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糖尿病 (世界の権威に聞く)

Medical Tribune 2008.4.3号には「世界の権威に聞く」という特集記事があります。
きょうは糖尿病研究に関する最新の動向を勉強しました。

C. Ronald Kahn
ハーバード大学教授,ジョスリン糖尿病センター前所長
2000年から2007年までジョスリン糖尿病センター所長。
インスリン受容体チロシンキナーゼを発見。
2型糖尿病や肥満におけるインスリン抵抗性状態のネットワークの変化やこれらシグナルの遺伝的・環境的要因の解明に努める。


日本だけでなく世界的に糖尿病患者数は増加傾向にあり,それに伴う合併症の増加も予想される。
そのため,糖尿病治療の成功は臨床的転帰の改善にとどまらず,社会的・医療経済的にも希求されているのが現状である。
ここでは,糖尿病研究を約40年リードしてきたジョスリン糖尿病センター前所長で,ハーバード大学のC. Ronald Kahn教授に,これからの糖尿病克服の鍵について聞いた。


増加を続ける糖尿病患者
―― 米国における糖尿病患者の現状はいかがでしょうか。
今,私たちは糖尿病,特に 2 型糖尿病の世界的流行に直面しており,これは肥満やメタボリックシンドロームと関連付けられています。

米国では現在,18歳以上の糖尿病患者が2,100万人を数えており,毎年約100万人のペースで増加し続けています。
これは公衆衛生上,非常に憂慮すべき統計学的な数値です。また,小児や若年者においても 2 型糖尿病患者は急速に増加していることも懸念されるところです。

米国の糖尿病患者の増加は多くの要因が複雑に絡み合ってもたらされています。
要因の 1 つは明らかに生活習慣の変化であり,幼児の間でさえ肥満が増大しており,由々しき事態です。

また,米国におけるこのような増加の背景には,他の要因も関与している可能性があります。
例えば,米国のさまざまな民族集団,ヒスパニック系,アフリカ系米国人,アジア系米国人,米国先住民ではいずれも糖尿病リスクが増加しています。


求められるインスリン抵抗性関与のメカニズム解明
―― 肥満,メタボリックシンドローム増加による影響,またアディポサイトカインやインスリン抵抗性といった病理学的原因についてはどのようにお考えですか。
2 型糖尿病発症率の増加は肥満とインスリン抵抗性が複雑に関与しています。

メタボリックシンドロームには 2 型糖尿病,すなわち耐糖能異常だけでなく,脂肪肝,脂質異常症,高トリグリセライド血症,低HDLコレステロールおよびVLDLコレステロール血症などの脂質異常症やアテローム動脈硬化症,高血圧のリスク増大も含まれます。
胆石や女性の生殖障害との関係,さらにはアルツハイマー病といった神経変性疾患との関係など多くの問題が含まれています。
未解決の最重要な課題の 1 つは,こうした症候群の根本原因の解明です。

確かにメタボリックシンドロームの基盤にはインスリン抵抗性がありますが,いまだこの原因は明らかにされていません。
脂肪細胞は多くのアディポカインを分泌し,腫瘍壊死因子(TNF)αなどのインスリン抵抗性を高めるものもあります。

ここで,日本の門脇教授らはアディポネクチン受容体を発見したことでもよく知られていますが,そのアディポネクチンなどインスリン感受性を高めるものとインスリン抵抗性を高めるものの関係を理解する必要があるのです。
しかし,これらが直接的な原因なのか,あるいは病態のマーカーであるのかは未解決のまま残されています。
また,非常に興味ある分野の 1 つに炎症と脂肪組織内の炎症細胞が挙げられます。
インスリン抵抗性と肥満を発現する場合,リンパ球と単球が脂肪組織に侵入してリンホカインを放出し,脂肪細胞がアディポカインを放出し,これらが一緒になるとインスリン抵抗性を高める可能性があります。


―― 糖尿病治療において,インスリン抵抗性改善薬と,米国で最近普及してきたGLP-1,DPP-4阻害薬はどう位置付けたらよいのでしょうか。
疾患の多くはインスリン抵抗性を基盤とするため,インスリン感受性を改善する薬剤は治療上基本となります。
メトホルミン,チアゾリジンジオン誘導体(ロシグリタゾン,ピオグリタゾン)などが挙げられますが,これらはすべての患者で,また糖尿病の全期間にわたって効果的というわけではありません。

