「ほっ」と。キャンペーン

COPD  (その1)1/2

NIKKEI MEDICAL 2007.11の
「外来で診るやっかいな咳」という特集からです。
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清水達三(院展同人・評議員) 幻想風景 10号
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数日前から続く咳、咽頭痛、微熱、息苦しさを訴えて来院した67歳の男性。
問診により、30歳から65歳まで1日10本の喫煙歴があること、また10年以上前から、
息切れのため坂道や階段を最後まで一気に上れなかったり、空咳や痰に悩まされて
いたことが分かった。


胸部単純X線正面像に明らかな肺炎の所見は見られなかった。
だが
側面像では横隔膜が平低化しており、気腫性病変の存在が疑われた。
そこでCTを撮ったところ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に特徴的な所見である気道壁
の肥厚や小さな低吸収領域(LAA)が認められ、ウイルス感染に伴う急性上気道炎を
きっかけとしたCOPDの急性増悪と診断できた。

この患者を担当した藤沢市民病院(神奈川県藤沢市)呼吸器科医長の西川正憲氏は、
「COPDの患者の半数は、本症例のように急性上気道炎をきっかけに受診する。
特に中年以上で喫煙歴がある上気道炎患者では、COPDが隠れていないか-度は
疑ってほしい」と指摘する。

本例は前立腺肥大症による排尿障害があったため、西川氏は抗コリン薬を避け、
長時間作用型β2刺激薬のサルメテロール(商品名セレベント)とフルチカゾン
(フルタイド)を処方した。
その結果、持続していた息切れや咳などの自覚症状は数日間で消失し、初診時には
0.63Lだった1秒量は治療4週間後には0.94Lまで改善した。

不定愁訴からも常に疑う
COPDは、喫煙などで起こる肺の炎症反応が原因で気道の閉塞や肺胞の破壊が起き、
進行性の気流制限を呈する疾患だ。
2001年に発表されたわが国の疫学調査では推定患者数530万人、現時点では700万
人という数字もある。
だが厚生労働省の患者調査(05年)では、病院でCOPDと診断された患者は22万人。
多くの患者がいまだ治療の対象になっていないとみられる。

その背景には、医師・患者双方で「COPDは治らない病気」という旧来の認識がまだ
改まっていないことが一因という。
だが治療法は確実に進歩している。
世界保健機関(WHO)も06年、「COPDは治療でき、予防できる病気」と宣言、早期介入
の重要性を訴えた。

日本医大呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏は「より早期の段階で患者を拾い
上げることが求められており、第一線の臨床医の役割がより重要な時代になってきた」
と強調する。

代表的なCOPDの症状は、冒頭の症例のように慢性の咳嗽や喀痰、労作時の
呼吸困難など。
長期間の喫煙歴があればなおさらだ。
もっとも、全例でこの症状が前面に出るわけではない。
木田氏が診た72歳男性のケースでは、「朝着替えるときに動悸がした」「疲れやすく
なって外に出ることもなく1日中テレビを見ていた」「1-2年で10kg近くもやせた」
といった訴えが中心だった。

「COPDの初期症状は実に多彩が必要だ」と木田氏は指摘する。
質問表で診断につなげる
COPDを疑った場合に、必須となる検査はスパイロメーターによる肺機能検査だ。
気管支拡張薬を投与した後で、1秒率(1秒量/努力性肺活量)が70%未満ならば
気流制限があるとされ、気管支喘息や気管支拡張症といった気流制限を来す疾患を
除外した上で診断される。

だが、一般の診療所におけるスパイロメーターの普及率はいまだ10数%と低く、
患者の拾い上げに結びつきにくいのが実情だった。
そんな中、実地医家による拾い上げに有用な手段として注目されているのが、
「COPD簡易質問表」(表2)だ。
この簡易質問表は、国際家庭医学会のワーキンググループが05年に発表した
「IPAG診断・治療ハンドブック」の日本語版にある。
久留米大呼吸器・神経・膠原病内科主任教授の相澤久道氏らが翻訳した。

咳や喘鳴、息切れなどが慢性かどうかを確認し、呼吸器以外の疾患や急性の感染症
を除外した上で使用する。
質問項目の合計点数が17点以上で、「COPDの疑い」となる。

実際に相澤氏が和歌山県立医大呼吸器・アレルギー内科教授の一ノ瀬正和氏らと
協力、呼吸器科受診患者など169人にこの質問表を使ったところ、93.9%が
「COPDの疑い」と判定され、そのうちの40.4%が最終的にCOPDと診断された。

相澤氏は「スクリーニングを目的とした場合、この質問表の有用性は非常に高い。
スパイロメーターを持たない実地の先生方が使いこなし、未治療の患者の掘り起
こしに役立ててほしい」と期待する。


<コメント>
文中にあるようにスピリーバの使用の際には抗コリン作用の副作用に注意が必要
となります。
COPDが高齢の男性に多いことから、使用例が制限されてしまいます。
吸入でどのくらい血中濃度が上がるのか、一度調べてみたいと思います。そして
どのくらいこの副作用に気を使わなければならないかを。

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# by esnoopy | 2007-11-26 00:06 | 呼吸器科

意外に多い高齢者のRSウイルス感染

NIKKEI MEDICAL 2007.11 にこんな記事が載っていました。


発熱と呼吸器症状を訴える高齢患者にインフルエンザを疑い、ウイルスの迅速検査を
実施したが「陰性」。
だが、「単なる風邪」と決めつけてしまうのは早計かもしれない。
RSウイルス感染症が、乳幼児だけでなく高齢者でも散見されることが分かってきたからだ。
日本臨床内科医会インフルエンザ研究班が昨シーズン、インフルエンザの迅速検査
キットで陰性だった77人の検体について、RSウイルスの有無を迅速検査キットと
PCR法で調査。
すると70歳以上の患者9人のうち4人からRSウイルスが見付かった(表3)。
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外来患者に対するRSウイルスの迅速検査は、今のところ保険適用が認められていない
ので、日常診療でこのような検査を実施するのは現実的ではないが、「高齢者にもRS
ウイルス感染症が少なくないことを頭に入れ、咳が長引くときなどには疑ってみる必要
がある」と同研究班の班長で河合内科医院(岐阜市)院長の河合直樹氏は話す。
海外では、高齢者がRSウイルス感染から肺炎を発症したり、死亡に至った事例も
報じられている。
「今回は重症化した事例はなかったが、さらに調査が必要だ」(河合氏)。


<コメント>
RSウイルスと診断がついた場合、さてどうするかということでしょう。
さてどうしたらいいのか。

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# by esnoopy | 2007-11-22 00:05 | 呼吸器科

咳喘息 (その2)2/2

昨日の
咳喘息 (その2)2/2
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-11-20
の続きです。

NIKKEI MEDICAL 2007.11の
「外来で診るやっかいな咳」という特集からです。

喘息との鑑別を念頭に
咳喘息の治療方針は、基本的にはβ2刺激薬などの気管支拡張薬を第1選択とし、
効果が不十分であれば吸入ステロイドを追加ないしは同薬剤に変更するという
もの(図3)。
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一部ではあるが咳喘息から喘息への移行が知られていることから、気管支拡張薬
や吸入ステロイドで症状が改善した後も、治療を1カ月程度は継続した方がよい。

実際の薬物選択に当たっては、それぞれの専門医の工夫がある。
「小児喘息の既往があったり、既往はなくても風邪の後に同様の咳を繰り返すという
訴えがあれば、咳優位型の気管支喘息と考える。
その場合は初回から気管支拡張薬と吸入ステロイドの併用を行っている」と田中氏。

咳喘息では「診察時には咳は出ないが夜になると出る」という訴えをよく聞く。
その場合に札幌医大の藤井偉氏は、長時間作用型のβ2刺激薬とともに、夜に使用
するための短時間作用型β2刺激薬を処方している。

また、木原呼吸器アレルギー科クリニック(東京都大田区)院長の木原令夫氏は
「一向に改善しないという患者によくよく聞いてみると、実は正しく吸入できていなかった
というケースがままある。
改善したかどうかだけでなく、きちんと吸入できているかも確認してほしい」と強調する。

なお、どちらも吸入の気管支拡張薬とステロイドを併用している場合、
最近発売されたサルメテロールとフルチカゾンの合剤(アドエア)を使えば1剤で済む。
コンプライアンスの向上が期待できることはメリットだ
が、「喘息を鑑別せずに安易に使うことは避けたい」と山崎内科医院(東京都小金井市)
院長の山崎博臣氏は注意を促す。
喘息ならばそれに応じた患者管理が必要となるためだ。

もっとも、喘息患者を多く診ていない医師には、吸入薬の煩雑な服薬指導がハードル
となる。
これに対して山崎氏は、「β2刺激薬であるプロカテロールの内服または貼付に加えて、
ヒスタミンH1拮抗薬のアゼラスチンで治療を開始、その後1週間ごとに受診してもらい、
症状が改善していれば咳が消失するまで治療を継続する」というプロトコールを提案
する。
アゼラスチンを使うのは、ヒスタミンH1拮抗薬が第1選択となるアトピー咳嗽も念頭に
置いた選択だ。
「吸入薬を使わなくても咳喘息の治療は可能なので、多くの先生方に取り組んで
いただきたい。
ただ、この治療を1カ月間行い改善が見られない場合は喘息など他疾患との鑑別が必
要になるので、専門医に紹介してほしい」 と山崎氏は話す。

詳細な問診で手掛かりを
このような鑑別点に注意を払っても、目の前の患者の咳が、単なる感染後の咳で自然
軽快するのか、感染をきっかけとした咳喘息ないしアトピー咳嗽なのか、副鼻腔気管支
症候群などまったく別の疾患なのか、判断に迷うケースは少なくない。

その場合、藤井氏は、問診による患者の病歴に注目している。
例えば「いつも同じ時期に咳が出る」と言ったり、他にアトピー性皮膚炎や花粉症など
があり、アトピー素因が明らかな場合は、アトピー咳嗽である可能性が高い。
一方、風邪の後で膿性痰があるというなら、副鼻腔気管支症候群がまず疑わしい疾患
となろう(注)。

なお、咳喘息とアトピー咳嗽ともに吸入ステロイドに反応するため、両疾患の鑑別に
迷ったときは同薬剤を最初から使用するという方針も成り立つ。
その場合 喘息も治療に反応してしまうだけに、「吸入ステロイドで改善したが再発した
といった場合は、一度は肺機能検査をすべき」(藤井氏)とのことだ。

(注)
副鼻腔気管支症候群以外に気管支拡張症でも膿性痰と遷延性咳嗽がみられます。

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# by esnoopy | 2007-11-21 00:05 | 呼吸器科

咳喘息 (その1)1/2

NIKKEI MEDICAL 2007.11の
「外来で診るやっかいな咳」という特集からです。

私個人としては、咳喘息やアトピー咳嗽などのアレルギー性咳嗽がそんなに多い
ものかという疑問もあります。
なお文中のT氏は昭和大の田中一正先生、F氏は金沢大の藤村政樹先生です。


1カ月以上前から「コンコン」という乾いた咳が続き、明け方にひどくなり目覚める
こともあるという30歳代の女性患者。
近医で風邪と診断され、感冒薬と鎮咳薬を処方されたが改善しないとのことだった。
アレルギー疾患の既往歴、喫煙歴ともになく、肺機能検査も正常。
強制呼出時の聴診でも喘鳴は認められなかった。

この患者を診察したS大のT氏は咳喘息を疑い、明け方の咳も考慮して長時間
作用型β2刺激薬のツロブテロール(商品名ホクナリンテープ)を処方した。
長引く咳の既往はなく喘息も否定できた場合、T氏は咳がひどいときに使いづらい
吸入を避け、まずテープ剤を処方するようにしている。
1週間後、患者の症状に改善が見られたため吸入ステロイドのブデソニド
(パルミコート)を追加、咳は治まった。

「長引く咳」の6割が該当

咳喘息とは、喘鳴や呼吸困難を伴わず、呼吸機能も正常、咳だけを主徴とする
好酸球性の気管支炎で、気管支拡張薬が有効な病態と定義される。
多くの場合は1カ月程度の治療で治癒するが、適切な治療を行わないと-部が
喘息に移行するとの報告があるので、その拾い上げが重要となる。

一方、咳喘息と類似した疾患にアトピー咳嗽がある。K大のF氏が提唱したもので、
咳が主体となる症状や好酸球性の気管支炎という病態は咳喘息と同じ。
どちらもアレルギー性咳嗽と分類されているが、
①気道過敏性は正常
②咳受容体の感受性が亢進
③多くの患者にアトピー素因がある
④放置していても喘息には移行しない
など細部で咳喘息と異なる。
本症なら気管支拡張薬は効かずヒスタミンH1拮抗薬が第1選択となるが、
有効率が約6割と低いため、吸入ステロイドとの併用が行われている。

「長引く咳」で、咳以外にあまり所見がないという患者の中には、このような咳喘息、
アトピー咳嗽が多く含まれている。
実際、F氏らが、8週間以上続く咳を主訴として来院し
た患者の原因疾患を調べたところ、咳喘息とアトピー咳嗽で6割を占めていた。

咳喘息については、F氏が世話人を務める曰本咳嗽研究会が診断基準を発表
している。
だが「講演会などを通じ広く普及を図っているが、残念ながら日常診療へ浸透する
までにはまだ至っていない」(F氏)。

その理由の一つが、診断基準では気道過敏性亢進の確認を求めていること。
「非専門医が日々の外来で気道過敏性を調べるのは難しいのが実情」とT氏も話す。

日常診療では簡易基準

そこで同研究会では、簡易診断基を作成した。
それによれば喘鳴や呼吸困難を伴わない咳が8週間または3週間以上続き、
気管支拡張薬を投与して改善すれば咳喘息と診断できる。
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咳の持続期間が「8週間(3週間)」となっているが、これは咳喘息などが含まれる
「慢性咳嗽」の定義が8週間以上続く咳となっているため、簡易診断基準でも基本は
8週間以上とされた。
だが曰常診療の現場ではそこまで待てないという声が多いため、実質的には3週間
以上続いていれば基準の項目を満たすと考えてよいそうだ。

簡易診断基準を使う場合の注意点としてF氏は、「気管支拡張薬の投与は診断的
治療という側面があるので、1週間以内に再診し、気管支拡張薬の効果を確認して
ほしい。
1週間程度の使用で、咳は止まらないまでも軽減しているはず」と話す。

<コメント>
マイコプラズマ肺炎、インフルエンザ感染後、百日咳などで咳が1か月(4週)ぐらい
は続く場合もあるかと思います。
したがって3週ではなく8週間以上続くという定義の方がいいかとも思います。
読んでいて少し疑問だったのは、感染後咳嗽とアレルギー性咳嗽とがクリアカットに
分類できるのかということです。
そして、気管支拡張剤(吸入、貼付、内服)が有効な場合はすべて喘息という治療診断
法も少し気になります。
ステロイドは理論的に感染後咳嗽にも有効と思われますし、感染型の喘息で
感染後咳嗽が主体の場合にも効きそうな気がします。
そしてホクナリンテープは保険上は急性気管支炎にも適応が現にあります。

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# by esnoopy | 2007-11-20 00:10 | 呼吸器科

新型インフルエンザ対策

Nikkei Medical 2007.11の
  インフルエンザ治療 今年はどうする?
という特集からの紹介です。
大部分は先週紹介させていただきました。

新型対策が着々、迅速診断キットの開発も進む
北里研究所と阪大微生物病研究会が承認申請していた「沈降新型インフルエンザ
ワクチンH5N1」が10月19日、承認された。
新型インフルエンザに対する感染予防が期待される国内初のプロトタイプワクチンだ。

2000万人分ワクチン備蓄へ
承認前から備蓄が進められおり、すでに1000万人分が原液でメーカーに保管され
ている。
パンデミック(世界的な大流行)のリスクが高まったら、厚労省の指示で製剤化され、
医療従事者や社会機能維持者に優先的に接種される。
第1相試験で突発性難聴が1例あったが、ほかには重大な副作用は報告されておらず、
安全性は高そうだ。

現在、備蓄されているプロトタイプワクチンはベトナム株(クレード1)500万人分、
インドネシア株(クレード2)500万人分。厚労省はさらに備蓄を進める方針で、
中国株(クレード2)のプロトタイプワクチンを、ワクチンメーカーにとって製造の端境期
に当たる10月から3月まで作らせる。
ウイルスの増殖性にもよるが、来春には合計約2000万人分が備蓄できそうだ。
プロトタイプワクチンのウイルス株を多様化させているのは、どのウイルス株が新型
インフルエンザに変異するか分からないためだ。

鳥インフルのみ検出するキット
ワクチンと並んで、医師が気がかりなのは、新型インフルエンザの迅速診断キットの
開発状況だろう。
大阪府立公衆衛生研究所元副所長の奥野良信理事)、感染症部総括研究員の
高橋和郎氏らは、鳥インフルエンザウイルスを特異的に検出する迅速キットの開発
に成功。
体外診断薬としての承認を目指している。

鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスでは、核蛋白質のアミノ酸
配列が3%程度異なることに目を付け、鳥インフルエンザウイルスに特異的な
モノクローナル抗体を作製。
この抗体を利用した検査キットを開発した。

ヒトインフルエンザは「陰性」、鳥インフルエンザのみが「陽性」となる。
感度と特異性は、通常のインフルエンザ迅速診断キットと同等という。


<コメント>
医師は紛れもない医療従事者です。
優先的にワクチンを打っていただけることは有難いのですが、流行した際には矢面に
立たせられると思うと複雑な心境になります。

「社会機能維持者」・・・・こんな言葉があるとは。
どんな職種が該当するんでしょうか?事前に定義づけをしたら問題が起きそうです。
該当しない人は社会機能非維持者?
そして有事(?)の際には高齢者はどうなるんでしょうか?


