昨年(2007年7月)の第39回日本動脈硬化学会総会・学術集会の発表からの紹介です。
糖尿病合併例にどのスタチンを使うべきか アトルバスタチンでの血糖上昇を示唆する報告も 2型糖尿病を合併している高コレステロール血症の患者は少なくないが、こうした患者においても、心血管系イベントの予防のために、積極的な脂質低下療法を行うことが必要とされている。 だが、糖尿病を合併した高脂血症(脂質異常症)患者に、どの高脂血症治療薬を選択すべきかについては、まだコンセンサスが得られていないのが現状だ。 7月12~13日に大阪市で開催された第39回日本動脈硬化学会総会・学術集会では、スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)の使い分けに関する研究結果が2題、報告された。 横浜市立大市民総合医療センターの山川正氏 ストロングスタチン間でも耐糖能への影響に差 1つは、横浜市立大市民総合医療センター内分泌・糖尿病内科准教授の山川正氏による報告。 山川氏は、同院の外来に通院中の2型糖尿病患者のうち、プラバスタチン(Pr、商品名:メバロチンほか)、ピタバスタチン(Pi、商品名:リバロ)、アトルバスタチン(At、商品名:リピトール)のいずれかを服用している患者を後向きに調査し、投与開始後の耐糖能の変化を調べた。 同氏らはこれまでに、ストロングスタチンに分類されるAtと、マイルドスタチン(スタンダードスタチン)に分類されるPrを比較し、AtがPrに比べて血糖コントロールを悪化させる可能性があることを指摘している(高野達郎、山川正ら. J Atherosclerosis Thrombosis.2006;13:95-100.)。 今回は、このAtの血糖上昇作用が、ほかのストロングスタチンにも認められるかどうかを明らかにするため、検討対象にストロングスタチンのPiを加えて分析した。 調査対象は、2002年4月~2007年2月までにPr10mg、At10mg、Pi1~2mgのいずれかの投与を開始した糖尿病患者。 調査対象期間中に糖尿病薬の内容や投与量に変更があった患者などを除外し、At10mg投与群78人、Pr10mg投与群76人、Pi1~2mg投与群80人について、投与開始後3カ月間での随時血糖、HbA1c、脂質、体重の変化を分析した。 その結果、At群では、3カ月後に随時血糖およびHbA1cが有意に上昇した(随時血糖147mg/dL→177mg/dL、HbA1c6.80%→7.16%〔いずれもP<0.01〕)が、Pi群とPr群では有意な変動は見られなかった。 同じストロングスタチンでも、AtとPiでは、耐糖能に与える影響が異なることが示唆された。 なお、LDL-Cに関しては、すべての群で有意に低下したが、At群では他群に比べて有意に高いLDL-C低下作用を示していた。 このLDL-C低下作用の差について山北氏は、「At群ではマイルドスタチンからの切り替えが多かったのに対し、Pi群は同じストロングスタチンであるAtからの切り替えが多かったため、At群のLDL-C低下作用が高く出たのではないか」と分析していた。 関医院の関勝剛氏 アトルバスタチン投与でHbA1cが5.9%→6.8% もう1つの発表は、2型糖尿病患者においてAtとPrの影響を比較したもの。 関医院(秋田県能代市)副院長の関勝剛氏が発表した。 同医院に通院中の2型糖尿病患者のうち、At投与患者66人(平均投与期間4.1年)とPr投与患者51人(同8.0年)について、空腹時血糖値、HbA1c、脂質などを投与前後で比較した。 その結果、どちらの薬剤でも脂質管理目標値は達成できていたが、やはりAt投与患者では糖尿病の状態が悪化していた。 具体的には、At投与患者の平均空腹時血糖値は111mg/dL→130mg/dL(p<0.0001)、平均HbA1cは5.9%→6.8%(p<0.0001)であり、Pr投与者では有意は変化はなかった。 関氏は「2年ほど前から、糖尿病患者にアトルバスタチンを投与するとやや血糖コントロールが悪化する印象を持っていたが、今回の分析でそのことを確認できた」と話す。 スタチンが糖代謝に与える影響は不明な部分も多いが、スタチン間で、脂肪細胞による糖の取り込みやβ細胞機能に対する影響に差があるとする基礎研究の結果も報告されている。 山川氏は、「糖尿病患者に高脂血症治療薬を使用する際には、薬剤によって耐糖能に与える影響が異なる可能性がある。 慎重に薬剤を選択するとともに、投与後の血糖値の変化にも注視した方がよい」と話している。 Nikkei Medical 2007.7 版権 日経BP社 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200707/503811.html
by esnoopy
| 2008-02-25 00:10
| 循環器科
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