そのため,新しいインスリン感受性改善薬を探求し続ける必要性があります。
例えば,サーチュインと呼ばれる蛋白質ファミリーを活性化する可能性を有する新薬の開発が注目を集めています。
これらの蛋白質は多くの代謝経路を制御しており,その活性が増強するときにインスリン感受性を改善する可能性があり,現在,製薬会社の数社がこの分野の研究・開発に取り組んでいます。

当然ながら,糖尿病の究極の原因となるのはなんらかのβ細胞不全であるためスルホニル尿素薬が用いられてきましたが,現在ではGLP-1やexenatide,DPP-4阻害薬と呼ばれるGLP-1プロテアーゼ阻害薬による新たな治療薬が開発されており,これらはインスリン分泌を改善するうえで非常に効果的だと思います。

問題はGLP-1とexenatideの剤形が依然として注射剤であることです。
経口剤であるDPP-4阻害薬は注射剤と同程度の体重減少はもたらしません。
今後,こうした分野でのよりいっそうの研究が続けられることを期待しています。


治療よりも予防を目指して
―― 糖尿病研究をリードしてきた立場から,今後の糖尿病治療・研究の方向性をお示しください。
過体重は,将来的には日本でも問題となると予測されます。
将来のために私たちが行うべきことの 1 つは,環境が自分の身体に及ぼす影響を制御する方法を見出すことです。
糖尿病や肥満をもたらす環境的な刺激は,われわれが考える以上に複雑化します。
米ワシントン大学のJeffrey Gordon博士の研究所から発表された興味深い新しい研究分野があり,彼は肥満の人の腸内細菌がやせた人とは異なることを見出しました。
やせたマウスから腸内細菌を抽出して肥満マウスに注入すると,肥満マウスはやせ,またその逆の現象も起こることを発見したのです。
そのため,例えば,私たちが食べる量以外にも相違をもたらす多くの要素が存在する可能性があることを示しています。
未知の環境的要素があるかもしれません。
ですから,私たちは,インスリン作用や分泌の基本的なメカニズムだけでなく,糖尿病に関与している他の環境的因子の存在やそれらを変化させられるかという研究に取り組む必要があります。

また,自己免疫型であり,2 型糖尿病よりも発症頻度がまれな 1 型糖尿病の問題もあります。免疫系は 1 型および 2 型糖尿病双方に影響を及ぼすと考えられますし,これら 2 つのタイプの糖尿病に影響する将来的な共通の研究分野です。

最後に,私にとって糖尿病の最も重要な面は治療ではなく予防です。
糖尿病専門医の数が非常に不足しており,さらに栄養学や運動のスペシャリストも不足しているのが現状です。
今後,集学的な糖尿病予防研究に力を注ぎ,予防策を見出さなければならないでしょう。

Comment
基礎・臨床両面からの解明に鍵
日本独自のエビデンス集積に期待

東京大学大学院糖尿病・代謝内科教授 門脇 孝
日本の糖尿病の現状は,2002年の糖尿病実態調査から患者数740万人,予備軍880万人と報告されており,最近の統計では40歳以上の実に 3 人に1 人が糖尿病または予備軍であるという驚くべき結果が示されています。
日本人は欧米人に比べてインスリン分泌量が 2 分の 1 であるにもかかわらず,高脂肪食,運動不足といった欧米型の生活習慣が浸透したことがこの背景に挙げられます。
米国ではbody mass index(BMI)30以上が成人人口の約 3 分の 1 以上を占めるのに対し,日本ではわずか 4 %前後です。しかし,インスリン分泌低下の体質のため,わが国ではBMI 25程度であっても米国のBMI 30以上と同程度の糖尿病リスクを有する点に注意を払う必要があります。
こうした糖尿病・肥満患者の激増や,2005年 4 月の内科学会を中心とした 8 学会によるメタボリックシンドロームの診断基準の策定を契機に,わが国でも肥満や内臓脂肪蓄積を背景とした糖尿病・心血管イベントリスクを増加させる疾患への認識が高まり,基礎研究からの解明が強く求められています。
なかでも,膵β細胞からのインスリン分泌およびインスリン抵抗性に対するβ細胞の代償性過形成メカニズムの解明や,アディポカインに関する研究は世界でも注目を集める成果を得ています。
今後,内臓脂肪特異的なアディポカインやインスリン抵抗性だけでなくインスリン分泌不全を惹起するアディポカインの同定などが,メタボリックシンドロームや糖尿病の発症機序を考えるうえで重要となる可能性があります。

