは食料品店で売っていると博士は述べる。
「通常、少しずつ食べるような種類のものである」と博士は述べている。

膀胱癌の予防のための野菜
ブロッコリー、ブロッコリースプラウト、キャベツ、およびカリフラワーのようなアブラナ科の生野菜は、膀胱癌のリスクを約40%低下させるようであると、Roswell Park癌研究所(ニューヨーク州バッファロー)の研究者らは学会で報告した。
それは、それらの野菜に含まれている、膀胱癌に対する保護効果を有すると考えられるイソチオシアン酸塩すなわちITCという化合物によるものである。

「生のアブラナ科の野菜は加熱調理した野菜よりも良い。
なぜなら調理中にイソチオシアン酸塩の量が60% - 90%減少するからである」と、研究のひとつを率いたRoswell Park研究所の博士研究員であるLi Tang, MD, PhDは述べている。

博士のチームは膀胱癌と診断された275例の被験者および825例の健康な被験者の食習慣を調査した。診断前の生および加熱調理済みの野菜の摂取、喫煙習慣、ならびに他のリスクファクターについて質問した。

1カ月にそれらの野菜を3食分以上摂取した非喫煙者は、1カ月に3食分未満しか摂取しなかった喫煙者と比較して、膀胱癌になる可能性が約73%低かった。(3食未満しか摂取していない非喫煙者のデータが示されておらず比較できない。)

ブロッコリースプラウトは膀胱癌の予防に、より優れている可能性があると、動物におけるブロッコリースプラウトの効果を研究したRoswell Park癌研究所の腫瘍学の教授Yuesheng Zhang, MD, PhDは述べた。
博士のチームは4群の動物を用いて検討を行った。1つの群には膀胱癌を誘発することが知られている溶液を飲ませブロッコリースプラウトの凍結乾燥抽出物を摂取させた;その他の群には、ブロッコリー抽出物のみか、または発癌物質のみを摂取させた。もう1つの群は対照群とし、何もしなかった。

10カ月後の時点で「発癌物質[のみ]を摂取した動物の96%に腫瘍が発生した」と博士は述べている。発癌物質とブロッコリー抽出物の両方を摂取した動物のうち、癌が発生したのは37匹のみであった。(曝露した動物数が示されておらず比較できない。)

この場合も、保護効果を示すと考えられるのはITCである。ブロッコリースプラウトは発癌物質を無毒化する上で重要な2つの酵素を活性化することによって効果を発揮するようであると博士は述べている。

American Association for Cancer Research's Sixth Annual International Conference on Frontiers in Cancer Prevention Research, Philadelphia, Dec. 5-8, 2007. Laura Kresty, PhD, assistant professor of nutrition, Comprehensive Cancer Center, Ohio State University, Columbus. Yuesheng Zhang, MD, PhD, professor of oncology, Roswell Park Cancer Institute, Buffalo, N.Y. Li Tang, MD, PhD, Roswell Park Cancer Institute, Buffalo, N.Y.


http://www.m3.com/news/news.jsp?pageFrom=m3.com&sourceType=SPECIALTY&articleId=64059&articleLang=ja

提供:Medscape

<コメント>
魅力的なタイトルでつい飛びついてしまいました。
日本発の報告ではないので食生活の違いからからか何だかピンと来ません。
洋の東西を問わず医食同源の考え方があることだけは理解できました。


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太尾芳生 日本画4号『山と小川の風景』
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# by esnoopy | 2007-12-17 00:05 | がん治療

脳梗塞の再発予防・LDL−C100mg/dL目標も視野に

TIA患者の脂質管理でスタチン投与の意義
脳梗塞の再発を防ぐためには、LDLコレステロール100mg/dLを目指した積極的な
薬物療法を考慮して欲しい
−。
九州医療センターの岡田靖統括診療部長(脳血管センター脳血管内科部長)はこう話す。
脳卒中やTIA(一過性脳虚血発作)の既往がある患者は、動脈硬化性疾患の発症率が
高いことが知られている。

岡田氏は、動脈硬化性疾患の発症を抑制する上で求められる治療として、積極的な
脂質低下療法や血圧コントロールなどの全身管理を挙げる。
また、患者の全身管理を行うプライマリケア医と専門医との連携体制を構築する
ことが重要との考えだ。

再発予防で求められるプライマリケア医の役割
動脈硬化性疾患予防ガイドライン(GL)2007年版では、脳梗塞の既往がある人
に対する治療法として、冠動脈疾患の既往の有無により、治療方針を分けて明記
している。

冠動脈疾患の既往がある患者は、2次予防に位置付け、LDLコレステロール100mg/dLを目標値とした。
その一方で、脳梗塞の既往以外に危険因子がない患者は、1次予防のうち、高リスク群に
位置付けた。

LDLコレステロールの目標値は、120mg/dL。
これに対し、AHA(米国心臓病協会)では、目標とするLDLコレステロール値を100mg/dLとし、さらに脳梗塞の既往以外に危険因子を持つ高リスク群では70mg/dLを目標とした積極的な介入を推奨する声明を公表している。

岡田氏は、日本でも特に動脈硬化性疾患の発症リスクが高い患者では、LDL
コレステロール値100mg/dLを目指した積極的な治療を考慮しても良いとの考えを示す。

特に、脳梗塞を50〜60代で発症した患者背景に加え、喫煙・高血圧・糖尿病・
高LDLコレステロール血症のうち複数を合併するなど冠動脈疾患のリスクが高い
患者では、積極的な治療を考慮すべきという。
この理由として岡田氏は、「動脈硬化性疾患の危険因子の中から、加齢を取り除くことは
できない。
それ以外の危険因子をできるだけ厳格にコントロールしたほうが良い」との考えを示す。

脂質を厳格にコントロールする上で欠かせない薬物療法は、「脳卒中を発症した
段階ですでに動脈硬化の所見があって、LDLコレステロールが120mg/dLを
超える患者では、スタチンの投与を検討しても良いのではないか
」と話す。

TIA患者へのスタチン投与の意義
岡田氏がこのような治療を進める上で、裏付けとなるエビデンスが欧米で行われた
「SPARCL」試験の結果だ。
この試験は、冠動脈疾患の既往がない脳卒中、TIA患者を対象に行ったのが特徴。
①アトルバスタチン80mg/日投与群
②プラセボ投与群
の2群に分け、5年間追跡し、治療効果を比較した。主要評価項目は、割り付け後
最初に起きた非致死性または致死的な脳卒中。

その結果、脳卒中の発症率は、プラセボ投与群で13.1%だったのに対し、
アトルバスタチン投与群では11.2%で、アトルバスタチンの投与により脳卒中の
発症が有意に16%抑制された。

この試験結果から岡田氏は、日本との承認用量の違いこそあるものの、冠動脈疾患
の既往のない脳卒中患者に対してスタチンを使う意義は見いだすことができたとの
見解を示した。

一方でストロングスタチンの投与で懸念される脳出血については、「血圧など危険因子を十分にコントロールすれば十分安全」との考えを示した。

脳梗塞の発症を抑制する上で、発症リスクが高い患者を長期間フォローアップする
プライマリケア医の担う役割は大きい。

岡田氏も、「特に脳梗塞の2次予防において、プライマリケア医は主役」と話す。
脳梗塞の前駆症状とも言えるTIAの段階で見つけ出すことで、脳梗塞の発症を抑制する
ことができる)。

