1日1回の注射で24時間にわたり血糖を管理できるグラルギンはBOTに最適
河盛 一般にOHAによる 2 次無効とは,高血糖や脂質異常症が膵?細胞内の酸化ストレスを高め,アポトーシスや線維化を惹起して血糖コントロールが悪化することです。そのため良好な血糖コントロールが得られてさえいれば,内因性インスリンの効果も高くなります。膵臓から出たインスリンは,肝臓に直接作用するので,食後の高血糖を下げるのに有効です。1日あたり 1 mgという少量のグリメピリドでも,長期にわたり血糖コントロールが維持できることもよくあります。 インスリン療法が必要と考えられる患者では朝食前も食後も血糖値が高い。24時間インスリンを補充して,血糖値を"だるまおとし"のように下げる手段が登場しました。インスリングラルギン(商品名:ランタス)です。1 日 1 回の皮下注射で血中インスリンレベルを24時間にわたって安定して上昇させます。グラルギンを巧みにSU薬などと組み合わせると,コントロールがよくなる可能性が出てきたのです。グラルギンの登場は外来でのインスリン導入に大きく貢献しています。 清野 従来の中間型(NPH)インスリン製剤は,投与 4 時間前後にピークがあり,ピークによる低血糖を気にすると,十分な増量を躊躇してしまうことがありました。その点,持効型溶解インスリンアナログであるグラルギンは,効果にピークがなく,1 日にわたって安定した効果が持続します。このような特徴を有することから就寝時に 1 日 1 回投与し,空腹時血糖を見ながら増量すれば,低血糖を来しにくくなります。BOTに用いる基礎インスリンとして,グラルギンは最適であると思います。 患者の不安を軽減するためにもインスリン導入は少量から 河盛 例えばグリメピリドを6mg/日服用し,?GIとBG薬を併用している患者に,BOTを試みる場合,グラルギンはどのくらいの用量からスタートしますか。 吉岡 患者さんの体重にもよりますが,通常は 4 単位もしくは 6 単位から始めています。個々の患者さんのインスリン抵抗性の差によって,必要量は異なりますが,ごく少量のインスリンで血糖コントロールが可能であるケースもあります。そのため,BOTにおけるインスリンの初期投与量もあらかじめ決めずに,少量から開始して増量しながら決定していくことが重要だと思います。 まずは患者さんに,インスリン注射は「簡単」「痛くない」「確実に血糖値が下がる」ことを実感してもらうことが重要です。実際,導入3〜4日後には多くの方がそれらを実感されています。 私の場合はHbA1cの値が低下するにつれ,SU薬をなるべく減量し,基礎インスリンを増量するという方法を取っています。 表 清野 インスリン治療に対する心理的障壁を調査したDAWN(Diabetes Attitudes Wishes and Needs)studyでも,人前でインスリン注射をすることへの抵抗感が明らかになっています。1 日 1 回投与のグラルギンは,自宅で打つことができるので,患者さんの心理的負担も軽減されます。また,インスリン治療を始めると,血糖自己測定(SMBG)が保険適用となり費用負担が軽くなるばかりでなく,血糖値が確実に改善し,それを患者さん自身が実感できるというメリットがあります(表)。 グラルギン投与は0.1単位/kgから開始しますが,その量であればまず低血糖を生じる心配はありません。 食後の高血糖に対する効果が不十分なら,追加インスリンも検討 清野 BOTによりHbA1cが治療目標値に達するか否かは,罹病期間やインスリン分泌状況,インスリン抵抗性などにもよります。空腹時血糖値を見ながらインスリン量を調整し,空腹時血糖値が是正されてもHbA1cが高い場合には,追加のインスリン投与を考慮します。その場合,OHAはそのままの量を残して,SMBGで高値を示す食後の高血糖を抑えるために,食直前に超速効型インスリンを加えます。 SU薬を減量してインスリン投与量を増やすという考え方もありますが,一方でSU薬を最大量使いながらグラルギンを併用することで,インスリン投与量を低く抑えたまま安定した血糖コントロールの改善が望める例もあります。 河盛 肥満があると「インスリン分泌が十分で,インスリン抵抗性のため高血糖」と捉えがちですが,日本人ではインスリンを測定するととても低い例が多いですね。2 型糖尿病においては,わずかな内因性インスリン分泌を有効活用することが重要です。SU薬によりわずかであれ内因性インスリン分泌が刺激されると,インスリンが肝に流入し食後血糖応答改善に有用です。インスリン投与量が節約できることも認められていますね。 ところで,インスリン導入後のフォローアップはどうされていますか。 吉岡 われわれの施設ではクリティカルパスを導入し,インスリン導入 3 日後に糖尿病療養指導士(CDE)が電話やメールで連絡を取り,さらに 1 週間後,2 週間後,1か月後に医師がフォローアップを行っています。 清野 当院でも基本的には 2 週間に 1 度ご来院いただき,SMBGの結果によっては,インスリン投与量の調整を行います。 河盛 診療所では,むしろ頻回の,きめ細かい外来診療が可能なのではないでしょうか。そのメリットを活かして, BOTなどで積極的に「次の一手」を打っていただきたいと思います。HbA1c 9.0%を7.0%まで改善できれば,網膜症や腎症,神経障害,さらに脳卒中,心筋梗塞も確実に減らすことができるのです。 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109781&year=2008
by esnoopy
| 2008-03-31 19:12
| 糖尿病
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