臨床的な面からは次の 3 点に注目しています。
まず,今年 4 月には,メタボリックシンドロームに焦点を当てた特定健診・保健指導制度が開始されます。
生活習慣病の予防対策として世界に誇れる取り組みとなることに期待しています。
次は,GLP-1やDPP4阻害薬などの臨床導入です。
これらの薬剤は糖尿病治療改善に大きく貢献すると思われます。
最後に,HbA1c,血圧,LDLコレステロール値などの治療目標達成の改善です。
厚生労働省が2005年度に開始したJ-DOIT3研究は糖尿病合併症の進展を30%抑制する介入方法を研究しており,わが国の糖尿病治療のエビデンスが示せることにおおいに期待しています。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41140991&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.4.3
版権 メディカル・トリビューン社


<参考サイト>
J-DOIT3
Japan Diabetes Optimal Integrated Treatment Study for 3 Major Risk Factors of Cardiovascular Diseases
2型糖尿病において,血糖,血圧,脂質代謝治療のうち糖尿病合併症予防の点で優れた治療法は何であるかを検討。
http://www.ebm-library.jp/circ/doc_japan/J0054.html

<コメント>
文中の「これらが直接的な原因なのか,あるいは病態のマーカーであるのか・・・」。
まさしく本質的な提言と思います。
たとえば動脈硬化と種々の脂質が相関するからといって直接な因果関係、つまり高脂血症が真の動脈硬化の原因ではない(サロゲートマーカー)のではないかと、ふと思ってしまうことが私の心の奥底にはあります。
先生方はいかがでしょうか。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
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by esnoopy | 2008-04-15 00:14 | 糖尿病

胃食道逆流症と腹腔鏡下噴門形成術

肥満の有無は予後に影響を及ぼさず 
東京慈恵会医科大学外科学講座の坪井一人氏らは,胃食道逆流症(GERD)に対する
腹腔鏡下噴門形成術は,「body mass index(BMI)30以上の肥満患者では
手術時間の延長と術中出血量の増加傾向は認められるものの,重篤な合併症もなく,
再発率も非肥満症例と同等であることから,安全に施行可能と考えられる」と報告した。


肥満では手術時間のみが延長

現在,腹腔鏡下噴門形成術はGERDの標準術式として確立しているが,肥満はGERD
の増悪因子の 1 つと考えられており,肥満GERD患者の手術では腹腔内脂肪の増加
が視野不良を来し,手術難度が増すと一般的に捉えられている。

このため坪井氏らはBMI 30以上の肥満を有するGERD患者で,手術関連因子や術後
経過などを非肥満GERD患者と比較した。

対象症例は1996年 6 月~2007年 5 月に腹腔鏡下噴門形成術を施行したGERD症例
170例(男性104例,女性66例,平均年齢53.2±15.7歳)。

このうちBMI 30以上の肥満GERD患者は11例で,残りの非肥満GERD患者159例との
間で病態,術式などの患者背景に有意差は認められなかった。

手術時間は肥満GERD患者185.7±36.1(140~280)分,非肥満群155.7±47.3
(70~303)分と,肥満症例で有意な手術時間の延長が確認された。

一方,術中出血量は肥満GERD患者65.5±140.8mL,非肥満GERD患者53.7±327.3mLであり,肥満GERD患者で増加傾向を示したが,統計学的に有意差
はなかった。

術中合併症は肥満GERD患者では食道損傷 1 例のみであり,非肥満GERD患者では
横隔膜脚損傷 4 例,胃壁損傷 2 例,気胸,食道損傷がともに 1 例ずつ発生したが,
両群とも開腹術へ移行した症例はなく,術後の食道炎再発率に関しては,肥満GERD
患者で9.1%に対し非肥満GERD患者で8.8%と,統計学的に有意差は認められ
なかった。

同氏は「検討前は肥満の有無で手術成績に差が認められると予想していたが,実際
には手術時間以外に明確な差は認められず,腹腔鏡下噴門形成術の安全性の高さ
が示された」と述べた。