九州医療センターは、プライマリケア医との連携体制を構築している。

連携体制では、プライマリケア医が脳梗塞のリスクが高いと判断した患者を、
急性期病院である九州医療センターに患者を紹介する。その一方で、頸動脈内膜
剥離術(CEA)や頸動脈ステントを行う必要性がない患者は、プライマリケア医
に逆紹介している。

岡田氏は、「患者さんが脳梗塞を発症していることに気付かないケースでは、プライマリ
ケア医を訪れることも多い」と指摘。
「プライマリケア医にもぜひ治療の基本を知ってもらい、適切な生活指導・薬物指導を
継続して欲しい」と強調する。

特に、脳梗塞を発症している可能性が高い患者として岡田氏は、
①60歳以上 
②脳卒中の危険因子を持つ 
③いつ発症したか明確に分かる 
④半身の脱力、言語障害など局所の症状がある場合
の4点を挙げる。
該当する患者については、できるだけ早く患者を専門医に紹介して欲しいと
強調した。
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200711/series2.html


<コメント>
文中の「ストロングスタチンの投与で懸念される脳出血」。
ここが一番気になるところです。
そして、Lancet誌に掲載された以下の論文では、低コレステロールと脳卒中のリスク
について言及しています。

Prospective Studies Collaboration et al. Blood cholesterol and vascular mortality by age, sex, and blood pressure: a meta-analysis of individual data from 61 prospective studies with 55,000 vascular deaths. Lancet. 2007 Dec 1; 370(9602): 1829-39.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?Db=pubmed&Cmd=ShowDetailView&TermToSearch=18061058&ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum

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箕輪春秋 湖畔風景 日本画6号
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# by esnoopy | 2007-12-14 00:10 | 循環器科

リレンザ

インフル治療薬 リレンザで少年が異常行動
インフルエンザ治療薬リレンザ(一般名ザナミビル)を服用した横浜市の少年(12)
が無意識のまま歩いて外に出たり、意味不明な話をしたりする異常行動を起こして
いたことが7日、わかった。
診察した病院は「因果関係が否定できない」とし、国に副作用として報告することを
決めた。

病院側によると、少年は6日に医院を受診、インフルエンザと診断された。
同日午後5時ごろ、処方されたリレンザなどを服用。直後から意味不明の言葉を発し、
約4時間後には家族が目を離したすきに自宅外に出た。
無意識のまま寝床を出て歩いたとみられる。少年は病院に運ばれ入院したが、夜中
にベッド上で立ち上がり、壁をなでるなど異常行動が続いた。

服用後の異常行動はタミフルで問題となり、国は今年3月、10代患者への投与を
原則禁止した。
リレンザも同じくウイルスの増殖を抑えるタイプの治療薬。
タミフルの使用制限を受けて今季の供給量は昨季の6倍にあたる300万人分に
増える見通し。異常行動の報告は00年の発売以来、計10件あるが、行動の詳細
が明らかになるのは初めて。

菅谷憲夫・けいゆう病院小児科部長は「異常行動はインフルエンザそのもので
起きる可能性もある。
薬の服用にかかわらず発症2日間は子どもから目を離さないで」と呼びかけている。
http://www.asahi.com/life/update/1207/TKY200712070329.html

2007年12月08日11時22分

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児玉幸雄 イタリー風景 油彩画6号
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s78275108?u=artandb

症例が増えればリレンザによる(ただし可能性)異常行動が取り沙汰されることは
想像される、いわゆる想定内のことではありました。
早速そんな報告がされました。
まさに「前門の虎、後門の狼」です。
早々とリレンザを買いだめしてしまいましたが、院内処方の当院としてはちょっぴり
不安です。


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# by esnoopy | 2007-12-13 00:02 | 感染症

吸入薬ザナミビル リレンザ(1)1/3

インフルエンザアワクチンの接種も終盤に入りました。
いよいよインフルエンザ流行のシーズンに突入します。
内科開業医にとってはインフルエンザの診断治療を避けて通るわけには
いけません。
勤務医の先生にはあまり興味のない内容かもしれませんが3回にわたって
「リレンザ」をとりあげてみました。
2007.12の日経CMEに掲載された座談会からです。
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山本彪一   バラ 油彩6号http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t54200546?u=;artfolio11



インフルエンザ対策
吸入薬ザナミビルの臨床的有用性
~日本臨床内科医会研究報告を踏まえて~    その1


司会 福岡県赤十字血液センター所長 
       柏木征三郎氏
岩城内科医院(金沢市)          
       岩城紀男氏
河合内科医院(岐阜市)
       河合直樹氏
原土井病院臨床研究部
       池松秀之氏
廣津医院(川崎市)
       廣津伸夫氏

柏木 
わが国におけるインフルエンザ診療は、インフルエンザウイルス迅速診断キットの普及や抗インフルエンザウイルス薬の登場などにより、この数年間で大きく変化してきました。
そこで本日は、日本臨床内科医会のインフルエンザ全国調査研究(FLU STUDY)に携わっている先生方にお集まりいただき、インフルエンザの流行状況や治療方針、診療に際しての留意点などを討論していただきたいと思います。

最初に、日本臨床内科医会のインフルエンザ研究班の活動内容について紹介していただけますか。

岩城
日本臨床内科医会は2000/2001年シーズンから、インターネットを活用した全国多施設研究を実施しており、7シーズン目を迎えました。
インフルエンザの流行状況、インフルエンザワクチンや抗インフルエンザウイルス薬の有効性、迅速診断キットの有用性などについて経年的に調査し、報告を行っています。
本研究の特徴としては、小児から高齢者を含む幅広い年齢層の豊富な症例を有すること、インターネットを利用しているので迅速なデータ集計や解析が行えることなどが挙げられます。

臨床症状からだけでは鑑別が難しいインフルエンザ
柏木 
今シーズン(2006/2007年)のインフルエンザの流行状況の特徴を簡単に説明していただけますか。

河合 
わが国では、インフルエンザは例年12月から4月にかけて流行し、そのピークは1月あるいは2月です。
しかし、今シーズンは例年より約1カ月遅れ、2月から3月がピークでした。

日本臨床内科医会の調査研究で今シーズン収集できたデータは、A型インフルエンザが1325人、B型が618人でした。
ただ、若年者ではB型が、高齢者ではA型がそれぞれ多く認められました。
流行の中央日については、A型が3月11日、B型が3月13日でした。
A型、B型ともに、きちんとしたデータが報告できるようになった過去6シーズンの中で最も遅く、またB型インフルエンザが同時に広く流行したことも今シーズンの特徴といえます(図1)。

柏木 
インフルエンザ診療における迅速診断キットの役割については、いかがでしょうか。

池松
インフエンザルエンザに非典型的な症状を呈する症例も少なくありません。
また、日本臨床内科医会のデータでは、厚生労働省の感染症発生動向調査の報告基準である
①突然の発症
②38℃を超える発熱
③上気道炎症状
④全身倦怠感
などの全身症状という4項目をすべて満たす症例はインフルエンザ感染者の7割程度でした。
つまり、臨床症状だけからインフルエンザと正確に診断するのは難しいといえるでしょう。

そのため、インフルエンザウイルス抗原を検出する迅速診断キットが、わが国の臨床現場で広く普及しています。
しかし、発症初日といった非常に早期においては、陽性とならないケースがあるので、注意が必要です。

河合 
初回の迅速診断において陰性であっても、インフルエンザが疑われる患者に対しては、半日~1日後にもう一度、迅速診断を行ったほうがよいと思います。
また、一般に検体としては、鼻腔ぬぐい液い液のほうが咽頭ぬぐい液よりも検出率は高いようです。

