ORGはObesity related glomerulopathyの略です。
日本医事新報 4358 2007.11.3の記事から、この耳慣れないORGの紹介です。 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科 脇野 修 ・伊藤 裕 両先生 肥満症患者の増加に伴い、メタボリックシンドローム(Metabolic syndrome; Mets)、肥満に伴う腎障害が慢性腎臓病(Chronic kidney disease; CKD)の原因として注目を集めている。 肥満に伴う腎障害には大きく分けて二つあり、一つはMetsに合併している糖尿病・高血圧による腎障害であり、もう一つは肥満に固有の腎障害である。 これは組織学的には糸球体肥大と巣状分節状糸球体硬化症(focal segmental glomerulopathy)を特徴としており、Obesity related glomerulopathy(ORG)といわれている。 このORGの概念は1974年、肥満症と蛋白尿との関連が指摘され、初めて報告された。 その後、2001年にKambhamらが、腎生検6818例中のBMI30超の肥満71例の解析を行った。 その結果、ORGは腎生検施行例の2%の頻度であること、1986年から2000年の15年で、倍に頻度が増加していること、原発性のFSGSと比較してネフローゼの頻度が低く、血清アルブミンのレベルは高く、血清コレステロールのレベルは低く、浮腫の頻度が低いことなどが明らかとなり、ORGという疾患概念が確立した。 現在、ORGは ①病的な肥満症(BMI 40超) ②浮腫を認めない蛋白尿 ③正常血清アルブミン値 の三つをtriadとし、高血圧による腎硬化症と糖尿病腎症とを除外したものと定義される。 蛋白尿はネフローゼレベルのものから0.5g以下の軽度のものまである。 予後は、以前は良好とされていたが、先述のKambhamらの報告によれば、8年間の観察期間で14%が血清クレアチニン値の倍加、3.6%で末期腎不全への進行が認められたという。 またPragaらは、15名のORGのうち7名(46%)が腎障害が進行し、3名(20%)は血液透析に移行したと報告している。 したがって、必ずしも予後はよくないと考えられる。 ORGの発症機序は不明な点が多い。 糸球体肥大については一酸化窒素(NO)の代謝障害による輸入細動脈の拡張、レニンーアンジオテンシン(RA)系の活性化による輸出細動脈の収縮が糸球体の過剰濾過を引き起こしていることが指摘されている。 また肥満に伴う高インスリン血症がインスリン様成長因子(IGF)-1や-2といった成長因子の分泌を亢進させ、それが糸球体の肥大を引き起こすという報告もある。 肥満における高レプチン血症がtransforming growth factor-β1、(TGFI-β1)の発現を誘導し、これが糸球体肥大を引き起こすともいわれている。 また、原発性のFSGSの発症に腎臓内の虚血の存在が知られており、肥満に伴うことが多い睡眠時無呼吸症候群(SAS)による慢性的な腎臓の虚血がFSGSの原因とも考えられている。 ただし、原発性のFSGSでは虚血に陥りやすい腎臓の皮質髄質の境界にsclerosisの病変が認められるのに対し、ORGではその傾向はないとされている。 治療はまず減量だが、SAS合併例では血液の酸素化の改善とともに尿蛋白の消失も知られている。 脂質低下療法、RA系の抑制が妥当な治療法と考えられている。 このようにORGの存在は注目されており、その発症メカニズムの解明は重要である。 近年では低出生体重児との関連が示唆されている。 すなわち、低出生体重児は生後肥満になる可能性が高い上に、ネフロン総数の少ない腎臓となる可能性の高いことが示唆されている。 ネフロン数の減少に伴う腎病変はFSGSであることを考えると、低出生体重がORGの根本原因ではないかと考えられる。 今後の病因の解明と前向き研究を用いたORGの自然歴の解明、そしてその治療法の開発が重要な課題ではないかと考えられる。 マイケル・ルー シカゴII シルクスクリーン http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s74283496?u=;artfolio11 世界の国を肥満率の高い順に並べるとこうなる http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070518_fat_list/ <コメント> 15歳以上でBMIが30%以上の割合は米国で31%、日本は3%です。 ORGのtriadの一つの病的な肥満症(BMI 40超)となると日本ではほぼ皆無と思われます。 ちょいデブが一番健康にいい? http://wellfrog.exblog.jp/7257657/ 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed (循環器科関係の専門的な内容)
by esnoopy
| 2007-11-07 00:05
| その他
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