<番外編>■ 
<長寿医療制度> 新保険証未着、全国で6万件超 大阪で最多1万6000件
今月スタートした長寿(後期高齢者)医療制度の保険証が届かないケースが多発している問題で、対象者に届かずに自治体に返送された件数が全国で約6万件(推定含む)に上ることが9日、毎日新聞の調べで分かった。
担当窓口には苦情が殺到し、保険料の誤徴収などのミスも相次いで発覚している。新制度は開始当初から混乱が続いている。

新制度の対象は、75歳以上と、65~74歳の障害認定を受けた計約1300万人。
多くの自治体が保険証を郵送する際、本人の手に確実に届くよう「転送不要」とした。
このため住民票の届け出と異なる場所に住む対象者らに保険証が届かず、自治体に返送されるケースが多いとみられる。


都道府県ごとに制度を運用する後期高齢者医療広域連合などに取材した結果、未着分は計6万3469件に上る。
都道府県別では、大阪府が1万6000件で最多。神奈川県1万3700件、愛知県9450件、東京都7600件――が続く。
未着を把握しているが、集計できていない県も多数あった。

秋田県の広域連合によると、対象者から「中身を確認せずに捨てた」との申告があった。福島市でも「ダイレクトメールと勘違いし捨てた」というケースがあり、制度周知が徹底していなかったことがうかがえる。

制度自体への苦情も多い。
75歳以上の高齢者の負担増になるケースもあるため、「年寄りに死ねというのか」(福岡)、「『消えた年金』問題が解決していないのに、年金から徴収するとは何事か」(長崎)などの抗議が寄せられている。

各広域連合は電話増設などをして対応しているが、追いつかないのが現状だ。
長野では3月中旬、電話回線を4回線から7回線に増設した。
千葉は1日以降、電話が一日中鳴りっぱなしといい「職員3人で対応しているが間に合わない」と悲鳴を上げている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/news/20080410ddm041010168/
出典 毎日新聞 2008.04.10
版権 毎日新聞社

<コメント>
予想どおりのドタバタです。
得体のしれない「広域連合」という組織も不気味です。
どんな人がやっていてどこからお金がでているのでしょうか。
調べるのも面倒くさいことですが。

広域連合 http://www.soumu.go.jp/kouiki/kouiki1.html

■ 新たな保険証がないまま受診すると、いったん医療機関の窓口でかかった医療費の全額支払いを求められる。
新制度の窓口自己負担率はこれまでと同様、原則1割だが、新しい保険証がないため突然高額な医療費を請求され、支払いに困るケースもあった。

こうしたトラブルが各地で相次いだことを受け、厚労省は、国民健康保険証など、高齢者が3月まで利用してきた保険証を当分の間「代用」として使えるようにすることを決め、こうした古い保険証で受診しても、原則1割負担とするよう医療機関に要請した。
古い保険証も持っていない人には、運転免許証など住所や生年月日を確認できる書類があれば従来通りに受診できるようにする。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080410-00000971-san-soci


<コメント>
「医療機関に要請」?
私は要請された覚えはありません。
一方的な通達のはずですが、「古い保険証でも1割負担」というのは、従来からの保険証提示確認によって保険診療が始まるという不可侵の大原則を自ら破っていませんか?
正式な通知が今日にでも医師会からわれわれ日本医師会会員に届くんでしょうか?
それがなければ「要請」ではありません。
9割分の回収不能が生じたとき泥をかぶるのは医療機関ですか?
なぜ医療機関が尻拭いをさせられるのですか?
4月中に患者が新保険証を持って来院しない場合、4月分の保険請求はどうなるんですか?
昨夜の報道ステーションの古館も、医療側の困惑は一切伝えませんでした。


<参考ブログ>
旧保険証も有効?
http://blog.m3.com/BH/20080411/2
お気楽な厚労省官僚たち
http://blog.m3.com/BackToTheStreet/20080410/1

同じ考えの先生がいて意を強くしました。

まったくもって厚労省ってのは・・・
医師会もなにやってんだか・・・

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by esnoopy | 2008-04-11 00:08 | 消化器科

肥満は変形性膝関節症の大きな進行リスクにならず

第71回米国リウマチ学会・年次集会 2007年11月6日~11日 Boston U.S.A. での発表です。
OAと肥満の関係は、発症には関係するが進行には関係しないというものです。
OA患者への減量指導は意味がないともとれるショッキングな内容です。

