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COPD (世界の権威に聞く)

Medical Tribune誌の"世界の権威に聞く"という特集号で、Bartolome R. Celli タフツ大学内科教授 へのインタビューで勉強しました。

Bartolome R. Celli タフツ大学内科教授
カリタス聖エリザベス医療センター肺・救命救急診療・睡眠医療科部長,COPD患者の診断および治療に関する基準を確立した米国胸部学会および欧州呼吸器学会の委員会副議長,The Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Desease(GOLD)執行委員会の元メンバー。


COPDは,気道や肺の炎症によりもたらされる慢性の気流閉塞性疾患であるが最近の研究からは全身性疾患との認識が広まっており,COPDがもたらす合併症や生命予後への影響について注目されている。
タフツ大学内科のBartolome R. Celli教授は,多次元的評価法による予測死亡率の有用性など,患者の個別性に応じた全身性症状の改善に着目して研究している。


COPD患者の予後に明るい兆し,BODE指数が死亡リスクの予測に有用

米国ではCOPDはどのような現状ですか。
米国では現在,COPDがおもな死因の第 4 位で,年間13万人以上が亡くなっています。
18歳以上でCOPDと診断されているのは1,100万人以上です。
最近のCOPDによる死亡数は,男性に比べて女性のほうが多くなっています。ただし,多くの症例がいまだ正確に診断されずにいます。
しかしその一方で,現時点では喫煙率が低下していることや,多数の新しい診断・治療法が実用化されていることから,COPDリスクのある人の予防や患者の予後について明るい希望を持ってよいとする理由が十分にあるということを,最初にお伝えしたいと思います。

COPDの生命予後や死亡リスクを決定する因子について最近の知見をお聞かせください。
まず,COPDを新しいパラダイムを通して見る必要があります。
つまりCOPDを単なる呼吸器疾患ではなく,評価可能な全身への影響(合併症)を伴う重要な疾患でもあると考えられます。

また,このパラダイムによると,COPDは予防や治療が可能な疾患であると考えるのです。

したがって,COPD患者の全死因や呼吸器系の原因による死亡リスクを予測するBODE指数は重要な意味を持ってくるのです。BODEは肥満指数(BMI;B),気流閉塞度(the degree of airflow obstruction;O),呼吸困難(dyspnea;D),6 分間の歩行テストで測定する運動能力(exercise capa-city;E)を意味します。
この 4 つの変数を使用して,スコアが高いほど死亡リスクが高くなる多次元的10点満点方式の評価法を作成しました。
われわれは,COPD患者の全死因や呼吸器系の原因による死亡リスクを予測するという点で,
BODE指数が 1 秒量(FEV1.0)よりも優れていることを明らかにしました。

これ以外にも重要で補完的なアプローチが,研究や新しい治療法の開発に重要な道を開いています。

最大吸気量/全肺気量比(inspiratory-to-total lung capacity ratioIC/TLCは,COPD患者の全死因死亡率や呼吸器系の原因による死亡率に関して有効で独立した予測因子です。
携帯型酸素飽和度測定器で24時間測定すると,COPD患者の日常生活動作と夜間のいずれにも影響を及ぼす,頻発する潜在的に重要な酸素飽和度の低下を確認できます。
蛋白質マイクロアレイプラットホーム(PMP)技術により,重要な臨床予後予測因子に関係する血清中の選択マーカーが確認されています。

心不全や心筋梗塞,不整脈,肺塞栓症はいずれもCOPD増悪に似た症状を呈するため,COPDの増悪と思われる症状を慎重に診断することがきわめて重要です。増悪の程度に伴い健康状態の悪化や肺機能の低下,死亡が生じるため,増悪の予防と適切な治療が非常に重要です。遷延性低酸素血症や不均一に分布する肺気腫による過膨張,末梢性筋機能障害など,特定の臨床表現型の検出における最近の進歩により,それぞれの患者に最適な治療を提供できるようになっています。


肺の過膨張が治療で重要な標的
最近の大規模試験によってどのようなことが明らかになったのでしょうか。
COPD患者6,112例を対象にしたTORCH試験では,サルメテロール/フルチカゾン配合剤群の全死因死亡率が12.6%,プラセボ群では15.2%であることが明らかになりました。

事前に決めた統計学的有意水準には至りませんでしたが,サルメテロール/フルチカゾン配合剤群では,死亡リスクがプラセボ群に比べて2.6%低下したほか,QOLの改善,増悪の程度の軽減,肺機能低下速度の遅延という成績が得られました。
 
UPLIFT試験では,チオトロピウムの長期投与により肺機能低下速度や健康状態,増悪の頻度に対する有用性を示すかどうかを明らかにしようとしています。
今年には報告されるでしょう。

