チアゾリジン誘導体で心不全

チアゾリジン誘導体は組織のインスリンの作用を改善するということでインスリン抵抗性改善薬とも呼ばれています。PPAR-γ作動薬という別名もあります。
周知のように、国内で認可されているチアゾリン系薬剤は国内ではアクトスのみです。
かつてはトログリタゾン(商品名ノスカール)という薬剤がありましたが肝障害のため2000年に発売中止になりました。

以下使用上の注意喚起の報告の紹介です。

糖尿病薬で心不全リスクが2倍に

糖尿病治療薬Avandia(アバンディア、一般名:rosiglitazoneロシグリタゾン、日本国内では未承認)またはアクトス(ピオグリタゾン)のいずれかを使用する患者は、使用しない患者に比べ心不全の発症リスクが2倍であるという報告が、医学誌「Diabetes Care」8月号に掲載された。
Avandiaとアクトスは同じファミリー(チアゾリジン系)に属する薬剤で、米国で300万人を超える糖尿病患者が使用している。
現行のラベル表示では、重度の心不全患者での使用やインスリンとの併用を避けるよう警告されているが、今回の知見によれば、これに該当しない患者にもリスク増大が認められたという。

この報告の前日に発表された米国食品医薬品局(FDA)のレビューチームによる研究では、 Avandiaがアクトスに比べ、心障害をもたらすリスクが大幅に高いとの結果が示された。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、すでにインスリンを使用している患者では特にAvandia によるリスクが大きいのに対して、アクトスとインスリンとの併用には副作用はないとされている。

「Diabetes Care」掲載の研究では、米Wake Forest大学(ノースカロライナ州)医学部のSonal Singh博士らが、 Avandiaまたはアクトスのいずれかを使用する患者7万8,000人以上のデータを収集。
その結果、心不全リスクの倍増が認められたほか、高用量と低用量のどちらでもリスク増大がみられることが判明した。
心不全発症までの平均期間は薬剤の使用開始から24週間。
発症例の25%が60歳未満と、高齢者だけにとどまらず、男女ともにみられることもわかった。
研究グループは、リスク増大の原因は水分貯留によるものではないかと推測しており、現行のガイドラインを改正する必要があると述べている。

今年(2007年)5月には、米クリーブランドクリニック(オハイオ州)のSteven E. Nissen氏が、 Avandiaの使用により心臓発作リスクが43%増大するとの知見を発表しており、今も議論が続けられている。
ニューヨーク・タイムズによると、 Avandiaの製造元グラクソ・スミスクライン社の広報担当Mary Anne Rhyne氏は、FDAのレビューに対し、同薬が安全であるとする同社の見解は変わらないと述べている。
同社のデータではAvandiaによる心血管死の増大は認められておらず、ほかの薬剤との間に心臓発作発症率の差も認められないという。
同社臨床開発責任者のAndy Zambanini博士は、心不全に関する新たな警告表示について現在もFDAと交渉を続けていると語っている。

Nissen氏は、 Avandiaの使用を検討している患者は医師とよく相談すべきだが、このニュースだけを理由に現在使用している薬剤を止めるべきではないとの意見。
米国糖尿病協会(ADA)のLarry Deeb氏は、いずれの薬剤も正しく使用すれば安全であると主張する。
両薬剤による心不全リスクは50人に1人だが、その1人を見極めることができれば、残る49人を安全に治療することができると述べ、心不全や心臓発作のリスク増大がみられるからといって、両薬剤の市販を中止する必要はなく、適切に使用すれば有用な薬剤であるとの見解を示している。
(HealthDay News 7月27日)

(FDA諮問委員会は7月31日開催された委員会で、Avandiaの心疾患リスク増大の可能性は認めたものの、22対1の多数決で同薬の販売継続を承認した。)
http://www.drakahige.com/NEWS/DAILY/2007/2007080604.shtml

<コメント>
チアゾリジン系薬剤による心不全については以前からいわれていることです。
したがってこの論文自体がオリジナリティー性の高いものかどうかは疑問です。
しかし、チアゾリジン系薬剤使用の際への警鐘を鳴らした点は評価できると思います。
国内で、私達がピオグリタゾンを投与開始する際には、胸部レントゲン、心電図、体重、BNPとりわけNT-proBNP(心不全の「診断」として2007年7月より保険適応)が必要と思われます。
そして、従来言われて来た浮腫出現自体を(顕性)心不全とみなせば、発現頻度は少ないとはいえません。
せっかく私達は、血液検査による心不全の定量化というツールを得たのです。
心不全に対するカルベジロールの投与でさえ、BNPなどの心不全マーカーでしっかりチェックされていないのが実情ですから。
個人的にも、各特質を理解してhANPも含めた3者の使い分けが出来るようになりたいと思っています。


その他のチアゾリジン系の副作用関連のサイト

FDAが糖尿病薬アクトスに心不全の黒枠警告を要請、諮問委員会での心毒性検討も表明
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=163
糖尿病の薬で心不全
http://d-inf.org/drug/actos.html
チアゾリジン系薬剤(Thiazolidinediones)
http://www.diabetes.h.u-tokyo.ac.jp/DIABETES/KEYWORD/e01.html
塩酸ピオグリタゾン投与中の急激な水分貯留による心不全について
(緊急安全性情報)
http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1210/h1005-1_15.html
「ピオグリタゾン(アクトス)は糖尿病治療薬としては不適です」
http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/akutosu_q_20001204.pdf
(2000年12月の公開質問書ですがその後どのようになったのでしょうか)

ピオグリタゾン(アクトス)に「警告」情報の発信を
http://www.yakugai.gr.jp/bulletin/rep.php?id=123

薬剤反応性調査試行的事業 解析報告書 (概要)ピオグリタゾンhttp://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=ピオグリタゾン&btnG=検索&lr=

結論としては、心不全が起きることを念頭に置きながら、定期的にチェックをしつつ、慎重に投与するということでしょうか。
作用機序からいってもいい面が数多くある薬剤ですから。

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<閑話休題>
今日届いた日医ニュースに「診療報酬改定に関する報道で厚労省等に抗議」と載っていました。

もうお忘れになった方もおみえかもしれませんが、開業医でびっくりされた方は覚えてみえると思います。
それは
「病院での夜間診療を地域の開業医が交代で担う」
「開業の初診・再診料を引き下げる一方で、時間外や訪問診療報酬を、これまでより高くすることも検討する」
などの、改定方針があたかも決定されたかのごとく新聞報道されたことがありました。
それに対する報道の勇み足に対する抗議というわけです。

個人的には日医自体にも多いなる不満があります。
厚労省も、全く日医との連携もありませんしrespectもなければ、決定はいつも青天の霹靂です。そして朝令暮改もしばしばです。
診療標榜科目がいい例です。

結果として厚労省の役人にいいように操られる(あしらわれる)日医やわれわれ医師は一体何なんでしょうか。
厚労省と対立関係ならまだしも隷属関係という印象は拭えません。
協調関係とは間違ってもいえない状況です。

同じくプロ知識集団たる法曹界ではどうなんでしょうか。

テレビの介護のコマーシャルではありませんが
「私たちには未来が見えて来ません」と叫びたいです。

医師会指導層も叙勲をエサにされて骨抜きにされているんじゃないかと勘ぐってしまいます。
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by esnoopy | 2007-09-06 00:33 | 糖尿病
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