肥満は変形性膝関節症(OA)の強力なリスクファクターだが、OA発症後の進行リスクとしての影響は少ないことが示された。
米ボストン大学医療センターのJingbo Niu氏らが行ったMOST(Multicenter Osteoarthritis Study)試験により明らかになったもので、11月10日、米国リウマチ学会・学術集会の一般口演で報告された。


Niu氏らは、変形性膝関節症(OA)またはそのリスクが高い患者3026例(50~79歳)を登録し、2007年6月までに30カ月の追跡期間を満たした2307例(平均62.4歳)の解析を行った。平均BMIは30.5だった。

合計4481膝についてX線検査による膝変形度評価をした結果、試験開始時点でOA(K/Lグレード≧2)が認められたのは35.3%だった。
これらのうち、30カ月の追跡期間中にOAの進行が認められたのは52.6%で、その内訳は、内反膝の進行が41.1%、外反膝の進行が12.4%だった。
一方、開始時にOAの認められなかった膝では、6.0%が追跡期間中にOAを発症した。

BMI別に4段階の肥満度(正常体重群、過体重群、軽度肥満群、高度肥満群)に層別化して、肥満度とOA発症リスクとの関係を検討した結果、正常体重群に対する各群のOA発症の相対リスクは、過体重群が2.0、軽度肥満群が2.9、高度肥満群が4.7と、肥満度が高いほどOA発症リスクが増大することが分かった。
肥満に伴う発症リスクの増大は、内反膝、外反膝のいずれにも認められている。

これに対してOAの進行に関する相対リスクは、過体重群1.0、軽度肥満群1.0、高度肥満群1.2と、肥満による影響はあまり大きくないことが示された。
また肥満によるリスク増大がみられたのは内反膝のみで、その内反膝でさえも高度変形例では肥満が進行リスクの増大につながることはなかった。

第71回米国リウマチ学会・年次集会 2007年11月6日~11日 Boston U.S.A.
Nikkei Medical ONLINE
肥満は変形性膝関節症の大きな進行リスクにならず
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/acr2007/200711/504767.html
日経メディカル オンライン http://medical.nikkeibp.co.jp/
2007. 11. 14

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by esnoopy | 2008-02-21 00:05 | その他

ちょいデブが一番健康にいい?

わが国の健康に関する話題はメタボ一色です。
日本人の体格は向上しています。
男子で185cmと160cmの人とで同じ腹囲85cm以下という基準っておかしくありませんか?
最近、全死亡で調べると若干肥満傾向の方がいいという結果が出てきています
総コレステロールについてもそのようなことがいわれておりあながち「ちょいコレ、ちょいデブ」は間違っていないことになります。
185cmで腹囲80cm。
内臓脂肪のことはさておいて、BMIはいくつぐらいになるのでしょうか。

まずは

冠動脈疾患診療におけるメタボリックシンドロームの意義
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir
/n2746dir/n2746_02.htm

というすばらしい内容の書かれたサイトの一部紹介です。
ご本人の了解をいただかないままアップさせていただきますがリンクという考え方でお許し下さい。
久しぶりに中身の濃いサイトに巡り会いました。