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# by esnoopy | 2007-11-19 00:05 | 感染症

無症候性脳血管腫・脳出血

東海大学医学部講師 高橋若生先生    日医雑誌 136:4 2007.7 より


MRIの普及に伴い,無症候性脳病変が見つかる機会が増えているが,脳血管腫
もその1つである.

MRIでは、静脈性血管腫が0.6%、海綿状血管腫が0.4%、脳動静脈奇形が
0.2~0.3%程度の発見率
とされる。
山中湖クリニックの成績では、脳ドックを受診した3、780名(平均年齢55±10歳)
のうち16例(0.4%)にいずれかの無症候性脳血管奇形が認められた。
比較的まれな病変であるが、脳血管奇形の種類によっては脳出血を来す場合
があり、無視できない病変の1つである。
一方、上述の検討では、血管腫に伴うものを除いた無症候性脳出血は2例
(0.05%)のみであった

また、何らかの神経疾患を有する例のMRIについて検討した成績によると、
2、757例中高血圧性脳内出血が12例、脳血管腫などの二次性脳出血が
5例にみられた。
したがって、通常のT1,T2強調画像で認められる無症候性脳出血は,
慢性期の高血圧性脳内出血もしくは脳血管奇形が主体と考えられるが,
その頻度はきわめてまれである。
最近、磁性体を鋭敏に捕えるsusceptibility‐weighted MR sequences
と呼ばれる撮影法が実用化され、無症候性の脳微小出血microbleeds
(MBs,図1矢印)が想像以上に高頻度に存在することが明らかとなった。
Gradient-echoT2*強調画像
を用いた検討では、脳内出血例の
66~71%、ラクナ梗塞例の62%にMBSが認められたという。
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MBS
は,脳内出血の再発、アスピリン内服中や血栓溶解療法後の
脳出血と関連するとした報告が相次ぎ、その存在意義が注目されている


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マヌキャン リトグラフ 「母子」
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<コメント>
従来のMRIでは無症候性脳出血はほとんどみられない。
しかし、susceptibility‐weighted MR sequencesという新手法を用いると
脳微小出血は決して珍しいものではないということです。
さらに、脳内出血例やラクナ梗塞例の多くに脳微小出血を伴っていたということです。
出血性梗塞の概念とは異なるかも知れませんが、理論上も多いにありうることと思い
ます。
脳梗塞の二次予防やTIAに対して安易に(?)抗血小板療法が行われますが、一つ
の警告とも思われるデータです。
私も常々、これらの症例に対して抗血小板療法を行うことについて、再発時に梗塞
とは限らず出血(つまり初発が脳梗塞、2回目が脳出血)という場合もありうると危惧
しながらも抗血小板療法を行っていました。
なかなか抗血小板療法も一筋縄ではいかないようです。


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# by esnoopy | 2007-11-17 00:10 | その他

腹囲論争

メタボリックシンドロームの診断基準の必要条件としての腹囲。
11月に入ってからこの数字について急展開をしています。
十分な検討がなされないまま基準が決まった感がありますが、どの数字に落ち着くか目が離せません。

「メタボ腹」基準に異論 「男85センチは平均的」
おなかに脂肪がたまるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、通称メタボ)の診断基準を巡り、専門家から異論が相次いでいる。
基準の一つであるウエストサイズ(腹囲)が、女性で90センチ以上なのに対し、男性は85センチ以上と、諸外国に比べても厳しいなどが理由だ。
この症候群の人を見つける「特定健診・保健指導」が来年度に始まるが、「これでは健康な人まで『異常』と判定される」との指摘もあり、日本肥満学会などは今後、診断基準に関する委員会を開き、基準の見直しの必要性を検討するとしている。
この症候群は、腹囲に加え、血圧、空腹時血糖、血中脂質のうち2項目以上で異常があった場合に診断される。
特定健診・保健指導は、40〜74歳が対象で、現在の健診の項目に腹囲測定が新たに加わる。
内臓脂肪は、内臓の周りにたまる脂肪のこと。画像診断で、へその位置の胴回りの内臓脂肪面積が一定以上の場合、糖尿病や心筋梗塞(こうそく)などを引き起こす恐れが高まるとして、日本肥満学会などが、内臓脂肪面積を基に腹囲の基準を定めた。
だが、国際的にみても、男性の方が厳しい基準となっているのは日本だけだ。
米国の指針では、男性102センチ超、女性88センチ超を腹囲の基準としている。 
約160の国と地域の医師らで作る国際糖尿病連合の基準では、欧州で男性94センチ以上、女性80センチ以上、中国・南アジアは男性90センチ以上、女性80センチ以上だ。日本人についても今年、男性90センチ以上、女性80センチ以上との基準を打ち出した。
同連合副会長で中部労災病院(名古屋市)の堀田饒(にぎし)院長は「男性の方が女性より厳しいのはおかしい。
腹囲が85センチぐらいの男性は平均的で最も多く、健康な人でも基準に引っかかる恐れが強い」と指摘する。
診断基準をまとめた住友病院(大阪市)の松沢佑次院長は「腹囲の基準を超えたら病気、基準以下なら健康ということではない。
女性の基準値が緩いのは皮下脂肪が多いため。
女性の方が心筋梗塞などは少なく、現時点では大きな問題はない」としながらも、異論があることを考慮し、「今後、診断基準の見直しの必要性を検討する」と話している。
(2007年10月14日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071014-OYT8T00078.htm

腹囲の数値先走り メタボ基準に十勝の医師も疑問の声
男性85センチ女性90センチ これでいいの? 一部学会に見直しの動き
来年度から国が、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策を柱にした特定健診をスタートさせる。
これに合わせ専門家などからは男性85センチ、女性90センチ以上とするメタボ基準に異論が相次ぎ、十勝の医師らからも疑問の声が上がっている。
現場の医師は「腹囲基準だけが強調されるとメタボ自体が誤解される」などと指摘。
関連学会では基準を見直す動きもあり、論議はなお続きそうだ。

帯広厚生病院の吉川隆志副院長は16日の「とかち健康セミナー」で、「メタボ基準を見直さなければという機運がある」とし、メタボの基準となる腹囲測定値に疑問を投げかけた。

吉川副院長は同病院が昨年度行った健診受診者約1万3000人のデータを基に、基準以下の腹囲でも高脂血症、高血圧、高血糖のリスクを持つケースがあると指摘する。
その上で、「腹囲は絶対的なものではない。基準以下でもメタボとして対応しなければならない人もいる。
基準値ばかりをみるとメタボの趣旨が誤解される可能性がある」と強調している。

また、医療法人啓和会の前田修一理事長は「国が示す基準には根拠がある。身長の高い人が(健康でも)基準に該当することもあり、ただ、個人の意見としては身長180センチ以上の人の腹囲基準値は緩和されるべきだ」と話す。

帯広保健所の渡部正行所長も「腹囲が前面に出て数値だけが先走りするのは疑問」とする。現在の基準では中・高年男性のほぼ半数がメタボに該当する推計だが、「果たしてそれが妥当なのか。医療界からも異論が出ており、今後見直される可能性もある」とみる。

一部関連学会では基準値を見直す動きもあり、厚労省は「策定した8学会が見直せば、必要に応じて検討する」(生活習慣病対策室)としている。
メタボ基準 日本肥満学会など8団体が2005年に策定したものを厚労省が導入し、来年度からの特定健診の必須項目に盛り込む。腹囲基準を中心に、血中脂質、血圧、血糖の各基準値の該当数により、保健指導の支援内容が異なる。
十勝毎日新聞 - 2007年10月16日
http://www.tokachi.co.jp/WEBNEWS/071017.html

女性の腹囲は80センチを基準に メタボ診断、東北大発表 '07/10/19

東北大大学院薬学研究科の今井潤教授らのグループは18日、メタボリック症候群の診断基準になっているウエストサイズ(腹囲)について「男性87センチ、女性80センチが適切な基準値」と発表した。
厚生労働省は腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、さらに高脂血、高血圧、高血糖の2つ以上に当てはまるかどうかを基準としている。
女性の腹囲を男性よりも大きく設定していることには、異論も出ていた。研究グループは「女性の腹囲は引き下げが必要ではないか」と指摘。
25日から沖縄県で開かれる日本高血圧学会で発表する予定。
研究グループは、2000—06年にかけて、岩手県花巻市大迫町の男女約四百人(平均63歳)に健康診断を実施。血圧などの健診データを分析し、メタボリック症候群に該当する人を見つける上での最適な腹囲の値を導き出した。
 現行の診断基準は、日本高血圧学会などが作成、05年に発表した。
その後、国際糖尿病連盟が「男性90センチ、女性80センチ」を発表するなど諸説出ている。
中国新聞 - 2007年10月18日
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200710190102.html

メタボ腹基準、緩めません…男性85センチ  肥満学会が見解 
男性に厳しく女性に甘いメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の腹囲による国内診断基準が、世界標準と大きく異なる点について、基準策定の中心となった日本肥満学会は19日、「基準を変える必要はない」との見解を公表した。
内臓の周りに脂肪がたまるメタボリックシンドロームの診断基準は、腹囲が「男性85センチ以上、女性90センチ以上」の条件を満たした上で、血圧、血糖値、血中脂質の値のうち2項目が基準を上回ること。来年度から40歳以上を対象に始まる特定健診では、メタボリックシンドロームやその予備軍と診断された人は、生活習慣病予防のための特定保健指導を受けることになる。
しかし、米国の肥満基準は腹囲が「男性102センチ超、女性88センチ超」で、世界的には男性の方が緩いのが普通。特定健診の導入を半年後に控え、基準の妥当性を疑問視する声が出ていた。
これに対し同学会の松沢佑次理事長は、「内臓脂肪の量から腹囲基準を決めたのは日本だけ。単なる肥満基準とは違う」と診断基準の妥当性を訴えた。
(2007年10月20日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071020-OYT8T00067.htm

メタボ基準検証へ 厚労省研究班、2万4千人の腹囲分析
2007年11月08日23時01分
 生活習慣病を引き起こす原因ともされるメタボリック症候群の診断基準を見直すため、全国2万4000人を対象とした大規模調査を厚生労働省の研究班(主任研究者=門脇孝・東京大教授)が始める。「男性に厳しく、女性に甘い」といわれるウエストの数値を中心に、将来の心筋梗塞(こうそく)や脳卒中のリスクを予測するのに最もふさわしい基準値をつくるのが狙いだ。
現在のウエストの基準は、日本肥満学会が中心となってつくった。男性85センチ、女性90センチ以上。健康障害にかかわる内臓脂肪の面積に対応する値として設定された。だが、心筋梗塞や脳卒中の発症との関係を直接調べているわけではないため、医学的な信頼性を疑う専門家も少なくなかった。
 また、国際糖尿病連合が今年、「リスクのある人をより正しく見分けられる」として、日本人について「男性90センチ、女性80センチ」とする独自基準を決めた。日本の基準とは男女が逆転しているが、国内の研究チームからもこれが最適とする報告が出ている。ただ、調査人数は2500人程度にとどまる。
茨城、大阪、福岡など全国7地域では、一般市民を対象にウエストを測り、その後の健康状態を長く追跡して心筋梗塞などとの関係を直接調べている。厚労省の研究班は、これらの研究をまとめて、ウエストの基準をどの値に設定すれば、心筋梗塞や脳卒中につながりやすい人を最も効率的に見分けられるか、といった点を検討する。
 基準値を探る調査としては最大規模の研究になる。今のウエスト値は2度にわたって検討されたが、いずれも調べた人数は1000人ほどだった。班のメンバーには肥満、血圧、血糖、脂質の専門家らが参加。2年後をめどに、新しい基準値をまとめる。
健康保険法改正で、来年度から40〜74歳の全国民を対象に導入されることになった特定健診は当面、現行の基準でスタートする。ただ、ウエスト基準に合致しない人を見落としたりしないよう、肥満度をみる別の基準も設けている。門脇教授は「医学的根拠の高い基準値をつくるため、一定の質を保っている研究だけを集めた。日本人の予防医学に役立てられるようにしたい」と話した。
 日本肥満学会の松澤佑次・理事長らは10月の記者会見で「当面はウエスト値を変える予定はない」と表明。ただ、信頼性の高いデータが明らかになれば、見直しは否定しないと述べている。
 《メタボリック症候群の診断基準》 腹部の内臓脂肪の面積100平方センチに相当するウエストの長さが男性85センチ、女性90センチとされる。これに加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうち二つ以上当てはまる場合。
 ウエストの基準は、米国は男性102センチ、女性88センチ、欧州では男性94センチ、女性80センチで、いずれも身長と体重をもとに計算した体格指数(BMI)に対応する値として決めている。
朝日新聞 - 2007年11月8日
http://www.asahi.com/life/update/1108/TKY200711080242.html


<コメント>
腹囲をめぐって百家争鳴。
真剣な論争ですが、よくわからない第三者からみれば滑稽にうつるかも知れません。
たかが腹囲、されど・・・。
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他にこんなブログがあります。
井蛙内科開業医/診療録 
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# by esnoopy | 2007-11-16 00:05 | その他

インフルエンザの治療はどうします?(その4)4/4

リレンザの吸入、本当にできてる?
日本臨床内科医会インフルエンザ研究班実施の調査によると、8割を超える患者(保護者)
がリレンザの吸入器の使用について「非常に簡単だった」「簡単だった」と回答(図6参照)。
患者は意外なほど、吸入器使用に抵抗を感じないようだ。
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だが、正しく吸入できているかどうかは別の話。
名古屋セントラル病院薬剤部の坂野昌志氏は「患者は吸入したつもりでも、実は吸入でき
ていないことがある」と注意を促す。
リレンザを吸入するには、粉末薬が入ったアルミ製のディスクをインヘラーにセットした後、
ディスクに穴を開けて薬をインヘラー内に装填する、という準備作業が必要だ。
粉末薬はディスクの中空部分に封入されている。
インヘラーのカバーを引き上げると、ツメがディスクの上面、続いて下面を突き破り、
薬がインヘラー内に装填される仕組みだ。

しかし、ツメがディスク下面に穴を開ける際の抵抗がやや強く、「患者が『吸入器が壊れる』
と心配して、途中までしかカバーを引き起こさない場合がある」(坂野氏)。
すると粉末薬はインヘラーに装填されず、いくら吸っても薬を吸入できない。
「『壊れる心配はないので、カバーをしっかり、垂直まで引き上げてください』と伝えるとよい」
と坂野氏はアドバイスする。

なお、「インヘラー内にセットされた粉末薬は、傾けると吸入ロからこぼれ落ちやすい点にも
注意が必要」と坂野氏。
薬を装填して吸入の準備が完了したら、インヘラーを水平に保ちながら慎重に口元に運び、
速やかに吸入するように指導するのがコツだ。

Nikkei Medical 2007.11
特集 インフルエンザ治療 今年はどうする?
            より
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# by esnoopy | 2007-11-15 00:05 | 感染症