柏木
廣津先生は小児を診察することが多いと思いますが、小児における鼻腔ぬぐい液の採取については、いかがですか。

廣津
最初は鼻腔からの採取に慣れていなかったため、咽頭から採取していたのですが、慣れてくると、鼻腔ぬぐい液あるいは鼻腔洗浄液のほうが容易になってきました。
私も陽性率は鼻腔のほうが高いように思います。

柏木
迅速診断キットの陽性化時間についてはどうでしょうか。

岩城 
ウイルス培養やPCRで確認すると、陽性ラインが早く出れば出るほど、インフルエンザウイルス抗原の検出率が高いことがわかっています。

池松 
私どもの施設における調査でも結果は同様でした。
ウイルス量が多いほど、つまりウイルス増殖が盛んなほど判定時間は短くて済むわけですから、早く陽性になった症例ほどインフルエンザ感染の割合が高くなるのは、理屈に合っていると考えられます。

日経CME 日経メディカル同封別冊 2007.12
版権     日経メディカル開発



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# by esnoopy | 2007-12-12 00:03 | 感染症

超多剤耐性結核菌の拡大抑制マスク着用の徹底などがカギ

多剤耐性結核菌(MDR)は、特にHIV感染率が高い国々の公衆衛生対策に深刻な影響
を与えている。
しかもここ数年、第2選択薬にも反応しない超多剤耐性結核菌(XDR)が分離される
ケースが増加しており、急速に不安が高まっている。

米国エール大学の研究グループは、XDR症例を効率よく減らす方法を明らかにする
ために、南アフリカ共和国の1つの村をモデルとしてシミュレーションを実施。
その結果、病院で適切な対策を講じれば感染を半減できることが示唆された。
詳細がLancet誌10月27日号に掲載された。

新たな介入をしなければ、この地域のXDRの年間症例数は2007年に194人、
12年に234人に増加すると推計された。
12年末には累積症例数は1302人になる。
XDR患者の72~96%はHIV感染者との予測だ。

しかし、実施可能な施策の有効性を検討した結果、

①マスクの着用(スタッフと患者の遵守強化も実施)
②入院期間短縮と外来での治療の継続
③自然換気の改善
④迅速な耐性検査の適用
⑤入院患者のHIVのカウンセリング/検査/抗ウイルス薬投与
⑥5人規模の隔離(現状は40人を1部屋で隔離している)

などを実施すれば、何も介入しなかった場合の推定感染者を、2012年の段階で
48%減らせることが明らかになった。
(Sanjay Basu et al. Lancet  2007;370:1500-07)

出典; NIKKEI MEDICAL 2007.12
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超多剤耐性結核菌とは
主要な治療薬のほとんどが効かない結核菌。世界保健機関は、第1選択薬とされる
効き目が強いイソニアジドとリファンピシンが効かない菌を「多剤耐性」に分類。
それに加えて第2選択薬のフルオロキノロン系薬剤と、カナマイシンやアミカシンなど
注射薬も効かなくなった菌が「超多剤耐性」と定義される。
今年3月に存在を指摘した米疾病対策センターは、世界の患者の2%程度、東欧や
アジアの一部では15%以上が超多剤耐性菌に感染していると推計している。

Multidrug-Resistant (MDR-TB)
Extremely Drug-Resistant Tuberculosis (XDR-TB)

セカンドライン薬剤に対する広範囲耐性を示すMycobacterium tuberculosis
の出現-世界的状況、2000~2004年
http://www.imic.or.jp/mmwr/backnum/5511.html
超薬剤耐性結核
-米国、1993~2006年
http://www.imic.or.jp/mmwr/backnum/5611.html
日本リザルツ/Results Japan:健康と開発
http://www.results.jp/japanese/proposal/develop.html
超薬剤耐性結核(XDR-TB) (国境なき医師団 日本) 
http://www.msf.or.jp/2007/01/09/5708/xdrtb.php
超薬剤耐性結核菌(XDR-TB):新たな戦略と検査法が必要、従来の方法では
命取りに
http://www.msf.or.jp/2006/11/14/4979/xdrtb_msf.php
広範囲薬剤耐性結核菌(XDR-TB)について
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/epid/2006/tbkj2711.html
新結核用語事典・超多剤耐性結核
http://www.jata.or.jp/terminology/z_15.html
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# by esnoopy | 2007-12-11 00:05

入院患者へのタミフル投与で死亡リスクが大幅に低減



インフルエンザで入院した成人
患者へのリン酸オセルタミビル(商品名タミフル)の投与が、死亡率の低減に
つながることが示唆された。
カナダのトロント大学のグループが実施した前向きコホート研究の結果が、
11月8日のClinical Infectious Diseases(CID)誌電子版に掲載された。

対象としたのは、2005年1月から06年5月までに入院し、検査でインフルエ
ンザ感染が確定した512人。
15歳未満が185人いたが、死者はおらず抗インフルエンザ薬投与を受けた
患者もいなかったので解析からは除外した。

残りの患者は327人(15歳以上、年齢の中央値は77歳、男性51%)となっ
た。245人(75%)が慢性の基礎疾患を持ち、216人(71%)がインフル
エンザワクチンの接種を受けていた。
抗ウイルス薬を処方された患者は106人(32%)。
3人がアマンタジン、103人がリン酸オセルタミピル(75mgを1日2回、5日間)
を投与されていた。

主要アウトカム指標である、「症状の発現から15日以内の死亡」に該当した
のは27人(8.2%)だった。
死因はインフルエンザが5人、肺炎その他の呼吸器感染症が11人、心筋梗塞
が3人など。
25人がインフルエンザ関連死であると判断された。

多変量解析の結果、リン酸オセルタミビル投与群の死亡率は、非投与群
に比べて有意に低かった(調節オッズ比0.21、95%信頼区間0.06-0.80、
P=0.03)。
ただし、生存者の入院期間には影響しなかった。
(AIlison McGeer et al CIDpubIished on 1ine Nov 2OO7)

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NIKKEI MEDICAL 2007.12 「今月の注目論文」より。
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<コメント>
インフルエンザで入院ということもそうですが、15歳未満の185人のいずれも抗
インフルエンザ薬を投与されなかったということも驚きです。

日本でも10歳台のタミフル投与は原則禁止となりました。
カナダでは15歳未満での投与が当時から禁止されていたのかと考えてしまいます。

トロント大学といえばウイリアム・オスラー博士やインスリン発見で有名なバンティング
博士で有名な名門校です。
日本では大学病院にこんなにインフルエンザで入院することは考えられないことです。
何か特殊な事情でもあるのでしょうか。

母集団数の問題もあるかも知れませんが、15歳以上の年代別の傾向も知りたい
ところです。


インスリン発見を1ドルで売った男
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# by esnoopy | 2007-12-10 00:05 | 感染症

上気道感染症と抗生物質

かぜ症候群に抗生剤を使用するかどうか。
以前から議論の多いところです。
実は「かぜ」の診断は意外と難しいものです。
そのことは開業して初めて知りました。
それは勤務医時代はかぜの患者を診察する機会がほとんどなかったためです。

開業後は、会社員で社内の診療所に受診した後に当院を受診される方が時々みえます。
大抵の方はPL顆粒のみを処方されており、大学からのネーベンの先生の診察と推察出来ます。

