糖尿病患者の食事指導におけるアルコールの扱い

糖尿病患者さんの食事指導を行う場合、指導する医師の嗜好が反映されることは禁煙
指導と同様にしばしば経験するところです。
私自身、お酒は決してきらいではありません。
むしろ好きです。
タバコは一切やりません。
したがってアルコールに関する食事指導はついつい甘くなってしまいます。

日本医事新報を見ていたら
 アルコールのエネルギーカロリーをどのように扱うか
           という記事に目がとまりました。
以下、紹介させていただきます。



「1日の総エネルギー摂取量を抑えれば、アルコールを飲んでもよいか」という質問は、
糖尿病食事療法の栄養指導でよく出る質問である。
アルコールは糖から作られるものの、体内ではブドウ糖にならないため、エンプティカロリー
とも呼ばれる。
しかし、アルコールには食欲の増進作用があることから、いくら飲んでも体重に影響がない
とはいえない。
日本糖尿病学会による糖尿病診療ガイドラインでは、アルコールの摂取量の上限を、
エネルギーではなく、アルコール量(1日25g程度を上限の目安)として取り扱っている。
ただし、「スルホニル尿素薬を内服する例では低血糖を引き起こす危険があるばかり
でなく、アルコールを多飲する例では糖尿病の治療に悪影響を及ぼすので、飲酒量を
自分で制限できない例では禁止することが望ましい」としている。
アルコールのエネルギー量は1gあたり7kcalであるが、エネルギー量としてカウント
するよりも、諸外国においてもアルコール量で適量を定めている場合が多い。
例えばアメリカ糖尿病学会では、アルコール15gを1drink(ビール350ml、ワイン150ml、
ウイスキー45ml)としており、食事と一緒に摂取するのであれば、女性は1日1drink、
男性は1日2drinkまでを上限としている。
カナダでは、糖尿病患者のアルコール消費量の限度は、1日のエネルギー摂取量の
5%以下または1日2杯で、いずれにせよ少なめにするように勧めている。
また、アルコールは高血圧の原因となること、中性脂肪を上げやすいこと、つまみからの
塩分およびエネルギーを取りすぎてしまうことなどの弊害に気をつける必要があると考え
られる。
よって、アルコールはエネルギー量よりも重量で換算し、体重・血圧などの管理状況に
よって、つまみの量や塩分に注意する必要があると考えられる。

一方、アルコールが直接血糖値に影響するか、という質問もよく出る。
食品を摂取した後の血糖上昇度合いを示す指標として、glycemic index(GI)という
指標がある。
血糖値は食後に著しく上昇するが、このような食後の血糖値の上昇度合いは、従来は
糖質の量に比例すると考えられてきた。
しかし同じ糖質含有量の食品でも、でんぷんの構造や、調理・加工方法によって、あるいは
他の食品との組み合わせによって血糖上昇の度合いは異なる。

近年、糖質の質的な評価指標としてGIの有効性が注目され、WHO/FAO、オーストラリア
などにおける糖尿病を始めとした生活習慣病の予防・治療のガイドラインにもGIが加えられる
ようになってきた。
WHO/FAOの定義によると、GIとは、糖質50gの検査食摂取後の血糖上昇曲線下面積を、同じ被験者における糖質50gの基準食摂取後の血糖上昇曲線下面積に対する比率で示したものである。

GIに関する研究は欧米が主流であったが、日本人におけるランダム化比較試験による結果
を筆者らが2007年に公表し、GIを用いた栄養教育は、比較的軽度の2型糖尿病および
境界型住民における血糖コントロールの改善に有効であることを明らかにした。
GIは炭水化物を多く含む食品の、よりよい選択肢として利用することが好ましい。
日本人の場合、糖質の摂取源は主食であることから、主食に低GI食品(玄米、麺類など)を
選ぶか、高GI食品(米飯、食パンなど)を摂取する場合には、酢や乳製品など、食後の血糖
上昇を抑える食品を組み合わせることが、食後血糖上昇を抑える食事となる。

一方、アルコール飲料100gあたりに含まれる糖質量は、吟醸酒3.69、ビール3.1g、
焼酎、ウイスキー、ブランデーは0gである。
このように、アルコールはGIを測定することの難しい食品であるため、アルコールを選択
する指標としてGIを用いるのは誤りである。


日本医事新報 No.4357 2007年10月27日

国立保健医療科学院協力研究員  多田由紀先生
神奈川県立保健福祉大学教授   杉山みち子先生

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ジャンセン
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s75385302?u=;artfriendskan

<コメント>
われわれ愛飲家から言わせてもらうと、「アルコールで食欲が出る」という点にはひっかかり
があります。
多分なめる程度の飲酒量では、そうかも知れません。しかしのん兵衛にはその時間は多分ほんのわずかな時間だと思われます。
最近、食後高中性脂肪血症や軽度の尿酸値の上昇も問題となっています。
そういった面からも、アルコールの食事指導の際には患者さんへ説明が要るかも知れません。

血清尿酸値の軽度上昇が脳の白質病変の増加と関連
http://wellfrog.exblog.jp/d2007-10-22
非空腹時TG値~心血管イベントの指標
http://blog.m3.com/reed/20071019

アルコールよ、君は敵か味方か?
http://www.nikkeibp.co.jp/style/secondstage/kenkou/diabetes_070702.html
アルコールはやっかいな問題
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20020424A/index.htm
アルコールの問題点
http://www.kma.jp/kosino/dm/alcohol.html
アルコールとdiabetes
http://www.somos.co.jp/solution/006.htm
アルコールをよく飲む日本人男性は糖尿病になりやすい
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2005/03/000926.php
食べ物やアルコールについて
http://www.kma.jp/kosino/dm/food_and_alcohol.htm


他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室  http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed
(循環器科関係の専門的な内容)
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by esnoopy | 2007-11-09 00:05 | 糖尿病
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