最初の部分 略

一つの症候群としてのメタボリックシンドロームの概念と診断基準はまだ新しいものであるため,その疾患概念や診断基準に疑念を呈する意見も聞こえてくる。
ここでは,私たちが日頃,冠動脈疾患の診療を行っている現場での実感や,自身や他施設による臨床研究の結果から,冠動脈疾患診療においてメタボリックシンドロームをどう扱うべきか,その意義について考えてみたい。
<一次予防コホートにおいて肥満は重要な危険因子>
 メタボリックシンドロームといえば,その診断の基本条件となる内臓脂肪型肥満がまず頭に浮かぶが,古典的な冠危険因子で,永年にわたり幾多の疫学研究でその意義が検討されてきた肥満の危険因子・予後予測因子としての役割はどのように考えられているのか。
肥満の危険因子や予後規定因子としての役割を考える場合,その他の患者背景が重要な意味を持つ。
患者が冠動脈疾患を持たない危険因子保因者,すなわち,一次予防コホートに属するのか,すでに冠動脈疾患を有する二次予防コホートに属するのかで,肥満の危険因子/予後規定因子としての意義が違ってくるようだ。
多くの臨床研究結果からも,肥満が冠動脈疾患の一次予防における有意な危険因子であることは疑いの余地がない。
とりわけ若年者では,肥満は重要な危険因子であり,若年発症冠疾患患者では,年齢,性別が揃った健常者や中高齢冠疾患患者に比べて,有意に肥満者が多いとする報告が多い。
しかし,高齢者における冠危険因子としての肥満の意義に関しては,若年者の場合ほど明確で一貫性のあるデータが示されているわけではない。
<二次予防コホートでは肥満の予後への影響は不明>
二次予防コホートにおける心血管イベント再発や全死亡,心血管死の予後規定因子としての肥満の役割を考えた場合には,その意義にはさらに疑問が生じる。
冠血行再建術を施行された患者や心筋梗塞後の患者を対象に,その中・長期予後規定因子を解析してみると,肥満者(多くの場合,BMI高値が基準)のほうが,生命予後が良好であることが繰り返し報告されている。
実際,私たちが30施設での2000〜02年の3年間の初回冠血行再建例9877例を対象に,平均3.5年追跡し予後規定因子を解析したCREDO-Kyoto研究の結果でも,BMI≧25kg/m2の患者はBMI<25kg/m2の患者よりも予後良好であり,この結果は,悪性腫瘍合併例を除外し一般的な冠危険因子を変量に加えて補正した多変量解析を行っても同様であった。
もちろん,メタボリックシンドロームにおける内臓脂肪型肥満は,BMIを基準とした肥満と同じものではない。
冠動脈疾患の二次予防における予後予測因子としての意義について,メタボリックシンドロームの合併は急性冠症候群患者の不良な予後の予測因子であるとする報告が見られるが,糖尿病合併急性冠症候群患者の生命予後が不良であることが知られているように,そこでは耐糖能障害の存在が大きな意味を持つのかもしれない。
また,肥満の場合と同様に,死亡,心血管死などのハードエンドポイントに関する予後規定因子としてのメタボリックシンドロームの役割が,高齢者など患者群によって変わってくる可能性も否定できない。
したがって,二次予防コホートにおける肥満やメタボリックシンドロームの予後への影響に関して不明な点が残された現状では,メタボリックシンドロームを単なる肥満と明確に区別する必要がある一方で,冠動脈疾患の一次予防と二次予防における危険因子・予後規定因子としてのメタボリックシンドロームの意義も必ずしも同じではない可能性を認識しておくべきあろう。
また,内臓脂肪型肥満に加えてメタボリックシンドロームの診断基準に含まれる高血圧,脂質代謝異常,糖代謝異常は,それら自体が重要な冠危険因子であるため,メタボリックシンドロームを疑う患者では,肥満以外の基準を正しく診断することが重要である。
二次予防コホートでメタボリックシンドロームに治療介入を行う場合に,肥満そのものに対しての介入のイベント抑制効果を証明することは難しく,この点からも他の介入可能な危険因子を生活習慣の改善と薬物治療で厳格に管理することが必要とされる。



<個々の危険因子の積極的管理が今後も重要>
以上,冠危険因子の重積は冠動脈疾患の予防における重大な問題であるが,何か一つの原因を取り除くことにより複数の危険因子を十分に管理することは難しく,心血管イベント予防のためには,個々の危険因子を厳重に管理する姿勢が大切である。メタボリックシンドロームの管理に関しても同様のことが言えるであろう。
このように,将来まったく新しいメタボリックシンドロームの治療薬が登場し,複数のリスクファクターを一つの治療ターゲットで十分に管理できるようにならないかぎり,冠イベント抑制のための薬物治療は個々の危険因子管理に最適と思える薬剤を併用していくことが基本であると私たちは考えている。
その際に,メタボリックシンドロームの概念は,特に一次予防コホートにおいて,個々の危険因子のリスクが一見小さく見える早期から薬物治療も考慮した介入を行う機会を与えてくれるという意味で,非常に有益である。
もちろん,その前に生活習慣の改善が必須であることは言うまでもない。

<コメント>
御用学者でない(?多分)先生の書かれた内容は実に爽やかです。
いつまでも薬業界に染まらないことを祈るばかりです。

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マティス 『青いドレスの女
http://page2.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/b82918021


そして最新の論文です。

Am J Med. 2007 Oct;120(10):863-70.
Obesity paradox in patients with hypertension and coronary
artery disease.
Uretsky S et al.