そのこと自体は正しいことも多いでしょうが、中には逆に溶連菌感染症や細菌性扁桃炎や副鼻腔炎などのように抗生剤が必要な場合もあるわけです。

私自身は細菌感染が疑われるような場合には、出来るだけ院内で白血球数をチェックして抗生剤の要否を決定するようにしています。

さて、きょうはプライマリケアでの抗生剤投与について勉強してみました。


上気道感染症、咽頭炎、中耳炎に対する抗生物質投与は正当か

プライマリケア医は、一般的な気道感染症に対して、それに続発する重篤な合併症への
配慮から予防的に抗生物質を処方しがちだ。
イギリスのガイドラインでは、耐性菌の発現を考慮して上気道感染症、咽頭炎、中耳炎
には抗生物質をルーチンに使用すべきでないとされる。
また、肺感染症は急性気管支炎に分類され抗生物質は推奨されないが、肺炎には推奨
されている。

I. Petersen氏(ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ感染症疫学センター)らは、
抗生物質の使用により一般的な気道感染症に続発する重篤な合併症のリスクをどの
程度低下させられるかについて検討した。

BMJ誌10月18日付オンライン版、11月11日付本誌掲載の報告。
重篤な合併症発症リスクを抗生物質投与群と非投与群で比較
本試験は、1991年7月~2001年6月までにUK General Practice Research Databaseに登録されたデータをレトロスペクティブに解析したコホート研究である。

336万件の気道感染症のデータを用い、診断後に重篤な合併症を発症するリスクを
抗生物質投与群と非投与群において比較した。

主要評価項目は、中耳炎に続発する乳様突起炎、咽頭炎後の化膿性扁桃腺炎、
上気道感染症後の肺炎のリスク、および個々の合併症の予防に要する抗生物質
による治療コース数とした。

重篤な合併症の続発はまれ高齢者の肺炎リスクは高い
中耳炎、咽頭炎、上気道感染症に重篤な合併症が続発することはまれであり、
個々の合併症を予防するには4,064~4,407コースもの抗生物質治療が必要
であった。

肺感染症後の肺炎のリスクは特に高齢患者で高く、肺炎の予防に要する抗生物質
治療コース数は、65歳未満の96~119コースに対し65歳以上では39コースと
高齢者で実質的な予防効果が認められた。

肺炎の予防を除き、気道感染症への抗生物質の使用は正当化されない
Petersen氏は、「中耳炎、咽頭炎、
上気道感染症後の重篤な合併症のリスク軽減を目的に抗生物質を使用することは
正当化されない」
と結論している。

また、「市中肺炎は重篤な病態で死亡率も高い。イギリスのプライマリケア医はすでに
肺感染症患者に抗生物質の投与を行っており、今回のわれわれの検討は
特に高齢患者におけるその正当性を明らかにした」と指摘している。

http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=1304nws_c=1304

Petersen I et al. Protective effect of antibiotics against serious complications of common respiratory tract infections: retrospective cohort study with the UK General Practice Research Database. BMJ. 2007 Nov 10; 335(7627): 982. Epub 2007 Oct 18.


医師を適切に教育することで無駄な抗生剤の処方を減らせる(全文閲覧可)
Effectiveness of a multiple intervention to reduce antibiotic prescribing for respiratory tract symptoms in primary care: randomised controlled trial.
BMJ. 2004 Aug 21;329(7463):431. Epub 2004 Aug 05

http://www.bmj.com/cgi/content/full/329/7463/431?linkType=FULL&journalCode=bmj&resid=329/7463/431
医師にグループミーティングで疾患に応じた抗生剤必要性と適応となる抗生剤の種類について議論し、患者教育用の資料を提供することによって、上気道症状への抗生剤投与を減らせるか検討した。
医師に適切な教育を行ったグループでは行わなかったグループと比較し抗生剤投与を減らすことができた。

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# by esnoopy | 2007-12-07 00:13 | 感染症

BMI値と死因死亡率


本報告を行った米国保健統計センター/疾病予防管理センターのKatherine M. Flegal
氏らは2000年時点の検討報告として以前に、低体重、過体重、肥満それぞれの全死因
死亡率との関連について報告を行っている。
すなわち正常体重群と比べて、低体重群と肥満群では全死因死亡率の有意な増加との関連が認められたが、過体重群では有意な減少が認められたとするものだった。

本報告では、BMI値と全原因死亡率との関連(2004年時点における)を調査。
JAMA誌11月7日号で掲載された。

各BMI値カテゴリーと、心血管疾患・癌・その他疾患との関連を調査
低体重(BMI <18.5)、過体重(BMI 25~30)、肥満(BMI >30)とし、心血管疾患、癌、その他(癌、心血管疾患以外)疾患それぞれを死因とする死亡率との関連性が
調べられた本研究は、全米対象の国民健康栄養調査(NHANES)の調査期間I
(1971~1975年)、II(1976~1980年)、III(1988~1994年)の参加者
571,042人年が対象。
2000年までの死亡率追跡調査、1999~2002年期間調査からBMI値等のデータ、
2004年人口動態統計データの25歳以上230万人の死因情報を加味して検討された。

BMI値と各死因死亡率とには特異的関連がある?
その結果低体重群では、癌と心血管疾患を除くその他疾患を死因とする死亡率で
有意な増加(超過死亡:23,455例)が、過体重群ではこの点に関して有意な減少
(超過死亡:-69,299例)が認められ、また肥満群では心血管疾患を死因とする
死亡率に関してのみ有意な増加(超過死亡:112,159例)が認められた。

より詳細な解析結果からは、過体重+肥満は、糖尿病、腎疾患で死亡率の増加
(超過死亡:61,248例)が認められた一方、癌と心血管疾患を除くその他疾患に
ついては減少(超過死亡:-105,572例)していることが認められたと報告。

また肥満群では、肥満との関連が指摘される癌の死亡率の増加(超過死亡:13,839例)が認められた一方で、それ以外の癌死亡との関連は認められなかったという結果も得た。

調査期間間の死亡率の比較からは、肥満と心血管疾患との関連は経時的減少傾向
にあるという示唆が得られたとも報告。

Flegal氏らは、「今回の結果は、BMI値と全死因死亡率との関連性を明らかにする
ことに結びつくだろう」と結論づけている。

http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=1244
Flegal KM et al. Cause-specific excess deaths associated with underweight, overweight, and obesity. JAMA. 2007 Nov 7; 298(17): 2028-37.