われわれは以前,短時間および長時間作用型の気管支拡張薬もともにCOPD患者の肺過膨張を軽減することを明らかにしました。
というのも,
肺の過膨張が治療上重要な標的になるからです。

GOLDは新たな病期分類,増悪の管理,包括的医療チーム確立を推奨
患者管理についてGOLDレポートからわかることは何でしょうか。
最新のGOLDレポートには,COPDの診断,管理,予防に関する新しい基準,重症度を明らかにする新たな病期分類のガイドライン,増悪の管理に関する推奨事項,連携治療に必要な包括的医療チーム確立に関する推奨事項が記載されています。
GOLDの2007年追補版も発表されました(詳細はhttp://www.goldcopd.com/で閲覧可能)。

COPDの増悪を抑えることが重要な治療目標ですから,増悪例の自宅管理では現在実施している気管支拡張薬療法の用量や回数を増やすことが必要です。
さらに,COPD増悪時ではコルチコステロイドの全身投与も推奨されています。
病院で管理する場合は,酸素療法,非侵襲的呼吸管理,抗菌薬投与も役割を果たします。


患者個々に合った包括的アプローチで延命可能
多次元的評価法による死亡率予測の有用性,また最少の費用で最善の転帰を得て最大の治療効果を上げる活用法について教えてください。
多次元的評価法により,医師が患者 1 人 1 人に必要な診療について焦点を絞りやすくなります。
予測死亡率に目を向けることによって,延命のために何をすべきかという問題にも容易に焦点を定めることができます。
COPDは全身症状を伴う疾患であるため,患者それぞれの特性に合わせて介入することによりQOL改善,延命,死亡率低下が期待できると考えています。

呼吸リハビリテーションにより,転帰不良に関係する運動能力,呼吸困難などの変数とともに,多次元的BODE指数も改善します。
将来,全身性炎症の改善または正常化を目指した介入が実施されるでしょう。
われわれは,気流制限の程度に直接的には関係しないCOPDに伴う全身性疾患に着目することにより,同症の罹患率や死亡率の低下が可能かどうかを検討しています。

現在,COPDを生涯にわたって管理するには,包括的なアプローチが重要です。多くの患者では,COPDのさまざまな症状に対して複合的な治療を同時に展開することが必要なのです。

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Comment
COPDは全身性疾患として  予防と治療が可能な時代に
順天堂大学呼吸器内科客員教授 福地 義之助 COPDについて世界的に最も広く引用されているGOLDの2006年改訂版に導入された,"COPDは予防と治療が可能な疾患である"という疾患概念をかねてから強調してきたのはCelli教授です。

COPD治療に対する,医師と患者の長年にわたる無力感や悲観論にとらわれることなく,今や積極的に治療を展開すべきだという確固たる信念が,Celli教授のインタビューからもよく伝わってきます。

有効な治療が可能になったのは,長時間作用型気管支拡張薬が普及してきたことや,呼吸リハビリテーションの早期導入が広まったことなどが貢献しています。

さらに,COPDの全身的影響としてGOLDに挙げられている動脈硬化症,骨粗鬆症,筋萎縮性変化などは,一般臨床においても高齢者診療では日常的に多く診療していますが,その適切な管理が一般臨床医にとっても重要な診療内容となることは必至でしょう。

このためには,COPDが全身性疾患であることを十分に理解し,Celli教授が提唱したBODE指数に即して,体重(BMIなど)の維持に直結する栄養管理,気流制限(obstructive disturbance),呼吸困難(dyspnea)の改善を図る気管支拡張薬の投与,運動能力(exercise capacity)を向上させる運動療法などを標的とした治療戦略を立てることが重要です。
 
TORCH,INSPIRE,UPLIFTなどの大規模臨床試験においてCOPDの予後の改善,増悪の防止,患者QOLの向上とともに肺機能の低下を改善することが示されれば,COPDをさらに早期から治療することの意義が確認できると期待されます。

わが国で発刊されている『呼吸リハビリテーションマニュアル』の「運動療法」(2003年)と「患者教育の考え方と実践」(2007年)に関するガイドラインは,COPD患者の診療を行ううえでおおいに役立つ情報を満載しているので,広く参照していただければ幸いです。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41141021&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.4.3
版権 メディカル・トリビューン社

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by esnoopy | 2008-04-18 00:08 | 呼吸器科

COPD  (その1)1/2

NIKKEI MEDICAL 2007.11の
「外来で診るやっかいな咳」という特集からです。
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清水達三(院展同人・評議員) 幻想風景 10号
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数日前から続く咳、咽頭痛、微熱、息苦しさを訴えて来院した67歳の男性。
問診により、30歳から65歳まで1日10本の喫煙歴があること、また10年以上前から、
息切れのため坂道や階段を最後まで一気に上れなかったり、空咳や痰に悩まされて
いたことが分かった。