PURPOSE:
An obesity paradox, a "paradoxical" decrease in morbidity and mortality with increasing body mass index (BMI), has been shown in patients with heart failure and those undergoing percutaneous coronary intervention.
肥満パラドックス、すなわちBMIが高いほど心不全の死亡率やPCIの施行率が減少することがわかっている。

However, whether this phenomenon exists in patients with hypertension and coronary artery disease is not known.
しかし、この現象が高血圧やCAD患者にもあてはまることなのかは知られていない。

METHODS:
A total of 22,576 hypertensive patients with coronary artery disease (follow-up 61,835 patient years, mean age 66+/-9.8 years) were randomized to a verapamil-SR or atenolol strategy.
CADを有する22,576例の高血圧患者を徐放性ベラパミルとアテノロールにふりわけて服用。
Dose titration and additional drugs (trandolapril and/or hydrochlorothiazide) were added to achieve target blood pressure control according to the Sixth Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure targets.
JNC6の基準を満たす血圧になるまで、2種類の降圧剤の増量やトランドラプリルや降圧利尿剤(ヒドロクロロチアジド)の追加を行った。
Patients were classified into 5 groups according to baseline BMI: less than 20 kg/m2 (thin), 20 to 25 kg/m2 (normal weight), 25 to 30 kg/m2 (overweight), 30 to 35 kg/m2 (class I obesity), and 35 kg/m2 or more (class II-III obesity).
BMIの程度に応じて5つのグループに分類された

The primary outcome was first occurrence of death, nonfatal myocardial infarction, or nonfatal stroke.
一次エンドポイントは死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中であった。

RESULTS:
With patients of normal weight (BMI 20 to<25 kg/m2) as the reference group, the risk of primary outcome was lower in the overweight patients (adjusted hazard ratio [HR] 0.77, 95% confidence interval [CI], 0.70-0.86, P<.001), class I obese patients (adjusted HR 0.68, 95% CI, 0.59-0.78, P<.001), and class II to III obese patients (adjusted HR 0.76, 95% CI, 0.65-0.88, P <.001).
BMIが正常の患者に対して肥満(BMI別)患者では一次エンドポイント(死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の発生率が有意に少なかった。
Class I obese patients had the lowest rate of primary outcome and death despite having smaller blood pressure reduction compared with patients of normal weight at 24 months (-17.5+/-21.9 mm Hg/-9.8+/-12.4 mm Hg vs -20.7+/-23.1 mm Hg /-10.6+/-12.5 mm Hg, P<.001).
BMIクラス Iの軽度の肥満患者は、2年間の観察で、BMI正常患者より血圧の改善率は低かったが死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中は一番少なかった。
CONCLUSION:
In a population with hypertension and coronary artery disease, overweight and obese patients had a decreased risk of primary outcome compared with patients of normal weight, which was driven primarily by a decreased risk of all-cause mortality.
高血圧や冠動脈疾患の肥満患者は体重が正常の場合の患者と比較して全死亡率が低い。
Our results further suggest a protective effect of obesity in patients with known cardiovascular disease in concordance with data in patients with heart failure and those undergoing percutaneous coronary intervention.
われわれの研究結果から従来の心不全やPCIの成績と同様に、肥満がCVDに対して保護的な意味を持つことが示唆された。
世界の国を肥満率の高い順に並べるとこうなる
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070518_fat_list/
メタボリックシンドロームと腹囲論争
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-10-25

<コメント>
なぜちょいデブがいいのか考察はされていませんが、こんな論文を読むとダイエットが出来なくなってしまいます。
ちょっと考えるとBMIの正常値を少し上げればいいだけのような気もしますが、いかがなものでしょうか。
昨夜、COPDの勉強会に出席しました。
ちょっと本題からはずれるかも知れませんが、この領域でも体重維持の重要性が強調されていました。

非常に冗長な内容になってしまいましたが、一連のメタボキャンペーンの一つのアンチテーゼと受け取っていただけると幸いです。

長文を読んでいただいてありがとうございました。
コメントをお待ちしています。
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by esnoopy | 2007-10-26 00:11 | 循環器科