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http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p94454648?u=;artfolio11
小松正二  富士 日本画4号

<コメント>
わかったようでよくわからない内容です。
今後の患者指導にどのように役立てていけばよいのか困惑してしまいます。

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# by esnoopy | 2007-12-06 00:05 | その他

がんの約2%、CTが原因


がんの約2%、CTが原因 医療被ばくで米チーム


放射線を利用するCTスキャンの使用頻度が米国で急増、将来のがん患者のうち
約2%をこれらのCT検査による被ばくが引き起こす恐れがあると、米コロンビア大
の研究チームが米医学誌に29日発表した。

CT検査の3分の1は医学的に不要との統計もあるとして、不必要な使用を避ける
よう警告している。

チームによると米国の医療現場でCTスキャンの使用回数は1980年の約300万回から
2006年には約6200万回へと急増。

断層画像を取得するのに何度もエックス線を照射するため、撮影1回当たり15―30
ミリシーベルトを被ばく。
一連の検査でこれを2、3回繰り返し、計30―90ミリシーベルト被ばくするという。

通常の胸部エックス線撮影では0.01―0.15ミリシーベルト、乳がん検診では3ミリ
シーベルトを被ばくするとされる。

チームは広島や長崎の原爆被爆者の疫学データと比較するなどした結果、現在のCT
検査による発がんリスクが将来、全米のがん患者の1.5―2.0%に達する
と推計した。

チームは「CT検査の利益とリスクを比較することが大切だが、不要不急の検査や、
放射線の影響を受けやすい子どもへの使用は控えるべき
だ」としている。

(記事提供:共同通信社)

http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=1434


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リャド   ジヴェルニーの睡蓮  シルク
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<コメント>
この記事は地球環境問題に取り組んだ京都議定書を思い出させます。
以前読んだ文献で英国の医師に被爆量を論ずる単位は何だという質問に答えられた
臨床医はほとんどいなかったとのことです。
被爆量も知らずにCTをオーダーするのは患者サイドに立った場合、いい医師とは
決していえません。
他人事のように考えている環境問題。
医師も知らないうちに人体環境を侵しているのです。

CTの被爆については、2007.9.30のブログの最後の方に書かせていただきました。

専門医の期待に応える64列MDCTの高画質
http://blog.m3.com/reed/20070930

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# by esnoopy | 2007-12-05 00:04 | その他

乳癌検診とMRI

Medical Tribune 2007.10.11
の記事で勉強しました。

高リスク女性にはMRI検査を  X線や超音波に比べ乳癌検出率高い
〔米イリノイ州オークブルック〕ワシントン大学放射線医学の教授でシアトル癌治療同盟(ともにワシントン州シアトル)乳房画像診断のConstance Dobbins Lehman部長らは、乳癌リスクの高い女性に対する3種類のスクリーニング法を比較する多施設研究を実施し、MRIは乳房(X線)撮影や超音波検査で見落とされる腫瘍を正確に同定することができるとの知見をRadiology(2007; 244: 381-388)に発表した。             

高乳腺密度の検出に強い
筆頭研究者のLehman部長は「乳癌リスクが高い女性には、MRIによるスクリーニングが有益な可能性がある。現在使用可能な乳房画像診断法のなかで、MRIは明らかに癌の検出に最適である」と述べている。

米国立癌研究所(NCl)によると、全乳癌の5~10%に遺伝的素因がある。
遺伝的に乳癌リスクが高い女性は、平均的なリスクを有する女性よりも早期に発癌することが多いため、若年期からスクリ一ニングを受ける必要がある。
しかし、50歳未満の女性は乳腺組織が高密度である可能性が高いため、スクリーニング法としての乳房撮影の有効性が低下すると考えられる。
米国癌協会は、乳癌リスクの高い女性は30歳から開始する年1回の乳房撮影に加えて、MRIによるスクリーニングを受けることを推奨している。

同部長は「乳癌の発症リスクが非常に高い女性は早期検出の可能性を高めるために、自分でできることがあると知ることが重要だ」
と述べている。

1、000例当たり23例の検出増
今回の研究では、6施設で乳癌発症の生涯リスクが20%以上で25歳を超える無症状の女性171例(平均年齢46歳)を対象として、高リスク患者におけるMRIと乳房撮影のスクリーニング成果を比較した。
すべての女性にMRI、乳房撮影、超音波検査を実施した。

生検の実施件数は16件で、6例で癌が検出され、全体的な癌発見率は3.5%であった。
MRIは全例で癌を検出できたが、乳房撮影では2例、超音波検査では1例のみであった。
乳腺組織密度が高い女性4例の癌を検出できたのはMRIのみであった。
生検率はMRIが8.2%,乳房撮影と超音波検査が2.3%。
MRI所見を受けて実施した生検の陽性的中率(PPV)は43%であった。

Lehman部長らはこれらの知見に基づき、MRIによるスクリーニングでは、乳房撮影や超音波検査と比べて、高リスク女性1、000例当たり23例多く癌を検出できると推測している。

MRIは乳癌の遺伝的素因を有する女性に対する有効なスクリーニング手段であることが示されているが、平均的リスクの女性に対してMRIスクリーニングを支持するエビデンスはない。
同部長は「MRIは非常に有力な癌検出手段だが、完ぺきではない。
乳腺組織のなかには疑わしく見えるが乳癌ではな<、生検をしてしまう良性のものがある」と警告した。

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内田如風 油彩8号『柿』
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# by esnoopy | 2007-12-04 00:02 | その他

腰痛・下肢痛

内科開業医は,かかりつけ医(家庭医)としての使命を担っています。
かかりつけ医という言葉はどうもお仕着せのようで好きにはなれませんが、
仕方がありません。
さて、内科開業医の醍醐味は、自分の専門分野は勿論のこと、正しくない
治療をされている他科の患者さんを救ったり、幅広い視野から医療の番人
が出来た時かも知れません。
ごく最近の経験ですが、腰痛の患者さんが来院され、患者さんの希望により
大学病院を含めて4か所の医療機関に紹介状を書く機会がありました。
いわゆるセカンドオピニオンです。
それぞれの返事は、椎間板ヘルニアでレーザー治療のため1か月入院
(入院施設のある開業医)、別の病院は脊柱管狭窄症のため即刻検査入院
が必要。後者の先生には、よく今まで放置してたねと言われたそうです。
経過は明らかに急性なのに。

残りの2施設は軽度のヘルニアのために自然に治るとのことでした。
私自身、椎間板ヘルニアの経験があり、9割は自然寛解するという知識を
持っていてので放っておいて治した過去があります。
患者さんにも、腰椎のMRI所見を見せていただいて放っておけばと話して
おいたのですが。

結局、本人は最終的に放置を選択したのですが、患者も私も、すっかり
整形外科医に不信感を持ってしまいました。

かくのごとく、患者を守るには内科開業医も他科の知識も大いに必要という
わけです。
同じ開業医として言いづらいことではありますが、収益優先の医師は直感で
わかってしまいます。
先週も、ひどい下肢静脈瘤の患者さんが相談にみえました。
半年間マッサージなどの理療に整形外科に通院していたとのことでした。
「時間とお金の無駄でしたねえ。」といって早速血管外科へ紹介しました。

診々連携とはいえそのような医師には、近いからといった理由などで決して紹介
しないのが私のスタンスです。
勿論すでに通院している場合には何も言いません。

さて、きょうは
日本醤事新報 NO4249(2005年10月1日)
の内容から勉強してみました。
埼玉医科大学 高橋啓介先生の監修です。

<b>1. はじめに
日本の総人口のうち、高齢者の人口は2020年頃までは増加するというまさに
高齢化社会がますます加速されようとしている。
高齢者に多くみられる症状に腰痛がある。
腰痛は、日常診療でよく経験する症状であり、成人の有訴者率の中でも最も多く、
特に高齢者(65歳以上)では約5人に1人の割合で認められる(図1)。

2. 腰痛の原因
腰痛を訴える患者さんの疾患は多岐わたっており、原因もさまざまである。
内臓疾患や心因性の疾患も腰痛の原因となり得るが、大部分は腰椎に何らかの
異常が生じたためと考えられる(図2)。

また年代によっても腰痛を起こす原因は異なっている。
若い世代では外傷やスポーツ障害などが主な原因であるが、加齢と共に腰椎の
退行性変化が生じて椎体、椎間板などの支持組織に変形が認められるようになる。
腰痛は、こうした変化を背景に現れてくることが多いといわれている(図3)。
腰痛にはさまざまな原因が考えられるが、今回は腰痛を訴える疾患の中でも
高齢者に多くみられ、腰椎の疾患である腰部脊柱管狭窄症を中心に概説する。


