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ピオグリタゾンは2型糖尿病患者の冠動脈プラークの進展を抑制する:PERISCOPE試験
インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾン(アクトス(R))は、スルホニル尿素薬グリメピリドに比べ2型糖尿病患者の冠動脈プラークの進展を有意に抑制することが、北米と南米で実施された多施設共同二重盲検無作為化試験PERISCOPE(Pioglitazone Effect on Regression of Intravascular Sonographic Coronary Obstruction Prospective Evaluation)により明らかにされた。 冠動脈プラークの進展に対する抑制効果が示された糖尿病治療薬はこれまでなかった。 ピオグリタゾン群とグリメピリド群の冠動脈プラークの進展をIVUSで評価 2003年8月~2006年3月に、冠動脈疾患を有する2型糖尿病患者543例が、北米および南米の97施設から登録された。全例に冠動脈血管内超音波(IVUS)が施行され、ピオグリタゾン(15~45mg)群(270例)あるいはグリメピリド(1~4mg)群(273例)に無作為に割り付けられた。 18ヵ月の治療期間に、認容性がある場合は最大用量まで漸増した。冠動脈プラークの進展は試験終了時のIVUSで測定し、360例(ピオグリタゾン群:179例、グリメピリド群:181例)が検査を受けた。主要評価項目は、%プラーク体積(PAV:Percent Atheroma Volume)のベースラインから試験終了までの変化とした。 結果 省略 結論 ピオグリタゾンは、グリメピリドに比べ2型糖尿病患者の冠動脈プラークの進展を有意に抑制した。 ピオグリタゾン治療を受けた患者では、広範なサブグループにおいて冠動脈プラークの進展が抑制された。 これらの知見は、動脈硬化進展リスクの高い2型糖尿病患者に対する治療戦略の決定において大きな意義をもつ可能性がある。 監修者のコメント 本試験は、インスリン分泌を増加させるスルホニル尿素系抗糖尿病薬グリメピリドと比較して、インスリン抵抗性を改善しインスリン分泌低下に働くチアゾリジンジオンであるピオグリタゾンの方が、冠動脈プラークの進展を抑制することを、直接的な血管内エコー検査(IVUS)を用いて証明した。 これまでに、同様の研究プロトコールで、グリメピリドとピオグリタゾンの頚動脈内膜中膜肥厚の進展抑制効果を比較したCHICAGO試験(Carotid intima-media tHICkness in Atherosclerosis using pioGlitazOne)があるが、この研究においてもピオグリタゾンの方が有意に頸動脈肥厚の進展を抑制している。 PERISCOPE試験とCHICAGO試験に共通している脂質への影響として、グリメピリドとピオグリタゾンのLDLコレステロールに対する効果には差がない。 しかし、ピオグリタゾン群ではトリグリセリドが低下し、HDLコレステロールが増加している。 これらのメタボリックシンドロームに関連する脂質代謝異常への影響は、一部はピオグリタゾンのアディポネクチン上昇とインスリン抵抗性改善作用によると考えられる。 今回のPERISCOPE試験では、実際に血漿インスリンレベルの低下もみられている。 これらグリメピリドとピオグリタゾンを比較した2つの研究でみられた糖尿病患者の動脈硬化進展抑制効果は、どのような薬剤で血糖を低下させるか、すなわち血糖低下療法の“質”の重要性を示している。 糖尿病を合併する高血圧患者にはレニンアンジオテンシン系抑制薬が推奨される。 基礎実験において、カンデサルタンとピオグリタゾンの併用が心血管保護につながることが示されており(2008年1月28日掲載「ピオグリタゾンの糖代謝を介さない直接的臓器保護作用。カンデサルタンで増強」、Nakamura T et al. Hypertension. 2008; 51: 296-301.http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18158350?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum)、日常臨床でもカンデサルタンとピオグリタゾンの併用が、更なる臓器保護作用をもたらす可能性がある。 ([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣) 原著 Nissen SE et al. JAMA. 2008; 299: 1561-1573. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18378631?ordinalpos=22&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum出典 ピオグリタゾンは2型糖尿病患者の冠動脈プラークの進展を抑制する:PERISCOPE試験 http://www.carenet.com/news/cardiology/newsnow/det.php?nws_c=3548 (パスワードが必要です) 版権 CareNet.com ![]() 神戸 文子 「ばら」 F8 日展特選画家http://page16.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/u24340627 <番外編> m3.comニュースより 日本医師会の唐澤祥人会長は18日、2期目続投以降初めて本紙の単独インタビューに応じ、社会保障費の伸びを毎年2200億円圧縮する抑制策について、「医療費が伸びる伸びると言うが、もうそれほど伸びないはずだ。