人気ブログランキング | 話題のタグを見る

麻疹 その1(1/4)

厚生労働省は昨年(H19年)8月に策定した「麻疹排除計画」が、本格的に動き出します。
目標は、2012年までに「はしかをなくす」、つまり麻疹患者の発生を100万人に1人未満にする排除(elimination)です。

翻って現在の医療現場はどうでしょうか。
現時点で当院には麻疹ワクチンがまったく入手できません。
薬剤卸業者に確認したところ、公費負担の麻疹ワクチンの接種のため地方自治体が確保しており一般市場(無床診療所)には出回らないとのこと。
この4月から中1と高3のMRワクチン接種が始まりました。
大学生などが接種希望するのは麻疹(単独)ワクチンであり、第一線の無床診療所にこそこの単独ワクチンを供給して欲しいものです。
麻疹ワクチンを希望する大学生には仕方なく高価なMRワクチンで代用しているのが現状です。
麻疹抗体の測定は昨年は完全にストップしました。
昨年は検査も接種も出来ない状態でした。

現場を知らない厚労省、そしてそのことに対して全く動かない医師会。
われわれ現場の医師は、厚労省は勿論のこと、医師会からも心が離れているのが現状ではないでしょうか。
長寿医療制度の新保険証のゴタゴタに関する枡添大臣の「医療機関への通達云々」。
私には未だ持って何も通達が届きません。

さて4回にわたって麻疹を勉強してみます。
教材は「日経メディカルオンライン」です。

麻疹は子供の病気にあらず
「はしかなんて子供の病気だろう」。
一般市民はもとより、第一線の医師であっても、つい最近までそう思っていた人は多いのではないだろうか。
しかし、現在のわが国における麻疹の流行状況は、一昔前とは全く様相が異なる。

2007年、日本全国を席巻した麻疹流行の中心となったのは、乳幼児ではなく、10代、20代の若年者だった。
感染症発生動向調査における15歳以上の「成人麻疹」の流行は、1999年以降で最大規模となり、学校閉鎖が相次いだことは記憶に新しい。

流行は春から夏にピークを越えたものの、全数把握疾患となった2008年は、第1週から報告数が増え続け、3月9日までの累積患者数は3600人を突破した(最新情報は感染研のホームページを参照)。
   感染症情報センター(麻疹)
   http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/index.html#info2

年齢別では、やはり10代、20代が多く、7割近くを占めている。

麻疹をほぼ制圧している先進諸国の手前、恥ずかしい話ではあるが、いまや日本では、麻疹は小児科医に限らず、臨床医の誰もが遭遇する疾患だと考えた方がよいだろう。
たまたま当直をした日に、麻疹患者が救急外来を訪れることも十分あり得る。

そこでうっかり麻疹を見落とすと、非常に強い感染力を持つ麻疹ウイルスが、診断が付くまでの間に周囲の人間に次々とまき散らされることになる。
二次感染を最小限に抑えるためにも、第一線の臨床医が麻疹をいかに拾い上げられるかが重要となる。
麻疹の典型的な臨床経過をおさらいしておこう。

【カタル期】
麻疹は麻疹ウイルスの感染後、10〜12日の潜伏期間を経て発症する。まず38?前後の発熱、倦怠感、上気道炎症状(咳、鼻汁、くしゃみ)、結膜炎症状(結膜充血、眼脂、羞明)が出現し、2〜4日間続く。
この時期はカタル期と呼ばれ、麻疹の経過中で最も感染力が強い。
また、カタル期の後半、発疹出現の1〜2日前には、口腔粘膜の奥歯の対面に、やや隆起した径1mmほどの白色の小斑点(コプリック斑)が認められる。

【発疹期】
カタル期の発熱が1℃ほど下降した後、半日ほどして再び高熱(多くは39℃以上)が出現する(二峰性発熱)。
それと共に特有の発疹が出てくる。

発疹は耳後部、頸部、前額部から始まり、翌日には顔面、体幹部、上腕に及び、2日後には四肢末端にまで及ぶ。
初めは鮮紅色で扁平だが、徐々に皮膚面より隆起し、融合して不整形な斑状(斑丘疹)となる。
指で押すと退色し、一部には健常な皮膚も残る。

発疹が全身に広がるまで、39℃〜40℃台の発熱が3〜4日間続き、カタル症状も一層強くなる。
一方コプリック斑は、発疹出現後2日目の終わりまでに急速に消失する。
発疹は次第に暗赤色となり、出現順序に従って退色する。

【回復期】
発疹出現後3〜4日すると回復期に入る。
解熱し、全身状態やカタル症状も改善してくる。
発疹は退色するが、しばらくの間は色素沈着が残り、わずかな粃糠様落屑も認められる。

合併症がなければ、発症から7〜10 日後には回復するが、その後数週間は免疫機能低下状態が続くため、各種感染症に注意が必要となる。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/taya/200803/505832.html
出典 日経メディカルオンライン
版権 日経BP社

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
by esnoopy | 2008-04-16 00:03 | 感染症
<< 上部消化管疾患 (世界の権威に聞く) 糖尿病 (世界の権威に聞く) >>