胸部単純X線正面像に明らかな肺炎の所見は見られなかった。
だが
側面像では横隔膜が平低化しており、気腫性病変の存在が疑われた。
そこでCTを撮ったところ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に特徴的な所見である気道壁
の肥厚や小さな低吸収領域(LAA)が認められ、ウイルス感染に伴う急性上気道炎を
きっかけとしたCOPDの急性増悪と診断できた。

この患者を担当した藤沢市民病院(神奈川県藤沢市)呼吸器科医長の西川正憲氏は、
「COPDの患者の半数は、本症例のように急性上気道炎をきっかけに受診する。
特に中年以上で喫煙歴がある上気道炎患者では、COPDが隠れていないか-度は
疑ってほしい」と指摘する。

本例は前立腺肥大症による排尿障害があったため、西川氏は抗コリン薬を避け、
長時間作用型β2刺激薬のサルメテロール(商品名セレベント)とフルチカゾン
(フルタイド)を処方した。
その結果、持続していた息切れや咳などの自覚症状は数日間で消失し、初診時には
0.63Lだった1秒量は治療4週間後には0.94Lまで改善した。

不定愁訴からも常に疑う
COPDは、喫煙などで起こる肺の炎症反応が原因で気道の閉塞や肺胞の破壊が起き、
進行性の気流制限を呈する疾患だ。
2001年に発表されたわが国の疫学調査では推定患者数530万人、現時点では700万
人という数字もある。
だが厚生労働省の患者調査(05年)では、病院でCOPDと診断された患者は22万人。
多くの患者がいまだ治療の対象になっていないとみられる。

その背景には、医師・患者双方で「COPDは治らない病気」という旧来の認識がまだ
改まっていないことが一因という。
だが治療法は確実に進歩している。
世界保健機関(WHO)も06年、「COPDは治療でき、予防できる病気」と宣言、早期介入
の重要性を訴えた。

日本医大呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏は「より早期の段階で患者を拾い
上げることが求められており、第一線の臨床医の役割がより重要な時代になってきた」
と強調する。

代表的なCOPDの症状は、冒頭の症例のように慢性の咳嗽や喀痰、労作時の
呼吸困難など。
長期間の喫煙歴があればなおさらだ。
もっとも、全例でこの症状が前面に出るわけではない。
木田氏が診た72歳男性のケースでは、「朝着替えるときに動悸がした」「疲れやすく
なって外に出ることもなく1日中テレビを見ていた」「1-2年で10kg近くもやせた」
といった訴えが中心だった。

「COPDの初期症状は実に多彩が必要だ」と木田氏は指摘する。
質問表で診断につなげる
COPDを疑った場合に、必須となる検査はスパイロメーターによる肺機能検査だ。
気管支拡張薬を投与した後で、1秒率(1秒量/努力性肺活量)が70%未満ならば
気流制限があるとされ、気管支喘息や気管支拡張症といった気流制限を来す疾患を
除外した上で診断される。

だが、一般の診療所におけるスパイロメーターの普及率はいまだ10数%と低く、
患者の拾い上げに結びつきにくいのが実情だった。
そんな中、実地医家による拾い上げに有用な手段として注目されているのが、
「COPD簡易質問表」(表2)だ。
この簡易質問表は、国際家庭医学会のワーキンググループが05年に発表した
「IPAG診断・治療ハンドブック」の日本語版にある。
久留米大呼吸器・神経・膠原病内科主任教授の相澤久道氏らが翻訳した。

咳や喘鳴、息切れなどが慢性かどうかを確認し、呼吸器以外の疾患や急性の感染症
を除外した上で使用する。
質問項目の合計点数が17点以上で、「COPDの疑い」となる。

実際に相澤氏が和歌山県立医大呼吸器・アレルギー内科教授の一ノ瀬正和氏らと
協力、呼吸器科受診患者など169人にこの質問表を使ったところ、93.9%が
「COPDの疑い」と判定され、そのうちの40.4%が最終的にCOPDと診断された。

相澤氏は「スクリーニングを目的とした場合、この質問表の有用性は非常に高い。
スパイロメーターを持たない実地の先生方が使いこなし、未治療の患者の掘り起
こしに役立ててほしい」と期待する。


<コメント>
文中にあるようにスピリーバの使用の際には抗コリン作用の副作用に注意が必要
となります。
COPDが高齢の男性に多いことから、使用例が制限されてしまいます。
吸入でどのくらい血中濃度が上がるのか、一度調べてみたいと思います。そして
どのくらいこの副作用に気を使わなければならないかを。

スピリーバ吸入用カプセル18μg
http://www.jah.ne.jp/~kako/frame_dwm_new.html
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by esnoopy | 2007-11-26 00:06 | 呼吸器科