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インスリン分泌「膵島」移植に新技術

糖尿病患者への人工膵島移植。
開業医には遠い存在と思っていたため興味も持っていませんでしたが、
臨床応用も現実のものとなってきているようです。
研究においてもiPS細胞と同様に熾烈な競争(先陣争い)が行われています。
昨日の新聞に3つの研究が同時に紹介されていました。

糖尿病治療へ不足補う
人工的に大量培養  横浜市立大マウス実験で

重症の糖尿病患者にインスリンを分泌する膵島(すいとう)を移植する治療に
役立つ新技術が相次ぎ開発された。
まだ動物実験など基礎的な段階だが、横浜市立大学は人工的に膵島を大量
に作ることに成功。
広島大学と京都大学はそれぞれ、移植の効果を高める技術を開発した。
移植用の膵島は不足しているが、新技術が人で実用化できれば、移植を増
やせる可能性がある。

横浜市立大大学院の谷口英樹教授はマウスの膵臓(すいぞう)にある
インスリンを分泌する細胞や血管のもととなる細胞などを専用装置に入れる。
装置は宇宙飛行士が前後左右などに回転させられる訓練機器を小型にした
ような構造で、二つの軸で回転する。

回転の遠心力で重力を相殺するように細胞の入った容器を動かすことで、
膵島を大量に培養することに成功した。
数日で数百個の膵島ができ、従来のシャーレの中で培養する方法では重力
の影響で一個しか作れなかった。
新装置の規模を大きくすれば、移植に必要な1万個も作れる見込みという。

糖尿病の実験用マウスに注射したところ、血糖値が正常に戻った。
インスリンの分泌も確認した。
今後は人の細胞で人工膵島を作製する計画。

膵島は提供してくれる人(ドナー)が不足している。
人工膵島ができれば、新たな治療法として広がる可能性がある。
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効果向上
炎症防止へ抗酸化 広島大
膜で血液凝固緩和 京大

広島大やループがそれぞれ開発した技術は、少ない膵島提供でも移植を受
けられる患者を増やせる可能性がある。

膵島移植は直後に炎症などが起き細胞がダメージを受け機能が低下する。

従来、うまく働く膵島が定着する割合(定着率)は三 ― 四割にとどまり、
患者一人に対し二 ― 三人から採取した膵島を移植する必要があった。

広島大の檜山英三教授は、分離した膵島細胞が移植時に弱くなるのは体内
で過酸化作用を受けるのが原因の一つと考え、抗酸化作用を持つ薬剤を使う
手法を開発した。
この薬剤に移植前の膵島細胞を浸すとともに、その物質を移植の前後に患者
にも投与する。

ラットの実験では生着率が従来の約二倍の六割超に上昇した。
二匹分必要だった膵島細胞も一匹分で済んだ。
今後、倫理委員会などの承認を経て、一 ― 二年後に臨床研究を始める
方針だ。

京大の岩田博夫教授らは移植用の膵島を薄い膜で覆い、移植直後の炎症や
血液が固まる現象を和らげる技術を開発した。
膜は脂質とポリエチレングリコールの複合体で、膜表面には血栓を溶かす
ウロキナーゼという薬剤を付着させた。

試験管での実験では血液が固まる現象を抑える効果を確認した。
現在の膵島移植法にそのまま応用できるので三 ― 四年後には実用化
したい考え。

膵島移植法では移植した細胞が異物とみなされ攻撃される拒絶反応も起こる。
細胞を覆う膜は「拒絶反応を防ぐ役割も持っており、免疫抑制剤の使用量低減
にもつながるはず」と岩田教授は指摘している。
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<膵島>
膵臓(すいぞう)のの一つで、インスリンを分泌するβ細胞などが集まった百 ―
二百五十マイクロ(マイクロは百万分の一)メートルほどの塊。
膵臓内に点々と浮かぶ島のように多数分布している。
インスリンは血糖値を下げるホルモン。
糖尿病のうち、これがほとんど分泌されないタイプの患者などは死の危険が
あるため、インスリンの注射が欠かせない。
他人の膵臓から膵島細胞を分離し、肝臓の門脈などに注入する膵島移植を
すれば、インスリン注射を不要にできる。

日経新聞・朝刊 2008.1.21
版権  日経新聞社

糖尿病の膵島移植
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/saisin/20051107ik12.htm
膵島移植について
http://www.hosp.go.jp/~chibae2/ishokuj/suitou/suitou1.html
京都大学医学部附属病院膵島移植のホームページ
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~transplant/islet/index.html
神戸大学医学部附属病院 膵・膵島移植
http://www.med.kobe-u.ac.jp/suitou/

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by esnoopy | 2008-01-22 00:34 | 糖尿病
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