インフルエンザの治療はどうします?(その3)3/4

タミフルとリレンザ、今年はどう使い分けるか

抗インフルエンザ薬を処方する場合、タミフルか、それともリレンザか。
使い分けで重視するポイントを聞いたアンケート結果が、下のグラフだ(図4)。
「臨床効果」「患者の希望]「副作用」が、ほぼ横一線で並ぶ結果となった。
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個別に取材で話を聞いた範囲では、「患者から強い希望があれば、基本的には、その薬剤を処方する」と答える医師が多かった。
まずは、患者の希望を重視し、希望が特にない場合や「どちらがよいか」と患者から判断を求められた場合、あるいは
何らかの既往のある患者に対しては「臨床効果」や「副作用」を勘案して薬剤を選択するというのが、今シーズンの抗インフルエンザ薬選択の基本的な流れといえそうだ。

B型にはリレンザが効果的
では、両薬剤の臨床効果はどう評価すべきか。
この問いに対して、日本臨床内科医会インフルエンザ研究班(班長:河合内科医院院長の河合直樹氏)が9月の学術集会で、興味深いデータを発表した。

同研究班は2006/07シーズンに、タミフル服用群とリレンザ服用群について、服薬から解熱までの時間を比較する調査(全1252例)を実施。
A型インフルエンザ感染者ではほとんど差がなかったが、B型インフルエンザ感染者ではタミフル投与群52.7時間に対して、リレンザ投与群35.8時間と、17時間程度、解熱時間が短いことが分かった(図5)。
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実は以前から、B型インフルエンザに対しては、タミフルよりもリレンザの方が臨床効果が高いとの印象を持つ医師は多かったようだ。
また、
幸地内科小児科(徳島市)院長の幸地佑氏は、2002年に外来患者357例を対象とした独自の調査を実施してB型インフルエンザにはリレンザの効果が高いことを確かめ、徳島県
小児科・医師会報で発表している。
今回、日本臨床内科医会による1000人規模の多施設間調査で、改めて「B型にはリレンザの効果が高い」事実が裏付けられた格好だ。

もっとも、有意差があったとはいえ、解熱までの時間の差は半日から1日程度。
現実には、服薬のしやすさが優先されるケースも多いだろう
が、例えば、数日後に大切な仕事を控えていて「一刻も早く熱を下げたい」と望む患者には、リレンザを処方するメリットは高そうだ。

喘息患者にリレンザは慎重に
一方、副作用についてはどうか。
タミフルは、昨シーズンから取りざたされている「異常行動」を別にしても、重大な副作用の報告が多いが(表5)、これについては昨シーズンまで、圧倒的にタミフルの処方数が多かったことも一因と考えられる。
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むしろ今シーズンにケアすべきは、使用量の少なさからこれまでさほど問題視されてこなかった、リレンザの重大な副作用だろう。
特に気を付けたいのが気管支攣縮や呼吸困難だ。
リレンザは吸入薬であるため気道を刺激しやすく、海外では、喘息患者にこれらの症状がはあ告げんしたとの報告がある。

従って、リレンザを処方する際には、喘息の既往と治療歴をしっかり確認することが重要になる。

元同愛記念病院アレルギー呼吸器科部長で、佐野虎ノ門クリニック院長の佐野靖之氏は「吸入ステロイド薬を使って喘息発作を+分にコントロールできている患者なら、まず問題はない。
しかしコントロール不良あるいは、未治療の喘息患者に吸入
薬を服用させる場合、気管支攣縮や呼吸困難が起こる可能性は十分にある」と注意を促す。

リスクが高い喘息患者にはタミフルを処方する方が無難だが、患者が10歳代の場合や、それ以外の年齢層であっても強くリレンザの処方を希望する場合は、気管支拡張薬を併
用する手もある。
「硫酸サルブタノール(サルタノール)か塩酸プロカテロール(メプチン)を1~2吸入、リレンザの前に使用すれば、副作用が起こるリスクは格段に下がると考えられ
る」(佐野氏)。

なお、万が一、気管支攣縮が起こった場合には、「エピネフリン(ボスミン)で救命できるので、あわてずに対処することだ」と佐野氏。
初回の吸入は、吸入手技を確認する意味でも院内で行わせ、異常が出ないかどうかを確認するのも一法だろう。
              


Nikkei Medical 2007.11
特集 インフルエンザ治療 今年はどうする?
            より
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# by esnoopy | 2007-11-14 00:05 | 感染症

インフルエンザの治療はどうします?(その2)2/4

インフルエンザの治療はどうします?(その1)1/4
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-11-10

今シーズンのインフルエンザの流行は例年になく早いようです。
インフルエンザワクチン接種に来院される方も例年より多い印象です。
きのう当院にワクチン接種された方で、北海道に仕事に毎週のように行かれる方が、北海道では学級閉鎖も出ているとのことでした。

インフルエンザはや流行 99年以降最多、警戒急げ 道内(11/10 06:47)
道内でインフルエンザが、例年より早く流行の兆しを見せている。
医療機関から報告された患者数は、この時期としては記録がある1999年以降で最も多く、9日現在、札幌、旭川などの小中学校17校が学級閉鎖している。
全国でも患者数は例年を上回っており、関係機関はワクチンの予防接種など早めの対策を呼びかけている。
中略
同時期の患者数は、99年に31人の報告があった以外は、例年は数人にとどまっている。
ここ数年、流行が本格化するのは年明け以降だったが、「札幌市内では3週間連続で患者数が増えており、流行が始まった可能性がある」(同センター)という。
患者数は東京都や神奈川県でも急増しており、沖縄県では夏場の流行が終息しない“異変”も起きている。
国立感染症研究所によると、10月22-28日の間に、全国の定点医療機関から報告された患者数は0.2人とこの時期では、過去10年で最多。
同研究所は1.0人を超えると全国的な流行と判断する。
時期が早まっている原因は不明だが、同研究所感染症情報センターの安井良則主任研究員は「首都圏で患者が増えると、他の地域にも感染を広げる恐れがあり要注意だ」と指摘している。
中略
(北海道新聞) 
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/life/59691.html


さて本題です。

引き続きインフルエンザの勉強をしてみました。
教材は
Nikkei Medical 2007.11の
  インフルエンザ治療 今年はどうする?
という特集です。
今日は4回の中の2回目です。


異常行動」は病気のせいか、薬のせいか
今シーズンのインフルエンザ治療で、一番気になるのは、タミフルと「異常行動」との因果関係だろう。
特に、社会的な話題にもなった「飛び降り」が、タミフルなどの薬の副作用なのか、インフルエンザ罹患者に起こるまれな合併症状なのかは、まだ結論が出ていない状況だ。

今春、厚生労働省の指示でタミフルの添付文書が改訂されたが、これは、あくまで因果関係が不明な段階における暫定措置だ。
因果関係の解明に向けて、同省は四つの試験・調査を実施、あるいは実施を指示しており(表4参照)、結果は随時公表される見込みとなっている。
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残念ながら本稿を執筆している10月31日現在、明らかになっているデータはごく一部だが、現段階で分かっていることと、現在進行中の試験の内容をまとめておこう。

タミフルは脳内に蓄積しにくい
10月24日、中外製薬が実施した基礎試験の結果が、厚労省から発表された。
同省の薬事・食品衛生審議会医薬品安全対策部会安全対策調査会に設置された調査検討のワーキンググループが、因果関係解明のために、中外製薬に実施するよう指示
していたものだ。

分かったことは、
①タミフルは中枢神経に関連する受容体、イオンチャンネル、酵素など155のターゲット蛋白質に影響を及ぼさなかった
②タミフルは血液脳関門(BBB)を受動拡散で通過するが、「P-糖蛋白質」と結合してBBBの外に運び出される
③ラットの脳内の酵素でタミフルが活性型に代謝される割合は低い
などだ(図3参照)。
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ほかにも、脳内にタミフルを直接投与してラットの行動を観察する試験や、成熟ラットと幼若ラットの代謝の違いを知るための試験も指示されていたが、まだ実施中。
このため「まだ結果が報告されていない主要な試験もあるので、基礎の立場から「因果関係』に結論は出せない」というのが同ワーキンググループの見解だ。

臨床試験の結果も待たれる。
厚労省は中外製薬に対して、健康な成人男子にタミフルを服用させて、睡眠障害に関連する指標を観察する試験などの実施を指示している。
近々、結果が発表される見込みだ。

1万人調査の結果は年明けか
最も発表が待たれているのは、約1万人のインフルエンザ患者とその主治医にそれぞれアンケートを実施した「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」の結果だ。
2006/07シーズンに横浜市立大小児科教授の横田俊平氏らが実施し、07年度からは大阪市立大公衆衛生学教授の廣田良夫氏が引き継ぎ解析作業を行っている。

先立って横田氏らが実施した2005/06シーズンの調査では、約2800人の患者とその主治医がアンケートに回答し、タミフル投与群と非投与群の異常行動の発現率に、有意な差はなかったとの結果を得ている。
しかし、
①タミフル投与と異常行動出現との前後関係がはっきりしない
②調査規模が小さい
③10歳代半ば以降の子どもの割合が低い
といった問題点があったため、改めて2006/07シーズンに実施したのが、この1万人規模の調査だ。

「アンケートの記入漏れを医師や保護者に問い合わせる作業が11月末までかかる。
その後に統計処理などを行う」と廣田氏。
結果の公表は年末か年明けになりそうだ。

ちなみに、調査規模は大きく異なるが、廣津医院(神奈川県川崎市)院長の廣津伸夫氏は同じアンケート用紙を使って、昨シーズンのインフルエンザ感染症の外来患者217人を調
査した。
その結果、服薬後の異常行動の発症率はタミフルが14.7%(68人中10人)、リレンザが10.9%(128人中14人)だった。有意差の有無を現在、解析中だ。

感染研も調査を開始
国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏が主任研究者を務める「インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動情報収集に関する研究」は今年7月に始まったばかり。
全国の医療機関に症例報告を求め、それを集計する計画だ。

「飛び降り」「走り出す」などの重度の異常行動(表5)に関しては、国内すべての医療機関に報告を要請。
約5000カ所のインフルエンザ定点医療機関には「おびえて手足をバタバタさせた」といった軽度な異常行動についても報告してもらう。

国立病院機構三重病院小児科の中野貴司氏は、2階で寝ていた男児が突然家から飛び出して4m道路を横切った、という症例を昨年シーズン経験し、既に報告済みだ。
ちなみにこのケースでは、抗インフルエンザ薬は処方されていなかったという。


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)
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# by esnoopy | 2007-11-13 00:05 | 感染症

L-FABPの臨床的意義

L-FABPがCKDの予後判定に有用であることを最近知りました。
このサイトを他の私のブログにリンクしようとしましたが、うまくいきませんでした。

CKD合併高血圧患者とL-FABP
http://blog.m3.com/reed/20071110

数少ないL-FABPの論文です。
L-FABPのアウトラインが把握できると思います。
c0129546_7511062.jpg

葛西四雄 雪の館 油彩画20号
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s75439804

最近の話題
尿中肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)の臨床的意義
聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科
上 條 敦 子・木 村 健二郎
田辺製薬創薬研究所 菅 谷 健
栄研化学生物化学研究所 樋 川 明 久
Lab.Clin.Pract.,21(1):12-15(2003)

www.jaclap.org/LabCP/LabCP21_01/04kamijyo.pdf
(ダイレクトリンクできないためアドレスのC&Pでお願いします。)
http://cache.yahoofs.jp/search/cache?ei=UTF-8&fr=slv1-snvaio&p=L-FABP&u=www.jaclap.org/LabCP/LabCP21_01/04kamijyo.pdf&w=l-fabp&d=LgvyUfL9Pun9&icp=1&.intl=jp
(ダイレクトリンクできないためアドレスのC&Pでお願いします。)


はじめに
慢性糸球体疾患の進行には,臨床的に高血圧や高脂血症,病理学的に
糸球体病変や間質尿細管障害と関係がある。
最近,慢性糸球体疾患の予後が,糸球体病変そのものよりは間質尿細管
障害の程度と強く相関する事が明らかになり,注目されている。
この糸球体障害に伴う間質尿細管障害の原因として,尿蛋白,尿蛋白
とともに糸球体から漏出した補体,トランスフェリン,酸化 LDLや腎硬化症
に伴う peritubular capillary(PTC)の障害などの関与が指摘されている。
特に尿蛋白は,従来,糸球体障害の存在を示すマーカーとして考えられて
いたが,尿蛋白自体が尿細管から MCP-1や RANTES等の炎症性サイト
カインの放出に関与し,間質尿細管障害の進行の mediator となる事が
明らかになってから,さまざまな施設で研究が進められている。
しかし,尿蛋白が間質尿細管障害の発症,進行に関与する詳細な機序は
あきらかではない。
血清のアルブミンには遊離脂肪酸が結合しており,慢性糸球体疾患で
尿蛋白が増加すると,近位尿細管には,アルブミンだけでなく脂肪酸も過剰
に負荷される。
過剰に負荷された脂肪酸は容易に過酸化を受けるため,このような状況では,
間質へマクロファージ遊走因子が放出される事が報告されており,そのため
間質尿細管障害が発症し腎疾患が進行すると考えられる。
実際,私たちは,蛋白負荷モデルを作成し,尿蛋白が間質尿細管障害を進行
させる機序の一つとして尿蛋白に結合した脂肪酸が重要である事を in vivo
の系で明らかにした。
そこで,ヒトの近位尿細管に発現し,細胞内の脂肪酸代謝に関与する肝臓型
脂肪酸結合蛋白(liver type fatty acid binding protein, L-FABP)に
注目した。
しかし,慢性腎疾患とL-FABPについて検討した報告はない。
ここでは,L-FABP についての最近の知見と L-FABP の尿中排泄の臨床的
意義について私たちの成績を紹介する。

2.脂肪酸代謝に関与する L-FABP
L-FABP はヒト近位尿細管に発現する分子量約14kd の低分子可溶性蛋白
で細胞質に存在し,腎臓以外に肝臓や小腸でも発現している。
肝臓において L-FABP は細胞内の脂肪酸と結合し,脂肪酸のβ酸化が行われ
るミトコンドリアやペルオキシソームへこれらの脂肪酸を輸送し,また脂肪酸
代謝に関与する遺伝子の転写調節に関与することで,細胞内の脂肪酸代謝に
関与することがわかっている。
近位尿細管に発現しているL-FABPにも同様な機能があると推測される。

3.L-FABP 染色体遺伝子導入(Tg)マウスを使用した検討
私たちは,野生型げっ歯類の近位尿細管には,L-FABP が発現していない
ため,L-FABP 染色体遺伝子導入(Tg)マウスを樹立した。
この Tg マウスには,ヒトの L-FABP 遺伝子の転写調節領域も含めて導入
しているため,マウスのヒト L-FABP 遺伝子の発現は,ヒトの同様の発現調節
を受けている徒考えられる.。
この Tg マウスを使用した腎症モデルの検討では,腎疾患では,腎臓におけ
る L-FABP遺伝子の発現が亢進し,尿中への L-FABP の排泄量が増加した。
この結果は,ヒトの病態においても,腎臓での L-FABP 発現は亢進し,
尿中への L-FABP の排泄が増加する可能性を示している。