伸びるからと過度の抑制策を継続すれば、日本の医療を本当に壊してしまう」と訴えた。 その上で「この素晴らしい医療提供体制を絶対に壊すべきではない。私も助けられた。恩返しがしたい」とも語り、小脳出血から自身を救ってくれた日本の医療提供体制を守るためにも、政府に対して医療費抑制策の転換を強力に要請していく考えを示した。 唐澤会長は道路特定財源をめぐる議論を引き合いに、「道路財源を一般財源化する方向を考えているようだが、そうすると2200億円はどうなるのかということもある。なぜ、これほどまで社会保障費を圧縮しようとするのか分からない」と指摘。 その上で、「道路の40兆円、50兆円と比べれば、2200億円は大した額ではない。行政にとっては、これぐらいわずかだから抑えようということかもしれないが、われわれにとっては大問題だ。与党の皆さんには、われわれの立場を理解してほしいと思っている」と述べ、継続的にロビー活動を展開する意気込みを示した。 医療の主体は国民 今年度の診療報酬改定で創設され、地域医師会で届け出拒否を呼び掛ける動きが出ている「後期高齢者診療料」については、「主治医とか担当医とか、これまでなじみのない制度が導入されたかのように言われているが、選択肢の1つとして、こうしたやり方もあるというメニューが出されたにすぎない」と説明。 その上で「医療の主体は国民」と強調し、「制度が先にあって医療を決めていくのではなく、社会の疾病構造や人口の変化、産業・経済の状況などを踏まえて、国民が選択した方式に従って取り組んでいくことが重要だ」と述べた。 また、厚生労働省が構想している「総合科」についても、「行政サイドが制度で医師を枠にはめていくという体制は、われわれにはなじまないし国民も喜ばない」と批判。 日医が検討している「総合医」については、「医師の進む道を根本的に考える、あるいは考える機会としての研修と位置付けている」とした。 http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&articleId=717712008年4月23日 <コメント> 老齢者が増え、(偏在は別問題として)医師が増えれば当然医療費は伸びるはず。 「もうそれほど伸びないはず」という発言。 そんなこと言っていて本当に大丈夫だろうか。 小脳出血を起こしたこと自体、脳動脈硬化があることを証明したみたいなもの。 しかし、「なぜ、これほどまで社会保障費を圧縮しようとするのか分からない」というところは医師の誰もが同意見です(自民党べったりの会長としては矛盾に満ちた発言ではありますが)。 「医療破れて道路あり」 日医会長に唐沢氏が再選 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080401-OYT8T00437.htm任期満了に伴う日本医師会の会長選は1日、投開票が行われ、現職で東京都医師会所属の唐沢祥人(からさわよしひと)氏(65)が、新人で兵庫県医師会所属の下間秀晃(しもつまひであき)氏(47)を大差で下し、再選された。任期は2年。 投票は全国の都道府県医師会から選ばれた代議員352人が行い、白票などを除き、唐沢氏が304票、下間氏が27票を獲得した。 (2008年4月1日 読売新聞) 日医会長に唐沢氏再選 診療報酬プラス改定で「無風」 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/science/134373/唐沢氏は与党と緊密に連携する路線をとり、本年度の診療報酬改定では医師の技術料などの「本体部分」を8年ぶりにプラス改定に導いた。こうした路線が会員に支持されたとみられ、選挙戦はほぼ無風だった。 <コメント> 「本体部分」を8年ぶりにプラス改定 「無風」再選の理由はそういうことだったのか。 内科医は4月からみんな泣いているというのに。 私のようなシモジモには今までどのような実績を残された会長かはわかりませんが、これから2年この会長に託すことになったんですね。 2年前の会長就任時、小泉政権と積極的に関係を改善することを公約としたようです。 ご存知のように後期高齢者医療制度は小泉政権の時に法案可決されたものです。 以下は読売新聞の「解説」からです。 唐沢氏の対抗馬として立候補した下間(しもつま)秀晃(ひであき)氏(47)は、立候補の理由として「現場の医師はいろんな意味で疲弊しており、安心して医療に従事できていない。政府との協調路線を取るだけでは問題は解決しない。弱体化した医師会を戦える組織として立て直したい」と語り、政府・与党との関係を巡る路線論争を挑んだ。 2月の大阪府医師会長選でも、政府・自民党との距離の取り方が最大の争点となり、日医執行部と歩調を合わせる現会長と、執行部を批判し、前日医会長の植松氏が支援する元副会長の一騎打ちとなった。結果は、135票対134票のわずか1票差で現会長が辛勝するなど、火種はくすぶっている。 次期衆院選で票の見返りを期待する自民党厚労族からは「今の日医は自民党の言うことに素直に従う。唐沢氏を会長選で落選させるわけにはいかない」という声も聞こえるが、唐沢執行部が自民党との蜜月(みつげつ)関係を強調することが、投票にどう反映されるのかは不透明だ。 08年度予算案では、診療報酬のプラス改定の財源を捻出(ねんしゅつ)するため、大企業のサラリーマンが加入する健康保険組合などが、1000億円の負担増となる法案が提出された。 一方で、医師不足や地域医療の立て直しの効果的な策は見えず、今年1月以降全国で77の医療機関が分娩(ぶんべん)の中止・制限を予定している。 日本の医療体制が崩壊の危機を迎えようとしている。 政府との距離争点に 協調路線の現職に新人挑む http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080327-OYT8T00167.htm?from=goo <コメント> 医師会員は大阪府医師会長選でみるように割れています。 開業医は日々の診療に汲々です。 しかし死に体の自民党にべったりで本当にいいのかという素朴な疑問が湧きます。 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) ■