3. 腰部脊柱管狭窄症とは
腰椎は年齢と共にさまざまな加齢による変化(退行性変化)が生じる。
椎間板の変性・膨隆、椎間関節の変形・肥厚、黄色靱帯の肥厚などの変化は、
腰椎内部の脊柱管の狭窄を生じる(図4)。
このような脊柱管の狭窄により、その内部にある神経(馬尾や神経根)の圧迫障害を
生じている疾患を腰部脊柱管狭窄症という(図5、6)。

腰部脊柱管狭窄症における狭窄は、骨の部位(椎体部分)には認められず、
骨と骨との間(椎間板部分)に生じる。
この椎間板高位は腰椎の動く部分であり、狭窄の程度も腰椎の動きで変化する
ことになる(図7)。
つまり、腰部脊柱管狭窄症は姿勢や腰の動きにより狭窄の程度が変化する特徴
を有する。
通常、狭窄の程度は腰椎の後屈で増強し、前屈で軽快する。    
姿勢によって狭窄部の硬膜にかかる圧力も変化する(図8)。
症状のない臥位・座位・前屈位では、馬尾・神経根への圧迫力は低い。
しかし、症状が誘発される立位や腰椎の伸展では圧迫力は高くなる。

狭窄の強くなった時に症状が出現し、狭窄が軽減すると症状も軽快することから、
腰部脊柱管狭窄症の症状は、狭窄部での神経への圧迫力の動的な上昇によって
生じると考えられている。

4. 馬尾や神経根の血流障害
脊柱管の狭窄による馬尾、神経根の圧迫は同時に神経栄養血管の圧迫も招来し、
神経の血流障害からanoxiaを起こし、痛みやしびれ、間欠は行につながると
 考えられている。
馬尾は圧迫を受けると低い圧でも容易に血流の低下をきたし、栄養障害を起こす。
即ち腰部脊柱管狭窄症の症状発現の病態は、神経の血流障害と考えられる。
 


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# by esnoopy | 2007-12-03 00:05 | その他

PNALT

PNALTはPersistently Normal ALTの略です。
この概念は
HCVの無症候性キャリアは「肝臓正常」とは言えない
という事実から云われるようになりました。
臨床上、大切な点はALTが30IU/Lを越える場合は、C型肝炎に準じて診療を行う
必要があるということです。
1.「ALT正常例(基準値以下)」HCVキャリアの方からも発癌があります。
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2.ALT持続正常(基準値以下)C型肝炎症例への取り組み
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3.C型肝炎(HCV RNA陽性)の経過観察において推奨される検査

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(図をクリックすると拡大されます。)

以下、「特別企画座談会」からPNALT関連箇所のみ転載させていただきました。
[PDF] 特別企画座談会
http://www.ims.gr.jp/shinmatsudo/patient/patient03/zadankai.pdf
文中のについてはこのPDFでご確認下さい。

藤瀬
■次に、従来無症候性キャリアと呼ばれてきたALT持続正常症例(PNALT:Persistently Normal ALT)に対するIFN治療について、ご意見をうかがいます。
北村
■PNALTに対してIFN治療を行うか否かは、古くて新しいテーマだと思います。
B型肝炎ウィルスキャリアにおける無症候性キャリアと同様の状態がC型肝炎ウィルス感染者においても存在するかという議論は、C型肝炎ウィルスが発見された当初よりなされてきましたが、無症候性キャリアという概念は肝炎がウィルス自体による肝細胞傷害ではなく宿主の免疫応答によるものであるという根拠のひとつにもなっているわけですし、慢性肝炎の病態や定義にもかかわる大きな問題といえると思います。
このPNALTに対する治療が、再び議論されてきた背景には、おそらくPEG-IFNα-2b/RBV併用療法によってウィルス排除の可能性が飛躍的に高まったためと思われます。そこで、PNALTに対して治療を行うべきか否かを議論する前に、いくつかの問題点を整理しておきたいと思います。
1つはPNALTの定義です。
ALTが基準値内で持続しているかを確認するのはなかなか困難ですが、そもそもALTの基準値自体が施設によってばらつきがあります。
おそらく本邦における多くの施設は、HCVが発見される以前の基準値を用いていると思われます。
したがって、ALTが基準値内にあると判断している患者さんの中には、肝の線維化が進展している例も多いと思われます。
実際、PNALTでも約30%の症例で肝の線維化が進展しているという報告もあります。
2つ目の問題点は、従来、PNALTにはIFN治療が効きにくいといわれた点です。
また、PNALTはIFN治療で肝炎が悪化するという懸念も従来から議論されていました。実際、1997年のNIHにおけるConsensus Development Conferenceの声明文では「PNALT症例には、臨床試験以外でIFNを使用すべきでない」という勧告がなされています。
しかし、その5年後の2002年におけるConsensus Development Conferenceでは「PNALTにおけるIFN単独療法の有効性は、ALT値異常症例とほぼ同等であり、さらにジェノタイプ1のPNALTに対するIFNα/RBV併用療法はALT値異常症例と比較して遜色ない効果が期待できる」と指摘しています。
また、治療による肝炎の増悪はみられないという結果が報告されています。
そして最後の問題点は、すべてのPNALTにPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行った方がよいのか、という点です。
ジェノタイプ2に関しては高ウィルス量症例であっても半年の治療で90%の治癒率が得られますので、私は積極的に治療すべきだと考えています。
問題はジェノタイプ1かつ高ウィルス量のPNALTです。
この点については、欧米ではあまり議論されていませんが、本邦では「肝炎が肝炎で終われば病気でない」という考え方が浸透しています。
この考え方は基本的に正しいと思いますが、果たして肝炎が肝炎で終わることがかるのか、という疑問もあり、この点については今後大規模な検討は必要と考えています。
藤瀬
■北村先生に問題点を整理していただきましたので、次にPNALTに対する実際の治療についてご意見をうかがいますが、まず、米国肝臓学会(AASLD)のガイドラインについて説明してください。
(図6 )
横須賀
■AASLDは、「血清トランスアミラーゼ値に関係なく、合併症の有無、著効が得られる可能性、重篤な副作用発現の可能性、肝生検による肝疾患進行の程度をもとにインターフェロンとリバビリンの治療を始めるかどうかの決定がされるべきである」と勧告しています(図6)。
ALT値が正常範囲でも肝生検を行うと、実際には8割強の症例に軽度の肝炎が認められるといわれていますので、肝障害の進展の程度で治療を行うか否かを決めることが現実的だと思います。
藤瀬
■PNALTに対する治療については、この3月に厚生労働省の治療標準化研究班から「血清ALT正常C型肝炎症例に対する抗ウィルス治療ガイドライン」が示されています。
それをみると、ALT値が30IU/L以下の症例でも血小板数が15万未満の場合は、線維化進展例がかなり存在するため、可能なら肝生検を施行し、F2A2以上の症例には抗ウィルス療法を考慮する、と記されています。一方、ALT値が31〜40IU/Lの症例は血小板数が15万以上の場合は65歳以下は抗ウィルス療法の適応、15万未満の場合は慢性肝炎治療に準ずる、と勧告しています(図7)
そこで、PNALTに対してPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を行うメリットについてコメントしてください。
横須賀
■PNALTに対する治療を考えた場合、従来のIFN単独療法でも、ある程度のSVR率は得られていますが、同時に治療後にALT値が急激に上昇する症例を経験した方も多いと思います。
しかし欧米の報告をみますと、48週間のRBV併用療法で、通常の慢性肝炎症例と同等あるいはそれ以上の有効性が期待でき、仮に治癒しなくてもALT値が急激に上昇する症例は非常に少ないことが明らかになっています(図8)
一方、本邦におけるPNALTにはジェノタイプ2の症例が多いため、PEG-IFNα-2b/RBV併用療法によって、かなり良好な成績が得られるかと思われます。したがって、PNALTの長期予後を考慮すると、今後は積極的に治療すべきだと思います。
藤瀬
■実際、PNALTにたいしてPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を導入された先生はいらっしゃいますか。
北村
■当院においてPEG-IFNα-2b/RBV併用療法を導入したPNALT症例を改めて検討したところ、その数が意外に少ないことに気付きました。
その理由は、導入以前にすでに肝庇護剤が投与されている場合が多く、正確な評価ができないためです。
そこで、これらを除外し、なおかつ投与開始24週まで観察可能であったジェノタイプ1の4症例をみると、2例がEVRで、残り2例も24週までにウィルス陰性化がみられています。
また、投与開始4週まで観察可能であったジェノタイプ2の2例では、2例とも4週でウィルス陰性化がみられており、PNALTであるからウィルスの消失が明らかに遅いということは、少なくともなさそうな印象です。
島田
■当院の成績をみると、ジェノタイプ2の6例は、治療開始4週時に全例でウィルス陰性化がみられています。
一方、ジェノタイプ1の8例では、治療開始12週時にウィルス陰性化がみられたのは4例です。
古くはPNALTにIFN治療を行うと「寝た子を起こす」と言われましたが、そのような印象は全くなく、ALT値が上昇した症例は経験していません。
三上
■先ほどお示しした66例のうち、8例がPNALTですが、決してそれらの症例の成績は悪くなく、むしろ他の症例より早めにウィルス陰性化がみられました。
一般に、線維化が進展している症例や高齢者ではSVR率が低くなりますので、PNALTの方が治療効果は得やすいのではないでしょうか。