4.慢性糸球体疾患における 尿中 L-FABP の臨床的意義の検討
a.L-FABP 測定法
L-FABP に対する特異的なモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ ELISA
法が開発され尿中L-FABP の安定した測定が可能となった。
b.臨床的意義
外来の慢性糸球体疾患患者を対象に尿中 L-FABP と臨床パラメーターとの
関係をステップワイズによる重回帰分析により検討した。
尿中 L-FABP と 相 関 が 高 い 因 子 と し て , 尿 蛋 白 (F =22.7),
尿α1-Mg(F=13.9),血清 Cre(F=11.4)が選ばれた。
さらに腎生検における間質尿細管障害の程度と尿中 L-FABP の関係を検討
した結果,間質尿細管障害を認めた群では,認めない群に比べて有意に
尿中 L-FABP が高値であった。
これらの結果より,尿蛋白は近位尿細管へのストレスになり,L-FABP の
尿中への排泄を促すことが示唆された。
患者を尿中 L-FABP の高値群(n=8)と低値群(n=6)にわけ血清クレアチ
ニンの経過を 1 年間みたところ,L-FABP の高値群では腎疾患が進行する
患者が有意に多いことが明らかになった。
また,腎疾患の進行度を血清 Cre の逆数(1/Cre)の時間経過における傾き
として定義し,腎疾患進行速度と関係のある臨床パラメーターをステップワイズ
法による重回帰分析で検討すると尿中 L-FABP(F=17.1)のみが有意な
パラメーターであることが明らかとなった。
これらの結果より,尿中 L-FABP は,従来の尿中α1-ミクログロブリンや尿中
NAG といった近位尿細管の構造的な障害により上昇する指標とは異なり,
近位尿細管に負荷されたストレスの程度を反映し腎疾患進行を予測すること
のできる重要な臨床指標であることが示された。
慢性腎疾患の進行は,尿蛋白や血圧と強く相関があることが,広く知られている。
しかし,私たちの検討では,その相関は低値であった。
腎疾患の進行には,尿蛋白や血圧以外にも薬剤や虚血といったさまざまな
ストレスが関与している。
尿中L-FABP は,そのようなストレスを反映している可能性が示唆される。
私たちは,近位尿細管に発現している L-FABPは,近位尿細管に尿蛋白などの
ストレスが負荷されると発現が増強し尿中への放出が増加する事を基礎実験で
明らかにした 。
この結果から,L-FABP は近位尿細管に過剰に負荷された脂肪酸に結合し
これらの脂肪酸をミトコンドリアやペルオキシソームに輸送すると同時に尿中
へ自らを放出することにより細胞内の脂肪酸レベルの恒常性に寄与している
可能性が示唆された。
ただし尿中へ排泄されるL-FABPが脂肪酸と結合しているかどうかはまだ
明らかにされていない。
慢性糸球体疾患で,尿蛋白が多い症例では,近位尿細管にアルブミンだけ
でなく,脂肪酸も過剰に負荷される.このような状況では,マクロファージ遊走
因子が間質に放出され,間質尿細管障害を進行させ,腎疾患が進行する。
L-FABPは,細胞内の脂肪酸と結合し,ミトコンドリアやペルオキシソームへ
輸送することで,また脂肪酸と結合し自ら尿中へ放出することにより,細胞内
の脂肪酸レベルの恒常性に関与すると考えられる。
私たちが従来の使用しているマーカーは,腎組織の構造上の障害の結果,
尿中への排泄が増加する。
例えば,尿蛋白は糸球体障害により,NAGは尿細管障害により,α1-Mg は
近位尿細管での再吸収低下により,尿中への排泄が増加する。
しかし,L-FABP は,近位尿細管に発現している蛋白で,ストレスにより発現
が増加し,尿中への排泄が増加するという今までのマーカーとはまったく異
なる特徴を持っている。

5.まとめ
尿中 L-FABP は,近位尿細管にかかるストレスの程度を反映し,腎疾患の
進行を予測する優れた臨床マーカーであり,さらに腎疾患のモニタリングと
して有効に利用されうると考えられる。
私たちは,尿中 L-FABP を測定することにより,間質尿細管障害の程度を
知ることができ,さらに近位尿細管にかかるストレスの程度を推測できると
思われる。
現在,私たちは,L-FABP の発現を増強することが,近位尿細管における
脂肪酸の負荷を軽減し,腎疾患の進行を抑制する可能性について検討を
行っている。



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# by esnoopy | 2007-11-12 00:05 | その他

インフルエンザの治療はどうします?(その1)1/4

いよいよインフルエンザワクチンの接種もたけなわになってきました。
われわれ医師は、インフルエンザの患者さんが来たら今年はどうしようと考える季節
となりました。
タミフル禍(?)のため昨シーズン終了間際に厚労省は10代のタミフル投与が原則
禁止となりました。
私のような零細開業医はブツブツ言いながらも何かあってはいけないと、この原則
禁止要項には従わざるをえません。
乳幼児や10歳未満の学童は安全なのかという疑問は解決されていません。

さて私たちの疑問に答えるべき特集がタイミングよく出てきました。
Nikkei Medical 2007.11の
  インフルエンザ治療 今年はどうする?
という特集です。
今日から4回にわたって勉強してみます。

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岡 宏 京都鴨川風景
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今年3月、リン酸オセルタミビル(商品名タミフル)の添付文書が改訂され10歳代の
インフルエンザ患者への投与が原則禁止となった(表1)。
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改訂後、初めてのインフルエンザシーズン、診療はどう変わるのか。

ハイリスクなら迷わず使用
日経メディカルが10月中旬、2007/08シーズンのインフルエンザ診療について医師
に聞いたアンケート結果が上のグラフだ。
2剤を使い分けると答えた医師が半数を占めたが、やはり10~19歳の患者に対しては、
「ザナミビル(リレンザ)を処方」が「タミフルを処方」を圧倒した。
一方、患者の年齢別に見ると、若年層で「タミフルもリレンザも使用しない」と答えた
医師が多かった。
タミフル投与が原則禁止となった10~19歳のみならず、1~4歳、5~9歳の患者
に対してもおおむね50%の医師が「使用しない」と回答した。
 
順天堂大小児科准教授の奥村彰久氏は、「患者や保護護者が薬の副作用を心配して
いる場合、元来健康な子どもであれば、抗インフルエンザ薬を無理に飲まなくても、
家で静養していれば治りますよと伝えようと考えている」と話す。

インフルエンザ脳症のリスクが高まるのではとの懸念の声もあるが、「インフルエンザ
脳症は発熱後、急激に起こる。発熱を訴えて外来受診した時点で全身状態が良好なら、
抗インフルエンザ薬を投与するかどうかが脳症の発症に影響するとは、まず考えられ
ない」と奥村氏は見る。

ただし、患者に合併症や既往歴があり、インフルエンザ感染症が長引くことで、重症化
のリスクが高まると判断した場合には、むしろ積極的に抗インフルエンザ薬を使うという。

その根拠は、2005/06シーズンに、厚生労働省の研究班が実施した「インフルエンザ
に伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」だ。
奥村氏も参加したこの研究では「タミフルと異常行動」ばかりが注目を集めたが、実は、
タミフル投与群で明らかに肺炎の発症率が減少していることも示されていた(表2)。
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院内感染防止のツールとして
高齢者のインフルエンザに対しては、アンケートに答たえた医師の9割以上が抗
インフルエンザ薬を使用すると答えた。
基礎疾患の悪化や、肺炎併発への懸念からのようだ。
東京都老人医療センター感染症科・研究検査科部長の稲松孝思氏も、「高齢者の
インフルエンザの発症初期にタミフルやリレンザなどを投与すると、発症を抑えたり、
重症化を抑制できる実感がある」との意見。
ただし、外来患者については、「患者が服用に強い不安を持っているようなら、薬の効果
を説明した上で『飲んでみませんか』と提案する程度が妥当。
投与しないことが死に直結するものではないからだ」とも述べる。

一方で、入院させる患者には、積極的に抗インフルエンザ薬を使用している。
「インフルエンザ感染が院内で広がらないように、通常は個室か専用の病室に
入ってもらうが、抗インフルエンザ薬を投与すれば少なくとも3日で普通の病室に移る
ことができる。
できるだけ多くの患者に対応するために、院内感染防止のツールとして、抗インフル
エンザ薬は引き続き使用する」
(稲松氏)。


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# by esnoopy | 2007-11-10 00:14 | 感染症

糖尿病患者の食事指導におけるアルコールの扱い

糖尿病患者さんの食事指導を行う場合、指導する医師の嗜好が反映されることは禁煙
指導と同様にしばしば経験するところです。
私自身、お酒は決してきらいではありません。
むしろ好きです。
タバコは一切やりません。
したがってアルコールに関する食事指導はついつい甘くなってしまいます。

日本医事新報を見ていたら
 アルコールのエネルギーカロリーをどのように扱うか
           という記事に目がとまりました。
以下、紹介させていただきます。



「1日の総エネルギー摂取量を抑えれば、アルコールを飲んでもよいか」という質問は、
糖尿病食事療法の栄養指導でよく出る質問である。
アルコールは糖から作られるものの、体内ではブドウ糖にならないため、エンプティカロリー
とも呼ばれる。
しかし、アルコールには食欲の増進作用があることから、いくら飲んでも体重に影響がない
とはいえない。
日本糖尿病学会による糖尿病診療ガイドラインでは、アルコールの摂取量の上限を、
エネルギーではなく、アルコール量(1日25g程度を上限の目安)として取り扱っている。
ただし、「スルホニル尿素薬を内服する例では低血糖を引き起こす危険があるばかり
でなく、アルコールを多飲する例では糖尿病の治療に悪影響を及ぼすので、飲酒量を
自分で制限できない例では禁止することが望ましい」としている。
アルコールのエネルギー量は1gあたり7kcalであるが、エネルギー量としてカウント
するよりも、諸外国においてもアルコール量で適量を定めている場合が多い。
例えばアメリカ糖尿病学会では、アルコール15gを1drink(ビール350ml、ワイン150ml、
ウイスキー45ml)としており、食事と一緒に摂取するのであれば、女性は1日1drink、
男性は1日2drinkまでを上限としている。
カナダでは、糖尿病患者のアルコール消費量の限度は、1日のエネルギー摂取量の
5%以下または1日2杯で、いずれにせよ少なめにするように勧めている。
また、アルコールは高血圧の原因となること、中性脂肪を上げやすいこと、つまみからの
塩分およびエネルギーを取りすぎてしまうことなどの弊害に気をつける必要があると考え
られる。
よって、アルコールはエネルギー量よりも重量で換算し、体重・血圧などの管理状況に
よって、つまみの量や塩分に注意する必要があると考えられる。

一方、アルコールが直接血糖値に影響するか、という質問もよく出る。
食品を摂取した後の血糖上昇度合いを示す指標として、glycemic index(GI)という
指標がある。
血糖値は食後に著しく上昇するが、このような食後の血糖値の上昇度合いは、従来は
糖質の量に比例すると考えられてきた。
しかし同じ糖質含有量の食品でも、でんぷんの構造や、調理・加工方法によって、あるいは
他の食品との組み合わせによって血糖上昇の度合いは異なる。

近年、糖質の質的な評価指標としてGIの有効性が注目され、WHO/FAO、オーストラリア
などにおける糖尿病を始めとした生活習慣病の予防・治療のガイドラインにもGIが加えられる
ようになってきた。
WHO/FAOの定義によると、GIとは、糖質50gの検査食摂取後の血糖上昇曲線下面積を、同じ被験者における糖質50gの基準食摂取後の血糖上昇曲線下面積に対する比率で示したものである。

GIに関する研究は欧米が主流であったが、日本人におけるランダム化比較試験による結果
を筆者らが2007年に公表し、GIを用いた栄養教育は、比較的軽度の2型糖尿病および
境界型住民における血糖コントロールの改善に有効であることを明らかにした。
GIは炭水化物を多く含む食品の、よりよい選択肢として利用することが好ましい。
日本人の場合、糖質の摂取源は主食であることから、主食に低GI食品(玄米、麺類など)を
選ぶか、高GI食品(米飯、食パンなど)を摂取する場合には、酢や乳製品など、食後の血糖
上昇を抑える食品を組み合わせることが、食後血糖上昇を抑える食事となる。

一方、アルコール飲料100gあたりに含まれる糖質量は、吟醸酒3.69、ビール3.1g、
焼酎、ウイスキー、ブランデーは0gである。
このように、アルコールはGIを測定することの難しい食品であるため、アルコールを選択
する指標としてGIを用いるのは誤りである。


日本医事新報 No.4357 2007年10月27日

国立保健医療科学院協力研究員  多田由紀先生
神奈川県立保健福祉大学教授   杉山みち子先生

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ジャンセン
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<コメント>
われわれ愛飲家から言わせてもらうと、「アルコールで食欲が出る」という点にはひっかかり
があります。
多分なめる程度の飲酒量では、そうかも知れません。しかしのん兵衛にはその時間は多分ほんのわずかな時間だと思われます。
最近、食後高中性脂肪血症や軽度の尿酸値の上昇も問題となっています。
そういった面からも、アルコールの食事指導の際には患者さんへ説明が要るかも知れません。

血清尿酸値の軽度上昇が脳の白質病変の増加と関連
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-10-22
非空腹時TG値~心血管イベントの指標
http://blog.m3.com/reed/20071019

アルコールよ、君は敵か味方か?
http://www.nikkeibp.co.jp/style/secondstage/kenkou/diabetes_070702.html
アルコールはやっかいな問題
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20020424A/index.htm
アルコールの問題点
http://www.kma.jp/kosino/dm/alcohol.html
アルコールとdiabetes
http://www.somos.co.jp/solution/006.htm
アルコールをよく飲む日本人男性は糖尿病になりやすい
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2005/03/000926.php
食べ物やアルコールについて
http://www.kma.jp/kosino/dm/food_and_alcohol.htm


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# by esnoopy | 2007-11-09 00:05 | 糖尿病

解明進む蛋白尿の分子レベル発現機序

きょうは
第50回日本腎臓学会
の特別講演からの紹介です。

CKDの概念の喧伝(?)により、いまや心血管病変の原流には腎疾患があるという考え方までになってきています。
循環器専門医と腎臓病専門医との間には同床異夢の感もありますがそこは別にして、循環器、腎臓病、糖尿病専門医の共通の話題としての蛋白尿をとりあげてみました。

出典は
Medical Tribune 2007.6.28
です。

解明進む蛋白尿の分子レベル発現機序
スリット膜関連機能分子の同定から相互作用の研究へ

蛋白尿は,最も客観的かつ普遍的な腎臓病の指標として広く用いられてきたが、最近,尿細管間質障害を介して腎病変を進展させること、また心血管障害と密接に関連する重要な因子であることが明らかとなった。
このため、蛋白尿の発現機序を解明し、その発現をコントロールすることは,腎病変の進展とそれに伴う心血管障害の抑制につながると考えられ,腎臓病研究の最も重要な課題の1つとされている。
同学会では,蛋白尿発現の分子機構の解明,新しい腎病変モデルなどを通じて,蛋白尿研究の発展に大きく貢献してきた新潟青陵大学の清水不二雄学長(前新潟大学腎研究施設分子病態学分野教授)が特別講演を行い、分子レベルの蛋白尿発現機序における最近の知見を示した。

スリット膜の関与明らかに
蛋白尿はおもに,糸球体毛細血管壁の蛋白質透過性方;進によって発生する。したがって,蛋白尿の発現機を明らかにするには,まず糸球体が正常な透過性を保つ仕組みを把握する必要がある。
この仕組みに関して,蛋白質の粒子が大きいほど通しにくくするサイズバリアと,大きさが同じであれば陰性荷電が強い蛋白質ほど通しにくくするチヤージバリアの両者によって糸球体透過性が制御されていることが解明された。 
チヤージバリアでは,陰性荷電分子が糸球体毛細血管壁の構成成分に含まれるために,陰性荷電蛋白質の透過性が抑制される。
一方,サイズバリアについては、糸球体基底膜と糸球体上皮細胞(足細胞)足突起間スリット膜のどちらがおもに関与しているか、論争が続いている。
清水学長らは,スリット膜構成分子に対する単クローン抗体をラットに静注すると,著しい蛋白尿が現れることなどを明らかにし,スリット膜における分子機構の異常が蛋白尿発現の重要なメカニズムの1つであることを示唆した。
このことは,フィンランド型先天性ネフローゼ症候群の責任遺伝子産物であるネフリンを同定し,そのスリット膜局在を証明しTryggvasonらの研究によっても確認される形となった。

同定相次ぐスリット膜関連機能分子
スリット膜で機能する分子として,ネフリンに続き,CD2AP,ポド
シンなどが同定されたが,清水学長らも最近、ピュロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)腎症で減少している遺伝子の検索から、Synaptic Vesicle Protein 2B(SV2B)を新しい関連分子として同定した。
これらスリット膜関連機能分子は、機能的複合体を形成してシグナル伝達に働くことが推測されており,現在,こうしたスリット膜関連機能分子の相互作用に関する研究が盛んに進められている。同学長は,その成果として,ネフリンとポドシンの解離が蛋白尿をもたらすこと,あるいは既に蛋白尿抑制作用が明らかにされているステロイドやアンジオテンシンⅡ抑制薬の作用機序として機能分子の発現亢進が認められることなど、さらに新しい知見が蓄積されつつあるとした。
蛋白尿の発現機序において、以上のような分子レベルの異常の関与がわかってきたことから,同学長は「従来の免疫抑制薬や抗炎症薬といった,いわば非特異的な治療法とは異なる透過性障害が起きている現場での原因を問わない直接の修復,すなわち分子レベルでの制御による蛋白尿発現阻止の可能性が示される。
分子レベルの異常に対してどのような直接的な治療アプローチが可能なのか,in vitroの系も加味した今後のさらなる研究の進展が求められる」と指摘した(図)。

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腎臓病と高血圧については他のブログでとりあげさせていただきました。

腎機能低下例における降圧治療(1)
http://blog.m3.com/reed/20071105

腎機能低下例における降圧治療(2)
http://blog.m3.com/reed/20071106

腎機能低下例における降圧治療(3)
http://blog.m3.com/reed/20071107
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伊藤 薫  フラワー シルクスクリーン
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他にもブログがあります。
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# by esnoopy | 2007-11-08 00:05 | その他