肥満のままで糖尿病を改善へ

肥満のままで糖尿病を改善へ   筑波大がマウス実験
肥満になっても脂肪の質を変化させれば糖尿病になりにくいことを、
筑波大大学院の島野仁准教授(内分泌代謝学)らが動物実験で
突き止めた。米医学誌ネイチャーメディシン(電子版)に発表した。
糖を体内に取り込むインスリンの働きが、肥満や脂肪の増加によって
妨げられるのが糖尿病の原因の一つとされる。
研究チームは、通常のマウスと、脂肪のもとになる脂肪酸の一種
を合成する酵素を遺伝子操作で欠損させたマウスを、体脂肪率
40%まで太らせて脂肪肝にしてみた。
通常のマウスの肝臓ではインスリンの働きを助けるたんぱく質が
減り、働きを妨げるたんぱく質が増加。高血糖など糖尿病につな
がる恐れのある症状が出た。
問題の酵素を欠くマウスは、インスリンの働きが適正体重の時と
ほぼ同じだった。
島野さんによると、この酵素がないと脂肪の質が変化して、
肝臓にたまってもインスリンの働きを妨げずにすむらしい。
運動や食事制限をうまく実行できない糖尿病の患者に対し、
この酵素を邪魔する治療法も考えられる。
島野さんは「ダイエットが難しくても、糖尿病への効果が期待
できそうだ」という。
2007年10月04日12時31分
http://www.asahi.com/life/update/1004/TKY200710040173.html
(ニュースサイトのため将来的にリンクできなくなります。
全文掲載させていただきました。)
<コメント>
他のサイトではこの研究での酵素が「Elovl6」であることが
紹介されていました。

研究グループは、体内で糖から脂肪を作る際、脂肪酸を構成する
炭素分子の鎖を長くする酵素「Elovl6」に着目。遺伝子組み換え
によりこの酵素を欠損させたマウスで実験したところ、肝臓で短い
脂肪酸が増え、脂肪の質が変わった。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200710010186.html
ELOVL6 Gene Card
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=ELOVL6
c0129546_8235491.jpg

P・アイズピリ カンヌのテラス リト【石版】
http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g60031559


“肥満により引き起されるインスリン抵抗性における長鎖脂肪酸
伸長酵素Elovl6の重大な役割
http://www.md.tsukuba.ac.jp/clinical-med/endocrinology/research/Research%20FACE%20detail.html
近年、脂肪酸-糖代謝のホメオスタシスに破綻をきたした病態
としてメタボリックシンドロームが注目されています。 
高脂肪食を中心とする食生活の変化や運動不足といった現代
社会を背景として引き起されるこの病態は、糖尿病や虚血性
心疾患の原因となり、そのメカニズムの解明と予防・治療法
の開発は重要です。 
組織内に脂質が過剰に蓄積するような病態がインスリン作用
不全を引き起こすという「脂肪毒性」という概念が提唱される
ようになり、脂肪酸の摂取量や組織における蓄積量(量的変化)
が生活習慣病病態に及ぼす影響に関しては多くの研究が
なされています。 
しかしながら、脂肪酸の組成の変化(質的変化)が生活習慣病
病態に及ぼす影響やそのメカニズムに関しては未だ未解明な
部分が多く残されています。

中略

上述のように、脂肪酸組成の変化がエネルギー代謝の重要な
決定因子であることが明らかになりましたが、その詳細な
メカニズムについては不明な点が多く残されています。 
現在、細胞が脂肪酸組成の変化を感知してエネルギー代謝を
制御するメカニズムと生活習慣病発症のカギを握る脂質
メディエーターの解析を精力的に行っています。
またこの酵素の欠損が高血圧や動脈硬化性疾患にどのような
影響を及ぼすのかについては今後のさらなる解析が必要
となります。 
さらにこの脂肪酸の質的変化は食欲、嗜好性、行動、意欲など
にも影響を与えることがわかり、代謝と脳、行動という新しい
連関についても検討しています。

以上は

肥満により引き起されるインスリン抵抗性における長鎖脂肪酸
伸長酵素Elovl6の重大な役割
http://www.md.tsukuba.ac.jp/clinical-med/endocrinology/research/Research%20FACE%20detail.html

からの引用させていただきました。
中略の部分にElovl6ノックアウト(KO)マウスを用いた研究の
内容が紹介されています。
ここにも今年のノーベル生理医学賞のノックアウトマウスの手法
が用いられています。
肥満のままで本当にいいんならやせれない人に(もし薬剤が開発
されれば)とりあえず薬でもということになりそうですが、
いずれにしても肥満はよくありませんよね。
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by esnoopy | 2007-10-11 07:44 | 糖尿病