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Hot Topics In Hepatitis C 
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(循環器科関係の専門的な内容)
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# by esnoopy | 2007-11-30 00:10 | 消化器科

癌5年生存率

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朝比奈文雄 セーヌ川
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内科開業医も外科のことはある程度知っておく必要があります。
それは手術が必要な患者が発生した場合、どこへ紹介すれば本人に良い結果が
もたらされるかという場面がしばしばあるからです。
そういった場面は外科医以外の他科に紹介する場合も事情はまったく同じです。
周囲の病院が限られている場合にはこういった悩みも少ないのですが、問題は
選択肢が多い場合です。
病院選びといってもドクターのマンパワーが一番大切ですから、時々刻々と変わる
可能性があります。
絶えずアンテナを張り巡らしておくことが必要なことは論を待ちません。
外科系については手術数や5生率が一つの指標となっています。
どちらの指標も問題点は指摘されていますが、今日は5生率についての話をとりあげて
みまた。

出典はNIKKEI MEDICAL 2007.11です。

患者の重症度を考慮し評価へ
癌の5年生存率は、癌の治療成績を計る代表的な指標だ。
ところが、集計や公表の基準が定まっておらず、各病院が独自のルールで
算出したデータをホームページで開示することも広がってきた。
「生存率が高ければ良い病院」と患者は単純に考えがちのため、基準を明確
にすることが望まれていた。

そんな状況の中、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)は10月4日、
胃、肺、乳、大腸の4つの癌について病期別5年生存率を「全がん協加盟施設の
生存率協同調査」として公表した。
厚生労働省の研究班(主任研究者:群馬県立がんセンター手術部長、猿木信裕氏)
が集計したもの。
施設名を明らかにして開示したのもさることながら、「生存率の公表基準」を
示したことでも注目される。

生存率について、従来は「頑張っている病院が損をする」側面があった。
すなわち
①データ精度が低い
②早期癌診療の比率が高い
③合併症のある患者の診療の比率が低い
場合、生存率は上がるからだ。

①の精度に関しては、患者の予後を追跡する調査をおろそかにした方が、死亡者が
十分に捕捉されず、生存率が高くなる傾向がある。今回の調査では、追跡率90%
以上の施設のみ公表された。

②の病期に関しては、1期や2期の比率が高く、3期や4期が少ない施設が全体
生存率で良い数字を出しやすい。
そこで今回は、病期別の症例数と生存率を出すと同時に、「1期/4期比」を
表示した。
この値が低い方が、進行した癌を積極的に診療する姿勢を取っている可能性
が高い。

例えば胃癌に関し、国立がんセンター中央病院では1期症例数が381で4期
症例数が31なので、この比率は12.3。
茨城県立中央病院では1期82、4期37で2.2となる。
扱っている患者がかなり違うことがわかる。

③は、今の生存率が、患者の合併症など予後に影響する要因を考慮した数値
でないため、癌以外に心臓病や糖尿病などを持たない患者を選べば、成績を
上げられるという問題。
今回は「手術率」が示されたので、手術率が低い施設については、「全身状態が
悪く手術が困難な患者の比率が高い可能性がある」と見ることもできる。
患者の重症度による調整を十分に行った生存率を算出することは、今後の課題
となる。

このように比較的公平に成績を比較できる土俵を整えたことから、主任研究者
の猿木氏は「他の施設と比べることで、自分たちの治療に関する反省や検証を
する意識も生まれてきた」と指摘する。

厚労省が指定する地域がん診療連携拠点病院(286カ所)では、全国統一定義
によってデータを集める院内がん登録が義務付けられており、数年後には同じ
基準で生存率が分析できるようになる。
今回の全がん協による公表は、それまでの過渡期のモデル。
これにより、公表が一般となる時代に備え、患者も医療従事者も5年生存率の
意味を深く理解することが期待される。



手術はどの病院でしましょうか?
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/4379412.html(以前にとりあげた私のブログです。)

<コメント>
近くの病院でも意外と患者さんを紹介していいのかどうか迷う時があります。
それは紹介先の先生の顔(人となり)がわからないためかも知れません。
病院主催の研究会や講演に積極的に参加するのも一つの解決策と思います。
しかし、なかなか時間がとれないのが開業医の現実です。
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# by esnoopy | 2007-11-29 00:02 | メンタルケア

コーンバーグ博士 その2(2/2)

昨日の
コーンバーグ博士 その1(1/2)
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-11-27
の続きです。

迷いのない89年の人生
こうした親子の話を聞いただけでは、優れた業績を上げるために何が最も重要な
要素なのかは分からない。
ただ、アーサー・コーンバーグが繰り返し語ってきた科学という営みの素晴らしさは、
子供の価値観にも影響を与えたに違いない。

01年のインタビューでは、「孫が8人いますが、科学者としてのキャリアを持たせたい
かと聞かれれば、もちろんイエスです」と力強く話していた。
科学のキャリアは、ビジネスや政治、法律などとは比べものにならないほどの満足
が得られます。
芸術さえもかないません
」という言葉には、科学への熱い信頼感が溢れ、思わず
「同感です」と言いたい気分になった。
迷いのない信念は、そのまま、子供たちにも伝わったはずだ。