ORGとは

ORGはObesity related glomerulopathyの略です。

日本医事新報 4358  2007.11.3の記事から、この耳慣れないORGの紹介です。

慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科  脇野 修 ・伊藤 裕 両先生

肥満症患者の増加に伴い、メタボリックシンドローム(Metabolic syndrome; Mets)、肥満に伴う腎障害が慢性腎臓病(Chronic kidney disease; CKD)の原因として注目を集めている。
肥満に伴う腎障害には大きく分けて二つあり、一つはMetsに合併している糖尿病・高血圧による腎障害であり、もう一つは肥満に固有の腎障害である。
これは組織学的には糸球体肥大と巣状分節状糸球体硬化症(focal segmental glomerulopathy)を特徴としており、Obesity related glomerulopathy(ORG)といわれている。
このORGの概念は1974年、肥満症と蛋白尿との関連が指摘され、初めて報告された。
その後、2001年にKambhamらが、腎生検6818例中のBMI30超の肥満71例の解析を行った。
その結果、ORGは腎生検施行例の2%の頻度であること、1986年から2000年の15年で、倍に頻度が増加していること、原発性のFSGSと比較してネフローゼの頻度が低く、血清アルブミンのレベルは高く、血清コレステロールのレベルは低く、浮腫の頻度が低いことなどが明らかとなり、ORGという疾患概念が確立した。

現在、ORGは
①病的な肥満症(BMI 40超)
②浮腫を認めない蛋白尿
③正常血清アルブミン値

の三つをtriadとし、高血圧による腎硬化症と糖尿病腎症とを除外したものと定義される。
蛋白尿はネフローゼレベルのものから0.5g以下の軽度のものまである。

予後は、以前は良好とされていたが、先述のKambhamらの報告によれば、8年間の観察期間で14%が血清クレアチニン値の倍加、3.6%で末期腎不全への進行が認められたという。
またPragaらは、15名のORGのうち7名(46%)が腎障害が進行し、3名(20%)は血液透析に移行したと報告している。
したがって、必ずしも予後はよくないと考えられる。

ORGの発症機序は不明な点が多い。
糸球体肥大については一酸化窒素(NO)の代謝障害による輸入細動脈の拡張、レニンーアンジオテンシン(RA)系の活性化による輸出細動脈の収縮が糸球体の過剰濾過を引き起こしていることが指摘されている。
また肥満に伴う高インスリン血症がインスリン様成長因子(IGF)-1や-2といった成長因子の分泌を亢進させ、それが糸球体の肥大を引き起こすという報告もある。
肥満における高レプチン血症がtransforming growth factor-β1、(TGFI-β1)の発現を誘導し、これが糸球体肥大を引き起こすともいわれている。

また、原発性のFSGSの発症に腎臓内の虚血の存在が知られており、肥満に伴うことが多い睡眠時無呼吸症候群(SAS)による慢性的な腎臓の虚血がFSGSの原因とも考えられている。
ただし、原発性のFSGSでは虚血に陥りやすい腎臓の皮質髄質の境界にsclerosisの病変が認められるのに対し、ORGではその傾向はないとされている。

治療はまず減量だが、SAS合併例では血液の酸素化の改善とともに尿蛋白の消失も知られている。
脂質低下療法、RA系の抑制が妥当な治療法と考えられている。
 
このようにORGの存在は注目されており、その発症メカニズムの解明は重要である。
近年では低出生体重児との関連が示唆されている。
すなわち、低出生体重児は生後肥満になる可能性が高い上に、ネフロン総数の少ない腎臓となる可能性の高いことが示唆されている。
ネフロン数の減少に伴う腎病変はFSGSであることを考えると、低出生体重がORGの根本原因ではないかと考えられる。

今後の病因の解明と前向き研究を用いたORGの自然歴の解明、そしてその治療法の開発が重要な課題ではないかと考えられる。


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世界の国を肥満率の高い順に並べるとこうなる
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070518_fat_list/
<コメント>
15歳以上でBMIが30%以上の割合は米国で31%、日本は3%です。
ORGのtriadの一つの病的な肥満症(BMI 40超)となると日本ではほぼ皆無と思われます。

ちょいデブが一番健康にいい?
http://wellfrog.exblog.jp/7257657/

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# by esnoopy | 2007-11-07 00:05 | その他

NASHの鑑別・確定診断

日本医事新報4339 2007.6.23よりNASHの紹介です。

NASHの鑑別・確定診断     
鹿大 坪内博仁 先生

1. 肝生検をせずに診断は可能か。
脂肪肝の存在は、腹部超音波検査やCT検査により推定できるが、
NASHの確定診断には肝生検が必須である。
したがって、肝生検をせずにNASHと診断することはできない。
その理由は、NASHは組織学的に肝脂肪化に加えて、肝細胞のバルーニングや線維化を伴っていることが必要であるからである。
血液生化学検査に異常のある脂肪肝では、肝生検を施行することが望ましい。

2. 線維化マーカーを用いることにより、NASHと通常の脂肪肝を鑑別できるか。

線維化マーカーであるⅣ型コラーゲン7Sとヒアルロン酸はNASHでは通常の脂肪肝と比較し、有意に高値を呈する。
また、Ⅳ型コラーゲン7Sが5.0ng/ml以上、ヒアルロン酸が43ng/ml以上では、NASHの可能性が高いことも報告されている。
さらに、これらのマーカーはNASHにおける肝線維化の程度と相関する。
したがって、線維化マーカーを用いることにより、NASHの可能性を推定できるが、やはり正確には鑑別できない。
特に線維化が軽度のNASHでは、鑑別はより困難となる。

3. NASHとインスリン抵抗性との関連は。

インスリン抵抗性は肥満が原因で起こることが多く、肝への中性脂肪蓄積を促進する。
インスリン抵抗性はNASHの最も重要な病態である。
インスリン抵抗性を簡便に判断するHOMA-IR
〔空腹時血糖(mg/dl)×空腹時インスリン値( U/ml)/405)〕は、正常者と比較しNASHでは高値を示す。
明確なカットオフ値はないが、HOMA1IRが3.0以上の場合はインスリン抵抗性の存在が疑われる。
また、単純な脂肪肝からNASHへの進展にインスリン抵抗性は促進的に作用すると考えられている。
しかし、単純な脂肪肝とNASHとの比較で、インスリン抵抗性に差があるかは報告者により意見が分かれる。

4. 例従来、アルコール性肝障害と診断されてきた病理所見を持つ症例で、アルコール摂取のないものをNASHと考えてよいか。

NASHの組織所見はアルコール性肝障害と類似し、両者の鑑別は病理組織所見のみからは困難であるといわれている。
アルコール性肝障害と診断されてきた病理所見を持つ症例で、アルコール摂取歴がなく、ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎など他の病因が否定されればNASHと考えてよい。

5. 肥満をベースとした脂肪肝の症例は多数存在するが、その中か
らNASH症例をいかにしてみつければよいか。


肥満はBMIで判定され、〔体重(kg)/身長(m)2〕で計算し、これが25以上は肥満と定義される。
肥満には内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満があり、前者で脂肪肝患者が多いといわれている。
そのような脂肪肝患者からNASH症例をみつけるには、厳密には肝生検が必須であることは先に述べた通りであるが、血液生化学検査である程度NASHが予想できる。
まず、画像的に脂肪肝を認め、アルコール摂取量が20g/日以下、ALTのほうがASTよりも高値の肝障害が6カ月以上継続、肝炎ウイルスマーカーや自己抗体が陰性、先天性代謝性肝疾患が否定的であれば、NASHを疑う。
特に、血小板数が低下し、肝線維化マーカーが異常高値であれば、NASHが強く疑われる。
また、生活習慣病(高血圧、高脂血症、耐糖能異常)やインスリン抵抗性の存在は、NASHの発症や進展に促進的に作用するため、脂肪肝の患者でこのような合併症があれば、NASHの可能性が高い。

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内田正泰 古里の海 木版画
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ピック病 (その3)

今日はピック病の3回目、最終回です。

ピック病 (その1)
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-11-01

ピック病 (その2)
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-11-02


出典は
日本医事新報4323  2007.3.3
「ピック病の診断」
群馬県こころの健康センター所長  宮永和夫 先生
群馬大学大学院医学系研究科 
  脳神経精神行動学講師      米村公江 先生            です。


PT(ピック病)とAD(アルツハイマー病)の鑑別
臨床症状については、PTでは初老期発症で男性に多く、対人接触の障害、前頭葉障害(性格変化、行動障害)と言語障害(常同言語、語義失語や非流暢性言語障害)がみられるのに対して、ADでは高齢発症で女性に多く、側頭葉障害(エピソード記憶障害と時間の失見当識)と頭頂葉障害(構成失行、空間的失見当識)がみられる。
また画像所見について、PTではCT/MRI検査で前頭葉に限局した萎縮や側頭葉極など先端部の萎縮が、PET/SPECT検査で前頭葉、側頭葉先端部・下面および基底核の血流低下がみられる。
他方、ADではCT/MRIで海馬と海馬傍回の萎縮、PET/SPECTでは側頭葉内側部(海馬領域)、頭頂葉および後部帯状側の機能低下がみられる。
(表3)
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ピック病の症状チェック
PTは非常に特徴的かつ印象的な患者が多いため、一度経験すると、以降の診断は比較的容易になる。
(表4)
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若年認知症「ピック病」で万引き 厚労省が調査
http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY200702250273.html
 「ピック病」と呼ばれる認知症になった公務員らが、症状の一つである万引きをして社会的地位を失うケースが相次いでいる。脳の前頭葉の萎縮(いしゅく)で感情の抑制を失って事件を起こしてしまうためで、犯行時の記憶がないのが特徴だ。しかし、正確に病気を診断できる医療機関は少なく、厚生労働省の若年認知症の研究班も、初めてピック病の実態調査に乗り出した。専門医は「まじめに仕事をしていた働き盛りの人が万引きをして『なぜ』ということがあれば、ぜひ専門の医療機関を受診してほしい」と話している。
http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY200702250273.html
<コメント>
pickという英語に「盗む」っという意味がるのは皮肉なことです。


脳の前頭葉と側頭葉の血流低下と萎縮で起きる認知症は「前頭側頭型」といわれ、うち8割が「ピック病」とされる。
http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY200702250273.html
<コメント>
「前頭側頭型」イコール「ピック病」というわけでもないわけです。
ややこしいですね。


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ピック病 (その2)

昨日に続いてピック病の2回目です。

出典は

日本医事新報4323  2007.3.3
「ピック病の診断」
群馬県こころの健康センター所長  宮永和夫 先生
群馬大学大学院医学系研究科 
  脳神経精神行動学講師      米村公江 先生            です。


(1)FTD全体の臨床的特徴
①発症時から経過全体を通して性格変化と社会的な行動障害が優位であること。
②知覚、空間的能力、行為、記憶という道具的な認知機能は正常か、または比較的よく保たれていること。

(2)FTDの臨床類型
①脱抑制型(disinhibition form)
落ち着きなく、無目的な過活動、冷淡で不関、高度の社会性の喪失、行動異常が目立つ。
原因病巣は前方連合野~辺縁系、前頭葉眼窩面
および内側面である。
位であること。

具体的な症状は以下のようである。
 

A.窃盗、暴力行為や性的逸脱行為などの抑制のきかない行動
a.易怒的、衝動的、短絡的、無分別な行動。
b.意図的・計画的でない蒐集(癖)や万引きなどの行動(自制力低下)。

B.環境依存症候群(environmental dependency syndrome)
模倣行動や利用行動がみられ、言語によって行為の制御ができない。
制止命令に応答しない強迫的
な模倣行動ないし行動抑制障害で
ある。
a.医師や心理士などの試験者のまねをする=手を拳上する、床に座る、机の上に足をのせる、首をかしげる。
b.利用行動=眼前に置かれた道具を強迫的に使用する:櫛があれば髪を梳かす、食品は口に入れる、複数のめがねを手の上に置くと全部をかけようとする。 
c.スイッチをみれば押す、隙間があると物を入れ込む。
d.車のナンバープレートや看板の文字をみると、いちいち読んでしまう。
e.洗濯物が1枚あると、洗濯し、乾燥させた後、再び洗濯機に入れる(再帰的行動)。
もる
f.他患者への質問に答えてしまう。

②無欲型(apathetic form) 
無気力、自発性・意欲の低下、無頓着、融通性なく保続的、早期に失禁あり。
原因病巣は前部帯状回または前頭葉窮りゅう面(背外側面)である。
具体的な症状は以下のようである。
a.自己の衛生や整容・保清ができなくなる。
b.物や出来事に対する興味や関心が低下する。無関心、無頓着、無感動はうつ病と誤診される。
c.平気で会社を早退したり、家庭では家事をまったくしない。
d.社交性がなくなり、引きこもる。
e.無為(abulia)・無動(akinesia)状態になる。
f.指示し続けないと目の前の食事を食べ続けない(運動維持困難)。
g.空腹でも自発的に食べ物を探さない。
h.会話を維持できず、途中で止まってしまう(運動維持困雌)。
i.疼痛に対して反応が低下している、または痛がらない。

③常同型(stereotypic form)
同じ行動や言葉、強迫的で儀式的な傾向がある。原因病巣は下部前頭前野、前部帯状回、線条体
である。
ただし、前頭葉の萎縮は軽く、線条体や側頭葉の萎縮が中心という。
具体的な症状は以下のようである。
a.時刻表的に、規則的で決まった生活をする。
b.同じ食物しか食べない(常同的食行動異常)。
特に甘いものが多い。
c.毎日同じ食事・献立を作る。
d.反復行動をする(反復言語、反復習字)。
e.強迫的な行為があり、制すると苛立ち怒る(ただし、自己内に葛藤はない)。
f.同じ場所や道を散歩ないし徘徊する(周徊ないし常同的周遊)。
g.スイッチの点滅を繰り返す。


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(表をクリックすると拡大されます。)

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(表をクリックすると拡大されます。)

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<コメント>
読んでいて自分にもあてはまる部分があってちょっと考えてしまいました。
皆様はいかがでしょうか。


他にもブログがあります。
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(一般の方または患者さん向き)
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# by esnoopy | 2007-11-02 00:10 | その他

ピック病 (その1)

日本は高齢化社会に突き進んでいます。
その現象に伴い、当然「認知症」というものは増加していきます。
内科医たるものは、いかなる分野であろうとも「認知症」の患者さんとの係わり合いは避けて通れない問題です。
実際、少なくとも知識として「認知症」の方の、ある程度の振り分けができることが実地内科臨床医としての責務と考えあえて取り上げました。

今回はピック病です。
この病気はいまだに世界的に統一された診断基準はありません。
以下は日本医事新報への掲載内容からの掲載です。


日本医事新報4323  2007.3.3

「ピック病の診断」
群馬県こころの健康センター所長  宮永和夫 先生
群馬大学大学院医学系研究科 
  脳神経精神行動学講師      米村公江 先生

はじめに   前頭側頭葉変性症の概念成立までの経過
ピック病の歴史は、チェコスロバキアのプラハあったドイツ人大学の精神科教授アーノルド・ピック(Pick A)が、1892年に言語障害、記憶障害と意欲低下の臨床症状を呈し、剖検下肉眼的に左側頭葉の限局性脳萎縮を認めた71歳の男性を報告したことに始まる。

なお、ピック病が大脳皮質の限局性萎縮とピック嗜銀球とピック細胞の病理組織学的所見を有することを初めて記載したのは、アルツハイマー病(以下ADと略)で有名なアルツハイマー(Alzheimer A)である(1911年)。
また、ピック病の命名は、1926年に満州医大精神科教授の大成潔とドイツ人神経病理学者スパッツ(Spatz H)によりなされた。
その後、ピック病の概念は、行動障害や人格変化などの症状を示す認知症の臨床診断名とする流れと、病理診断名とする流れ(ピック球を認めるものに限定する米国と、ピック球の存在は必要ないとするドイツや日本の病理学者間の意見の対立もあっ
た)に分かれ、定義自体に混乱を含んだまま、近年に至った。
ピック病(ピック型:以下PTと略)を含む前頭側頭葉変性症という症候群/疾患群の概念は、アルツハイマー型認知症の研究に影響を受け、非アルッハイマー型認知症(NADD)をいかに分類するかという試みの中で成立したものといえる。
その契機は、1987年にスウェーデンのルンド大学のブルン(Brun A)とグスタフソン(Gustafson F)らが提唱した非アルツハイマー型前頭葉変性症(frontal lobe degenenation of non-Alzheimer type:FLD)という名称で、ADの病理所見を有せず、かつPTとは区別された非特異的病理所見を有する群の報告からであった。