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by esnoopy
| 2008-04-25 00:01
| 循環器科
昨日はチアゾリジン系薬剤には手厳しい内容の紹介となってしまいました。
今日はピオグリタゾンの有効性と安全性を大規模市販後調査によって検証 したPRACTICAL( PRospective ACTos practICAL experience )につい て勉強してみました。 PRACTICALは、わが国においてピオグリタゾンを処方されている糖尿病患者 を対象にした治験で、第65回米国糖尿病学会(ADA)にて発表されています。 PRACTICAL http://www.practical.cardio-diabetes-japan.com/archives/ かいつまんで、まずは結果のみ列記させていただきます。 1)HbA1cは早期より有意に低下し、その効果は投与後18か月後まで持続していた。 2)インスリン分泌能に影響せず抵抗性を改善。非肥満・低インスリンでも有効 3)ピオグリタゾンのより早期での使用の有用性が示唆される。 4)糖尿病に特有の脂質代謝異常も改善 5)副作用好発例のプロファイルも明らかに といったところです。 さて、肝・胆道系副作用はさておいて浮腫・心不全についての部分のみ引用させていた だきます。 「浮腫発現については、全体で8.1%(1,865例)であったが、男性(4.2%)よりも女性(12.1%)に おける発現頻度が有意に高く、女性の相対リスクは3倍であった。 心不全発現率は、全体で0.34%(79例)であったが、約60%の47例が重篤な症例 でなかった。 回復しなかった症例は4例あった。心不全発現率は、投与禁忌の心不全合併例で 5.2%と最も高く、 ついで慎重投与例である心疾患合併・既往例が1.3%であった。 心不全合併例では投与しないこと、心疾患合併・既往例では安全性の観点から 低用量の1日15mgから 投与を開始し、経過を十分に観察しながら慎重に投与する ことが必要である。 また、女性・高齢者でも安全性の観点から15mg/日から投与を開始することが望 ましいと考えられた。」 <コメント> 「心不全発現率は、投与禁忌の心不全合併例で5.2%と最も高く」 心不全合併例の心不全・・・日本語としてわかりにくいです。 浮腫発現の中には心不全例も含まれている可能性があります。 そして心不全はどのように定義づけられているのでしょうか。 治験に参加した先生方は循環器専門の先生は恐らく多くはないことが考えられます。 ![]() B・カトラン『ジャクリーンのピンクのシクラメン』リトグラフ http://page18.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/w5271604 塩酸ピオグリタゾン投与中の急激な水分貯留による心不全について (緊急安全性情報) http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1210/h1005-1_15.html (「急激な」という表現が気にかかります。) ピオグリタゾン(アクトス)に「警告」情報の発信を http://www.yakugai.gr.jp/bulletin/rep.php?id=123 ピオグリタゾン(商品名アクトス)について http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/akutosu_req_20001010.pdf ピオグリタゾン(アクトス)は糖尿病治療薬としては不適です http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/akutosu_q_20001204.pdf 浮腫の発現するしくみは、本剤がインスリン作用を増強し、腎尿細管でNaの再吸収 を亢進させ、循環血漿量を増加させる、と考えられています。この循環血漿量の増加 は、心臓にも影響をおよぼす可能性があります。 (浮腫発現のメカニズムの紹介です。) アクトス錠による浮腫・心不全 http://www.min-iren.gr.jp/ikei-gakusei/yakugaku/zy1/k02_fukusayou/2006/060501.html 糖尿病治療薬ピオグリタゾンの有用性に疑問(2006.10.20掲載) http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=539 <まとめ> またもや過激なサイトも紹介してしまいました。 ピオグリタゾンについては却ってよくわからなくなってしまいました。 一度心不全との関連については、ピオグリタゾン投与中のNT-proBNPを測定して みたいと思います。 出来れば今後は投与前後の比較も。 いずれこのブログで紹介できるといいのですが。 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed (循環器科関係の専門的な内容) ■
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by esnoopy
| 2007-09-07 00:31
| 糖尿病
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