もう1つ、アーサー・コーンバーグが繰り返し語ったのは、「科学は、最初から何かの
役に立つことをめざしてやるのではない」ということだ。
「必要は発明の母」なのではなく、「発明が必要の母」だというのが、彼の持論だった。
つまり、なんの役に立つか分からないが、好奇心で行う基礎科学が、結果的に役に
立つことにつながるという構図だ。
これもまた、「同感です」と言いたくなる言葉だ。

最近の曰本の科学技術政策は、「役に立つ」ことに重きが置かれている。
「イノベーション」もそうだろう。
曰本だけではない。
米国でも、そうした傾向は強まっていると聞く。
だが、やはり、コーンバーグがいうように 科学は、ビジネスや政治、法律とは違う。
好奇心に根ざす基礎科学の素晴らしさを、コーンバーグのように訴え続ける人は、
これからますます欠かせないのではないだろうか。
(毎日新聞社論説委員 青野由利氏)

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千住 博 リトグラフ「水の惑星#11 月下」
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<コメント>
「職業に貴賎はない」というのは昔から言われている言葉です。
自分でどんな職業(この場合は進む道、一生の仕事と表現したほうがいいかも知れ
ませんが)より科学者を選んでよかった。
これは成功者だからこそ言える言葉かも知れません。
しかし成功云々の定義自体も怪しいですし、何よりも今やっていることに充実感を
(ささいなことでいいから)見出すことが大切かも知れません。
最近、私の体にはワインが流れているといった女優が婚約しました。
相手は東京で手広くレストランを経営しているオーナーシェフとのことですが、彼いわく
「大好きな料理を作ってお客様に喜んでいただく。世界一の仕事と思っています。」
それはそれで素晴らしいことです。
素敵な女性を手に入れたわけですからなおさらです。
毎晩二人で、どんなワインをあけるんでしょうか。

       そんなのカンケイナイ
                   

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# by esnoopy | 2007-11-28 00:10 | その他

コーンバーグ博士 その1(1/2)

あるノーベル賞受賞者のインタビュー記事です。

昨今、医療をとりまく環境は悪化の一途をたどっています。
悪化と言い切るのは、私自身ある程度長い間、勤務医や開業医に携わってきて
その変化を目の当たりにして実感しているからでもあります。
私自身、医学生の時、そして医師になってからも医師としての職業を天職と考え
夢と希望に胸を膨らませていました。
しかるに、医療現場を知らない厚労省の役人により医療改悪が続き医師の生気
はすっかり抜けてしまいました。
やる気も社会的地位もプライドもすべてなくなりつつあります。
この点は先生方も同感と思いますし、M3のブログに不平不満が渦巻いています。


さて私事で恐縮ですが、私の子供2人が現在医学生です。
親として勧めた道でもなかったのですが、卒後は将棋の駒のように労働力として
いいように(厚労省に)あしらわれる姿を想像すると可哀相になってしまいます。
そしてそのことに激しい憤りを感じます。
まるで学徒動員です。
法的にも問題があります。


厚労省は医学部の定員を増やせば臨床医もそのまま増えると皮算用しています。
以下のコーンバーグ博士のインタビューを読むと、これからは基礎医学が優秀な
医学生の進む道かと思ってしまいます。
生活が臨床医と同様に保障されて、場合によってはベンチャーや特許で巨万の富
を得る(?)。
そんなことが可能なら基礎医学へ進むという医学生も多いのではないでしょうか。
このままでは臨床医に未来はないと思ってしまうのは私だけではないと思います。
厚労省もへたこいてると基礎に優秀な医学生は行ってしまいますよ。

最近プライマリケア実習に来た5年の医学生に以下の記事を見せました。

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ポール・アイズピリ “楽団” リトグラフ
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さて本題です。御一読下さい。
MMJ November 2007 VoL 3 No.11
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コーンバーグの言葉   「発明が必要の母」
アーサー・コーンバーグ博士にインタビューしたのは、2001年のことだ。
ある企画で、米カリフォルニアにあるスタンフォード大学に博士の研究室を訪れた。

RNAポリメラーゼの発見で59年にノーベル医学生理学員を受賞したコーンバーグ
博士は、当時すでに88歳。
それでも、自分のラボを持つ現役の研究者で、年齢を感じさせなかった。
親日家で、今夏にも来日して講演会に出席しており、なんだかい
つまでも元気で研究を続けているよな気がしていた。

だからだろう、この10月に呼吸不全のため亡くなったとの計報にびっくりした。
89歳で亡くなるまで研究への情熱を失わなかった博士は、稀有な存在であり
「幸福な科学者」だったのではないかと感じる。

息子も昨年ノーベル賞受賞
米国でのインタビューでは、印象に残ったことがいくつかあった。
1つは、「研究者ほどすばらしい職業はほかにない」という確固たる信念。
もう1つは、3人の息子のうち2人が科学者に、1人が研究室をデザインする
建築家になったという話だっ
た。

科学者になった2人の息子のうち、長男のロジャーは、昨年のノーベル化学賞
を受賞している。
新聞社の机の前でノーベル賞発表を待ち構えていたところへ「コーンバーグ」
の名前が飛び込んできた時には、どこかで聞いた名前だなあと思ったものの
ぴんとこなかった。
アーサー・コーンバーグの2度目の受賞はありえないだろう、などと思って
プレスリリースを見て、ようやく親子受賞と気づいたくらいだ。

めずらしいこともあると思ったが、調べてみると親子でのノーベル賞受賞はすでに
6組に上リ、 コーンバーグで7組目だった。

そのとき、思わず頭をよぎったのは、遺伝か、環境か」という言葉だ。
ノーベル賞を受賞するほどの能力には、生物学的な要素が無関係とはいえない
のか、それとも家庭環境などのなせるわざなのだろうかという素朴な疑問である。

3人の息子と7月に来日
アーサーコーンバーグと3人の息子は、今年7月に東京に集まった。
東京大学が主催した講演会「独創的研究の真髄:コーンバーグ親子から学ぶ」
というイベントに招かれたためだった。
□ジャーと次男のトムが科学者、三男のケンが建築家という顔ぶれだ。
東京大学のねらいもまた、それぞれの分野で活躍する親子を生んだ環境は
いったいなんだったのかというところにあったのだろう。

ただ、科学者になった2人の息子も、それぞれ科学に対する思いは違ったようだ。
ロジャーは、子供のころからの科学好きで、好きな場所を聞かれると「実験室」
と答えたという。
9歳の時にクリスマスに何が欲しいか聞かれ、「実験室での1週間」とお願いした
そうだから「筋金入り」だ。

次男のトムは、子供のころからチェロの演奏家をめざし、ジュリアード音楽院に
進んだ。
同時に、コロンビア大学の学生にもなった。
当時、父親のアーサーの研究成果に対する批判の声があり、その正当'性を
示すための研究がきっかけで科学者の道からへ進んだという。
そういう意味では、□ジャーとは異なる道を歩んだこと
になる。
 「トムが私の名誉を挽回した」というアーサー自身は、どちらかといえば、
後から科学にめざめたトムのタイプらしい。

講演会で家庭環境などについて聞かれたアーサーは、「子どもたちに科学を
押しつけようとは思わなかったが、自分の仕事を認めてほしいと願っていた」
と語った。
結果的に、ロジャーもトムも、父親と同じ分野で業績を上げた。
やはり「親の背中を見て育つ」ということはあるのか
もしれない。
一方、□ジャーは「家では科学の話はあまりしない」と語っている。


酵素に恋して
http://www.brh.co.jp/s_library/j_site/scientistweb/no44/
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