翌年1988年には、英国のマンチェスター王立診療所神経学部門のニアリー(Neary D)らのグループが、前頭葉型認知症(dementia of frontal lobe type:DFT)という名称で、病理学的限定を受けない前頭葉症状を呈する臨床症状群を提唱した。

しかし、いずれも疾患概念としては定着せず、類似の臨床と病理所見を示す症例が別の名称で報告されることが続いた。

1994年、ルンド大学とマンチェスター大学の両グループは、1986年と1992年に行った国際カンファレンスをもとに、前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobular degeneration:FTLD)という名称で、臨床診断基準とともに3病理類型{ピック型(PT)、前頭葉変性型、運動ニューロン疾患(MND)型}という神経病理学的診断基準を共同提唱し、前方型(前頭葉と側頭葉の両者)萎縮を中心としたNADDを包括的に分類した。

FTD提唱2年後の1996年に、マンチェスター大グループのスノウデン(Snowden JS)らは、前方型萎縮を中心とするNADDに対し、FTDだけでなく失語を伴う認知症{進行性失語型(PA)と意味記憶障害型(SD)}を加え、前頭側頭葉変性症(FTLD)という、より広い包括概念を提唱し、併せてFTDに関しても病理類型とは別に3臨床類型(脱抑制型、無欲型、常同型)を追加した。

これ以降、臨床症状と画像所見に基づいてFTDを臨床類型で区分することが可能になったが、実際は病理類型が先に提唱されたため、病理所見に基づかずにFTDの病理類型の診断名を使用しているのが現状のようである。
さらに、1996年に開催された国際カンファレンスで臨床診断基準の最終的な合意がなされ、
1998年にニアリーらの国際ワークグループにより詳細が報告されたのが、PTを含む症候群/疾患群に関する現在の最上位概念といえる。  

<コメント>
この疾患が神経内科医ではなく、精神科医によって概念が確立されたことに興味を持ちました。
先生方は、猪瀬型肝性脳症という疾患を聞かれたことがあるでしょうか。
レビー小体型認知症もそうですが、いずれも精神科医の業績です。
(この2つには日本の精神科医が大いに関与しています。)
このピック病も含め、まずはそのことに敬意を称したいと思います。

インスリン発見の話のようなドラマチックな歴史を想像しましたが、そうでもありませんでした。
疾患概念の確立に紆余曲折があったことだけがわかりました。
ピック病を深く理解するためには必須の事項と考え、あえて掲載させていただきましたが、いかがだったでしょうか。

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# by esnoopy | 2007-11-01 01:16 | その他

アルコールとGERD

きょうはみなさんがよくご存知の内容になってしまいました。
日医雑誌に掲載された内容なのでご覧になられた先生方も多いことと思います。
GERDに対してはPPIテストが有名ですが、GERDを悪化させてしまう薬剤を
想定することも臨床現場では重要と考えて、あえて紹介させていただきました。
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高齢になると食道裂孔ヘルニアとなる例が増加する.
ヘルニアになると胃酸が逆流しやすくなるため、食後あるいは就寝後に胸やけや
口の苦みを感じ、食事の楽しみや安眠が妨げられ、QOLが低下する。
さらに食生活、体格が欧米人に近づくにつれ,かつて低酸が多かった日本人の
胃酸分泌も高酸傾向にシフトしている。

アルコールは食道粘膜に対する直接刺激によって食道炎を引き起こすのみならず、
食道の運動を低下させ、下部食道括約筋(lower esophageal spincter;LES)
圧を低下させるので、常習飲酒家では胃酸が食道内に逆流しやすくなり、GERDを
合併する頻度が高くなる。

以上のような背景から、GERDは高齢者の生活習慣病として、今後大きな比重を
占め、計画的な対策が必要になると考えられる。
GERDの主症状は胸やけであるが、胸痛を訴えて狭心症との鑑別を要する例や,
胃酸の逆流が慢性咳嗽、気管支喘息の原因となることがある。

さらに、狭心症を疑ってCa拮抗薬や亜硝酸薬を投与したり、気管支喘息と診断して
テオフィリンを投与すると、これらの薬剤はLES圧を低下させるので、GERDによる
胸痛・咳嗽症状がかえって悪化することになるので注意を要する。

また、制酸目的で抗コリン薬あるいは不定愁訴の緩和目的でジアゼパムを投与するとLES圧が低下するので、期待に反して胸やけが増悪することもある

GERDに対する薬物治療としてはプロトンポンプ阻害薬
(proton pump inhibitor;PPI)が有効であり,患者のQOLも改善する。
PPI投与はGERDの治療的診断、狭心症や気管支喘息との鑑別診断にも
有効である。

慶大 永田博司先生
日医雑誌 135;2 2006.5


<コメント>
アルコールはLESを弛緩させます。
特にビールやシャンパンは胃の中で炭酸ガスが発生して胃を膨らませるためよくないようです。

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# by esnoopy | 2007-10-31 00:40 | 消化器科

工藤分類

私は消化器が専門ではありません。
したがって恥ずかしながら工藤先生の名も初めて聞きました。
消化器専門、特に大腸専門の先生には知らない人がいない
という有名な先生だそうです。
WHOでの分類にKudo's Classificationという名前を冠した
分類もあるそうです。
最近、たまたま新聞にその工藤先生が紹介されており、
臨床医としての執念に感動を覚えました。
最初、評価されなかった点ではピロリ菌発見物語にも通じる
ものがあります。

まずは大腸がんについての勉強をしてみました。

06/1/17 上毛新聞
http://takisan.fc2web.com/gan5.htmlの記事からです。

増え続ける大腸がん 10年後 がんのトップに?
定期検査で臓器発見を!
大腸がんになる人が増えている。欧米型の病気とされ、国内
の年間罹患者数は1990年に約6万人だったが、99年には
9万人を超えるなど増加が際立っている。2015年には
胃がんを抜いて、ガンのトップになるとの予測もある。
治療には定期的な検査による早期発見が重要だ。
 
遺伝が原因も
大腸がんが増えているのは高脂肪、高カロリーの食事が増えた
からと言うのが定説だ。
脂肪が肝臓で分解されると、胆汁酸などさまざまな酸が出る。
その酸が腸内細菌と絡んで発がんに至ると考えられてきた。

「しかし動物実験からは、それが原因だと言い切れず、環境的
因子は本当のところ、よく分かっていない」と大腸がんの研究
で世界的に知られる昭和大横浜市北部病院消化器センター長、
工藤進英教授は指摘する。

遺伝が原因だとはっきりしている大腸がんもある。
そうした「家族性」の大腸がんは全体の5〜10%を占めると
みられ、確実に遺伝する。
工藤教授によると、大量のポリープができ、何度も手術を繰り
返さねばならない場合もあるという。

「陥凹型」発見
工藤教授は秋田赤十字病院に勤務していた1985年、
早期の大腸がんの中に隆起型のポリープではなく、隆起はなく
進行とともにえくぼのように潜っていく「陥凹型」があることを
見つけた。
陥凹型は1センチ以下の大きさでも、その45%が大腸の粘膜
下層に浸潤しているという極めて悪性度の高いがんだ。

小さいとエックス線撮影やPET(陽電子断層撮影装置)では
分からず、内視鏡でもうっすら赤く見えるだけで。インジゴ
カルミンという色素をかけると、内視鏡でも見えるようになる。

工藤教授は陥凹型を詳しく調べるため、工学機器メーカー
のオリンパスと倍率百倍の拡大内視鏡を共同開発。
粘膜の凹凸や模様から、ガンかどうかや、ガンの進行を正確
に判定する。「ピットパターン分類」を確立した。

現在は倍率が千倍まで上がる高性能の拡大内視鏡を開発中。
実現すれば、ガンになると細胞の核が大きくなる現象を利用
して、より精密な診断が可能になる。

無駄のない治療
小さなポリープは誰でもあり、中にはがんでないものもある。
「しかしポリープは“がんの目”だと思っているから、内視鏡
の検査のときに、すべて取った後で、病理で検査する。
意味のないことを世界中でやったわけです」と工藤教授。

ポリープを一個取るのにかかる医療費は5、6万円。
拡大内視鏡とピットパターン分類の登場によって無駄が
なくなった。

現在、国内の約半数の施設でこの治療が実施されている。
早期発見のため工藤教授は拡大内視鏡による検査を勧める。
検査にかかる時間は慣れた医師なら20分から30分。
工藤教授は5分で済ませる。


「無症状でも50歳以上になったら1年から3年に1回、
定期的に内視鏡検査を受けた方がいい」。
手軽な便潜血検査では進行がんしか見つからないと言う。


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拡大内視鏡によるsm癌の特徴的所見
http://masumitsu.or.jp/research/3.html

大腸内視鏡治療の新しいパラダイム 大腸内視鏡治療
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2001dir/
n2432dir/n2432_05.htm


大腸内視鏡治療
http://www.igaku-shoin.co.jp/prd/review/
0000305.html


大腸腫瘍に対する拡大内視鏡観察─
V 型 pit pattern 診断の問題点
http://ej.islib.jp/ejournal/1403100457.html

大腸腫瘍性病変における腺口構造の診断学的意義の
解明に関する研究
http://ganjoho.ncc.go.jp/pro/mhlw-cancer-grant
/2005/keikaku/14-11.pdf


V 型 pit pattern 診断の現状と問題点─V 型亜分類に焦点
を当てた多施設アンケート結果から
http://ej.islib.jp/ejournal/1403100460.html


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# by esnoopy | 2007-10-30 00:05 | 消化器科

降圧療法中に発症する新規の糖尿病

降圧剤がもし糖尿病を誘発するようなことがあればそれはそれで
大問題です。
サイアザイド系利尿薬では以前から問題になっていましたが、
はたして他の薬剤はどうでしょうか。


日本医事新報4336  2007.6.2 の
「海外情報セレクト」コーナー
                 からの紹介です。


降圧療法中に発症する新規の糖尿病
Elliot WJ,et al:lncident diabetes in cIinical
trials of antihypertensive drugs:a network
meta-analysis. Lancet369:201-207,2007.

 
近年、優れた降圧薬が多数開発されたことから、高血圧治療に際し血圧
を低下させることは比較的容易となった。
そのような進歩に伴い、降圧の質が求められるようになり、臓器保護効果
や代謝面への優れた効果が期待できる降圧療法が望まれている。

本研究では、最近注目されている降圧薬の糖代謝への影響、特に降圧
療法中に生じる新規の糖尿病発症率をメタ解析により検討した。
降庄薬の効果に関する大規模臨床試験成績の中から、対象患者数、
試験方法、治療期間、結果の評価等に関して評価できる論文22を抽出し、
メタ解析した。

対象者数は14万3,153名である。
その際、各降圧薬の効果を直接および間接的に比較するネットワークメタ
解析という新しい手法で解析され、サイアザイド系利尿薬による新規の糖
尿病発症率を1として、他の降圧薬による発症率と比較した。
その結果、糖尿病の発症頻度が最も少ないのがARBで0.57、次いでACE
阻害薬0.67、Ca措抗薬0.75、プラセボ0.77,β遮断薬0.90の順であった。

これは、これまでの日常臨床で予測されていた通りで、レニン・アンジオテン
シン(R-A)系抑制薬が他の薬剤より優れており、糖代謝に対して中立とされ
るCa拮抗薬はプラセボと同等であった。
本研究ではARBがACE阻害薬より優れた結果であったが、両薬剤を比較
した研究はなく、間接的な比較であったことから、今後の検討が必要である。

日本で最近発表されたARBとCa措抗薬の比較試験で、ARBではCa
拮抗薬より有意に糖尿病の発症が少ないことが明らかにされており、R-A
系の抑制は糖尿病の発症を抑えることは確かと思われる。
このような新規の糖尿病の発症抑制が、心血管系イベントの発症抑制に
連携しているのか明らかでなく、長期間の観察結果が待たれる。

慶應義塾大学名誉教授・
      済生会中央病院特別顧問
                  猿田享男

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<コメント1>
ARBがACE阻害薬より優れた結果であったとのことですが、優位差
があったのかどうか。
もしARBが優位ということであれば、ACE阻害薬に対する優位性が咳の
副作用がないということ以外にはなかなかないARBにとっては朗報です。

<コメント2>
ARBのポジションが糖尿病の新規発症を抑制しているのか、新規発症を
誘発するがサイアザイド系利尿薬より少ないだけのことか。
ここのところは是非知りたいところです。
最近発売された降圧剤のプレミネント(ARBと降圧利尿剤の合剤)もしばらく
は慎重に催糖尿病作用がないか注目したいと思います。

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# by esnoopy | 2007-10-29 00:49 | 糖尿病

インパクトファクター

自宅で銀行のAさんと話をする機会がありました。
話は格付機関の話になりました。
ムーディーズやスタンダード&プアーズという格付け会社の名前は皆さんご存知のはずです。

行員Aさん「スタンダード&プアーズって標準と貧乏、つまり中流と極貧。考えてみると変な会社名ですよね。」
私「人名じゃないの? よく外国では二人の名前つけるから」
行員Aさん「でもプアーズって名前っていくらなんでもありですか?」
私「そりゃそうだけど。日本人の名前でそんな名前思いあたらないよね。ところで格付機関の格付けはどこでやってんの?」
行員Aさん「?!?!」

格付機関(格付会社)リンク集
carsensor.net/catalog/mitsuoka/
今では大学も格付けされる時代になっています。
中には怪しげな格付けもあります。

民間機関による大学格付け(ランキング)
http://homepage3.nifty.com/katu-kobayashi/doppo/rankingu_1.htm
大学格付け決定版
http://www.geocities.jp/daigakuranking/
米誌の大学「研究力」格付け、東大16位
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060913ur03.htm

格差社会、格差会社、格差大学・・・・。

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さてそんな話をしていて、医学雑誌の格差すなわち「格付け」に思い当たりました。
医学研究者にとっては生命線ともいえるインパクトファクターです。

Impact Factorとは1論文あたりの引用回数の平均値を計算したもので、その雑誌の影響力を表しています。インパクトファクターが高いほど、影響力の高い論文を収録していると言えます。雑誌の発行形態や発行の規模の違いに関わりなくその雑誌の影響力や重要度がわかります。2005年のインパクトファクターは次の計算式で算出されています。

1999年のインパクトファクター=(2003年と2004年にある雑誌に掲載された論文が1999年に引用された総被引用回数)/(2003年と2004年にある雑誌に掲載された論文総数)



インパクトファクターの計算式を見てわかるように、インパクトファクターは2年間という短期間のあいだに引用された回数で計算していますので、すばやく影響力を与えるような雑誌の方が値が高くなる傾向があり、長年にわたって少しずつ引用されるような雑誌は相対的に値が低くなります。
また、「インパクトファクターが指標として正しくない」と批判する人が指摘するのは、レビュー論文を多く載せている雑誌の方がインパクトファクターが高くなりやすいということです。たとえば、Annual Review ofシリーズはどの分野でも高いインパクトファクターになっていますし、レビューが多いCell系の雑誌もインパクトファクターが高くなっています。

最近では、教授選考の際にインパクトファクターの合計点でアシキリするようなケースもあるそうで、研究者にとっては好む好まざるとに関わらず、ついて回る指標になってきています。

インパクトファクターとは?
http://www.kenkyuu.net/biotech-01.html
(上の文章はこのサイトから引用させていただきました。)

インパクトファクター
http://www.thomsonscientific.jp/products/jcr/support/faq/
(質疑応答形式で書かれています。)
インパクトファクター
http://ja.wikipedia.org/wiki/インパクトファクター
(インパクトファクターの長所、誤解、批判が書かれています。)
インパクトファクター関連論文
http://www.thomsonscientific.jp/resources/if/
(8つのインパクトファクターに関する論文が紹介されています。これらの論文が掲載された専門誌にもインパクトファクターがつくわけです。)
<コメント>
こんなことを気にする時間があったら研究の時間に回す。
おっしゃる通りですが、教授がインパクトファクター至上主義で決まるとしたら教授を目指す人にとっては看過出来ないのがこのインパクトファクターです。
いろいろ問題も含んでいるだけに悩ましいですね。
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NEJMの広告に出ていたインパクトファクターです。

他にこんなブログもあります。
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
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# by esnoopy | 2007-10-27 00:43 | その他

ちょいデブが一番健康にいい?

わが国の健康に関する話題はメタボ一色です。
日本人の体格は向上しています。
男子で185cmと160cmの人とで同じ腹囲85cm以下という基準っておかしくありませんか?
最近、全死亡で調べると若干肥満傾向の方がいいという結果が出てきています
総コレステロールについてもそのようなことがいわれておりあながち「ちょいコレ、ちょいデブ」は間違っていないことになります。
185cmで腹囲80cm。
内臓脂肪のことはさておいて、BMIはいくつぐらいになるのでしょうか。

まずは

冠動脈疾患診療におけるメタボリックシンドロームの意義
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir
/n2746dir/n2746_02.htm

というすばらしい内容の書かれたサイトの一部紹介です。
ご本人の了解をいただかないままアップさせていただきますがリンクという考え方でお許し下さい。
久しぶりに中身の濃いサイトに巡り会いました。

最初の部分 略

一つの症候群としてのメタボリックシンドロームの概念と診断基準はまだ新しいものであるため,その疾患概念や診断基準に疑念を呈する意見も聞こえてくる。
ここでは,私たちが日頃,冠動脈疾患の診療を行っている現場での実感や,自身や他施設による臨床研究の結果から,冠動脈疾患診療においてメタボリックシンドロームをどう扱うべきか,その意義について考えてみたい。
<一次予防コホートにおいて肥満は重要な危険因子>
 メタボリックシンドロームといえば,その診断の基本条件となる内臓脂肪型肥満がまず頭に浮かぶが,古典的な冠危険因子で,永年にわたり幾多の疫学研究でその意義が検討されてきた肥満の危険因子・予後予測因子としての役割はどのように考えられているのか。
肥満の危険因子や予後規定因子としての役割を考える場合,その他の患者背景が重要な意味を持つ。
患者が冠動脈疾患を持たない危険因子保因者,すなわち,一次予防コホートに属するのか,すでに冠動脈疾患を有する二次予防コホートに属するのかで,肥満の危険因子/予後規定因子としての意義が違ってくるようだ。
多くの臨床研究結果からも,肥満が冠動脈疾患の一次予防における有意な危険因子であることは疑いの余地がない。
とりわけ若年者では,肥満は重要な危険因子であり,若年発症冠疾患患者では,年齢,性別が揃った健常者や中高齢冠疾患患者に比べて,有意に肥満者が多いとする報告が多い。
しかし,高齢者における冠危険因子としての肥満の意義に関しては,若年者の場合ほど明確で一貫性のあるデータが示されているわけではない。
<二次予防コホートでは肥満の予後への影響は不明>
二次予防コホートにおける心血管イベント再発や全死亡,心血管死の予後規定因子としての肥満の役割を考えた場合には,その意義にはさらに疑問が生じる。
冠血行再建術を施行された患者や心筋梗塞後の患者を対象に,その中・長期予後規定因子を解析してみると,肥満者(多くの場合,BMI高値が基準)のほうが,生命予後が良好であることが繰り返し報告されている。
実際,私たちが30施設での2000〜02年の3年間の初回冠血行再建例9877例を対象に,平均3.5年追跡し予後規定因子を解析したCREDO-Kyoto研究の結果でも,BMI≧25kg/m2の患者はBMI<25kg/m2の患者よりも予後良好であり,この結果は,悪性腫瘍合併例を除外し一般的な冠危険因子を変量に加えて補正した多変量解析を行っても同様であった。
もちろん,メタボリックシンドロームにおける内臓脂肪型肥満は,BMIを基準とした肥満と同じものではない。
冠動脈疾患の二次予防における予後予測因子としての意義について,メタボリックシンドロームの合併は急性冠症候群患者の不良な予後の予測因子であるとする報告が見られるが,糖尿病合併急性冠症候群患者の生命予後が不良であることが知られているように,そこでは耐糖能障害の存在が大きな意味を持つのかもしれない。
また,肥満の場合と同様に,死亡,心血管死などのハードエンドポイントに関する予後規定因子としてのメタボリックシンドロームの役割が,高齢者など患者群によって変わってくる可能性も否定できない。
したがって,二次予防コホートにおける肥満やメタボリックシンドロームの予後への影響に関して不明な点が残された現状では,メタボリックシンドロームを単なる肥満と明確に区別する必要がある一方で,冠動脈疾患の一次予防と二次予防における危険因子・予後規定因子としてのメタボリックシンドロームの意義も必ずしも同じではない可能性を認識しておくべきあろう。
また,内臓脂肪型肥満に加えてメタボリックシンドロームの診断基準に含まれる高血圧,脂質代謝異常,糖代謝異常は,それら自体が重要な冠危険因子であるため,メタボリックシンドロームを疑う患者では,肥満以外の基準を正しく診断することが重要である。
二次予防コホートでメタボリックシンドロームに治療介入を行う場合に,肥満そのものに対しての介入のイベント抑制効果を証明することは難しく,この点からも他の介入可能な危険因子を生活習慣の改善と薬物治療で厳格に管理することが必要とされる。



<個々の危険因子の積極的管理が今後も重要>
以上,冠危険因子の重積は冠動脈疾患の予防における重大な問題であるが,何か一つの原因を取り除くことにより複数の危険因子を十分に管理することは難しく,心血管イベント予防のためには,個々の危険因子を厳重に管理する姿勢が大切である。メタボリックシンドロームの管理に関しても同様のことが言えるであろう。
このように,将来まったく新しいメタボリックシンドロームの治療薬が登場し,複数のリスクファクターを一つの治療ターゲットで十分に管理できるようにならないかぎり,冠イベント抑制のための薬物治療は個々の危険因子管理に最適と思える薬剤を併用していくことが基本であると私たちは考えている。
その際に,メタボリックシンドロームの概念は,特に一次予防コホートにおいて,個々の危険因子のリスクが一見小さく見える早期から薬物治療も考慮した介入を行う機会を与えてくれるという意味で,非常に有益である。
もちろん,その前に生活習慣の改善が必須であることは言うまでもない。

<コメント>
御用学者でない(?多分)先生の書かれた内容は実に爽やかです。
いつまでも薬業界に染まらないことを祈るばかりです。

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マティス 『青いドレスの女
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そして最新の論文です。

Am J Med. 2007 Oct;120(10):863-70.
Obesity paradox in patients with hypertension and coronary
artery disease.
Uretsky S et al.

PURPOSE:
An obesity paradox, a "paradoxical" decrease in morbidity and mortality with increasing body mass index (BMI), has been shown in patients with heart failure and those undergoing percutaneous coronary intervention.
肥満パラドックス、すなわちBMIが高いほど心不全の死亡率やPCIの施行率が減少することがわかっている。

However, whether this phenomenon exists in patients with hypertension and coronary artery disease is not known.
しかし、この現象が高血圧やCAD患者にもあてはまることなのかは知られていない。

METHODS:
A total of 22,576 hypertensive patients with coronary artery disease (follow-up 61,835 patient years, mean age 66+/-9.8 years) were randomized to a verapamil-SR or atenolol strategy.
CADを有する22,576例の高血圧患者を徐放性ベラパミルとアテノロールにふりわけて服用。
Dose titration and additional drugs (trandolapril and/or hydrochlorothiazide) were added to achieve target blood pressure control according to the Sixth Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure targets.
JNC6の基準を満たす血圧になるまで、2種類の降圧剤の増量やトランドラプリルや降圧利尿剤(ヒドロクロロチアジド)の追加を行った。
Patients were classified into 5 groups according to baseline BMI: less than 20 kg/m2 (thin), 20 to 25 kg/m2 (normal weight), 25 to 30 kg/m2 (overweight), 30 to 35 kg/m2 (class I obesity), and 35 kg/m2 or more (class II-III obesity).
BMIの程度に応じて5つのグループに分類された

The primary outcome was first occurrence of death, nonfatal myocardial infarction, or nonfatal stroke.
一次エンドポイントは死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中であった。

RESULTS:
With patients of normal weight (BMI 20 to<25 kg/m2) as the reference group, the risk of primary outcome was lower in the overweight patients (adjusted hazard ratio [HR] 0.77, 95% confidence interval [CI], 0.70-0.86, P<.001), class I obese patients (adjusted HR 0.68, 95% CI, 0.59-0.78, P<.001), and class II to III obese patients (adjusted HR 0.76, 95% CI, 0.65-0.88, P <.001).
BMIが正常の患者に対して肥満(BMI別)患者では一次エンドポイント(死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の発生率が有意に少なかった。
Class I obese patients had the lowest rate of primary outcome and death despite having smaller blood pressure reduction compared with patients of normal weight at 24 months (-17.5+/-21.9 mm Hg/-9.8+/-12.4 mm Hg vs -20.7+/-23.1 mm Hg /-10.6+/-12.5 mm Hg, P<.001).
BMIクラス Iの軽度の肥満患者は、2年間の観察で、BMI正常患者より血圧の改善率は低かったが死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中は一番少なかった。
CONCLUSION:
In a population with hypertension and coronary artery disease, overweight and obese patients had a decreased risk of primary outcome compared with patients of normal weight, which was driven primarily by a decreased risk of all-cause mortality.
高血圧や冠動脈疾患の肥満患者は体重が正常の場合の患者と比較して全死亡率が低い。
Our results further suggest a protective effect of obesity in patients with known cardiovascular disease in concordance with data in patients with heart failure and those undergoing percutaneous coronary intervention.
われわれの研究結果から従来の心不全やPCIの成績と同様に、肥満がCVDに対して保護的な意味を持つことが示唆された。
世界の国を肥満率の高い順に並べるとこうなる
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070518_fat_list/
メタボリックシンドロームと腹囲論争
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-10-25

<コメント>
なぜちょいデブがいいのか考察はされていませんが、こんな論文を読むとダイエットが出来なくなってしまいます。
ちょっと考えるとBMIの正常値を少し上げればいいだけのような気もしますが、いかがなものでしょうか。
昨夜、COPDの勉強会に出席しました。
ちょっと本題からはずれるかも知れませんが、この領域でも体重維持の重要性が強調されていました。

非常に冗長な内容になってしまいましたが、一連のメタボキャンペーンの一つのアンチテーゼと受け取っていただけると幸いです。

長文を読んでいただいてありがとうございました。
コメントをお待ちしています。
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# by esnoopy | 2007-10-26 00:11 | 循環器科

メタボリックシンドロームと腹囲論争

女性の腹囲は80センチを基準に メタボ診断で、東北大発表
東北大大学院薬学研究科の今井潤(いまい・ゆたか)教授らのグループは18日、
メタボリック症候群の診断基準になっているウエストサイズ(腹囲)について「男性87
センチ、女性80センチが適切な基準値」と発表した。
厚生労働省は腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、さらに高脂血、
高血圧、高血糖の2つ以上に当てはまるかどうかを基準としている。
女性の腹囲を男性よりも大きく設定していることには、異論も出ていた。
研究グループは「女性の腹囲は引き下げが必要ではないか」と指摘。
25日から沖縄県で開かれる日本高血圧学会で発表する予定。
研究グループは、2000-06年にかけて、岩手県花巻市大迫町の男女約400人
(平均63歳)に健康診断を実施。
血圧などの健診データを分析し、メタボリック症候群に該当する人を見つける上での
最適な腹囲の値を導き出した。
現行の診断基準は、日本高血圧学会などが作成、05年に発表した。
その後、国際糖尿病連盟が「男性90センチ、女性80センチ」を発表するなど諸説
出ている。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&articleId=58284
記事:共同通信社   2007年10月19日
<コメント>
もともと体格の差を考慮せずに絶対値で論ずることには無理があることは素人にでも
わかることです。
他国と異なり日本だけ、男性に厳しく女性に甘い腹囲の基準も説得力がありません
でした。
「腹囲の基準」は「メタボリックシンドローム」の必要条件だけにとても重要です。
地道な研究から学会に叛旗を翻した発表に敬意を表したいと思います。
以前、日本動脈硬化学会が作成した「コレステロール治療目標値220mg/dl」に対して
J-LITがAHAで240mg/dlと発表し、あわてて治療目標値を変更したことを思い出して
しまいました。

「メタボリックシンドローム」。何だか胡散臭い。

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横山申生 モレ―の村 P10号
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「男85センチは平均的」
おなかに脂肪がたまるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、通称メタボ)の
診断基準を巡り、専門家から異論が相次いでいる。
基準の一つであるウエストサイズ(腹囲)が、女性で90センチ以上なのに対し、
男性は85センチ以上と、諸外国に比べても厳しいなどが理由だ。
この症候群の人を見つける「特定健診・保健指導」が来年度に始まるが、
「これでは健康な人まで『異常』と判定される」との指摘もあり、日本肥満学会などは
今後、診断基準に関する委員会を開き、基準の見直しの必要性を検討するとしている。
 この症候群は、腹囲に加え、血圧、空腹時血糖、血中脂質のうち2項目以上で
異常があった場合に診断される。特定健診・保健指導は、40〜74歳が対象で、
現在の健診の項目に腹囲測定が新たに加わる。
内臓脂肪は、内臓の周りにたまる脂肪のこと。画像診断で、へその位置の胴回りの
内臓脂肪面積が一定以上の場合、糖尿病や心筋梗塞(こうそく)などを引き起こす
恐れが高まるとして、日本肥満学会などが、内臓脂肪面積を基に腹囲の基準を定めた。
だが、国際的にみても、男性の方が厳しい基準となっているのは日本だけだ。
米国の指針では、男性102センチ超、女性88センチ超を腹囲の基準としている。 
約160の国と地域の医師らで作る国際糖尿病連合の基準では、欧州で男性94センチ
以上、女性80センチ以上、中国・南アジアは男性90センチ以上、女性80センチ以上だ。
日本人についても今年、男性90センチ以上、女性80センチ以上との基準を打ち出した。
同連合副会長で中部労災病院(名古屋市)の堀田饒(にぎし)院長は「男性の方が女性
より厳しいのはおかしい。
腹囲が85センチぐらいの男性は平均的で最も多く、健康な人でも基準に引っかかる
恐れが強い」と指摘する。
<コメント>
ごもっとも。

診断基準をまとめた住友病院(大阪市)の松沢佑次院長は「腹囲の基準を超えたら病気、
基準以下なら健康ということではない。女性の基準値が緩いのは皮下脂肪が多いため。
女性の方が心筋梗塞などは少なく、現時点では大きな問題はない」としながらも、
異論があることを考慮し、「今後、診断基準の見直しの必要性を検討する」と話している。
<コメント>
相変わらず頑張ってます。
何のエビデンスもなく数字を具体的にあげれる態度は、科学者としてまことに立派(?)
です。
ウエスト/ヒップ比では内臓肥満を診断できないでしょうか。
論文でこの数値の方が肥満の検出については有用という論文があったのですが。

(2007年10月14日  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071014-OYT8T00078.htm?from=goo

メタボ腹基準、緩めません…男性85センチ  肥満学会が見解
男性に厳しく女性に甘いメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の腹囲による
国内診断基準が、世界標準と大きく異なる点について、基準策定の中心となった
日本肥満学会は19日、「基準を変える必要はない」との見解を公表した。
内臓の周りに脂肪がたまるメタボリックシンドロームの診断基準は、腹囲が「男性
85センチ以上、女性90センチ以上」の条件を満たした上で、血圧、血糖値、血中
脂質の値のうち2項目が基準を上回ること。来年度から40歳以上を対象に始まる
特定健診では、メタボリックシンドロームやその予備軍と診断された人は、生活習慣
病予防のための特定保健指導を受けることになる。
しかし、米国の肥満基準は腹囲が「男性102センチ超、女性88センチ超」で、世界的
には男性の方が緩いのが普通。特定健診の導入を半年後に控え、基準の妥当性を
疑問視する声が出ていた。
これに対し同学会の松沢佑次理事長は、「内臓脂肪の量から腹囲基準を決めたのは
日本だけ。単なる肥満基準とは違う」と診断基準の妥当性を訴えた。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071020-OYT8T00067.htm
<コメント>
なんじゃこりゃ。

メタボリックシンドロームの“つくられ方”:意外とあいまいな診断基準
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz06q3/507698/index.html
ウエスト・ヒップ比
http://www.kms.ac.jp/~hsc/izumi/taikei/west_hip.htm
肥満 BMI (Body Mass Index) ウエスト/ヒップ比
http://plaza.umin.ac.jp/~jnhs/newsletter/GNHS01NL02.pdf
肥満の判定はBMIよりウエスト/ヒップ比で
http://kudamononet.com/LifeStyle/medical/diet/obesity_6.html
他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)

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# by esnoopy | 2007-10-25 01:37 | その他

アルツハイマー病 3療法同時並行

運動・娯楽・人づきあい 3療法同時並行
        アルツハイマー病 予防・改善に効果
 
埼玉医科大学の森隆准教授らの国際チームは運動と娯楽、社会的なコミュニケーション
の組み合わせが、アルツハイマー病の予防や改善に大きな効果があることをマウスの
実験で突き止めた。
それぞれの療法を単独で実施するよりも同時並行で実施する方が原因物質が減少し
認知機能の回復が顕著に表れた。
アルツハイマー病には決定的な治療法がなく薬剤も限られる。
ゲームや音楽などを楽しむ娯楽療法で認知機能を刺激したり食事・運動習慣を改善
したりして、症状の進行を遅らせようと試みているのが現状。
研究チームはアルツハイマー病のマウスを4つのグループに分けた。
「一匹で飼う」「複数で飼う」「複数で飼い、運動させる」の3グループに対し、「複数で飼い、
おもちゃを与えて運動もさせる」グループのみ、脳内の原因タンパク質「アミロイドベーター」
が大幅に減少。
認知機能も回復した。
森准教授は「運動娯楽に加え、家族が一緒に食事することや外出を促すことを心がけるべき」と話している。
日経新聞 朝刊 2007.10.22 より

<コメント>
「決定的な治療法がなく薬剤も限られる」・・・新聞記者にかかると一刀両断です。
新聞の見出しを見た時、臨床研究と思いました。
マウスの実験で「娯楽」「人づきあい」と書かれていた時にはちょっとびっくりしました。
マウスでこの2つが分かるのかと。
1匹で飼うと運動量は少なくなります。
複数で飼えば当然運動量が増え、おもちゃも与えればさらに運動量が増える。結局
運動量と予防・改善効果をみているだけということにはならないのでしょうか。
さてマウスに与えたおもちゃとは?
そして社会的なコミュニケーションとは闘争なのか?恋愛なのか??協調なのか???
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油絵 平松譲 風景画 F10号
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<アルツハイマー関連サイトの紹介>
誕生近し!アルツハイマー薬
http://allabout.co.jp/family/care/closeup/CU20041231A/
アルツハイマー病に対して有効で安全性の高いDNAワクチンを開発
http://www.igakuken.or.jp/kenkyu-katudo/press/060620.html
アルツハイマー病ワクチンはパッチ剤形式が安全
http://health.yahoo.co.jp/news/detail?idx0=w14070202
アルツハイマーに朗報
アイルランドの製薬会社、世界初ワクチン開発
http://www.boxweb.co.jp/hospital/news/000712_arutu.html
(2000.7.12の新聞記事からです。)
アルツハイマー病に対するワクチン治療法の進歩
http://tsubasa.gr.jp/118.html
アルツハイマー病のおきるしくみと治療/現在と将来
http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/books/tihou_pdf/24.pdf
<コメント>
アルツハイマーの治療に関してはいろいろ話題があるようです。
7年以上も前からワクチンが開発されているようですが実用化はどうなっている
のでしょうか。
副作用の問題もいろいろあるようですが、何だか出ては消えるインスリンの注射
以外の投与法の話のようです。
今まで何度期待を裏切られたことか。
しばらくは塩酸ドネペジル(アリセプト)も安泰といったところでしょうか。

アルツハイマー病のワクチンについては後日また触れさせていただきます。


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<追記>
週刊朝日11月2日号(p118〜124)に興味深い記事が掲載されていました。
(以下次号ということなので第二弾もあるようです。)
題して「お役人の超高収入アルバイト」
厚労省の医師の原稿料、講演料が生々しく数字入りで公表されています。
これから講演を聴く際の参考(?)にもなります。
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# by esnoopy | 2007-10-24 00:42 | その他

軽度認知障害(MCI)

きょうは正常と認知症のボーダーラインの状態について勉強してみました。
おそらく個人差のあることや加齢現象との区別が困難なことが予想されます。
もともとボーッとした人はどうやって診断するんだという声も聞こえて来そうです。


軽度認知機能障害(Mild cognitive impairment,MCI)は,正常と痴呆の間に位置する知的グレイゾーンとしてクローズアップされてきた概念である.
MCI には臨床的にも病因論的にも多様性があり,種々の痴呆症に進行しうる前駆段階を含む状態と考えられる.
これまでにも,Age-associated memory impairment やAge-associated cognitive decline などの概念も提唱され,研究者の間でも,正常と痴呆の間のBorderlineを加齢の延長線上にとらえる(Normality model)か,疾患の始まりとして位置づける(Pathology model)かの立場の違いが存在する.
東北大学老年内科におけるもの忘れ専門外来における経験から,医療機関を受診するMCI 患者の約70% は進行性に認知機能が低下し,脳脊髄液タウ値が高く,アルツハイマー病(AD)の前駆段階と思われ,実際MCI からAD への年間転化率は約15% であった(Progressive MCI,進行型MCI).
一方,他の30% は認知機能障害に進行がみられず,脳脊髄液タウ値が正常範囲内でMRI において脳室周囲白質病変が比較的高度であった(Stable MCI,非進行型MCI).
この脳室周囲白質病変には,Vascular risk factor や年齢が関連していた.

軽度認知機能障害と痴呆症の早期診断
http://www.med.or.jp/jams/symposium/kiroku/125/pdf/125021.pdf
東北大学大学院医学系研究科先端漢方治療医学荒井啓行教授
             より転載させていただきました。


軽度認知障害の診断とその意義
●軽度認知機能障害(mild cognitive impairment;MCI)は、多様な原因から生じる「正常でもない、認知症でもない」状態を指す用語である。
あるいは、物忘れなどの認知機能障害が軽度であるものの、日常生活は自立している状態と言い換えることもできる。
●健忘型MCI(多くはアルツハイマー病に進行する。)
 非健忘型MCI(前頭側頭型認知症やレビー小体を伴う認知 症などに移行する。)
●進行するMCI(アルツハイマー病や前頭側頭型認知症など の神経変性疾患や血管性認知症)
 進行しないMCI(脳室周囲白質病変や微小梗塞のある血管 障害、薬物性)
●臨床的に重要なのは「治療可能なMCI」を早期発見すること。
●ロッテルダム研究
糖尿病であることは(血管性認知症はもちろん)、アルツハイマー病の発症リスクも約2倍上昇することが示され、特にインスリン治療を受けている糖尿病患者では、アルツハイマー病発症のリスクは約4倍上昇していた。
(糖尿病と認知症については、また機会を改めて考えたいと思います。)
●スタチンを服用している高脂血症患者からのアルツハイマー病の発症が有意に低いという報告がある。
●適度な運動、魚の摂取が認知機能の維持に有効という報告がある。

<コメント>
「ロッテルダム研究」を検索すると実にさまざまな成果が出て来ます。
またロッテルダム研究については私の宿題とさせていただきます。


参考
日本医事新報4356 2007.10.20p89
荒井啓行先生

MCI(mild cognitive impairment;軽度認知機能障害)の概念と認知症予防としての生活習慣病対策が持つ可能性
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2006dir/n2664dir/n2664_04.htm
軽度認知機能障害と痴呆症の早期診断
http://www.med.or.jp/jams/symposium/kiroku/125/pdf/125021.pdf
(最初に転用させていただきました。MCIのすべてが学問的に記載されています。)
認知症は予備軍のうちに見つけよう
http://www.healthist.jp/news/175_02/02_01.html
進む画像による早期診断 アルツハイマー型痴呆 脳血流を解析して判定
http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/1005chihou.html
[PDF] 認知症予防・支援について
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/11/dl/tp1101-2h.pdf
若年性アルツハイマー|もの忘れドック-武田病院画像診断センター
http://monowasure.jp/demantia/young.html
“ありふれた薬”に意外なリスク 抗コリン剤を継続使用の高齢者、8割に軽度認知障害
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/421457.html
(「後で入力する」をクリックして下さい。)
東北大学病院 老年科
http://www.hosp.tohoku.ac.jp/sinryou/s07_rounen.ht
ミニメンタルステート検査
mlhttp://ja.wikipedia.org/wiki/ミニメンタルステート検査
認知障害なんでもサイト
http://www2f.biglobe.ne.jp/~boke/boke2.htm

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日本芸術院賞 仏芸術院賞 岡田又三郎 街並 30号
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<関連メディカルニュース>
Donepezil for the Treatment of Agitation in Alzheimer's Disease
ドネペジルはアルツハイマー病患者の興奮を改善せず認知機能改善には有効
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200710/504370.html
(「後で入力する」をクリックして下さい。)

Treatment of Agitation in Alzheimer's Disease
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/357/14/1382
(NEJMに掲載された抄録です。)


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
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# by esnoopy | 2007-10-23 00:13 | その他

血清尿酸値の軽度上昇が脳の白質病変の増加と関連

<要旨>
血清尿酸値が正常範囲内でも高めであると、小さな無症候性脳虚血があったことを示す
白質病変(WMH)の量が多い。

●尿酸には抗酸化作用があるが、高値の場合は脳卒中など心血管疾患のリスクと関連する。
●高齢者では血清尿酸値が正常値であっても高めであると、軽度の認知機能障害のリスク
上昇と関連があるとされている。
●20〜92歳の177人を対象に、血清尿酸値と頭部MRIのT2強調画像で高信号域として描出されるWHM の量との関連を検討した。
●血清尿酸値が正常範囲内で低め〜中程度の群と比べ、正常範囲内高値の群はWHM量
が最も多い四分位に入る傾向が強かった。
●60歳以上で血清尿酸値が正常範囲内高値の群はWHM量が4〜5倍も多かった。
<結論>
高齢者において血清尿酸値の軽度上昇が脳の治療あるいは予防のために、抗高尿酸血症
薬の臨床試験が必要かも知れない。

Schretlen DJ,et al. Neurology 2007;69:1418-1423
(ジョンス・ホプキンス大学のグループ)
Medical Tribune 2007.10.18で紹介

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光風会会員 樋口善一 バラ 油彩画8号 http://page9.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/k50454487



高めの尿酸値は脳機能の低下につながるミニ脳卒中が増加
http://www.rda.co.jp/topics/topics3094.html
見過ごされやすい 『 ミニ脳卒中 』 に注意!!
-- 新しいリスク予測スコアの提案 --
http://www.rda.co.jp/topics/topics2377.html
ミニ脳卒中 (TIA) の迅速な治療が、脳卒中の 8 割を防ぐ
http://www.rda.co.jp/topics/topics3115.html
(はたしてミニ脳卒中という概念が学問的に確立されて存在するのでしょうか?
ミニ脳卒中 =TIAというのもいささか乱暴のようですが。)
なぜ、痛風から脳梗塞に?
http://www.asahi.co.jp/hospital/shinsatsu/040608.html(たけしの番組でも尿酸と脳梗塞の関係について紹介しています。)
<コメント>
高尿酸血症は、トッピックスの多い循環器領域においてはいわば日陰の身でした。
中性脂肪やアルドステロンが最近脚光を浴びつつありますが、「尿酸よ、お前もか」といった
感じです。

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# by esnoopy | 2007-10-22 00:58 | 高尿酸血症

ミノサイクリンが急性脳梗塞患者の予後を改善

Lampl Y,et al. Neuroloogy 2007;69:1404-1410
の論文がMedical Tribune 2007.10.18で紹介されました。

以下紹介させていただきます。

虚血性動物モデルの実験で、ミノサイクリンの神経保護作用が報告されている。
ヒトの急性脳梗塞に対する同薬の効果を検討するために。オープンラベル(評価者は盲検)でミノサイクリン200mgまたはプラセボを5日間経口投与した。
治療開始までの至適時間(セラピューティックウインドー)は、脳梗塞発症後6〜24時間とした。
米国立衛生研究所の脳卒中尺度(NIHSS)、modified Rankin尺度(mRS)、Barthel指数(BI)によりデータを評価し、ベースライント時から90日目までの変化を比較した。
74例にミノサイクリン、77例にプラセボを投与した。
ミノサイクリン群はプラセボ群と比べて90日目のNIHSSとmRSスコアが有意に低く、BIが有意に高値で予後良好であった。
このパターンは追跡期間中の死亡、心筋梗塞発症、脳梗塞の再発、出血性変化は両群間で差はなかった。
<コメント>
ミノサイクリン200mgという量は、
「通常成人は初回服用量をミノサイクリンとして、100〜200mg(力価)とし、以後12時間ごとあるいは24時間ごとにミノサイクリンとして100mg(力価)を経口服用する。」
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se61/se6152005.html
ということで常用量です。
諸外国ではどうなっているのでしょうか。
そして作用機序はどうなっているのでしょうか。
またどのようなことからこのアイデアを思いついたもでしょうか?
(動物実験そのものが不思議です。)
私も脳卒中で倒れたら、意識がなくても何とかミノサイクリンを飲ませて貰うように頼んでおきます。
たとえ脳出血だったとしても害はない訳ですから。
しかし点滴投与の方が効くように思うのですが。


抗生物質が脳卒中の 24 時間後までの新たな治療法に
http://www.rda.co.jp/topics/topics3095.html
[PDF] National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS)
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/neuro/NIHSS.pdf
備後脳卒中ネットワーク[NIHSSトレーニング]
http://www.bingo-stroke.net/tr_nihss.html
NIHSS採点表
http://melt.umin.ac.jp/nihss/nihssj-table.htm

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http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p84381819


<医療記事より>
バイアグラ使用で聴力失う恐れ、FDAが警告
2007.10.19
米食品医薬品局(FDA)は18日、男性の勃起(ぼっき)不全治療薬「バイアグラ」の使用で、聴力を失う恐れがあると警告した。FDAは、バイアグラの成分と聴力を失うことについて、はっきりとした関連性はまだ不明だが、1996年からすでに、29件の報告があったとして、警告の発表を決定した。

警告が出されたのはバイアグラのほか、同じく勃起不全治療薬のシアリス、レビトラ。また、バイアグラと同じく、クエン酸シルデナフィルを含む肺高血圧症治療薬「レバティオ」にも、警告が出された。
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200710190029.html
<薬剤情報>
持続性選択H1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤「クラリチン錠10mg」に、7歳以上の小児に対する用法用量の追加がありました。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)
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# by esnoopy | 2007-10-20 00:56 | 循環器科

CTとX線被曝

CTの被曝は医療被曝の中で最も大きくて、その影響については医療提供側は
しっかり把握しておく必要があります。
以前に、英国医師に被曝量の測定単位を問う調査があり、ほとんどの医師が
答えられなかったという論文を読んだことがあります。
X線被曝に(比較的)無関心なのは日本だけに限らないようです。

日本のCT検査の増加
●CT装置は最近11年間で2倍に増加しています
●年間CT検査は3.1倍に増加し、スキャン数は3.7倍になり、1件あたりのスキャン
数も増加しています。

CT検査の被曝とリスク
●CTの被曝(実効線量)は主なX線検査の中で最も高い部類に入ります。
●CT検査は繰り返される傾向があり、臓器によっては、発癌が増加する吸収線量
に近いか、それを超えることがありうる。
●小児は放射線に対する感受性が成人の数倍高い。
●胎児に流産、奇形、知能障害などが発生する可能性のある最低被曝量は、
最も感受性の高い妊娠初期でも100mGyであり、通常のX線やCT検査では
子宮の吸収線量がこれを上回ることはありません。
従って中絶は全く必要なく、安心して妊娠を継続するよう指導すべきです。
(これは、妊娠に気づかずにCTを行った場合で、妊娠が事前に分かって
いればCTを行わないのは当然です。)
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実効線量: 組織の放射線感受性の違いを考慮して被曝のリスクを
比較する指標。 単位はSv(シーベルト)。
吸収線量: 単位質量当りの組織や臓器に蓄積するエネルギーを示す
指標。単位はGy(グレイ)。

参考  日本医師会雑誌 134;9:2005.2 p1732
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千住博  コスモス  シルク
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<コメント>
Medical Tribune2007.10.18に「CTコロノグラフィーによる大腸癌
スクリーニングの妥当性」という論文が紹介されていました。
CTコロノグラフィー(CTC)はマルチスライスCT画像をもとに大腸の
3次元像を得るものです(バーチャル大腸内視鏡)。
もちろん大腸内視鏡は被曝ゼロです。
CTCの方が大腸内視鏡よりラクだからといって患者さんに安易に
すすめる風潮が今後起こるとすれば問題です。
患者さんには被曝については当然説明すべきです。

専門医の期待に応える64列MDCTの高画質
http://blog.m3.com/reed/20070930
(私の別のブログです。
冠動脈造影にMDCTが一部とって変わろうとしています。)


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed(循環器科関係の専門的な内容)

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# by esnoopy | 2007-10-19 00:58 | その他